辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい 作:名もなきrlkn
その後は交互に周囲の警戒をしつつ薬草採取を行った。群生地には魔力量が基準値を超えられそうな物が多く、思ったよりも楽に必要な数は集まった。
しかし予定よりもだいぶ早く集まったのでまだまだ日も高い、ここは少し予定を変更して高品質の薬草を探して報酬アップを狙ってみるか。雨音にも予定の変更を伝え、近くの森へと向かう。
森は魔物の領域だ、生息する敵も手ごわくなるが浅い場所では強くてもオーク程度、先ほどの戦いを見るに問題はないだろう。原因はまだわかって居ないが森には魔力が溜まりやすく、その分魔物の発生も早い。
しかし同時に植生に与える影響も多いという事であり、深部の魔力の濃い場所や稀に発生する魔力溜まりと呼ばれるようなスポット周辺には貴重な薬草が生えやすい。
そこまで奥に行くつもりはないが、森の中であれば薬ヨモギ程度であれば高品質の物も割とある。高品質の物は中級ポーションの作成にも使われるようになり、見た目もより厚みが増し、色も鮮やかになるので判別もしやすくなる。
森を探索できるような腕前になれば、運よく見つける事ができたなら良い小遣い稼ぎになる。だがそれに味を占めて余り足元ばかり気にする様になってしまうと事故の原因になるのだが。
先ほどは雨音に偉そうにレクチャーしていたが、実際の所俺にレンジャー系の能力は無い。今まで経験してきた戦いはガチンコバトルばかりだったので、地形を有利に使って獲物を仕留めるなんてかっこいいことは出来ないのだ。
一応気配を消す事はできるがこれは身体操作の応用だし、気配を探るなんてのは探知魔法頼り。色々と戦闘技能は習得しているものの、基本はレベルを上げて物理で殴る戦法ばかりだった訳だ。
なので森の中で教えられる事など迷子にならないように目印を残しながら歩こうとか、割と美味しく食べられる野草だとか、色の派手なキノコは美味しいけど毒な物が多いから食べるときは覚悟を決めてから食べるとか、そんな些細な事だ。
ちなみに薬ヨモギで作ったヨモギ団子は風味が強いのに雑味が少なく美味しい。回復効果は特にない。
周囲を探知しながらなので魔物の場所は把握しているが、雨音には教えず先を歩かせている。
知識が無いなりにわかる気を配るべきポイントを教えながら進んでいるが、流石にそう上手くはいかず何度かゴブリンの小集団と遭遇戦闘が起こった。しかしそれも大した障害にはならず、鎧袖一触といった様子だ。
ゴブリンは討伐証拠部位となる耳と、心臓部にある魔石を剥ぎ取り残りの死体はひとまとめにして放置だ。後は野生の獣やスライムが処理してくれる。
幾度か戦闘をこなしながら探索を進めていると、少し開けた場所に出た。運良く薬ヨモギが自生しており、しかもちょっとした魔力溜まりになっているらしく高品質そうなものもいくつか見える。
これ幸いと雨音に採取を任せ、俺は周囲の警戒を行う。とはいえ付近に敵対反応は特にないので問題はない、と思っていた時だった。
索敵していた範囲に勢いよく入ってくる集団がある。反応から察するに数名の冒険者がモンスターに追われているようだ。
反応をみるにモンスターの反応は森の浅瀬で見るにはだいぶ強い、欲張って奥までいって大物を釣ってしまったか、運悪くイレギュラーに遭遇してしまったのか。
どちらにせよ反応はこちらへと向かってきているので準備しておくべきだろう。
雨音に状況を伝え態勢を整わせると、森の向こうから走ってくる冒険者達が見えてきた。傷も負っているようで必死の形相だが、ここまで来るのに追いつかれる事もないだろう。
先頭を走る男がこちらに気付き一瞬安堵したような表情になりかけるが、すぐに顔をしかめる。こちらが二人しかいない上に片方は小さくいかにも頼りなく見える、強力なモンスター相手に共闘するには無理があると思ったのだろう。だがすぐに気を持ち直したようで大声を張り上げた。
「おい!あんたらすぐに逃げろ!俺たちはオーガに追われてる!別方向へ逃げれば大丈夫なはずだっ」
どうやらこちらを心配してくれているようだ。てっきりこのまま擦り付けられるかと思っていたので驚きである。先日のスキンヘッドの冒険者といい、案外まともな奴も多いのかもしれない。
気遣い感謝するが心配は無用!後ろの奴は俺たちが相手をするのでそのまま駆け抜けろ
「しかしっ」
いいから行け!
「……感謝する!すぐに応援を呼んでくる、死ぬなよ」
こちらの自信のある態度と装備の質を見てすぐには死なないだろうと判断したのだろう、リーダーと思わしき男の指示で全員駆け抜けて行った。ちらりと見えたプレートは銀、その装備も身のこなしも悪い物ではなかったので実力をはき違えて深入りしたという訳でもなさそうだ。
しかし逆にあれだけの一団が強敵とはいえオーガに後れを取るというのも不自然だ、何かあると思ったほうがいいだろう。
冒険者達が広場を駆け抜けて少し、問題のオーガが現れた。その背は高く見上げる程で4m程はあるだろうか、肌は赤黒く染まり全身を鎧う筋肉は正に鋼のごとき強靭さを秘めていると一目でわかる。
通常オーガは体長3m程で肌も赤銅色であるはずだが、こいつは変異種等の特殊個体だろうか。角持ちではないので魔法を使うオーガメイジという訳ではないのだろう、しかし単純な身体能力ではこちらの方が強そうだ。
オーガといえばモンスターの中でも比較的上位に位置する存在だ。単純にデカい上にその筋肉は鋼鉄の剣でも簡単には切れない程硬く、当然その体躯から繰り出される攻撃は強烈で生半可な装備では受ける事もできない。
その上群れの中にオークメイジ等の上位種が生まれると統率の取れた動きもしてくるので、単体であってもシルバーランク冒険者数人、群れの討伐となれば複数PTが協力してどうにか倒せるかといった所だ。
上位種がいればゴールドランクが必要になるだろう。しかしその生息地は山岳部や洞窟を主としており、こういった森の中で遭遇することは稀だし、その上それが変異種となればかなりの運の悪さだ。
しかもこいつ一匹ということも考えにくいので、どこかに群れがある可能性も高い。思わぬ厄ネタが飛び込んできたかもしれない。
そのオーガといえば先ほどまで追っていたのとは別の個体がいる事に気付いたようだが、とくに逡巡することもなくこちらに襲い掛かってきた。
大して知力が無いからなのか、逃げる相手を追うよりも楽そうだと思ったからなのかは定かではないが。
んー、殺る気満点って感じだな。よし行け雨音、格の違いを思い知らせてやれ!
「ひょぇ、雨音一人でですか?流石にあんなにでっかいのは無理ですよぉ」
いやいや、デカいだけだって。頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!北京だって頑張ってるんだから!
「えぇ、北京さんて誰ですか……でもわかりました、雨音頑張ります!」
俺の熱い気持ちを込めた応援に奮起して雨音が前へと踏みだす。ちょっと腰が引けているが、まぁ自分の約3倍の大きさのモンスターで殺気立って迫ってくればビビるのも仕方ないか。
まぁそのうちもっとデカい相手と戦うのだし、まずはこれくらいから慣れていってもらおう。目指すはドラゴンスレイヤーだ。
オーガも前に出てきた雨音を標的としたようで、手に持ったこん棒を無造作に振り下ろす。ただの木であるはずのそれも、オーガが持つ魔力をこめられたそれは鉄槌の如き強度を持ち、簡単に壊れるような事はない。
驚異的な膂力かから振り下ろされるこん棒はその速度もまた驚異的だ、常人が受ければ潰れたトマトのようになるのは確実。
しかし雨音もまたエルフの中に生まれた変異種であり、常人などという範疇はとうに逸脱している。
真正面からそのこん棒を迎え撃ち、その盾でもって受けとめる。
大質量の金属同士がぶつかり合ったような衝撃音が響きわたり、雨音が若干たたらを踏んだ。
やはり仮に膂力が同じとしても、その質量差は如何ともし難い。魔重金属でカバーできる範囲にも限界がある。
その後は雨音の防戦が続く。オーガは荒れ狂う嵐のようにこん棒を振り回し、その能力をいかんなく発揮して雨音を責め立てている。
その一撃たるや掠っただけで木をなぎ倒し、地に当たれば地面を抉り石が礫となって飛んできて安易な反撃を許さない。
そんな暴力の荒しの中を、しかし雨音は一歩も引くことなく受け続ける。
その膂力、その速度は確かに驚異的であるがどこまでも単調だ。兵士たちの調練に参加して様々な攻撃を受けて来た雨音にとって、ただ力と速さが凄いだけの攻撃など脅威とはなりえない。
最初は余りにも大きな体格差に攻めあぐねていたが、段々攻撃に慣れてくるとその殆どをいなし、逸らし始め反撃をオーガの足に入れていく。
しかしその攻撃も全力の一撃という訳にはいかず、狼を容易く屠った一撃もその固い皮膚と鋼の筋肉に阻まれ有功打とはならない。
今の所拮抗しているが、仮にオーガの一撃が防御を抜けて入るような事があれば戦闘不能までとはいかないまでも大きく不利を被るのは確実。
持久戦は些か不利である雨音はどこかで勝負に出る必要がありそうだ。
暫くするとオーガは自身よりも遥かに小さい雨音が中々倒れない事にイライラしていたのだろう、今までよりも更に力を溜めての大振りの一撃を放った。
「力よ!」
それを雨音が狙っていたとも気付かずに。
一瞬の溜めの隙をついて雨音が身体強化の魔法を施す。その直後に振り抜かれたオーガの一撃を盾で受け、それを力ずくで大きくはじき返した。
突然の事態に肉体も思考も大きな隙を晒したオーガに、メイスによる追撃の一撃が叩き込まれる。
大きく踏み込んで左から振り抜かれたメイスが、オーガの右膝を打ち砕く。武器を弾かれて体勢を崩していたオーガにそれを耐えられるはずもなく、愕然としたような表情を浮かべながら崩れ落ちる。
「ハイスラー!です」
そしてそこへ間髪入れずに雨音の振り下ろしが頭へと叩き込まれ、頭蓋を叩き割った。しばらくぴくぴくと肉体が痙攣していたが、それもすぐに無くなり完全に息絶える。
しっかりとそれを確認した後、雨音は大きく息を吐き出し力を抜いた。強敵を倒したとはいえここはまだ危険地帯なのは変わりない、余り気を抜くのは感心できないが今日のところはとやかく言うまい。
「はふぅ、どうにか倒せました……ご主人様!雨音ヤりましたよ!」
うむ、ご苦労様。強化魔法を使うタイミングも悪くなかったな
「はい、あれを使うと細かい動きの調整が難しいので困ってしまいますね」
雨音の使った強化魔法だが、これは別段特殊なものではなくこの世界でも広く普及している魔法の一つだ。自身の肉体に魔法をかけて身体能力を強化するのだが、雨音はその莫大な魔力ゆえにその強化も通常より効果が大きい。
否、正確には大きくなってしまう。仮に普通の人が魔法を使うのに魔力を1グラム単位で操作するとして、雨音はそこで1キログラム単位でしか操作することが出来ず、結果的に魔法が強くなりすぎてしまうのだ。
現在行っている放出系魔法の封印もこのためだ、火の矢を放とうとしてレーザービームが出てしまったら事故なんてレベルでは済まない。
そういった事情もあり強化魔法は使えるものの、その力に振り回されてしまうので中々使いどころが難しい。免許取り立ての若葉マークのドライバーに時速500キロで爆走するダンプカーを運転させるようなものであり、直線を走らせるだけならまだしもカーブさせるのも厳しいだろう。
もしも今回強化魔法を使うタイミングで一番良かった場面を選ぶとすれば、出会いがしらに使用し相手に攻撃させずに一方的にこちらから殴りかかっていればベストだったろう。
というかだいたいの場面でこれが一番のはずだ。初手最大威力で一撃必殺が一番賢いというのが脳筋族の真理、力こそパワーというものだ。
そういう意味では相手のオーガの行動は悪くなかった。だが数手で倒せなかった時点で他の策を考えるか、逃げるべきだった。絡め手を持たない以上地力で勝てる相手でない時点で無謀なのだ、逃げ切れるかどうかはまた別問題だが。
さて、問題のオーガの処理だがこれも討伐部位であるオーガの大牙と魔石をはぎ取る。一応骨も素材に使えるのだが、そのままでは袋の口の大きさ的に入らず解体するのも面倒なので放置するしかない。
変異種だけあって牙も魔石も通常種よりかなり大きいので高額で買いとってもらえるだろう。
よし、それじゃそろそろ帰るとしよう。クエストの達成報告と、後は依頼を出さなくてはいけないようだ
「ご主人様が依頼ですか?」
あぁ、もともとオーガは生息域を考えればここら辺に出るモンスターじゃないんだ。こいつがたまたまはぐれで迷い込んできただけならいいんだが、もしも群れが近くに移ってきているなら脅威になるからな。低級の冒険者が相手にするには無謀だし、中級以上でも不意に襲われれば危険だ。まずは調査依頼を出して実態を確認、もしも群れが居るようなら討伐依頼を出して砦の兵士と合わせて討伐させなきゃならん
「大変なのですね。ご主人様が倒しちゃ駄目なのです?」
少し前までならそれでも良かったんだけどな、出来るからといって何でも一人でやってちゃいかんのさ。それにこれは危険ではあるが、冒険者達にとっては稼ぎのチャンスでもある。居ると分かって準備をすれば倒せない相手じゃないからな、金や功名を上げるには良い機会になるんだよ
「色々考えているのですねぇ、流石ご主人様です!」
まぁ一応とはいえ領主だからな、多少は考えながら動くこともある。クライドがいれば問題ないだろうが、万が一手に負え無さそうなら俺が出ればいい
「その時は雨音もお供しますよ!」
あぁ、頼りにしてるよ
その後は特に何も起きずに無事冒険者ギルドへとたどり着く。すると最初にオーガに襲われていたパーティがギルド職員とやり取りしているのを発見した。
聞き耳を立てると森で発見したオーガ変異種と、その足止めに残ってくれた冒険者がいるから早く討伐隊を組んでくれという話のようだ。
見ればまだ傷も治療出来ていないようなのに、助けを呼んでくると言う言葉通りに動いてくれていたようだ。これはとても嬉しいが、すでに倒してしまっているので討伐隊を組まれても困ってしまう。
後ろから声をかけると幽霊でも見たかのように驚かれ、オーガは無事に倒したと牙を見せれば更に驚かれた。
その後は頻りに感謝され、オーガを討伐した実力を褒められどうせならこの後酒盛りにでもと誘われるが流石にこれは断る。
というか君らはさっさと治療師のところで傷を治してきたほうがいいぞ。
俺の忠告を聞いてなのか急に傷の痛みを思い出したようで、冒険者パーティーはそのままギルドを後にして近くの治療院へと向かった。
その場に残った俺はギルド職員へと遭遇した後のやり取りを報告、討伐部位だけでは判断しにくければ死体を確認してほしいと戦闘を行った広場の場所を伝えた。
その後は雨音に薬草のクエスト報告を頼み、俺は顔見知りのギルド職員、つまり俺の正体を知っている職員を捕まえると秘書さんへの面会希望を伝えた。アポ無しとはいえ領主の火急の要件という事ですぐに面会は叶い、別室で話し合いをする事になった。
とりあえず今日あった出来事を伝え、近隣にオーガの群れが来ている可能性がある事を教える。その上で領主としてオーガの群れの調査依頼と、もしも本当に群れがあった場合の討伐依頼を出す。
報酬に関してはギルドの方で適正報酬を計算してもらいそれを後日報告してもらう事と、討伐の際にはベルタ砦のグライドの指揮下に入る事になる事等を説明。
個人主義の強い冒険者達だが、グライドの戦上手の話は有名であり余程の跳ね返りでもなければ従うだろう。そしてそんな跳ね返りの存在も含めて指揮するのがグライドだ、伊達に劣悪な環境かでベルタ砦を守り切っていない。
もしもグライド達の手に負えないようでも変な意地を張らず、上へと回す度量もあるので心配はないだろう。
どうやらギルドの方にも別口で森の異変が報告されていたようで、独自に調査隊を募るか検討していたそうだ。森はすでに魔領のため、実質的にはヘルゲン領ではないため領主が調査費用を出す必要はない。
ギルドが脅威度を先に調べ、その後に必要であれば報告というのが通常の流れだという。言われてみれば確かに領土外ではあるのだが、そこでケチケチしてせっかく発展してきているベルタの街に被害を出すのも馬鹿らしい。
そこら辺は気にせず費用は要求してもらって迅速な解決を願う、というスタンスでいく事にした。
その後の顛末は特に特筆すべき事はない。調査の結果やはりオーガの群れが居る事を発見。その後討伐隊を作り、森の中に仕掛けた罠へと誘い込んで殲滅。
リーダー格のオーガメイジも居たようだが、見事にグライドが打ち取ったそうだ。こうして脅威は打倒され、素材や魔石が冒険者の懐を潤し、ギルドもヘルゲン領もその利潤にあやかると文句の無い結果となった。
しかし問題は何故オーガがこんな方にまで来たのかという事だ。たまたま群れが移動するルートであったという事ならいい。だがもしもより脅威度の高い何かに縄張り争いに負けて来たとしたら、少々面倒な事になるだろう。
魔領での勢力図が変わるような変遷があったとすれば、隣接するヘルゲン領にも少なくない影響が出るだろう。せっかく領地経営が軌道に乗ったのだ、ここでおかしなケチがつかなければいいのだが。
評価、誤字報告ありがとうございます。