──ここは東京の一角、私立
『俺はどこにでもいる高校生……』系列のモノローグで始まりそうな主人公っぽい連中とか、悪の組織とか、そういう連中ばっかりが在籍している謎の高校。だからこそ、4月1日には嘘のようなことも起きるのだ。
「パパ、ママ、行ってきまーす!」
朝の空気を切って、タッタッタッと軽快に少女が走る。真新しい黒地のセーラー服に映える強く緑がかった銀の髪が風に舞う。紺碧の目に朝日を受け、少し眩しそうにしながら
「おはよ、アイン。初めての高校だけど、今日まで元気だった?」
「休みの間もずっと一緒だったろうと否定する。当方とアヤメの家、隣だろう……?」
ぽーんと飛びつくような形のアヤメを受け止めたのは、灰色の髪に紫の瞳をした少年。アイン・ティアードロップ、ばりばりの帰国子女にして飛んできた天真爛漫な少女の彼氏でもあった。少し大きめの学ランが初々しさ満点で、アヤメはご満悦だ。
出会いは省略! 一目惚れからの熱烈コールでゴールインであった。
なおそれはそうと、単純に美少女とイケメンカップルだけあって学内でもそこそこ有名である。基本情報終わり!
「お前様達、毎朝毎朝よくもまあイチャつきおってからに。飽きぬのか?」
「それはもう! あとリィンもおはよ」
「うむ、おはようであるな」
朝から重度のイチャラブオーラを放つ2人に割って入ったのは、これまた顔面偏差値の高い少女。透き通るようなシルバーブロンドの髪に蒼い瞳を持ち、竜の角にも似た珊瑚の髪飾りをつけた人物だった。名前をリィン・M・D・ラーグルフリョゥトリムルン、がっちがちの王族だったりする。
「おはよう、リィン」
「うむ、皆変わりないようであるな。余はそれで満足だ」
彼女たち3人がつるむようになったのは、ほんの少し前の受験から。何となく意気投合したことがきっかけになる。絶対に違うはずなのに、兄妹のように息がぴったりだったのだ。同じクラスともあれば、運命的な何かを感じざるを得ない。
そんな彼女たちも高校1年、ちょっと意味不明な激動の1年を乗り越えて遊びたい盛りな新生活の始まりであった。
「ねえねえアイン、今日の授業って何があったっけ?」
「始業式だけで基本は終わりだと否定する」
「そうだっけ? じゃあさ、午後どっかに遊びに行かない? リィンも一緒に!」
「うむ、良いぞ。余も時間は空いておる」
アインに背負われながら、獣耳と尻尾が有ればパタパタと振っていそうな雰囲気でアヤメが言葉を弾ませる。それに冷静にアインが答え、仕方がないとばかりにリィンが追従する。どこまでも平和な、日常の一幕だった。
「であれば余、レモネード店に寄ってみたい。確か近くに開店しておったであろう?」
「あ〜……確か、去年タピオカ屋さんだったところだっけ。いいね! アインはどうする?」
「どうせなら、みんなで何か美味しいお店を探しておきたいと表明する」
「帰りに食べていけるとこ探そっか!」
高校生活、それは光の如く駆け抜ける青き春。
つまり既にワクワクが止まらない。中学よりは自由な時間は増えるし、きっと色々な楽しいことが待っているに違いなかった。
「あ、でもお金とかどうしよ? 私はお小遣い結構残ってるけど」
「当方も問題ない、が少々心許ないと否定する」
「ふむ……ならば余が全部払おう。よきに計らえ?」
「「ははぁ〜!」」
マネー、イズ、パワー。
ロイヤル子供部屋もとい、リアルガチお姫様は格が違っていた。
「そういえば、お前様達は部活は決めたのか?」
「んー、私はまだ。アインは?」
「当方もまだ決めていない。バイトでもしようかとは考えているが」
「余は別に、返してくれぬでも構わぬのだが」
「金銭関係はきっちりするべきだと忠言する」
「生真面目であるのう」
キラキラ、きらきら、光り輝く眩しい思い出はここから始まったばかり。空は青く澄み渡って、3人の前途を祝福しているようだった。