辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい 作:名もなきrlkn
本格的な戦闘訓練の開始にともない、まずは装備を整える事にする。とはいえ本格的な物ではなく、兵士の訓練用装備を雨音の体躯に調整したものだ。
とりあえず皮鎧をベースに一部を鉄製にして防御力を増しておく。基本は要所を守るのみで、間節などは動きを阻害しないように最低限だ。一通り合わせてみるが、サイズ調整してあるはずなのに着られている感がはんぱない。
そもそも見た目線の細い美少女が武骨な装備を纏っているというのはどうにも違和感が拭えない。本人のどこかポケッとした表情も余計に拍車をかけている。そのうち着慣れてくれば違うのだろうか。
本人は割と気に入ったようで腕を広げて見せてきて感想を聞きたいような感じだが、曖昧にほほ笑む事でごまかし残りの装備も渡していく。
まずは盾、大きさは控えめでバックラーより一回り大きい程度だが、しっかりとした鉄製で実際の大きさよりも頼もしく見える。扱う本人の身体が小さいので、このサイズでも防御に支障はないだろう。
そして武器はメイスにした。片手剣と迷ったのだが、比較的扱いが容易であり整備も楽だ。本腰を入れて剣術を教えるつもりもないので、ならば体重の軽さを武器の質量で補える鈍器が良いだろうと思ったのだ。
今後魔力を解放し、身体強化も出来るようになればその膂力はオーガを子ども扱いできる程になるだろう。そんな馬鹿力でたいした技量も無しに剣を振るっては、その度に刃を潰してしまうのが落ちだろうし、そもそも武器が耐えられるかという問題もある。その点鈍器ならとにかく頑丈さだけを追求して作ればそうそう破損する事もないだろう。美少女脳筋戦士の誕生だ。
いつか身の丈を超える巨大武器を使わせたい。
装備はまず盾を利き腕で持たせる。取っ手を持つだけの方法と、取っ手に加え腕にベルトで固定する方法がとれるようになっている。どちらも利点はあるが基本は腕に固定する方針だ。
利き腕に武器を持つのではないのか、と雨音に聞かれるが今回指導する方針としてはまず防御ありきになる。なので盾の保持を重視するためこちらを利き腕に持たせるのだ。
これが同じ盾と剣を扱う戦い方だとして、盾はあくまで補助的に攻撃を捌く程度に使うのであれば剣を利き腕で持つべきだろう。その方が技の精密さや威力なども上がるはずで、効率よく敵を倒すことが出来る。
だが雨音に教えるのは、まず相手の攻撃を受ける、はじく、いなす等して態勢を崩し、その後攻撃を行うという方法だ。理想としては相手の攻撃の届かない場所から一方的に攻撃する事だが、近接武器を扱う以上それは難しい。
そして互いに接近してしまえばリーチに劣る雨音は先制攻撃を受ける事になる。なのでその攻撃を確実に捌くために盾とその保持が必要になる。
この時に利き腕でないほうで持っていると、逆に盾を弾かれたり握力が弱まるのが速かったりと不利を被る可能性が高くなるのだ。また場合によっては盾で攻撃する場面もあるので、やはりその時に力が強い方が有利だ。モンハンも盾は右手で持ってるしね。
後は武器を持たせて腰だめに構えさせる。この時半身になって盾を持つ側を前に、盾は片口で構えさせる。腰は落として重心を低く、歩幅は肩幅より少し広く取り安定させる。まずはこの構えを基本として覚えさせ、後は相手の攻撃によって対応をひたすら反復練習だ。
盾を持っているとはいえ、余り正面から攻撃を受けてはいけない。そのまま受ければどうしたって衝撃でダメージを受けるし、体重の軽さ故吹き飛ばされて態勢を崩されてしまう。
可能な限り攻撃はいなすか、はじくかして相手の姿勢を崩させる。後は大振りの攻撃をしてきた場合はそのまま突進してシールドチャージを食らわせてやるのもいい。
懐に入る事ができれば身長の低さを利点に出来るし、相手を倒す事ができればそのままとどめも狙える。
どの角度で受ければ攻撃をいなせるのか、どういった攻撃なら弾きやすいのか、どの程度隙があれば体当たりしていけるのか、これを説明しながら何度もパターンを変えて練習する。
攻撃はまず基本的に相手の足を狙う。頭や首はまず届かないので、相手の機動力を削るのが優先だ。例え一撃で殺す事はできなくとも、移動できなくさせればその脅威度は圧倒的に下がる。
まずは足を砕いてから、その後確実に頭を潰せばいい。なので武器の扱い自体はそこまで練度を要さないのだが、上手く遠心力を使って武器の重さを使いつつ、その上で態勢を崩さないようにというのはやはり難しい。
基本的には小振りの攻撃でダメージの蓄積をして、相手が大きく態勢を崩した時に大振りの一撃を見舞うのが定石になるだろうか。その時の掛け声が「ハイスラー!」なのは某桃太郎の影響か……
基本の動きを覚えたら、後はひたすらその反復訓練だ。相手は俺だけでなく、兵士達の戦闘訓練にも参加させて様々なパターンを経験させる。特に1対1だけでなく、複数人で1人を、1人で複数人を相手にするパターン、集団対集団でのパターンは中々やりたくても訓練できるものではない。
積んできた経験が違うので中々勝てないようだが、それでもメキメキとその実力を上げているのがわかる。
最初は訓練とはいえ少女に武器を向ける事を躊躇っていた兵士達だが、雨音の真剣な様子といくらやられてもへこたれない根性を見て甘い気持ちを捨てたようだ。
そもそもすぐに手を抜いてかかれるような相手ではなくなったし、プライドもあっただろう。初めて雨音に負けた兵士は相当凹んでおり、その後猛烈な訓練をしていた。全体的に良い発破になっただろう。
できればモンスター相手の訓練もさせたかったが、流石に兵士たちの見回りに付いていかせる訳にもいかない。とりあえずモンスター戦を想定した対処方を教え、それまでの動きから応用させる形で覚えさせた。ここら辺はまぁ実戦で立ち回りを見つつ指導していく事にしよう。
そうして暫く訓練を続け型は十分と判断すれば、いよいよ雨音の魔力を起こす訓練に入る。
ではこれより、魔力解放訓練を行う!
「はい、お師匠様。よろしくお願いします!」
とはいえこれはそれ程難しい事ではない、気持ちを楽にして行うように
「わかりました、雨音頑張ります!」
やはり雨音も魔法に憧れはあったのか、本人もやる気十分といった様子だ。
まずは準備のため俺が地面に胡坐をかき、その上に雨音を同じように座らせた。
さて、潜在魔力を顕在化させるというのは、実はさほど難しくない。そこにあるというのを自覚してしまえばいいだけだ。だがこの世界では最初からあるのが分かっている顕在化した魔力ばかりを重視し、内に秘められた潜在魔力に気付かぬ者が多い。
この原因は恐らく魔法技術がまだまだ未発達な分野である事と、単純に潜在魔力がある事に気付いているものが少数だからだろう。王都の魔法院に所属している者なら知っていそうだが、少なくとも世間一般的に知られてはいないようだ。
また潜在魔力を認識する事自体がそもそも難しいというのもある。身体の内にあるものではあるが、人体というのは一つの宇宙に等しい。その広大な宇宙の中に隠された魔力を探そうというのだから、簡単な事ではない。
この世界には無い天人合一思想を元に発達した魔法理論であるため、そこに行きつき実践出来るようになるにはまだ長い年月が必要だろう。宇宙と人体への深い理解と、世界と視座をともにする程の瞑想が必要になるからだ。
それらが更に深々度へ達すれば
とはいえ今回はそれを認識することの出来る俺がいるので問題はない。魔力を巡らせ、意識を導き、そこにある力を自覚させるだけだ。
右手には右手を、左手には左手を伸ばしその手を包む。力を抜いてこちらへと身体を預けさせ、目を瞑らせ意識を集中させる。これが全くの他人同士だと警戒心や緊張から干渉しにくかったりするのだが、雨音からそれらを殆ど感じる事はない。
むしろ全くのゼロだ。信頼していると言えば聞こえは良いが、ここまでくると完全に自分の全てを預け切っているような状態であり、ほんの匙加減一つで肉体にも精神にも多大な影響を及ぼせてしまう。
それに対して喜べばいいのか呆れればいいのか悩むところだが、まずは雑念を入れずにやる事を済ませてしまうとしよう。
まず雨音の身体のすみずみまで魔力を巡らせていく。本来であれば他人の魔力との干渉による摩擦で痛みやかゆみ、場合によっては快楽等の反応があるのだが、完全にこちらを受け入れている事で全く抵抗がなく、そのためなんの反応もない。
それにより意識を肉体反応に割かれないので、没入は思ったよりも簡単に済みそうだ。
右手から魔力を入れ、全身を巡って左手から戻ってくる。普段自分の身体のみで行っている魔力循環を、雨音の身体を通しながら行う。雨音の持つ固有の波長を感じ、それに合わせて魔力を変化。
後は雨音の意識を抱き、その肉体の全てを、臓器や血管、細胞の一つまで巡っていく。そうして眠っていた魔力を呼び覚まし、共に循環していく。
最初は小さかったそれらも、少しずつ重なり、交わり、結い合わさり、やがて大きな光の濁流となりその体を駆け巡る。
実際の時間としては1時間程度のはずだが、精神的にはそれこそ宇宙の全てを旅したような感覚を得て覚醒する。胸の中に納まる少女の身体に変化は無いというのに、その発する存在感は全くの別物。まるで一つの惑星のように、全てを引き付ける重力を感じさせるようだ。
少しして雨音も覚醒したのだろう、少し身じろぎした後に不思議そうに体を眺めている。
「これが、魔力ですか。なんだか自分の身体ではないようです……」
実際細胞レベルで活性化してるからな、まずはこのまま魔力循環の練習して力を掌握する所からだ。っと、先に封をしておくぞ
雨音の細い手首をつかみ、そのまま封印術式を組む。封印と言っても抑え込むものではなく、外部へ放出する動きをした時に内部に流れを変える物で、肉体強化や装備に魔力を纏わせる程度なら大丈夫なはずだ。
その後はしばらくそのままの態勢で魔力循環の練習を行った。流石エルフというべきか魔力の扱いはすぐに上手くなり、圧迫感を感じさせるほどだった魔力もしっかりと内に納められるようになったのは僥倖だ。
数日は力加減に悩むだろうと思っていたのだが、この様子なら案外早く慣れてしまいそうだ。後は上昇した身体能力での動作訓練と、戦闘挙動と同時に魔力操作を行えるよう練習。それに加え強化魔法の慣熟訓練もこなしたら、いよいよ実戦デビューといこうか。
感想、評価ならびに誤字報告ありがとうございます。
ファンタジーといえば戦闘訓練!という訳でトレーニング風景。トレーニングしてるのは雨音と兵士達だけど……
今回はちょっと短くなってしまったので月曜日にもう一話くらい上げたい所存にござる