※この作品はR-18です。

辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい   作:名もなきrlkn

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UMA

 

 

 更に数日がたった。雨音の回復は順調で食事は多少消化に良いものが多くなるよう気を使っているが、ほぼ普通の物を食べさせている。食事量はまだ少ないが、体相応には食べている。味覚が鈍いので食事も特別おいしく感じられてはいないのだろうが仕方ない、今は食感が面白い物を好んでいるように見える。

 

 肉体的にもだいぶマシになり、艶を失っていた髪は少しずつ本来の銀の輝きを取り戻し、骨と皮ばかりだった身体もうっすらと肉がついてきている。このまま順調にいけばもうあと1週間もすればポーションの使用にも耐えられる程度になるだろう。

 

 逆に俺は少し疲れていた。雨音が来てから寝ずに看病していたから、ではない。今更その程度で肉体機能が低下する事はない。では何が原因かといえば雨音に乞われて昔の話をしていたためだ。雨音が起きている時間はおもにお喋りして過ごすのだが、経験の乏しい雨音が語れる事は少なく、主に俺が語る事になる。そうして語るうちに今世の事だけでなく前世の事も語っていたのだが、改めて自分の過去を振り返るというのは中々堪えるものだ。別段悲しみに満ちた壮絶な過去という訳でもないが、それなりに波乱万丈な人生ではあった。思い出せば楽しい事も多いのだが、それに類する程度には苦しい思い出もある。しかし雨音の過去を先に聞いてしまっている以上俺が話さないというのもフェアではない。果たして雨音が理解できたかは定かではないが、自らの人生を語って聞かせるのは予想以上に精神的負担を感じるものだった。

 

 しばらくそんな風に過ごしていたが、そろそろ執務もこなさなければならなくなった。殆どの仕事はロイドを始め部下に任せてしまっているが、その確認や重要事項の裁可はしなければならない。ここ最近の街の発展は著しく、そちらからの陳情も回ってきているだろう。早めに処理しなければ後が詰まって開発が遅れるばかりだ。

 

 だがしかし、それに待ったをかける人物が居た。雨音である。

 

 

 

「行ってはダメですご主人様。ご主人様は言いました、私の好きにしてよいし、好きに話してもよいと。だから行っちゃだめです、私と一緒にいてください」

 

 確かに言ったな。だがそれを全て聞き入れるとは言っていない!

 

「……そんなっ!」

 

 いや、そんなに驚く事に逆に俺が驚いてるが。そもそも俺がご主人様なんだから奴隷であるお前にその行動を制限する権利はない

 

「でもご主人様はこの前言ってました。じんるいはみなびょーどーであり、そこに上も下もない、みなびょーどーにむかちなんだって」

 

 俺そんなこと言った??

 

 

 

 言ったかもしれん。どうにも話をしながらどんな意味なのか聞かれてあちこち話が飛びまくるのでまるで関係ない話に発展する事もしばしばあった。その時は流れで色々喋っていたので、何の話をして何の話をしていないかなど詳しく覚えていない。

 

 そうして会話を重ねていく中で雨音はどんどん新しい知識を覚えている。まぁまだ単語の詳しい意味は把握できていないせいかおかしな内容になる事が多いが、なんとなく言いたい事はわかる。早めに文字を教えて本を読ませてやりたいところだ。

 

 その後も本人にとっては丁々発止のやり取りを重ね、結局俺が折れる事になった。最終的には骨も砕けよと言わんばかりに抱き着いて離れなくなったのでもうそのまま連れていく事にしたのだ。こいつ見かけによらずパワー系である。

 

 

 

 片腕に雨音を乗せたまま別邸を出て本邸へ向かう。すでに日も高く上っており、すれ違う使用人達は一様にぎょっとした表情を見せた後に挨拶をしてくる。まぁ気持ちはわかるよ。気にせず職務に励んでくれ。

 

 久しぶりに外に出たためか、雨音は珍しそうにきょろきょろとあたりを見ている。どの程度見えているのかはわからないが、おおよその輪郭程度は捉えられるのだろうか。出てくる際に静かにしている事という約束を守っているらしく、ここ最近は常であった質問は飛んでこない。こういう所は聞き訳が良いのになんで少しお留守番する事ができないのか、これがわからない。

 

 

 

 執務室に付くとちょうどロイドが書類をまとめている所だった。決済待ちの書類はうずたかく積まれ、やる前から気持ちを萎えさせる。

 

 

 

「おはようございます、クリス様。ちょうど良かった、そろそろお呼びしようか迷っていましたので」

 

 おう、おはよう。まぁそうだろうと思ってな。でも今来なきゃよかったと後悔してるところだよ

 

「それでより面倒な目にあうのはご自分でしょうに。それで、そちらの少女が噂の?」

 

 どんな噂かは怖いから聞かないが、まぁ俺が買ってきた奴隷だ。名前は雨音という。雨音、こいつはロイドだ、挨拶しておけ

 

「……ご主人様の奴隷で雨音と申します、よろしくお願いします」

 

「これはご丁寧にどうも、私はロイドです。主にクリス様の補佐をしております。よろしくお願いしますね」

 

 

 

 雨音はおずおずと、ロイドは人好きのする笑顔を浮かべて挨拶を交わしていた。

 

 ロイドは少し腰を曲げ、雨音に視線を合わせている。その声音からは奴隷を下に見るような色は無く、むしろ客を扱うような丁寧さだ。その声に雨音も少し安心したのか、肩の力が抜けたようだ。

 

 

 

「ですがお嬢様を連れていらっしゃるとは驚きました。申し付けて下されば書類は別邸までお持ちいたしましたのに」

 

 いや、それはしなくていい。館からの重要書類持ち出しを禁止した奴がそれを破らせてたんじゃ、ルールの意味なんてなくなるだろう。それとなんでお嬢呼びよ?普通に名前でいいぞ

 

「確かに、その通りですね。出過ぎた事を申しました。名前についてはそうですね、ではアマネさんとお呼びしましょう。アマネさんもそれでよろしいでしょうか」

 

「……はい、ロイドさん」

 

 

 

 何を思ってかは知らないが、ロイドも雨音には気を配ってくれるようだ。世間の風潮としては奴隷に厳しいのが一般的だ。領主である俺の奴隷である以上は明確に見下すような事はないと思っていたが、好意的にみられる事もないだろうと予想していた。しかし思い返せばここに来る途中で会った使用人達も雨音を珍しい物を見る目ではあったが、そこに悪感情は無かったように思う。あるいはウォルダーの流したであろう噂とやらが関係していそうだが、あまり積極的に内容を聞きたいとも思えないのは、脳裏に笑うウォルダーがちらつくせいか。

 

 その後の政務は滞りなく進んだ。書類の数は多かったが殆どが印を押すだけで済むものばかりであり、ある程度判断が必要なものに関してもそれに関する資料が細かく添付されており、改めて何かを指示することなくそのまま裁可が可能だった。数点改善指定箇所と内容を添えて許可を出していく。

 

 その最中も雨音は静かだった。見えないだろうに興味深そうに書類を眺めてみたり、じっとペンの動きを眺めてみたり、体に添えられている手にじゃれついてみたり、ロイドの用意したホットミルクを飲んでみたり。暇だからと駄々をこねるような事もなく、今はおとなしく寝ている。この様子なら仕事を溜めないように雨音を連れて執務をこなしても問題ないかもしれない。数が少なければその分短時間で済む。

 

 

 

 書類も残り数枚という所で、その嘆願書は出てきた。表題はレース開催の嘆願となっているが、なんだろうか。

 

 

 

 なぁロイド、レース開催についての書類が混じってるけどこれはそっちで処理可能な奴だろう、なんでこっちに混じってるんだ?

 

「あぁそれですね。それはレースにクリス様も出走してほしいと、うまむす――」

 

 そーーーーい!!それ以上はいけない。いいかロイド、前にも言ったが彼女達は馬人族だ。うまむ〇めではない、間違えるな

 

「最初にクリス様が言い出したのではないですか。それに彼女達もそっちのほうが可愛いと言ってすでに自称していますよ、うま〇すめ」

 

 おいバカ止めろ、サ〇ゲに知られたら消されるぞ。雨音は大声だしてスマンな、なんでもないから寝てていい

 

 

 

 

 

 う〇むすめ、もとい馬人族は獣人族の士族の一派だ。この世界で狩猟民族的な生活を送っている。当初その話を聞いた時はよくあるケンタウロス的なのを想像していたのだが、実際に居たのは少女の身体に馬の耳と尻尾が申し訳程度に付いたまんま〇まむすめだった。全力で突っ込みを入れてしまった俺は別に悪くない。

 

 彼女たちは獣人族の中でも肉体的に優れていたが、種族的に女性しか生まれないという特徴を持っていた。当然子を残すためには番となるオスが必要な訳で、遊牧民でもある彼女たちは定期的に他種族の村などを襲い男を誘拐していった。彼女たちに強い血を求める、という本能が無いではなかったが、管理するには弱い相手の方が都合が良い。そうすると種族的に貧弱で繁殖力の高いオスムスコ、もとい人間族の男がお手軽でねらい目だった。

 そしてある時うちの領内の村の一つが狙われた。その時たまたま視察のためにピエールとともに村を回っていたのは、彼女たちにとって不運だったろうか。略奪しに来た一団なぞ普段なら問答無用で皆殺しコースなのだが、襲ってきた彼女達は見目麗しい〇まむすめなのである。心の中で一瞬葛藤したが、ヘルゲン領内ではまだ略奪してないからセーフ判定となり、そのまま全員を生け捕りにした。

 

 

 

 ちょうど人手不足だった事もあり彼女達の持つ力は重宝した。その力の強さをかって建築の手伝いをさせたり、酪農をやらせてみればどれもそつなくこなす。しかも見た目が良いから労働者に大人気で現場の士気もあがると良い事ずくめだ。いや、彼女たちを連れてきて暫くはエディルナ家でその生活を面倒みてやっていたのだが、たった数十人で我が家のエンゲル係数を危険な領域にまで加速させたあのバカげた食事量だけはいただけない。全員オグリかスペかというほど食うのだから困る。領の農業改革が成功していなければ内側から食いつくされていたかもしれない。

 余談だが、この世界には普通の馬もいる。酪農で牛や山羊の他に労働力として馬も育てているのだが、意思の疎通もできるらしくとても重宝している。たまに馬に乗った馬人族や、仔馬を抱いて走る馬人族や、馬と馬人族の二頭立てで走る辻馬車が居たりとウマのゲシュタルトが崩壊しそうである。

 

 

 

 一見そのまま街の暮らしに溶け込めるかと思った馬人族だが、一つ問題があった。彼女達はその可憐な見た目と裏腹に闘争本能が強いのだ。むやみやたらと暴力を振るう事はないのだが、沸点が低いのか喧嘩はザラで、逆に定期的に喧嘩しないと鬱憤がたまっていくらしく威圧感を振りまいてしまう。おそらくこれも彼女たちが狩猟民族として一か所に留まらなかった原因の一つだろう。せっかく上手くいきそうだったのにこれはたまらないと、街人達は領主である俺にどうにかならないか訴えてきた。連れてきた本人である俺もこれには頭を悩ませ、そうだレースしようと思いついた。

 

 思いつけば後は早い、すぐに街のはずれにレース場を一つ建築した。コロシアム一丁上がりだ。芝もなければゲートもない、簡素なレース場と観客席だけだ。もっと人手があれば公共事業として斡旋できたのだが仕方ない、余裕ができたら内装整えるために仕事を出せばいいだろう。ともあれ場は用意した、後は実際に彼女達を走らせてみてうまく熱を発散させる事ができるかどうかだ。

 

 そして結果は言うまでもないだろう、彼女たちは走る事に、競走する事に熱中した。今までも草原を走り、速さを競う事はあったようだが、こうして人数を定め、レギュレーションを決め、その中で誰が一番かを競い合うという事は初めてだったようだ。しばらくは仕事も忘れて毎日走りまくり、流石に見かねて俺が蹴り飛ばして利用時間を決め、彼女たちの闘争本能はレースという舞台に集中した。そのかいあってか普段の生活はすこぶる落ち着いたものとなり、件の問題はとりあえずの解決を迎えた。

 

 だが当然ここで終わらせるつもりはなかった。だって俺はウィニングライブ見たいし。

 

 

 

 そこから俺は更に奔走した。街一番の楽団に頼み込み楽曲を作り、音響魔道具を使って設備を用意。馬人族には歌と踊りを教え込み、今後は観客を入れて勝者を称えるのだと言えば彼女たちはより熱心になった。また街にはお触れを出し、これをケイバと称してレースの順位を予想する公営賭博とする旨を発表した。

 

 生活が安定し多少自由な金を持ち始めた平民たちが裏で集まって賭博をしているのを知っていたのだ。それをことさら強く取り締まるつもりも無かったが、それが広がり切る前に公営賭博を広めて領に金を落とさせようと思ったのだ。それにあまり無茶なレートで身を崩す者が多く出ては困る。賭けの上限を指定することでそこら辺をある程度コントロールできるようにしたかった。そのうち裏町の首領みたいなのも出てくるのだろうが、あまり早くに力を付けられても面倒くさいからね。

 

 そうして迎えた初の公共レース。朝から始まり全8レースを予定し、最終レースの後には馬人族による特別な踊りが見られるとして、コロシアムには街の住人全員押しかけているのではないかと思うほど人が集まった。ちょっとお前ら集まりすぎだろ、仕事はどうした。祭りの日に仕事なんてしてらんない?いや別に祭りではないんだが……似たようなものか。

 

 ともあれ予想以上の客入りに事前に準備していたスタッフも大混乱の中、馬人族達のレースは開催された。そして、その走りに、その戦いに、その輝きに、その歌に、その踊りに、押し寄せた観客全てが熱狂した。それは観客だけでなく、走っていた馬人族達にとっても同じだった。自分たちの走りにこんなにも多くの人たちが熱中し、声援を送り、一喜一憂する。そして何より、レースの後のウィニングライブ。各レースの勝者8名だけが立てるセンターサークル。そこで浴びる事のできる歓声は、彼女たちにとって正しく麻薬であっただろう。そのレースの熱狂はレースが終わってもしばらく覚める事は無かった。

 

 

 熱狂する馬人族や住民達と同じくして、領主館も熱に沸いていた。公営賭博、ぼろ儲けだったのだ。もちろん事前準備や勝者への賞金などでコストはかかったが、それらを含めても余裕の黒字だ。馬人族の食事代だってペイできる。レース後のウィニングライブのチケットの販売もうちなので、正しく濡れ手に粟と言える。現状では領内の金が回っているだけだが、いずれ領外から人を呼び込む事ができれば外貨の獲得にもつながるだろう。馬人族様様である。

 

 

 

 その後、街の運営に与える影響が大きいとしてレースの開催は1ヶ月に一度とし、定期的に開催する事にした。回数を重ねる毎に開催する側も参加する側も慣れてきて、半年もすると月に一度の恒例行事として楽しまれるようになった。そして更に半年して、レースを開始してからちょうど1年。開催一周年を記念した特別レースを開催することにした。1年のレースの中で優秀な成績を収めた者だけが参加する事の出来るレース、タウラス杯を開催したのだ。なお大会の名前に他意はない。

 

 そうしていつも以上に気合を入れる馬人族と、その熱に充てられた観客たちが見守る中、特別枠で出走していた俺が優勝した。10馬身差以上を付けての圧勝である。その後のウィニングライブでも完璧な振り付けでうま〇ょい伝説を歌いきってやった。チューした時に巻き起こった観客席からの熱い罵詈雑言とブーイングの嵐と周囲で踊る馬人族達の冷たい視線は今でも忘れる事はできない思い出だ。

 

 

 

 

 

 その後も通常レースは定期開催していたし、年1回の記念レースも行っていた。当然俺は最初の一回しか出ていない。住民達に親しんでもらおうとちょっとしたお茶目心で出てみたんだが、しばらくは街では何処を歩いても白い目で見られたものだ。

 

 

 

 しかしなんでまた出走要請なんて出してくるんだ。また俺のうまぴょ〇伝説が見たいのかね

 

「彼女達にも人間族に負けたままではいられないというプライドがあるのでしょう。クリス様を人間の範疇に含めているあたり、彼女達もまだまだ新参と言わざるを言えませんね」

 

 彼女たちを使って遠まわしにディスってくるのやめない?まぁなんにせよ却下だ、音速も突破できないようじゃまだ早いと伝えておいてくれ

 

「そういう所ですよ」

 

 

 

 不許可のボックスに放り入れ残りの書類も片してしまう。後は特に大きな案件もなく、つつがなく政務は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




評価、お気に入り並びに誤字報告ありがとうございます。
お気に入り件数も気が付けば700を超えていました。始めた当初は100くらいいければいいなと思っていたのですが、まさかの1000が見えてきそうな気配です。それだけ多くの方に楽しんでいただけていると思うと嬉しい限りです。ここまできたら1000目指して頑張りたいと思います。
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