辺境領主は銀髪ロリエルフをprprしたい 作:名もなきrlkn
仕事を終え領主館を出る。時刻はまだ夕暮れ前のはずだが、空は厚い雲に覆われておりほの暗い。どうにも夜には雨が降りそうだ。
アルトの街に降りぶらぶらと練り歩く。部下を連れて視察する事もあるが、やはりありのままの様子を見るにはこうして一人で気配を消しながら歩いたほうが良くわかる。街の商業区ではどうにか今日の分を売り切ろうと声を張り上げる商人と、それを相手に値切り交渉する住民達とで賑っている。その表情は明るく、活力を感じさせてくれる。汚物に濡れ明日をも知れぬ不安に俯いていた事などすでに遠い過去のようだ。
こうして街の様子を見ていると、自分の頑張りも無駄ではなかったのだなと感じられて誇らしい気持ちになる。という事は特になかった。
そもそも領主になる事を決めたのも、ヘルゲン領を立て直そうとしていたのも、悠々自適な日々を送るため、自分のために頑張った事だ。結果的に人々の暮らしが良くなっただけであり、そこに俺の善意は存在していない。単純に俺の目的に彼らの利益が重なっただけなのだ。
領内改革の為にあちこち飛び回っていた時もかなり横柄な態度をしていた自覚はあるし、何なら街を混乱の渦に叩き込んだ犯人ですらある。今こそ住民たちは俺の事を褒め称えているが、仮に改革に失敗していればその態度は逆転していただろう。なので称賛されれば素直に受け取りはするが、別段それをことさら強調するような気もなかった。住民の皆さんには心置きなくお金を使ってもらって是非俺をやしなってほしいものである。そのための安心して暮らせる場所は、ロイド達がどうにかしてくれる。そのために寝る間を惜しんで組織作りに尽力したのだ、後はそうそうに楽隠居させてほしい。
商業区、工業区と人波を縫って歩き、歓楽街へとたどり着く。こちらはもう少し遅い時間からが本番だが、早めに仕事を切り上げたらしい者達や、ベルトから遊びに来たと思われる冒険者達がちらほら見える。元々スラムのあった場所を潰した空きスペースに作ったのがこの歓楽街だ。初めの頃は酒場が数件ある程度だったが少しばかり知恵を貸し、今ではパブやキャバクラ、ソープに始まり高級娼館も立ち並ぶ一台区画へと成長した。特に性病の温床になりやすい娼館に関しては領主権限で細かい規定を課し、教会にも協力を請う事でどこに行っても高い安全性と品質を確保した。値段は相応に高くなるものの手が出せないという程ではなく、生きるのに必死だった頃よりも余裕が出来た事もあってかどこも安定して売り上げを伸ばしているようだ。
特に一軒しかない高級娼館では来店する客にも相応の格を求め、相応しくないと判断されればいくら金を持っていても追い返させた。こんな辺境領でそんな事をしていれば普通なら立ちいかなくなるのだが、これは完全に俺の趣味だ。店の運営に意見する代わりにかなりの額をポケットマネーから出している。ゆっくり酒を飲みたい時にうるさい客に煩わされたくないからという理由だったのだが、稼ぎのある商人達の間で利用されはじめるとじわじわと人気を伸ばしていき、今では一流商人の社交場兼情報交換の場のようにして利用さるようになっているようだ。ちなみに俺は一階で酒を飲むだけで、二階より上を客として使った事はない。一回ちょっとその気になって女の子を見たら、目が合っただけで屠殺される直前の家畜みたいな顏になるんだもの。しまいにゃ泣くぞこら。
領外からの利用客も増えているらしく耳聡い商人があちこちから集まり、当然それに伴い物流も増える。領内の街や村を行き来する分には関税も取っていないので、アルトの街以外も回って商売していく事も多い。是非ガンガン儲けて税金を落としていってほしい。
トラブルが起きやすい場所だけに注意しながら歩いていると、一軒の真新しい建物が見えた。区画的にどこも建ったばかりではあるのだが。そこはどうやら奴隷商店のようだ。少し前に出店許可を出した覚えがある。奴隷を扱う店自体はすでにいくつかあるが、この店が一番大きな門構えをしている。恐らく他領ですでに商売をしていてここに支店を出したのだろう。ついでに視察しようと考え足を向けた。
奴隷の売買自体は王国法で認められた商売である。その内容も案外まともな物で初めて調べた際は少し驚いた。だがしかし、それが正しく守られているかといえばそうではない。実態としてはグレーどころかブラックと言って良いだろう。
奴隷と言ってもいくつか種類がある。労働奴隷や犯罪奴隷、障害奴隷等だ。犯罪奴隷は中程度の犯罪を犯した際に刑罰の一種として課せられたりする。障害奴隷は奴隷の中でも体に不自由な箇所があると分類され比較的安価になる。そして一番一般的なのが労働奴隷だが、これが問題だった。元々は困窮したものが自らを売り、一定期間労働した後に自分を売った金額を受け取るという、経済弱者に対する一種のセーフティーネットの役割を期待されていたようだ。王国内で増えていた浮浪者をどうにかするための対策として実施されたらしい。
その試み自体は悪くなかったように思うが、契約内容は両者相談の上で合意を持って行うとされているのだ。そんな状態に陥るもので難しい話がわかる者は少なく不平等な条件で契約がなされる事が頻発。元々あった貧しい村での人身売買はやましい事ではなく、国王の許可を得たものであるとしてその数を一気に増やした。また雇用者は奴隷を飢えさせてはならないという決まりを逆手に取り、ほとんど働かずに食べ物だけを要求するものがいたり、同じ奴隷でも仕事の出来る者と出来ない者は当然いて、不出来な者と契約してしまった者はその処遇に頭を悩ませた。そうなればもう後はぐちゃぐちゃだ、一応法では奴隷に対し理由なき暴力を振るってはならないとされているが、逆に言えば理由さえあればその限りではないのだ。そしてその理由の正当性を問われる事などまずない。王国中にいる奴隷全てを管理する事など出来はしないのだから。それは契約により奴隷が契約者に対して反抗出来ない事も拍車をかけた。見方によっては王国という強者が奴隷という弱者を虐げることに許可を出しているとも言える。そんな状態で人間が持つ嗜虐心を押し留める事の出来る理性を持つものは少数だった。
あるいは、この時点で王国がお触れを出し、法の撤廃なり遵守の徹底なりをしていればもう少しまともになったのかもしれない。しかしこの法自体が王国に溢れる浮浪者を少なくするためにどうにかしろという王の達しを遂行するためのものであり、実際に王国内の浮浪者はその殆どが奴隷となり数を減らした。成果が出ている以上その実態など些事であり、国の上層部がそれ以上何かをする事は無かった。元より国の中枢で利権を握る彼らは強大な魔力持ちだ、力の無い平民の事など興味など無く、国王の思い付きに付き合ってやった程度にしか考えていない。法の原案を作った役人達は真面目に取り組んでいたのかもしれないが、それを施行する側にやる気がない以上どうしようもなかった。こうして奴隷というのは虐げられるものであるという歴史が積み重なり、今では農民以下の最下層民であるという認識が出来上がっている。
そんな背景はあるものの、ここヘルゲン領では別だ。王国法を順守させ、奴隷であろうと最低限の環境を整える事を条件としてる。契約の際も役所への届け出をさせており、見回りの兵にも奴隷の状態には注意させた。当然奴隷商からの反発はあったし、買い手からも抗議を受けたがここを曲げるつもりはなかった。
なにせ労働効率が悪すぎるのだ、あんなの働かせた所で無意味どころか迷惑になる。満足に食事もとっておらずやせた奴隷を怒鳴り散らして殴りつけて、無理やり働かせたとしてそれでどれだけの仕事が出来るというのだ。肉体的にも精神的にも追い詰められた状態で働いていればミスも多くクオリティも低くなる、その上事故でもおこせば周りを巻き込みかねない。もし往来で奴隷がいたぶられている姿でも見えれば景観を損ねるし周りの人間も良い気はしない。
領の改革を初めて人手が足らない時に安く手に入る奴隷を買った訳だが、どいつもこいつも酷いものだった。働かせるために買ったはずなのに資材を運ばせればすぐに息切れするし、何をやるにも気力がなくてとにかく暗い。一緒に働く方が気が滅入る。どんな理由で奴隷になったのかは知らないが、そんな状態で働かれても足手まといでしかなかった。そんな奴らをまともに働かせるため、人間にするための作業で更に時間を取られた時はマジ切れしそうになったものだ。
そんな事例を語ってやれば奴隷商も一応の理解を示してくれた。こちらの不定期な視察と指導を受け入れるなら税の一部優遇なども行っているので他領と比べて赤字が出るという事もないはずだ。中にはそれでも従わない者もいたが、その時は仕方ない。何度言っても聞かない奴は店を更地にしてやって、財産没収の上領外退去処分だ。魔法により一瞬で更地にしてやるとインパクトがあり、他の者に対して見せしめにもなる。初めの頃に2、3軒潰してからは噂も広まったのか違反するものは出なくなった。
さて、この店はどうだろうか。出店許可を取りにきた店主は人当たりの良い人物でそれなりに学のありそうな人物だった。たまたま手が空いていたから直接対応してやったのでよく覚えている。
門を潜り消していた気配を戻す。すると扉の前に立っていたボーイが驚いた様子で駆け寄ってきた。立ち振る舞いを見るにそこそこ手練れのようで、ボーイ兼用心棒といった所か。十分近付いてきた所で貴族身分を表すプレートを示し、視察に来た事を伝える。プレートが本物で有る事を確認すると、丁重なもてなしで中へと通される。入口近くにある応接室に通されると、すぐに主人を呼んでくるのでここで待つようにと茶を出された。ボーイが気持ち速足で部屋を出て一分、店内を見回るべく俺は部屋を出た。抜き打ちで視察に来ているのだから店主にエスコートされながら見回るつもりなんてない。
さてどこから見回ろうかと再び入口のあるエントランスに出た時の事だった、奥の方からがなりたてるような声が聞こえてくる。位置的には店の裏口あたりからだろうか。妙な気配も一緒に感じるので少し見に行ってみようか。
当たり前のような顔で店内をうろついていると案外見とがめられる事もなく奥へとたどり着のと、裏庭に面しているらしき扉が乱暴に開けられたのはちょうどだった。奴隷を引っ張るための縄を引く男が入ってくるがこちらを気にした様子はない。引かれている奴隷にいらだっているようでさっさと歩けと強く縄を引いた。その力に耐えられなかったのだろう、引かれた奴隷は勢いよく床へと倒れこみ小さなうめき声を漏らした。
そこでようやく見えた奴隷はずいぶんと小さい。子供の、骨格からして恐らく少女だろうか。
体は薄汚れたぼろぼろの貫頭衣で覆われ見えないが、裾から出た手足は枯れ枝のように細いく、その上大小無数の傷跡が刻まれている。見ればその右足は歪に曲がっており、骨が折れた後に適切な手当てもされずに癒着してしまったのだろう。これではまともに歩くこともままならないはずだ。ぼさぼさの頭髪から細長い耳が見えるのでエルフかホビットだろうか、片耳はちぎられたかのように不自然に短い。
酷い扱いを受ける事が多い奴隷だが、これはそうとう極めつけと言えるだろう。店がここまでの事をすることはない、従順になるように教育のために痛めつけるといった事はするだろうがそもそも商品だ。ここまでボロボロにしては買い手はつかないだろう。
気が付けば奴隷が少し顔を上げこちらを見ていた。目が合った、訳ではない。その紅い瞳は焦点を結んでおらずぼやけている。先ほど感じた妙な気配の元はこの奴隷だった。こいつも俺に同じような感覚を抱いているのかもしれない。奇妙な沈黙を保ち見つめあったのは、数秒か数分か、気が付けば奴隷を引いていた男は居なくなっており店主である奴隷商が近くに来ていた。その表情には焦りと恐怖が浮かんでいるが、その行動は冷静なものだった。
申し開きをさせていただきたく、と語りだした店主の言葉を信じるならばこの奴隷はエルフとダークエルフの間に生まれた子供であり、本来なら生まれないはずのハーフであるらしい。
エルフの忌子。曰くエルフでありながら魔力を持たぬもの。曰く、周囲に不幸を振りまくもの。曰く、死して大いなる災いを齎すもの。そう古くから伝えられている。実際にエルフの忌子が殺された際に街が一つ滅んだという記録もあるという。少女は元々エルフの里で暮らしていたらしいが、当然迫害され、やがて奴隷として売られる事になる。買い取った奴隷商は呪い等信じていなかったが、やがて小さな不幸が続けて起こると気味悪がり、安値で手放したそうだ。それから数年、忌子を買った神官が変死し処分される遺産の一つとしてこの奴隷が男の本店の方に持ち込まれた。本店でも買い取りは拒否したらしいが金は要らないからと無理やり押し付けられたそうだ。店主である男は支店出店の指揮のためアルトの街に来ており、その報告が来た時には奴隷も商品の一つとしてこちらに送られてしまった後。それが今こうしてたまたま俺が視察にきたタイミングで到着したらしい。まさしく、この男にとって不幸な事に。
店主の言葉を聞き流しながら、倒れたままの奴隷を助け起こす。首元からちらりと見えた体には、傷跡だけでなく大きな火傷の後も伺えた。全身余すところなく傷だらけのようだが、首から上にかけてはほぼ見受けられない。しかしその分歪にちぎられた片耳が際立つようで、あえてそうしていたのかもしれない。風呂に入るのはもちろん、体を拭く事すら出来ていないのだろう、すえた匂いが鼻をつく。ダークエルフとの混血というのなら髪は銀色なのだろうが、今は埃と垢に汚れ艶を失いくすんでいる。汚いはずだ、本来なら忌避すべき相手だ。だが不思議とこの子に対してはそういった感情は浮かばず、気が付けばこの腕に抱きかかえていた。少女は特に驚いた風もなくぼうとこちらを見つめるばかり。
店主よ、そちらの言い分を聞き入れよう。もとより奴隷の扱いに関して指導しているのは領内のみ。領外から来たばかりだというのであれば致し方ない。しかしこの奴隷の状態を見るにここで療養させた所で改善する見込みは少ないと見える。よってこの奴隷は私が保護する物とする。これは代金だ
誤解が解けたことに安堵している男に金貨を一枚手渡す。本来このような少女のしかも障害奴隷であるなら大銀貨1枚がいいところだ、少々無理やり連れていったとて文句は言うまい。
何かを言いつのろうとする男を手で制し、そのまま裏口から外へ出る。従業員と思しき数人がこちらを窺っているがそちらは無視だ。
少し飛ぶので喋らないように、と少女に注意をすれば、もとより黙りこくったままだった少女は小さく頷いた。
さて、謎の衝動に任せて少女奴隷を買い取ってしまったが、ちゃんと世話することができるだろうか。帰ったらやはりテンプレ通りに風呂に入るべきか、食べ物を与えるべきかと考えながら俺は領主館へと飛び立った。
感想、評価、並びに誤字報告ありがとうございます。
気が付けばお気に入り登録も三桁を突破しており、思ったより多くの方に読んでいただけているようでありがたい気持ちです。やはり可哀想な子を甘やかすのは良いですよね
という訳でどうにかヒロインちゃん登場しました。ほんとにまだ触りですが、なんとか目標達成です。この後はゆるりと奴隷ちゃんをぺろぺろしていきたいと思います