※この作品はR-18です。

辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい   作:名もなきrlkn

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ギルドにおけるテンプレ展開

 

 雨音の魔力を解放してから数日、すっかり力加減にも慣れた様子の雨音を連れてアルトの冒険者ギルドへと向かっていた。そう、ベルタではなくアルトの街のだ。ちなみにまだ実戦デビューは出来ていない。

 

 冒険者ギルドはある程度大きな街であればたいていの場所にあるものなのだが、割と最近までここアルトにはなかった。これは単純な話で冒険者の需要が少なく、ギルドの支店を設置するメリットが薄かったためだ。

 たまに依頼があっても半日ほど歩けば着いてしまうベルタの街にあったので、そちらで事足りていたのだ。

 

 

 

 そもそもこの世界における冒険者とは何か。

 事の起こりは今よりもはるか昔、大きな国が出来る以前の小国乱立時代にまで遡る。今でこそある程度の版図を広げている人類種であるが、当時はまだ国といっても大きな士族の寄り合い程度の物だった。

 彼らは自らの国の版図を広げるため、この世界の大部分を占める魔領へと果敢に挑んでいた。正確には挑むというよりも滅ぼされないように必死に抗っていたというのが正しいのかもしれないが。

 この頑張りは未だに広大な土地を魔領に占有されながらも王国を始めいくつかの国家が崩壊せずに地盤を固めていることから見ても成功したと言える。

 

 その開拓の先駆けとなり、魔領に跋扈する魔獣や魔物を討伐し、新たな資源を見つけ、人類に様々な恩恵をもらたしたのが冒険者と言われる者たちの前身であるとされている。

 彼らは人類種に生まれるある種のイレギュラー的な存在であり、少数または単独で強大な魔物を討滅せしめた人類の英雄とも呼べる存在だ。

 当然その数は少数であり、小国一つが抱えていては十全に活躍する事が出来ない。そう考えた英雄の一人が国という枠組みを超えてそうした英雄たちをサポートする組織を立ち上げた。それが今の冒険者ギルドである。

 

 しかしいかに英雄が活躍し強大な魔物を討伐したとしても、そこを支配できるのは一時的なものだ。

 力は劣っても別の魔物たちがすぐにその支配域を埋めてしまう。しかし英雄はより強力な魔物を狩るために一か所に留まり続ける事は出来ない。

 そこで英雄が平定した地を実効支配するための後詰を送り込み、再び魔物が跋扈するのを防いだのだ。後にこの後詰も込みでいわゆる冒険者と呼ばれるようになっていった。

 

 やがて国が大きくなり、合併を繰り返し、人類の勢力圏が安定してくる頃になると段々と冒険者という職もその形を変えていった。

 

 もともと人類の生存権を広げるための存在であった冒険者は、それに憧れる人間も多かった。誰だって子供心に英雄と呼ばれる存在に憧れるし、それに近付きたいと思うものだ。

 しかし、現実は非常だ。一騎当千たる英雄と呼ばれる存在にはもちろん、その後詰になる事さえ簡単には叶わない。最前線で戦う彼らと肩を並べようというのなら、一流の腕前が無くてはならないのだ。

 未熟な者がいれば単純にそいつが死ぬだけでは済まない、必ず周りにも被害が出るし最悪の場合せっかく確保した土地を放棄しなくてはならなくなる。

 

 そういった事情もあり、人類が安定していくほど冒険者未満の者たちが増えてくるようになった。だがそんな彼らにも役割が与えられた。冒険者ギルドは彼らに最前線付近での雑用を任せていったのだ。

 最前線で戦うには足りないとはいえ彼らも貴重な戦う力を持った戦力だ、前線を更に安定させるための拠点作り、他から仕入れる食材や前線から産出する素材の護衛などやってほしい事はいくらでもある。

 その中で腕を磨き、最前線へと躍り出て華々しい活躍を遂げた者もいた。そうして様々な変化を重ねつつ、今の冒険者ギルドの形へと落ち着いていったのだ。

 

 では今の冒険者はどうなっているのかといえば、かつてとはだいぶかけ離れた形になってきている。

 昔の様に新たな領土を広げるために未開の地へ冒険へ赴く、なんて者はほぼいない。魔物を狩って素材を売ることで生計を立てたり、間引きを行い安全圏の確保を手伝う事で報酬を得る、後はクエストという形で入る依頼をこなすことで対価を得ると言うのが一般的だ。

 最近では市街の中で完結するような日雇い労働者のような側面も持っている。

 冒険者を目指す者たちも手に職を持たない食い詰め者達が仕方なく、といった形でなるものが多く、質の低下が問題視されている。

 

 これに対し冒険者ギルドもランク制度というのを導入し、ランクが高くなった者には様々な特典を受けられるよう便宜を図ったり、ある程度の補助政策も行っているようだ。

 その内容は多岐にわたり、今でも高ランクの冒険者と言うのは憧れの的であるが、現状の低ランク冒険者を見るに目的を達成できているかと言うと首をかしげざるを得ない。

 まぁ国家に縛られないなどという大きすぎる権限を持つ巨大組織だ、内部も一枚岩ではないだろうしそう簡単な事ではないのだろうが。

 

 冒険者でおなじみのこのランクだが、この世界では金属の名前で分けられ、その名前の金属で出来たプレートを身分証として支給される。

 ランクは下からカッパー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリルとなる。

 

 カッパーは駆け出し冒険者だ。まだ海の物とも山の物とも知れぬ有象無象であり、冒険者ギルドに登録はされるが身分の保証等はされない。

 ブロンズは下級冒険者だ。カッパー級の依頼をこなし、きちんと納税していると昇格できる。これになるとギルドから身分保障も受けられ他の街に行った時等に通行税の割引を受けられたりするようになる。

 シルバーになれば一人前とみなされる。ブロンズ級の依頼をこなし、ギルドから課せられる昇格試験を合格する必要がある。このランクになれば有能な人材であるとして通行税等は基本的に免除され、ギルドと提携している宿などで割引を受けられる。

 ゴールドとなれば一流とされ、なれるのは冒険者の中でも上澄みだけだ。シルバーランクとして実績を積み、ギルドや国から発行される達成困難な依頼を複数こなす事で昇格できる。ここまでくると出入国すらほぼ制限は受けず、貴族お抱えの私兵として重用されたりもする。平民からすればあこがれの的だろう。

 プラチナランクは現在ギルド全体でも数えるほどしかいない。カッパーからゴールドまではPT単位での昇格が許されるが、プラチナランクは個人での昇格となり、求められるのは戦闘能力のみという点も他とは異なる点だ。かつての英雄級の実力を持った者のみが成る事ができ、もっぱら危険区域にある貴重な素材の確保や魔領開拓における脅威の排除を行う。実力さえ認められればカッパーランクからですら昇格できるが、ギルドや国から潤沢な支援を受けられる代わりに大きく自由を制限される事になる。その点を嫌って実力的にはプラチナに成れるが昇格しないという者もいるらしい。

 最後のミスリルランクに関しては栄誉称号のようなものだ。ランク制度が導入されてから適用されたのは片手で数えられる程度であり、その規定も人類史に名を残す偉業を達成したものとされとても曖昧だ。わかりやすい所でいえば王都に襲来した大型のドラゴンを単独で討伐した冒険者がこれにあたる。まぁ国家レベルの危機を救ったらもらえる可能性があるという事なのだろうが、そもそもそんなチャンスがそうあるはずもなく、現状最高位はゴールドと言っていいだろう。

 

 ちなみに俺もプレートを持っている。ランクはブロンズだ。冒険者として活動するには十分だし、シルバー以上になると指名依頼の対象となったりして面倒なのだ。遂行可能な依頼であり、大した理由もなく何度も断ると資格を剥奪されることもある。

 指名依頼なんてそうあるものではないのだが、たまに息抜きで冒険者ごっこをしたいだけなので面倒を抱える必要もないだろう。

 

 

 

 大雑把な説明を雨音にしていれば目的の建物が見えてきた。まだ建築されたばかりなので真新しい建物だ。ベルタに建てた物に比べれば見劣りするが、中々に立派な外観だ。

 

 急にギルドの支店が建ったのには理由がある。街の経済活性化により仕事が増え、日雇い労働者の需要が増えた事が一つ。ベルタはじめ領内の村へ行く商人が護衛を欲した事が一つ、そして一番は俺がギルドとの折衝でわざわざベルタまで行くのが面倒だったからだ。

 最後に関しては貴族なんだから館に呼び寄せれば済む話ではあるが、俺が飛んだ方が圧倒的に早いので無駄な時間を使いたくない時はこちらから赴いていたのだ。自分の領内にかんしてはもう貴族の面子とか今更取り繕う気もないのでやりたい放題である。最初は小言を言っていたロイドも今では快く黙認してくれている。

 

 今回ギルドへは雨音の冒険者登録をするのが目的だ。とりあえず先に登録だけしておいて、後日ベルタで依頼を受けつつ実戦経験を積む予定だ。

 アルト周辺は兵士隊の巡回である程度魔物や魔獣は駆逐されている。たまに魔力溜まりから魔物が発生することもあるが頻度は高くなく、それらを探し回るくらいならベルタまで足を延ばしてついでに冒険者ごっこもやろうと思いついた訳だ。

 

 ギルドの両開きのドアを開け中へ入る。そこそこ広いエントランスの中心にクエストボードが立てられており、その周りを冒険者達がかこっている。

 それほど人数は多くないが、数名それなりに熟練そうな手合いも見かける。アルトで満足のいく依頼があるとも思えないので、恐らくベルタに行く途中に立ち寄っただけだろう。なんとなしに観察しながら奥のカウンターへと向かう。

 割と領内では突飛な事をする領主として有名だが、冒険者として活動する際は簡単に変装して冒険者クリスとして活動している。中には気付いている者もいるだろうが、今の所騒ぎになるような事にはなっていない。

 

 受付カウンターまであと少し、といった所で横にいたはずの雨音が居ない事に気付いた。探してみれば初めて来る場所で好奇心を抑えられなかったのだろう、あちこち興味深げに眺めて周っていた。

 すると先ほどまでクエストボードを見ていた男たちが三人、雨音の方に近寄っていくではないか。その三人は入ってくる時に見かけた熟練者であり、胸元には銀のプレートがぶら下がっている。

 

 これはあれか、お前みたいなガキが来るにははえーんだよ的な展開か。俺の時は見た目の問題なのか全然絡まれないどころか目を逸らされていたのだが、やはり年端もいかぬ少女がこんな所にくればこういうテンプレ展開になるのか。

 ぶっちゃけ実力的にも今の雨音の方が強いのだが、魔力を抑え込んでいる雨音に威圧感のようなものはない。実力差に気付けなくてもしかたないだろう。助けに入るか迷ったが、雨音がどう対処するかも気になったので見守る事にする。

 

 すると三人の中でも代表なのだろう、大きな面傷のあるスキンヘッドの男が声を上げた。

 

 

 

「おう嬢ちゃん、こんな所になんの用だ。ここは子供の遊び場じゃないんだ、用が無いんなら帰りな」

 

「いいえ、雨音は用があって参りました。今日は冒険者登録をします」

 

「嬢ちゃんみたいながきんちょが冒険者登録だぁ?しかもお前、奴隷だろう」

 

「はい、雨音はご主人様の奴隷です!」

 

 

 

 男は雨音の首輪が奴隷用のものだと気付いたのだろう。怪訝そうな声を上げるが、なぜか雨音はそれに得意げに答えている。

 たぶんあれは本人的には首輪を自慢気に見せびらかしているのだと思われる。雨音的にあの首輪は格好良いらしい。

 

 

 

 雨音の首輪だが、もともと奴隷商で付けられていた物に関しては屋敷に連れ帰った後に破壊してあった。

 隷属魔法のかけられたそれは付けているだけで多少だが負担もかかっていたからだ。

 その後も特に首輪など付けるつもりもなかったのだが、先日雨音と市場に遊びに行った時の事だ。せっかく来たのだからと何か好きな物を買ってやろうと話をしたところ、持ってきたのが今付けている首輪だった。しかも獣人族の奴隷に着けるようなゴッツイ奴だ。

 当然反対した。

 もっと髪飾りとかリボンとか腕輪とか、アクセサリーにしても可愛いのがいくらでもあるだろうと。100歩譲って首輪にしても、チョーカーみたいなのがあるだろうと。

 しかし雨音は頑として譲らず、この格好良いのがいいのだと主張する。ついには「ご主人様は何でも雨音の好きな物を買ってくれるって言いました!」と涙目で言ってくる始末。

 泣く子供と女の涙には勝てないと言うが、そのダブルパンチではどうしようもない。渋々買ってやるとその上付けろとまで言ってくる。全てを諦めて言う通りにしてやれば、本人はすこぶるご機嫌になったが周囲からは白い目で見られたものだ。

 その後屋敷に帰ればメイド長はじめとした従者全員に汚物を見るような目で蔑まれ、しばらくの間俺だけお茶の代わりに白湯が出てくることとなった。あの、僕領主……いえなんでもないっす。

 

 

 

 それを見て何を思ったのか、男は膝を折ると雨音に視線を合わせた。

 

 

 

「嬢ちゃん、悪い事は言わねぇ。今すぐ役所に行って保護してもらえ、何なら俺らが付き添ってもいいし、不安ならギルドの職員にかけあってやる。もしこのまま冒険者登録なんてしちまったら、お前そのご主人様とやらに肉盾にされて死んじまうぞ」

 

「ふぇ、肉盾、ですか?たしかに雨音は盾を使いますが」

 

「やっぱりな、いいか嬢ちゃんお前は良いように言いくるめられてるんだ。嬢ちゃんみたいなちびがモンスターの攻撃受けられるはずがねえ、二日と持たず死んじまう。幸いここの領主様は話のわかるお方だって噂だ、役所に逃げ込めばしっかり対応してくださるはずだ」

 

「えっと、確かに領主様は素晴らしい方ですけど……」

 

 

 

 あ、なんか変な方向に話が向かってるぞこれ。あのおっさんチンピラどころかめちゃくちゃ常識人じゃねーか。というか傍から見たら確かにそうみられてもおかしくない訳で、俺ってばめちゃめちゃゲスな奴ポジションじゃない?

 主人公に退治されてエルフ奴隷奪われるテンプレ悪役ポジションだコレ。

 

 いやしかしこんな怖い顏のおっさんが主人公とか認めんぞ。せめてイケメンの少年連れて来いや。

 何はともあれ誤解を解かねば、このままでは何もしてないのに悪評が広まってしまう。

 

 

 

 おっと、それ以上人の悪口を言うのは止めてもらおうか。どうやらうちの雨音が迷惑をかけたようだが、何も問題はないので君たちの気遣いは無用だよ

 

「ふん、お前がこいつのご主人様って奴か。ブロンズのくせに随分と身なりが良いようだが、どっかのボンボンか。ランク上げのためか知らねーが、わざわざこんなガキを盾にするしかないなんて程度が知れるぜ。どうせ奴隷を使うにしてもまともな戦闘奴隷を連れてくるんだな」

 

 それこそ要らぬ世話という奴だよ。俺はこの子をただの奴隷として使い潰すようなつもりはない

 

「そうです、雨音はただの奴隷ではないのです。身も心もご主人様に捧げた所有物なのです!」

 

「ほう、口先は随分と上手いようだなぁ……」

 

 

 

 雨音くん、ややこしくなるからちょっと黙ってようね?

 

 無視して雨音を連れて行こうにも厄介な事に男を挟んで反対側だ、ついでに他二人も位置を変えて雨音を庇うように動いている。大変面倒な事になった。

 強引に事を澄ます事も可能だが、そうなれば心証は最悪だろう。そもそもこいつらも雨音を心配してくれての行動だし、立場が違えば正直感謝してやりたいくらいだ。

 自分の事で精一杯の者ばかりの中で、こうして誰かのために行動できるというのは素晴らしい。可能な限り穏便に済ませたい。

 

 どうやってこの状況を切り抜けようかと考えて居れば、司会の端でギルド職員が近付いてくるのが見えた。良かった、職員が仲裁してくれれば大事にならずに済むだろう。若干ほっとして職員が近付くのを待った。

 

 

 

「ちょっと貴方達、ギルド内での争いごとは禁止されています。事情を聴きますので少し奥に来ていただきましょうか」

 

 

 

 そう言って職員さんは俺の肩に手を置いて、奥に付いてくるように無言で促した。

 

 あれこれやっぱ俺が悪い流れになってます???

 

 

 

 それから暫く、俺は男達とともにギルド職員へと事情説明を行い誤解を解く事となった。と言っても雨音のギルド登録には職員も懐疑的であったので、軽くではあるが組み手を行い十分な実力を見せることでそれを解消、そのまま無事登録となった。

 とはいえ本来は登録料さえ払えば誰でも登録自体は出来るはずなのだ。実際雨音くらいの年の少年が冒険者をしている事も少なくない。

 今回はある程度信頼のあるシルバーランクが関わっていた事と、ギルド側からしても死者を増やしたい訳ではないので明らかに無理のある盾役をやらせようとしているのを危惧しての事だろう。

 ここら辺はあまり細部まで精査していると、他の仕事に支障をきたすので普段はやらないのだろうが、流石に目の前で見て見ぬふりはしたくなかったと見える。組織としての良心が残っているようで良い事ではあるのだろう。

 

 おっさん達も誤解が解けてからはしっかりと謝罪を受け取り、無事和解する事ができた。少し話してみればその心根の善良さは確かなようで、荒くれ者の多い冒険者の中でも慕われる、良い冒険者グループであるようだ。後で仕事ぶりを調査させ、良さそうならスカウトを送ってみてもいいだろう。

 

 こうしてひと悶着ありつつも無事登録を終え、ついでに得る物もあった有意義なギルド訪問であった。

 

 

 

 そうしてギルドからの帰り道、工業区の職人街にある一つの工房へとやってきた。出かけたついでに以前発注しておいた雨音の装備を受け取りに来たのだ。

 

 ここも数年前に他所からスカウトしてきた職人の店であり、腕利きのドワーフがその業を振るっている。ドワーフといえば腕はいいが頑固者で豪放磊落、強い酒に目が無く煩いおっさん的なイメージが強い。

 実際この世界のドワーフも殆どがそんな感じなのだが、ここの店主はドワーフとしては、いや普通の人と比較しても更に気弱な性格だった。

 

 職人と言えば競争社会だ、自分の腕を売り込むためにあえてデカい態度を取らなければいけない事もある。だがまぁどこにでもそういうのが苦手という奴はいるもので、ここの店主は自己主張が全くできていなかった。

 そんな事なので腕は良いのに中々仕事は取れず、仕事が少ないから稼ぎは減り、稼ぎが無いから素材も段々悪くなり、いっそもう店を畳もうかという所に俺が現れたという訳だ。

 

 実際その作品を見れば他のライバル店に負ける物ではなく、このままその腕を腐らせるのは惜しいと猛プッシュ。普段全然褒められる事もなかったのか二つ返事で付いてきてくれたという訳だ。ちょろい。

 今では武具の販売だけでなく、近隣住民の金物の修理なども手掛けてくれている。気弱さからくるものであるが腰が低く人当たりも良く、偏屈者が多いと言われるドワーフとしてはその評判は上々だ。

 今では苦手らしい販売と営業は雇った人間に任せ、弟子の育成と依頼品の作成に専念しているそうだ。適材適所と言えるだろう。

 

 さて、そんな工房にしばらく前に発注していたのが雨音用の装備である。今までは訓練用の簡易的な物だったが、今回は最初から専用に作った物だ。

 とはいえ基本は変わらない、皮鎧をベースとした金属で補強した鎧と、盾とメイスである。ただその素材が高グレードなだけで。

 

 まず鎧に使用する皮はワイバーンの皮を鞣したものだ。鎧に使えるほど損傷の少ない物は中々取れず高価だが、軽くて丈夫な上に耐火性能も高いと高位冒険者にも人気の品だ。

 補強する金属にはミスリルメッキを施しており、頑丈さだけでなく簡易の魔法抵抗にも優れる。

 

 そして盾とメイスに関しては魔重金属という特殊な金属を使用している。これはそのままだと若干良質な鉄と同じくらいの強度なのだが、魔力を通す事で重量と硬度を増す事ができるという性質を持っている。

 一見便利なのだが合金にすると一気にその強度が低くなるため、微妙に使い勝手が悪い。しかし今回その性質が雨音にうってつけだったので無理を言って取り寄せてもらったのだ。

 特殊金属であり加工の難易度も高いのだが、完成品を見る限り店主は見事に仕事を果たしてくれたようだ。

 

 すでに前金で半分渡してあったので、残りの支払いを済ませるついでに無理を言って悪かったと言えば、店主は誇るでもなく自分はもちろん弟子の育成にも役に立ったのでむしろ感謝したいくらいだと笑って見せた。

 その表情にかつての卑屈さは見えず、確かな自信に裏付けされているように感じられた。どうやらうちの領に引っ張ってきて、良い変化を与えられたようで何よりである。

 

 一通り説明しながら雨音に装備させ、細かい調整をしてもらう。新装備の慣熟訓練は必要だろうが、試し切り用の案山子を殴っている姿をみるに少し動けば慣れそうだ。

 武器と盾に関してだが、重量の変わる装備のノウハウは無いので使いながら改善点を探っていくしかないだろう。単純に殴る時や受けるときに発動させる以外にも、様々な使い方ができるだろうから楽しみだ。

 

 調整を終わらせて装備は館に届けるように手配し、俺たちは工房を後にした。

 

 少々準備に手間取ったものの、これで万全整ったはずだ。後はロイドを言いくるめて、今度こそ雨音の冒険者デビューだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価ならびに誤字報告ありがとうございます。

今回はギルド登録して戦闘デビュー!の予定だったんですがちょっと説明が長すぎたかしらん。1万字超えそうだったのでここでいったん切る事に……
よくあるギルドの組織って普通に国家をまたいで発言力を維持する超組織ですけど、なんでそうなったのかとか考え出すとまじでキリがない。国の生い立ちから~とか、どういう組織運営でとか全部書こうと思うと報告書だか論文でも書いてるのかって気分になります。やはりこういうのは先達が残してくれたイメージに基づいて各々補強してもらうのが無理が無くて良いなって思いました。

もう少しでこの作品を書き始めてから1ヶ月たつのですが、その間に思った事や感じた事を雑記として活動報告に書いてみました。特に読む必要はないのですが、これから読む側から書く側に挑戦してみようと思っている方が居ればどんな感じなのかの参考になるかもしれません。ならないかもしれません。


※8月16日追記
プラチナランクの説明が抜けていたため該当部を加筆しました。大変お恥ずかしい…
ご指摘ありがとうございました
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