※この作品はR-18です。

辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい   作:名もなきrlkn

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黄金の鉄の塊

 

 

 

 領主の仕事に決められた休日というものはない。やらねばならない事は多くあり、偶発的に発生する仕事もあるので休日を決めても結局その日に仕事をしなくてはならない事もある。

 だが裁量も大きいので自由にできる時間というのも多い。領の立て直しに奔走していた数年前ならまだしも、今では実務の殆どを部下に任せその確認をする程度。

 緊急事態に関しても激動の時期に様々経験しており、それを元にした対応マニュアルがあるのでそうそう慌てる事もない。正直直接裁可を下しているものに関しても、その殆どが手直しも必要ないのだ。

 ロイドに家紋入りの印を放り投げてしまえばぶっちゃけ俺は要らないくらいだ。それこそ領内でドラゴンの群れが暴れまわるような事にならない限りは。

 

 つまり気分が乗らない時は執務を抜け出して街を遊び歩いてもいいし、個人的に頑張ったなと思ったら次の日は休んでも良いのだ。

 これはもう目標だったスローライフ的生活と言えるレベルになっているのだが、色々と自分で頑張った結果今では箱庭ゲーのような感覚で自分の領の成長を楽しむ事ができている。

 あまり無茶な事をしているとその内王国内乱編とかが始まってしまいそうなのでやらないが、とりあえず少しちょっかいをかけられたぐらいで揺らぐことのない程度には盤石にしておきたい。

 これから先穀物類の余剰生産物や魔領から取れる魔石や素材を輸出しはじめるようになれば、今そのジャンルのシェアを握っている領主に睨まれるのは確実だろう。現状外に頼れる筋が無い以上、しっかりと足元を固めてから進出していきたいところだ。

 近いうちに私兵である兵士隊の拡充は進めておきたい所である。ベルタ砦から引き抜くわけにもいかないし、領内を見回る衛兵の数もまだ少ない。色々と手を回して募集はしているものの、やはり立地が悪いのか反響は芳しくない。

 幸い前線に冒険者が増えて来ているのでスカウトするのもありか。粗暴な奴らが多いのは確かだが、中には光るものを持つ者もいる。上手く餌で吊り上げる事ができれば、躾は兵士の訓練に放り込めばどうにかなるはずだ。ちょっと性格が変わってしまう可能性は否めないが。

 

 

 

 部屋のソファに座りながらつらつらとそんな事を考えていると、外から雨音が帰ってきた。今日は昼過までメイド長に付いて仕事を教わると言っていたが、どうやら終わったようだ。

 ちなみに俺は今日は休みである。ここしばらく惰性で仕事をしていたので、一旦思考をリセットして今後必要になるものを洗い出ししておきたかったのだ。

 兵士の補充の事も含め、後日ロイドやウォルダーと話をして実際の行動計画を作る事にしよう。仕事ではロイド達と、プライベートでは雨音と常に一緒だったので、一人で思考に耽るのも良い気分転換になった。

 

 雨音と共に昼食を済ませ、さて午後は何をしようかと考えて居ると雨音にお話を聞かせてほしいとせがまれた。すっかり文字も読める様になった雨音は最近暇になればすっかり本の虫と化していたのだが、こうして俺に話をせがんでくることも間々ある。

 今日はどうやらそういう気分だったようだ。

 

 しかし話と言っても誰かに聞かせて面白いエピソードなどそうそうない。俺は比較的波乱万丈な人生を歩んできた自覚はあるが、誰かに聞かせて面白い話となると流石に限られてくる。

 今までにもせがまれる度に話をしてきたのでぶっちゃけネタもないのだが、楽しそうにこちらの話を待つ雨音を見るとネタが無いからと断るのも極まりが悪い。

 

 そこで今回は先人の知恵を借りるとしよう。

 

 

 

 よし、では今日は日本昔話を聞かせてやろう

 

「昔話、ですか?歴史のお話でしょうか」

 

 いや、これは俺の前世の故郷に伝わる、まぁおとぎ話という奴だな

 

「おとぎ話!聞いたことがありますが、まだ読んだことはないので楽しみです」

 

 あー、そういえば書庫には小難しい本ばっかりであんまり娯楽本はなかったからな

 

 

 

 思い返してみれば書庫にあるのは学術書や実用書、怪しい自著伝が多く子供向けの本と言うのは見た覚えがない。辞書を片手に文句も言わず読んでいたので気にしていなかったが、その内児童向けの本も探してやろう。

 この世界の本でそういった本はまだ読んだことがないので俺も少し興味がある。

 

 とはいえ今はこちらが優先だ。話はメジャーなところで桃太郎でいいだろうか。ぶっちゃけ読んだのは遠い昔なので内容何てうろ覚えもいい所なのだが、大筋が合っていれば細かい所はアドリブでいいだろう。

 原本が無いので俺の話した桃太郎がこの世界のオリジナルなのだ(強弁)

 

 

 

 ではいくぞ。昔々ある所にお爺さんとお婆さんがいました。ある日お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯へ行きました

 

「ご主人様、流石にお爺さんとお婆さん一人だけで山や川へ行くのは危険ではないでしょうか。事故や遭難の危険だけでなく、凶暴な動物や魔物の出現も予想できます。可能であれば護衛を雇うか、少なくとも複数人で行動し安全を確保すべきなのでは」

 

 もっともな指摘だな。だがこの世界に魔物は居な……いや鬼が居たな。まぁ住んでる所は人のテリトリーでな、比較的そういった危険は少なかったんだ。それにこの二人は長年その場所で暮らしてきた住民だからな、変化等は事前に察知して危険には近寄らないように注意していたんだろう

 

「なるほど、そちらの世界での人間種は強靭だったのですね。ご主人様のような方が居たなら納得です」

 

 

 

 こちらの世界の住民からすればもっともな疑問だろう。山や森、大きな川等は魔物のテリトリーだ。たいした準備もなく、ましてや老人一人で行くなんてただの身投げでしかないからな。

 ちなみに俺みたいなのがいっぱい居たわけじゃないからな?

 

 

 

 さて続きだ。川でお婆さんが洗濯をしていると、どうしたことでしょう川上からどんぶらこっこどんぶらこっこと一抱えほどありそうな大きな桃が流れてきました。驚いたお婆さんですが、これは大変だと喜んで桃を持って家へと帰りました

 

「ご主人様、流石に不自然に大きな桃を持ち帰るのは不用心が過ぎるのではないでしょうか。それになぜ桃なのでしょう、リンゴやバナナではいけないのですか?」

 

 確かにその通りだが、この世界では桃はとても特別な食べ物だったんだよ。味が良いのはもちろん、栄養も豊富で食べれば寿命が延びるなんて話もあるほどにな。仙桃なんて物もあって、神様や仙人が好んで食べていたなんて逸話もある。封神演義で太公望の好物だったから間違いない。それに雨音も好きだろ、桃

 

「はい!桃はとっても甘くて、美味しくて、凄くつよいです」

 

 そんな桃のめっちゃ大きいのがあったら、怪しくてもテンション上がって持って帰ってしまうと思わないか

 

「言われてみれば確かに、私も興奮して持って帰ってしまうかもしれません……なるほど、桃なら仕方ないです。納得しました」

 

 それは何よりだ。で続きだが。お婆さんはお爺さんが返ってくるのを待つと大きな桃を見せました。お爺さんもこれには驚きましたが、さっそく桃を割ってみることにしました。するとどうでしょう、なんと大きな桃の中から愛くるしい赤ん坊が出てきたのです

 

「ご主人様、どうして赤ん坊は」

 

 待て、待ちたまえ雨音くん。気になるのは仕方ないがこれではいっこうに話が進まない、切の良い所で時間を設けるので質疑はその時受け付ける

 

「あ、ごめんなさいです……」

 

 

 

 急速に知識を付けてきている雨音だが、色々な事を知れば知るほど疑問も多くなってくるもので、最近は見る事聞く事知りたがるので中々大変である。

 可能な限りは答えているし、わからない事は一緒に調べてみたりしているが、流石に全てに答えてやることも出来ない。そのせいもあってとにかく本にかじりついているようだが、そのうち学者にでもなりそうな勢いである。

 

 そんな調子で途中途中で説明を挟み、時に蘊蓄を披露し、時にでっち上げの嘘を語り、長々と語り続けいよいよクライマックスシーンとなった。

 

 

 

 

 

 激戦を潜り抜けた桃太郎は、ついに玉座で待つ鬼の王の元へとたどり着きました。

 

 

 くっくっく、桃太郎よよくぞここまで来れたと誉めてやろう。だがそれも結局は無駄な努力よ。この鬼王キブツジ様の前に人間など余りに無力!矮小にして脆弱、精々が鬱陶しい虫けらにすぎん!配下の鬼たちですら我が持つ力に比べれば圧倒的に劣るというのに、それを相手にすら貴様はすでに満身創痍の上に武器も失っている。その上頼みの綱であった貴様の仲間、雉、犬、猿……後は蟹と狐と狸と兎と亀と鶴と鼠と鶴と雀と、ええい動物園でも開くつもりか!とにかく貴様の仲間たちもすでに居らぬ!まさかそれで勝てる気でいるのではあるまいな。ん?どうしたやけに静かではないか。もしやここまで来て力の差に気付き怖じ気づいたのではあるまいな。ここまで我を煩わせたのだ、そんな興ざめな事はしてくれるなよ。

 

 

 

 鬼の王がゆっくりと近付いているのを感じながら、桃太郎は静かに息を整え返しました。

 

 

 

 本当につよいやつは強さを口で説明したりはしないからな口で説明するくらいならおれは牙をむくだろうなおれパンチングマシンで100とか普通に出すし

 

 ふん、吠えよるわ!もうよい、さっさと死ぬがよい!

 

 

 

 鬼の王はその凄まじい身体能力を発揮し、桃太郎との距離を一瞬で縮めてしまいます。しかし、桃太郎は自分でも不思議な程に落ち着いており、恐るべき速度で迫る鬼の王の姿が酷くゆっくりとしたものにさえ感じていました。その意識ははっきりと鬼の王をとらえていながら、静かな湖面のように感じられる心の中へと向かっていました。

 

 

 

 ――感謝するぜ、お前と出会えたこれまでの全てに!

 

 

 

 その動きは余りに流麗であり、動きはいっそゆっくりにすら見えました。しかしその実、鬼の王を上回る速度で型をなします。

 

 両手の人差し指から小指までを半円に曲げ、親指は外側へと逸らせながら胸の前で指を合わせる。その後、ただのなんの捻りもない、しかし一切の無駄のない正拳突きを放つ。その拳は音を置き去りにして、あるいは光にさえ届かんとする速度で、鬼の王の心臓を打ち抜きました。

 

 

 

 ――――っな、馬鹿、な。こんなことがあって……

 

 地獄へと先に逝け、敵とはいえ俺も些か殺し過ぎた。カカッとバックステッポですぐに追いつくからよ

 

 

 

 

 心臓を中心に胴体に大穴を開けられた鬼の王は崩れ落ち、桃太郎は満身創痍のままそのまま立ち尽くします。

 

 しばし後、鬼の配下達が玉座に駆け付けると、そこには半ば塵と化し崩れていく鬼の王と、天へと拳を突き上げたまま事切れた桃太郎の亡骸がありました。

 

 こうして王を始め四天王等のトップを失った鬼たちは統率を失い、散発的な戦いは続くものの人類は大きな脅威を退ける事に成功したのでした。桃太郎やその仲間達はついぞ帰ってくることはありませんでしたが、人々は彼らを大いに讃え、人類圏の各地で平和を祝う祭りが執り行われました。

 

 彼らは恐怖を耐え忍び、ようやく訪れた平和をかみしめて喜ぶのでした。それが一時の事であるのも知らず。この時すでに、新たな脅威の種は芽吹いていた。

 

 めでたしめでたし

 

 

 

 

 と、これで桃太郎は終わりだな。すっかり長くなってしまったが面白かったか?

 

「はい、素晴らしいお話でした。特に四天王との闘いにおいて、反目しあっていた猿と蟹、狸と兎が悪態をつきながらも共闘する場面では胸が熱くなりました。それに流石にもう出ないだろうと思っていた時に出てきた6人目の四天王にはとても驚かされました。あと、桃太郎のグラットンソードが砕かれた時などもう駄目だと思いましたが、まさかお爺さんから教わっていた武術の理をあんな時に閃くなんて――」

 

 

 

 よほど気に入ってくれたのだろう、それとそれととあれこれ感想を言ってくれる様子は興奮気味でとても楽しそうだ。正直だいぶ初めの方で脱線し、アドリブにアドリブを重ね、おぼろげに覚えている昔話や読んだ漫画の内容が混ざり合いながら語り続け、自分でも何の話をしていたかわからなくなっていたのだが。

 

 最終的にどうにか纏められたのでよしとしよう。

 

 

 

 余談であるがこのでっち上げ昔話、気に入りすぎた雨音が屋敷で他の人間に話回り、興味をもったものが多かったので仕方なく語り聞かせる事になる。

 その際普通に話すのも芸が無いので挿絵を描いて紙芝居風にしてやり、真・桃太郎列伝~鬼が島死闘編~として語ってやった所大好評を博す。娯楽の少ない世界であるので、物珍しいものには皆目が無いらしかった。

 無意味に続きを匂わせる閉め方をしてしまったせいで続きを考えるはめになり、この後~地獄極楽驚天動地編~や~裏武道会偉人最強列伝編~、~逆襲のキブツジ編~、~反逆の金太郎編~等々、思いつくままに語り聞かせ、どうせここまでやったのだからと本として出してみた所これが大流行。王国の一大ムーブメントとなり劇団により舞台化までされる事とになり、まさかそこまで大事になるとは思わず大いに困惑した。

 流石にパクりというかオマージュというか、胸を張って自分の作品と言える物ではない。これでロイヤリティ(一応制度はあったらしい)を貰う気にもならず、更なるパクり防止のために登録はするものの利用料はほぼ無くし、その分本の値段を抑える事にした。

 すると流行している上に安価ときて、普段なら本など買わない層まで買い始める。都市部では識字率はそれなりに高いので言うに及ばず、小さな村々ですら読み聞かせの教材として利用し、将来的に王国全域に広く深く親しまれ、それこそ元となった物語のように知れ渡る結果となった。まさかこのような結果になるとは、リハクではないが完全に予想外だった。

 

 

 

 

 

 

 

 さて雨音、本日からは基礎訓練に加えて戦闘訓練を実施していく!

 

「はい、ご主人様!」

 

 うむ、今後訓練中に関しては師匠と呼ぶように!

 

「はい、お師匠様!」

 

 

 

 訓練場の一角、運動着を来て綺麗な敬礼をする雨音を前に俺は訓練の次段階に入った事を説明していく。

 

 

 

 この訓練元々は身体能力回復のための運動程度の気持ちでいたのだが、雨音のその特殊な体質のせいか回復どころか驚異的な速度でその身体能力は上昇していった。

 そうなれば将来的に他者よりも圧倒的な能力を制御するためにも、その出生から高い確率でトラブルに巻き込まれるであろう事からも訓練の本格化は必要だったと言える。

 しかもこれが本人はもちろん、途中から一緒に訓練していた兵士達を年端もいかぬ少女に負ける訳にはいかぬとそのやる気を煽る結果となり、私兵隊全体の実力向上につながったのは思わぬ幸運だった。

 

 最初の頃は100mも走れば息を切らしていたのが、みるみるうちにその距離を伸ばし、今では重たい装備を担いだ状態で20km以上を走ってなお余裕を見せているのだから大したものだ。

 それでいて見た目はそこいらの少女と変わらぬ体格なのだから、周りで一緒に訓練している者からすれば詐欺のようである。

 もっともその素直な性格と愛らしい見た目から嫌われるような事はないようだが。

 普通なら気味悪がりそうなものだがと少し悩んだのだが、それを見ていたロイドに「クリス様が一際手塩にかけて育てているのを見ている訳ですから、きっと同類なんだろうと思われているのでしょう」と言われ納得した。

 それはそれとして兵士共の訓練を3倍に増やしてやったが。お前らも死ぬ気でやれば俺みたいになれるからよ!手伝ってやんよ!

 

 とにかくすでに身体能力だけでいえば平均的な兵士を上回る程になっている。そろそろ次のステップに進み基本的な戦闘技能を身に着けるべきだろう。

 

 

 

 という訳で早速訓練、とはいかずまずは座学である。

 

 雨音自身、恐らく自分の能力の高さをよく分かっていないだろう。近くで比べられる相手は領主館に雇われる程の一流の兵士達であり、身体能力的にはほぼ互角であるものの技術という面では遠く及ばない。

 そもそも一流兵士並の身体能力があることがおかしいのだが、同年代の遊び相手もいないので比較対象が居ないのだ。強いていえばメイドの中に年齢の近い者はいるが、一緒にお茶をすることはあっても走り回るような事はない。

 

 まずはそこら辺の説明をしていく。素の身体能力だけならば人間族でいえば既に上位、肉体的に強靭とは言えないエルフ族の中でもそうだろう。

 肉体的に優れた獣人族と比較してもそうそう劣るものではない。今後魔力を解放し、身体強化されるようになれば魔力を使える獣人族すらも凌駕する事ができるはずだ。

 

 そこで雨音が不思議そうな顔をしていたが、そういえば本人に魔力の説明はしていなかったのでついでに教えておく。今魔力が無いのは無意識に封印しているからであり、今後の訓練によって解放する予定であること。

 その魔力量は尋常ではない高さである事。解放後も十分と判断できる魔力操作ができるようになるまでは魔力放出できないよう制限をかける事等。これは不慮の事故を防ぐためにも必要な措置だ。

 ちょっとした暴走で街が滅びかねない以上、まずは制御のしやすい身体強化関係で経験を積ませる事にした。

 

 そして訓練はまず魔力解放の前に基礎を固めていく。

 解放後は体に満ちる魔力の作用で強化魔法を使わずともそれなりに基礎能力があがる。それならば解放後の能力に合わせて訓練した方が身体能力の差に惑わずに済むのではという話なのだが、雨音の場合はその暴力的なまでの魔力量と素の能力の高さもあり、解放しただけで基礎能力が上がりすぎてしまう可能性が高いのだ。それこそ、一流と呼べる兵士達をスペックだけで押しきれてしまう程に。

 仮に戦う相手が人種だけならそれでもいいかもしれないが、この世にはまさしく化け物たるモンスターがいる。

 なのでまずは素の能力だけで兵士達と共に鍛え、同格から格上相手での戦いの経験を積んで欲しい。技術は長命種である以上後付けでどうとでもなるが、自分が強ければ強い程格上との戦いというのは経験出来ないものだ。

 命を懸けた戦いになってしまったとして、格上との戦闘経験の有無がその勝敗を分けるかもしれない。そう考えればもっとも成長に与するであろう今、その経験を積ませてやりたい。

 

 最後に、ここまで言っておいてなんだが最終的に近接戦闘能力は必要なくなるだろう事も伝えておく。

 そもそも雨音の体格を考えれば格闘戦における適正は低いと言わざるを得ない。如何に基本スペックが高くとも、恐らくそれほど伸びないであろう身長によるリーチの不足と、同じく圧倒的な体重の軽さ。

 これはモンスター相手でなくとも不利となる要素だ。もちろん装備や技量で補える事ではあるのだが、ならそのリソースを他に回した方が効率は良い。

 そもそもが類稀な魔力量を持っているのだ、戦闘能力だけをみれば魔法技術を磨いたほうが圧倒的に強くなる。体格における不利など関係ないし、元々魔法の得意なエルフ族であるのでその才能も期待できるだろう。

 

 ならばなぜ近接戦闘を学ばせようというのかと言えば、やはり対応力を持っていて欲しいからというのが大きい。

 強力な魔法使いであれ近接戦闘はやはり不得手な者が多く、いざ接近された時に切れる札があるかないかというのは大事だ。

 魔法も極まればそれすらどうにかするだろうが、その高みへ至るのにどれだけ時間がかかるかはわからない。

 ならば最低限でも近接戦闘能力を持っておいたほうが安心だろうという考えに至った訳だ。

 

 

 

 そういった考えを出来るだけかみ砕いて説明する。当人にとってもある程度先の展望が分かっていた方が目標も持ちやすいだろう。

 また本人が最初から魔法型に進みたいというのならそれでも良いと思っている。一応雨音の事を俺なりに考えた末のプランであるが、本人のヤル気があるに越したことはないしな。

 

 そもそも戦闘技能なんて要らないと言われてしまうと困るのだが、そこはこちらの意思を酌んでくれたらしく、予定通り近接戦闘から学んでいくという答えを得られた。

 よし、これから雨音育成計画が本格始動だ。素質は極上、性格は従順、育成に置いてこれ程の好条件はそうあるまい。どこまで伸びるかはわからないが、いずれ高みを目指し始めた時のために、その礎となるよう鍛えていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価ありがとうございます。

いやぁ、時間が足りない。キャンサーが終わったと思ったらすぐにレオの告知とは……その上コヤンはまさかのバスターサポだしブレイバーの実装まで来ててんやわんやです。一日30時間くらい欲しい。
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