ミオに言われるがまま、ふたりで使っているベッドで彼女を待った。彼女の残り香を感じる場所で待つ時間には、初夜を迎える寸前のようにドキドキとしてしまっていた。
ミオとの情事はもう数えきれないぐらいに経験している。それなのに、いつまでも飽きる気配がないのは、彼女が持っている魅力に他ならないのだろう。
そわそわとしていると、一〇分も立たないうちに寝室のドアが開く。その先には、薄い黒のレースと白いフリルが可愛らしい、ベビードール風のランジェリーに身を包んだミオの姿があった。
「お、お待たせ……! あなたが好きそうな……え、えっちな下着をね、ちょっと買ってみたんだけど……! どうかな……似合うかなぁ……?」
恥じらいながら手を置いた胸は、その輪郭がはっきりと見えるほどに透けていた。先端部分の突起がぽっちりと浮いているうえに、レース地から乳輪の薄桃色が覗いている。
思わず喉を鳴らしてしまうほどに艶美な魅力を、たどたどしい言葉で必死に賞賛する。今日以上に、自分の語彙力の無さを呪ったことはなかった。
「そっか、そっか……! あなたが喜んでくれたなら……勇気出した甲斐があったな……えへへ……♪」
ミオは足をもじもじとさせながら、顔を真っ赤にしてはにかみ、嬉しそうにしてくれた。
ベビードール姿の恋人はこちらに近寄って、口笛を吹くように浅く唇を尖らせる。
キスを迫られると思って緊張したが、ミオはおでこをこつんと合わせるだけに留まった。
「……くすっ……♡ そんなに、うちと……ちゅう、したいの?」
間近で輝くシトリンのような瞳に、魂まで吸い込まれそうになる。何も答えられず、ただドギマギしていると……ミオはにんまりと口を歪めてから、触れるように、こちらの願いを叶えてくれていた。
その、ちょっとした唇同士の接触だけで心がむず痒くなって、身体中の力が抜けてしまった。
ミオは脱力した男の肉体を、そっと仰向けに押し倒す。
「んっ……ちゅ、むっ……ふむ、んっ……ちゅうっ……♡」
ミオは覆い被さるようにしてキスの雨を降らせてくる。作業的にならず、一つひとつの触れ合いに愛を込めてくれていた。
胸板に置いた手で、シャツをキュッと握り込んで、捕らえた獲物を逃さないように愛情の鎖を繋いでいる。その拘束は決して振り払えないもので、自分から不自由を望んでしまうほどに嬉しい繋がりだった。
「りゅぅ……む、ぅ……くちゅ、ぴちゅっ……んんー……♡」
ぬるり、と。熱い舌が入ってくる。粘膜をビクビクと震わせる官能的な快感が、脳に近い部分でしとやかな水音を響かせる。
「んっ……はう……っ……♡ ぅや、はふ……くちゅ、んみゅ……♡ んりゅぅ……るるん……んふぅ……♡」
唾液を躍らせるように舌肉を擦り合わせて、舌先で深いキスを捧げ合う。
曲線美が激しい肉体をケモノのようにくねらせて、ディープキスを重ねていく。
「んにゅう……は、あっ……♡ ちょ、っと……や、ぁんっ……くぷ、むぅっ……ふぅう……♡」
熱く燃えていく興奮を我慢できず、身体の動きに合わせて揺れる瑞々しい乳房を触ると、ミオは吐息を色っぽくとろけさせた。
ベビードールの生地は非常に薄くてすべすべしていた。おっぱいを生で触っているときのように、指先に肉感が絡み付く。
「ちゅ……は、あん……♡ もうっ……すけべ、なんだから……♡ 我慢しなきゃ、めっ、だよ……?♡」
キスに夢中になっていたミオは、むっとした表情――実際には口元がによによとしており、可愛さしかなかったのだが――を見せて、ぴちりと額を小突いてきた。
しかし、ミオの豊満に実った胸がぷるぷると腹面に当たってきていたのだ。甘い果実の誘引を受けて、触るのを我慢できる男など、この世にいるはずがない。
「うふふっ……♡ 我儘な駄々っ子ちゃん、なんだから……♡ それじゃあね、そろそろ……お着替え、しよっかねぇ♡」
ミオは手慣れた様子でこちらの衣服を脱がせて、あっという間にパンツ以外を剥ぎ取った。
その手際の良さは、識者が世の常識を語るようになめらかだった。
赤ん坊が母親に甘えることも、お洋服を脱がせてもらうことも、何もおかしくない。そう、言って聞かせるように。
ミオの迷いの無さと慈愛で満ちた微笑みが、こちらに気恥ずかしさを忘れさせて「これが普通のこと」だと思わせてくれる。
初めてエッチをしたときは、ギリギリながらもリードしていた側だったというのに……今では、ここまで骨抜きにされてしまった。
自分の心身が赤ん坊まで遡り、慈愛の微笑を浮かべる母を見上げる。口が勝手に、その少女を、ママと呼んでいた。
「ママがわかるんだねぇ……♪ そうだよ、うちがあなたのママだから……いーっぱい甘えていいんだよー……♡」
ミオの母性は完璧だった。一瞬の隙も、現実味も見せない。何も気にせず甘えられる、理想の時間を作ってくれていた。
顔を近づけてくれたミオを、本能のままに抱き寄せる。セクシーランジェリーから覗く谷間に顔を埋め、安心できる母の香りで鼻腔を満たす。
「ホントに、おっぱいが好きなんだねぇ……♡ いいよ……もっと、うちのおっぱい、欲しがってねぇ♡」
ミオの言葉が耳から入り、欠片のように残っていた理性をドロドロにとろけさせていく。もはや、赤ん坊に戻ることへの抵抗は一切なくなっていた。
ごろごろと乳房に甘えられる。怒られないどころか、「かわいいねぇ」と褒めてくれる。
甘すぎる夢にしか思えないのに、そのおっぱいの温もりも、上質なレース生地のすべすべ感も、確かに現実のものだった。