縁側で一人、酒を杯に注ぎ、飲む。
冬の夜空で寒々しいが、冬の夜空は最も空気が澄んでいて、最も空がよく見える。そんな星空月夜を見ながら、飲む酒は絶品である。
「ほら、つまみ作ってきたよ。」
「ありがとう。」
昼から今日は妹紅の家にお邪魔していた。
もちろん、事前に伝えてある。しかし、今日やってきたのは吾一人ではないらしい。盆の上に置かれた二つの猪口を見て、そう考えた。
「慧音〜?こっちきて、いっぱいやろうよ。」
「わかった。…愈咫郎くん、失礼するよ。」
「あぁ。」
そう言い、吾の右隣を陣取る慧音先生。妹紅はその反対側。吾の左側に座り、お猪口に日本酒を注いだ。
「「「乾杯っ。」」」
そのまま3人で飲んだ。
…一人で飲むのとはまた違う。吾はやっぱり何人かで飲んだ方が好きだな。そう思いながら妹紅の作ったつまみを摘みつつ、月を見上げた。
「この幻想郷に来て、どのぐらい経った?」
「…数えてないな。二年と少しか。」
「ふむ。ならば、もう随分と慣れてきた頃だな。」
そう言いながら慧音は酒を飲む。
…確かにな。ここ二年、現実とは全然違うほど、濃厚な二年だった。普通ならば、胃もたれしそうなくらいだ。
「…まぁ、吾の場合は恵まれた環境にいたのが大きいな。咲夜や、妹紅たちと出会った。それが一番良かったな。」
「ほぉ。酒の肴に惚気話か。」
「むっ…。そういうわけでは…。」
意地の悪いように微笑む慧音先生。
…少し恥ずかしい。すると慧音先生は大声をあげて、笑い、目から漏れた涙を指で拭った。
「悪い悪いっ…!!そんな真っ赤になるとは思わなかった。」
「むっ。そんなに真っ赤だろうか。」
「あぁ。林檎みたいに真っ赤だよ。ハッハッハッ!!」
…なんだか、新鮮な感じがする。
いつもは大人びている先生が今は童のように大口を開けて笑っている。まあ、イジられているのは吾の方だが…。
「…ふっ。先生、口元に。」
「おっ?」
つまみの胡麻味噌が慧音先生の口についていた。それを吾は指で拭ってやり、それを吾が舐める。
「…ふふ。」
「…っ…。」
流石の鉄の心の慧音先生も今のは恥ずかしかったのだろう。顔をリンゴのように真っ赤にし、お猪口で顔を隠すような仕草をした。全然隠れちゃいないが…。
「…そのっ…ありがとぅ…。」
「ん?あぁ。」
消え入りそうな声でそう言う慧音先生。…少し暑い。一口、酒を飲んで空を見上げるとまんまるの月に雲がかかっていた。
「むぅ…。慧音ばっかずるいぞっ!!」
「うぉっ!?」「も、妹紅っ!?」
ガバッと吾に対面で抱きつく形で妹紅が飛びついてきた。恐らく、相当、酔っているだろう。危うく、酒を落としそうになった。
「わらしもあいてしろぉっ!!」
「…ハハッ。いいぞ。…何して欲しい?」
「んっ。」
そう言って吾の方に頭を向ける妹紅。
頭を撫でろ、ということだろうな。吾はゴツゴツした自身の手で少し乱暴に頭を撫でる。すると、妹紅の口から「きゅ〜っ」と少し高めの満足そうな声が出た。
「ふふ。まるで親子のようだな。君たちは。」
「こんな大きな娘はいらん。…ただ、コイツとの娘は欲しいがな。」
「ふふっ。愛されているな、妹紅。」
…優しげな顔をして、妹紅の頭を撫でる慧音先生。なんで撫でるんだ?と言った様子で小首を傾げる妹紅。
「…降りてくれないか?」
「なんでだよぉ!!」
「…いや、その…。」
重いわけではない。断じて。
だが、妹紅の…胸の谷間に吾の顔が当たりそうで…。
「あ、あぁ…そういうことか…。」
慧音先生もわかってくれたようだ。
今の妹紅とは正面から抱き合っている状態に等しい。というか、それである。その為、このままだと慧音先生の前で胸に顔を押し付けられかねない。
「こら、妹紅。愈咫郎くんが困っているではないか。」
「ん〜?…わかった。」
聞き分けは良いようだな。
妹紅はよいしょっと吾の膝から降りて、トコトコと吾の横へ行き、吾の肩に頭を寄せてきた。ニコニコととても良い笑顔をしていた。
「…これは相当、酔いが回っているぞ。」
「酔ってないも〜ん。」
…嘘だな。顔を真っ赤にして、だいぶと呂律が回っていない。
「ひゅう〜♪ひゅう〜♪」
ご機嫌そうに鳴らない口笛を吹いている妹紅。
「どうした。偉くご機嫌じゃあないか。」
「えへへ。今、すっごく楽しい気分なの。なんでかなぁ〜。ユタといるかなかなぁ〜。」
「…ふっ。そうか。吾もお前といて楽しいよ。」
…そんなこと言われて嬉しくない人間はいない。吾はそんな彼女の頭を次は優しく撫でた。妹紅はこそばゆいのか、少し声を漏らしながらも満足そうに目を細めて、満足そうにしていた。
「…さて。」
つまみも食べ終わったし、だいぶと冷えてきた。
そろそろお開きにして、寝床に着くか。
「ほら、妹紅。寝るぞ?」
「んん〜…。運んでぇ〜。」
「…ったく。」
酔ったら甘えん坊になるのは、どこの女も同じか。吾は妹紅をお姫様抱っこで抱き上げて、中へと入ろうとする。
「ふふ。口ではなんとでも言えるね。顔が緩んでいるよ?」
「…むっ。そうなのか。…先生はどうするんだ?」
「…恋人たちの夜を邪魔するほど、野暮じゃないさ。」
じゃっと吾らに向かって手を振る慧音先生。
吾はふっとそんな先生に別れを告げる。妹紅は吾の腕の中で笑顔で手を振りかえしていた。
「さぁ、寝るぞ。」
「うん。」
少々うとうとしている妹紅をあらかじめ敷いていた布団に寝かせて、その横で寝転がる。…いつもは起きたら吾の服か何かを妹紅がキュッと掴んで寝るのだがそんなことはなく、数分も掛からずに眠ってしまった。吾はそんな彼女の寝顔を横から見て、瞼を閉じた。
…次の朝、妹紅は今日のことを思い出し、顔を真っ赤にして悶絶するのだが…まぁ、それはまた別の話である。
衣玖さんの話とか幽香の話とか…まだまだ書くことありますけど全然考えちゃいませんねw
地霊伝はだいぶ考えているので百話行ったら書きますw次は小悪魔かな?衣玖さんかな?ぱっちぇさんかな?
では次回。ではでは。