「愛してます。絶対に手放しませんし、逃しません。だからアインも、私がどこかへ行っちゃわないようにして下さい」
だから──と言葉を続ける前に、ギュッと強く抱き寄せられた。
「当たり前だ、と宣誓する。そして当方も、何度だって言おう。愛している。例え死が2人を分かつとも、絶対にアヤメを離さない」
毒のせいで弱った私の体が刻む小さな心音と、アインの刻む心音が重なり合って一体化していく。ここまで来て今更、自分の身体の小ささを実感させられたけど、もう止まらない。
改めて、真正面から抱き合うようにして。精一杯に、お互いがお互いのモノであることを主張して──
「私を、アインの物にして下さい。その証を、刻みつけて」
淫靡に、淫猥に、耳元で誘う言葉を口にした瞬間だった。ぽす、と余りにも呆気なくアヤメは押し倒された。
改めて、そういうことをする為に着替えた服装が月と星灯りに照らされる。
薄く身体のラインが見えてしまうほど、使い込まれた薄いワンピース。数少ないアヤメの持っている服であり、普段のしっかりとした服装と違ってあまりにも頼りない守り。今すぐにでも破れてしまいそうなその向こうには、素肌以外の何もない。
「あっ……」
自分が一体どんな誘い方をしたのか。そしてこれから何をされるのか、それをハッキリと理解して。アヤメの口から切なげな吐息が溢れた。
「済まないと、謝罪する。これ以上、我慢が出来そうにない」
アインの言葉に、こくんと小さくアヤメが頷いて。
これ以上の言葉は要らないと、アインの手がアヤメの頬に触れる。柔らかく温かい感触に、お互いが生きていることを実感して──
「ん……」
唇を重ね合わせた。軽く、啄むようなバードキス。ちゅ……ぴちゃ……と静かな夜に響く湿り気を含んだ音。
お互いの緊張と怯えを解きほぐすように、段々と口付けが強くなっていく。その度に段々と息が苦しくなって、唇の隙間から微かな喘ぎが漏れる。
遂に一線を超えてしまった背徳感と、これからの期待感が交じりあって、優しく心が溶けていく。
「はっ……ん、っ……ふ……」
段々と火照ってきた身体と、早鐘を打つようにトクントクンと刻まれる心臓の音。息を求めて僅かに開いた小さな口に、アインの舌が侵入する。
濡れた互いの舌先が触れ合う。抵抗するようにアヤメがアインの胸元に手を当てるが、力が入らない。入っていない。
いつも隣で、普段ずっと強く在り続けてきた少女の弱々しい抵抗は、もはや意味を成さずアインの興奮を掻き立てるだけだった。
「ふぁ、ん……ちゅ、っ……ん、ぅ……!」
絡めて来る舌の求めるような、貪るような動きは暴力的なまでにエスカレートしていく。
ほのかに甘さを持つざらりとした暖かさが絡み合い、生まれたそれが喉の奥へと流れ落ちて熱く脳を蕩していく。互いに互いを刻みつけるように、恍惚とした吐息を溢しながらもう止まらない。
「んっ……! ぁ……むっ、ぅ……ん……」
ちゅく、じゅく、と脳を犯していく水音に、理性が完全に焼き切れる。そうした中、無意識に動いたアインの手が、アヤメの胸元へと伸びた。
薄く、小さく、柔らかさも他人に劣る胸だ。幼い頃の栄養失調が原因のそれだが、指が動くたびに悩ましげな吐息をアヤメは漏らす。お互いを求め合い、貪りあって、刻みつけるように、想いと身体を重ねて合わせ続けていた。
「ぁ……」
どちらからということもなく、口付けを終えて。物足りなさ気に揺れる紺碧と灰色の瞳が、息すら触れそうな距離で見つめ合う。
乱れた息を整えようと呼吸をする度に、混ざり合った互いの唾液が糸を引き、アヤメの口元に垂れた所でぷつんと途切れる。
「アヤメ」
「いい、ですよ……元から捨てるつもりの服ですから。乱暴にして」
アヤメが心の底から優しい微笑みを浮かべて……直後、アインの手が胸元からワンピースを引き裂いた。
まるで悪漢に乱暴されたかのように、暴力的に夜気に晒される肢体。
小さな窪みを持つ腹部、微かに肋骨か浮かび、鎖骨がカーブを描く胸元。そこに鎮座するなだらかな双丘の頂点には、ピンと立つ桃色の蕾が晒されている。
ただ、その晒された素肌は胸元を除いて傷だらけだ。腕から肩口にかけては数え切れない火傷と切り傷の痕跡が、腹部には槍が貫通したことによる裂創痕が。既に透明な蜜が伝う太腿にも、ピンと伸びた足先までもが同様に、刃物で斬られた痕や魔法の痕跡がありありと残っていた。
「やっぱり、綺麗じゃない、ですよね……こんな身体」
「そんなことはないと否定する」
「ひぅっ……!?」
つつぅ……と、アインの指が一際大きな傷跡をなぞる。そのくすぐったい感覚にアヤメの口から、悲鳴にも似た声が出た。
「当方は、その全てを含めてアヤメを愛している」
それを、言葉だけでなく教えると言わんばかりに──胸に刺激が来た。
「ひゃ……あっ! ん……はっ……ぁ!」
優しく撫でるようにアインの指が胸元を滑る。そのもどかしい刺激に声を抑えられない、興奮がそのまま形になったような熱い吐息と理性の喘ぎが溢れていく。
「ん、ふ、ぅ……ん、んッ!?」
強く揉み解されるような胸の感覚に、溢れ出している声をキスで塞がれて。それでさえ耐え切れなさそうな快感なのに、頬に回された手が上から、指が滑り降りてくる。行き先は既に守るべき物が何もなく、愛撫の必要がないくらい蕩け切った秘所だった。
「ぁっ、あっ、や、ん、んぅ──」
未だ誰にも触れさせたことのない新雪のような場所に、無理矢理指が分け入ってくる。
駄目、だめ、あたまがおかしくなる。
未知の快楽に大きく呼吸が乱れ、空気を求めて開いた口は塞がれた。膣内部を淫靡に弄られる知らない感覚と、舌を絡め取られ蹂躙される口の中。そして胸から走る快楽の刺激に、ぐずぐずに脳が犯されていく。
「むっ、ぅ! んっ、ふうぅ、ん! ううう、ひぁ、あぁぁぁ、ん――んぅぅぅぅぅぅ!」
塞がれた口からなおも溢れた、くぐもった悲鳴。当たり前のように、すぐに限界が来た。
意識が真っ白に染まった。意識に反してピンもつま先が伸び、仰反るように身体が逸れる。ビクビクと小刻みに震える身体は、もうアヤメの物ではないような感覚さえしていた。
「はっ……はっ……へ、ぁ、は……」
思考が、ふわふわと浮いたようで戻ってこない。くたりと力の抜けた身体は、もうアインに抵抗すら出来ないことをアヤメに思い知らせていた。
火照った身体、上気した頬、蕩けた表情、まだ足りないと快楽に染まった瞳、乱雑に引き裂かれたワンピースも相まって、欲望のままに蹂躙したいとアインの胸中に野生の願望が湧き上がって来る。
犯したい、屈服させたい、壊して自分だけのものにしたい。そしてその欲望に抗えるだけの理性は、とうの昔に焼け落ちていた。
「……おそらく、痛いと、謝罪する」
「……らい、ょうぶ」
肩で息をしながら、呂律も回らない状態でアヤメが微笑む。耐え切れるはずがなかった。獣の欲望をそのままに、服を脱ぎ去ったアインがアヤメに覆い被さる。
そくして、きゅっと強くシーツを握って備えるアヤメに、1つキスを落として──
「──ッ!!」
痛くなるほど怒張しているアインの半身が、膣の中へと挿し込まれた。
「あ、ぎ……くぁ、ひ、ぃ……あ゛あ゛!」
締め付け押し潰すような圧力を掻き分けて、奥に奥にと進めていく。ケダモノのような声を漏らしながら、瞳の端に涙を浮かべて沈み込んでいく陰部を受け入れていく。
「はいっ、ちゃっ、た……」
自分の最奥まで到達したその感触に、訳もわからず言葉が漏れる。ひとつになっている。あつい。いたい。くるしい。しあわせ。散文のように散らかった思考のまま、全てを受け入れるようにアヤメが微笑んだ。
「もっとぉ……」
堪らないのは、アインの方だ。なけなしの理性を振り絞って動きを止めていたのに、そんなことをされたら止められない。
それでもアヤメの身体を気遣って、ゆっくりと、緩やかに腰を前後に動かし始めた。
「あっ、はぁ、ふぁっ、あ、やぁっ……!」
下腹部を突かれる度に、艶を持ったアヤメの声が響き渡る。搾り取るような締め付けにアインも余裕なんてものはない。気を抜けは吐き出してしまいそうな快楽に半ば飲まれながら、抽送は止まらない。
「あ、あぁッ! アイン! どこ、アイン!」
わからない。わからない。じぶんのからだじゃないみたい。あいん、あいん、どこ、はなさないで。焼き切れそうな快楽の波の中で、アヤメが両腕をアインの背中に回す。
「ふぁっ、んぅ、ちゅ……ん、んっ、はむ、んぅぅう!!」
たりない、たりない、心が叫ぶそのままに貪るような口付けを繰り返す。我慢ができないとアインが抱き締めるように胸を乳首をこねくり回せば、再び快楽のメーターが振り切れる。
「すき、すき……だいすき!」
涙を流しながら、喘ぎ声を抑えもせずに漏らし続け、降りることができない快楽の波に揉まれながらアヤメが叫ぶ。
「当方も……好きだ! 愛している!」
そして、とっくにアインも限界だった。今にも爆発しそうな熱さを必死に抑え込むのも、とうとう我慢の限界になる。
お互い限界の限界まで耐え、爆発するその寸前。アインもアヤメの身体を強く抱き返して──
「ぐっ……!」
「ん、んんッッッ!!」
悲鳴をあげる口を口で塞ぎつつ。アヤメの最奥に抉り込むように突き込まれた先、熱が爆発するように迸った。
「あぁぁ──あ、ぁ……ぁぁぁ……」
子宮に直接注ぎ込まれるような熱情に、絶頂に至った放心のままアヤメの身体が弛緩する。共に息を荒らげて、ああ、だけどまだ足りない。
もっと、もっと、お互いを刻み合うように。
体位が、逆転した。
これまでのアインが上でアヤメが下の正常位から、アヤメが上でアインが下の騎乗位へ。
「まだ……もっと……もっとぉ……!」
既に蕩け切った声で、千切れそうな意識を繋いだまま、放心状態にあるアインに跨ってアヤメが腰を動かし始めた。
それはたった今処女ではなくなった少女の、拙い動きでしかない。だがそれでも、射精したばかりで敏感な局部と微かに痙攣したままの膣の感触、普段の姿からは想像もつかないアヤメの姿はあまりにも扇情的が過ぎた。
「はぁ……はっ、きもち、いい、です、か……?」
「アヤメ、やめ……!」
ぐちゅぐちゅとお互いの精液と愛液が混ざり合った混合物が泡立たせながら、自分で生み出す快楽な耐え切れずに激しく喘ぎながら、いやらしく乱れていく。
「いや、で……んぅぅぅッ!!」
だがそんな余裕も、あくまで自分のペースでシているからこそ。伸びたアインの手が胸を揉み、下から打ちつけるように腰を動かされればすぐに理性ごと崩壊する。
「か……ぁ……!?!?!?」
そして2度目の限界が訪れる。
再び子宮に吐き出された熱いものに、弓なりに背筋を逸らしたアヤメが、くたりと崩れ落ちる。お互いの乱れた息が、玉のような汗が浮いたお互いの身体を冷やすように滑っていき……
「──っ!? にゃ、にゃんで、あいん!?」
傷ひとつないアヤメの白い胸元に、汗ばんだ胸にアインが噛み付いた。
濡れた柔肌を舐めとれば、汗のしょっぱさと同時に少女の甘い体臭が口腔と鼻腔を蹂躙する。悲鳴に近い喘ぎ声をBGMに舌先で桃色の蕾を刺激していれば、萎えたはずの半身が蘇ってくるのを感じる。
何度も何度も引きつるアヤメの身体に、落ち着いた筈の心が再び昂ってくる。そして──
「あっ、あ、か、ひゅ……まっ、ダメ……あいん、わたし、こわれ──あぁぁぁぁっ!!」
連続で迎え続けている絶頂に、後ろへ倒れかけるアヤメをアインが引き寄せる。そうして抱いたまま上半身を起こし、その身体を抱いて突き上げ始める。
横になることも、上も下もなく、座り込む形で向かい合ったまま愛し合う。抱き上げたアヤメの身体を上下に揺らし、道具のように扱われる感覚にアヤメの意識が沸騰する。
「あぁっ! あ……ひ、あ……ん、あん!」
完全に快楽に飲み込まれた艶かしい表情を見せられて、止まる男がいるはずもなかった。
「や、あ、ぁぁ! あ……ひぁぁぁ!!」
目の前で揺れる片方のみが残る獣耳を、躊躇うことなく口に含んだ。舌を這わせ、甘噛みし、言葉を直接囁いて、聴覚までもを犯し尽くしてていく。
「あ、あいん、きす、きす、ちゅーして!」
ぐちゃぐちゃに乱れた顔と言葉で、怯えるようにアヤメが懇願する。どこかへ行ってしまう、戻って来れなくなる。だから、だからと……断る理由もない。
お互いに、とうに意味ごと蕩け切ってしまったお互いの名前を呼びながら。一夜限りの快宴に再び身体を重ね合わせていく。
例え死を迎えてもお互いを忘れられないように、身体が動く限りずっとずっと、満たされることのない飢えが乾くまで。