講演会から帰ってきた結花は、フゥーっと気持ちを休めるようにソファーに座ると、ため息をひとつ。
彼女が今日、聴きに行った講演会は『中学生とインターネット』。保護者を対象にしたものだった。
結花の自宅には、中学1年生の弦太がいる。
彼は、結花とは歳が離れた姉 佐和子の子供。
姉の佐和子はシングルマザーで、海外に単身赴任中。彼女が海外にいる間、結花が弦太を預かっている。
結花は28歳。
都内のマンションで一人暮らしをしており、一室を弦太に使わせていた。
先日のことだった。
「講演会を聴いてきて欲しい」
と姉である佐和子から結花にメールがあり聴きに行ったものだった。
講演会の内容は、一般的なインターネットの危険性の他に、中学生の性的欲求に絡めた、いくつかの問題点が指摘された。
「中学生男子の性的欲求は保護者の想像以上である。インターネット閲覧を自由にすると、まず間違いなく性的に過激なサイトを閲覧するようになる」
とのことだった。
「かといって、性的なサイトを完全にブロックしてしまうと、保護者が知らない内に他の媒体等を利用して、性的なものを求めるようになるので、むしろ、穏やかなレベルのサイトは閲覧自由にして、健康的なオナニーをしてもらう方がよい」
とのことだった
「穏やかなレベルのサイトとは、どの程度のものか?」
という質問が参加者から出た。
「許容範囲がそれぞれ異なるので、保護者それぞれが判断して欲しい」
と講師は言うだけで、明確な返答はなかった。
(オナニーなんて、好きにさせておけばいいのに・・・)
結花はそう思ってはみたものの、先日の出来事が少し気になっていた。
それは先週のこと。
弦太が学校に行っている間に、結花は弦太の部屋を掃除していた。
「部屋の掃除は自分でするから、入らないで欲しい」
と弦太から言われていた。
だが、放っておくとすぐに狭い部屋は散らかるので、結花は時々だが勝手に掃除していた。
そのとき結花は女性のヌード写真集を見つけてしまった。
写真集自体は男女の絡みがないソフトなものだったが、ゴミ箱には一見してそれと分かる使用済みのティッシュが乱雑になげこまれていた。
(弦太も、もう中学生なんだし、オナニーくらいするでしょう・・・)
生々しさを結花は少なからず感じたものの、その程度に軽く思いその時は終わりにしていた。
それが今日の講演を聴いて、弦太のことをもう少し考えた方がいいのかも?と思い始めていた。
(姉の大事な子供を預かっているわけだし・・・。弦太が変な方向に走られても困るし・・・)
などと、結花はあれこれ考えた末、とりあえずは講演で言われたことを実践してみることにした。
結花はさっそく、リビングに置いてあるノートパソコンを弦太の部屋へ移動することに決めた。
部活が終わって帰宅した弦太に、結花はインターネットの使用、閲覧のことについて話をした。
これまでは、結花がいる時にリビングでしかインターネットを使わせていなかったが、今後は弦太が自分の部屋で自由に使ってもいいと。
ただ、使い方によっては危険なので、閲覧できるサイトは制限し、結花が選定したサイトだけを見られるようにすることを伝えた。
「インターネットが危険」
ということは、さまざまなところで言われているので、閲覧が制限されることを弦太は素直に受け入れてくれた。
とにかく、自室でインターネットが使えるということで、弦太はとても喜んでいる。
明日は仕事が休みの結花は、弦太が学校から帰ってくるまでにパソコンの設定をしておくと話しておいた。
つづく