SEVEN's CODE二次創作小説【オレンジの片割れ】R18短編+マルメロ家二次創作エッセイR18短編 作:大野 紫咲
本当にくだらないことなのですが、今日局所的にものすごくストレスが溜まってしまったので、その話です(^p^)
内容に共感が出来なくても、気持ち的にはもしかして共感できる話に……なって……るのか……?
突然だが、メロの機嫌が悪い。
ぶすくれている。
半泣きの涙目で、今ここでガタガタ打ち鳴らすような勢いでキーボードを叩いている程度の不機嫌。その原因をボクは知っているけど、あまりにそれは(少なくとも世間的に見て)くだらない上に公言することが憚られる内容なので、その全容はボクの秘密として、ここだけにそっと記しておこうと思う。
事の発端は、二日前。
メロが何やら真剣な顔で、寝る前にスマホでネットサーフィンしていたことに遡る。
いや。本当はもっと前から、と言うべきなのかな。
ここのところ、去り行く夏を惜しむようにして、彼女の性欲が上昇傾向なのは何となく分かっていた。生理がきて少し落ち着いたのかなと思いきや、単にそれは旦那の在宅勤務が増えて、家でする機会がないから、というだけのようで。
「何を調べてるの?」
「前の奴もまだ動くけど、そろそろ新しい奴を増やそうかと思って」
何気なく覗き込むと、彼女はハイパー真剣な顔つきで、アダルトサイトからいわゆる大人向けの性玩具を、値段・性能ともに吟味しているところだった。
よくよく手元を見ると、定規とメジャーが用意してある。現在所持しているものの大きさや直径を計ってまで、新規購入品の検討を進めるつもりらしい。
「……」
一瞬、呆れて思わず言葉を探すのも忘れてしまった。が、彼女はいたって真面目なんだ。調べてる内容は、全然真面目じゃないけど。
深く突っ込まずに、寝支度をしてちび達を迎えに行きながら、リビングと寝室を往復する彼女に尋ねた。
「言うのも野暮かって思うけど、旦那を誘うっていう手段はあんたの頭の中にはないわけ?」
「誘うかどうかはともかく、私は思ってる事黙っておけない性格だから、一応は口に出して言ってみましたよ。『最近ものすごくエッチがしたい』って」
「あんたホントに正直だな……。それで?」
「『あらまあ』って」
「……え。それだけ?」
「『そういうの、ヨハネさんとするんじゃなかったっけ?』と言われましたわよ」
「……」
欠片も嫉妬心とか貞操概念の押し付けがない事は、パートナーとして扱ってもらってるボクからしたら喜ばしいことに思えるけど、ここまで明々白々にそれっぽい言葉を言われておいて、動じないのは逆にすごいな。あんたの旦那。
普通、少しくらいは応じようとするもんじゃないんだろうか。まあ、普通なんて言葉や基準は、世界が勝手に作ったものだから、ボクにとってはどうでもいいんだけど。
「とりあえず、してもいいと暗に言われたからには私も遠慮しないことに決めました。
で、最近ヨハネさんのおかげでちょっと慣れてきたから、……もっとはっきり言うと、今ある奴じゃ、大きさというか圧迫感が、少し物足りなくなってきたから……」
もにょ、と言葉を濁したものの、スクロールした画面を見つめる目はいたって真剣で、メロは商品説明にある大きさと比べながら、今手元にあるそれの大きさを適宜計り、「ここからここまでは10cmだから……」とか、「いやこれは絶対太すぎて入るわけないな……」とかぶつぶつ呟きながら、候補となった物を次々カートに放り込んでいる。
さすがに、全部買うわけじゃないだろうけど。
「……よく分からないけど、あんたの基準ってそんなに明白なの?」
「一応ね。今あるのより、ほんの一回り大きくて、数センチ長いだけで十分なのよ。指では触りにくい奥に触れることと、Gスポットに当たる圧迫感があること。それを満たしてくれたら、過度に大きかったり太かったりする必要はない。むしろ細身でいい。
なんか、世間じゃ大きくて太くて硬いのがいいらしいけど? どうしてみんなデカチン指向なんだろうね。少なくとも、私は玩具でそういうキャッチコピーを謳ってる奴を選んだら、間違いなく大変なことになる。死ぬ」
真面目な瞳でそう諭されて、思わずボクも迫力に気圧されたまま頷いていた。まあ、大きいのがいい、みたいのは、無闇に下ネタが好きな同級生の話から、嫌でも聞こえてきたりはするけど。死ぬのか。
盛大に溜め息をついて、メロは画面に向き直る。
「前にさ、女性向けサイトですごい可愛くてお洒落なデザインのとこがあって、商品の説明文と雰囲気だけ見てノリで買った事あるんだけど……通販じゃやっぱり、手に届くまでサイズ感が分からなくってさ。届いた奴が想像以上にデカくって、もう入るのがいっぱいいっぱいって感じだったし、やっと入れても裂けるんじゃないかってぐらい痛いだけで、気持ちいいとか全然わかんなくて。結局捨てちゃったの。
しかも、『中でモーターが回って刺激してくれます』ってのがウリだったのに、私が締め付けたら全然動かなかったんだよ!? めちゃくちゃ高かったのに!」
話してるうちに怒りが再燃してきたのか、スマホを布団に叩きつけそうな勢いだった。
なるほど。やたら大きさに拘るのは、そこが原因だったのか。確かに、今使ってる奴も、痛くなくて動かしやすいのがいい、って言ってたもんな。他人の体に頼らず道具を使って自力で追求するうちに、はっきりした条件が見えてきたのかもしれない。それをボクの体の一部に重ねられているのは、なんとなく面映ゆいような、恥ずかしいような気もするけれど。
強い光を目に宿しながら、熱弁はまだ続いていた。
「だからサイズは絶対大事なの。昔は『初心者向け』って書いてあるのが嫌で見栄張ったりとか、高くても女性に寄り添った感じの店舗の方が安全かもとか、思ったりしたけど」
「なんか……アレな話題なのに、経験に裏打ちされてると説得力すごい……。でも、そういう綺麗めなサイトの方が、信頼性ありそうってのは、ボクも思うけどね。イメージ戦略なのかな。ボクも見たことあるよ、恋愛関係のコラムとか記事も載せてるとこでしょ。確かにサイトや販売品の見た目もあんまり毒々しくないし、女性が手に取りやすそうって感じだけど」
「それは確かにね。実際、合う人はいるんだと思うよ。でも私は、いい意味でも悪い意味でも利用されてるなって感じがした。だって私がもう5、6年使ってるの、結局はたっかい玩具じゃなくて、1000円前後でアマゾンで買った奴だからね」
「……」
「玩具に関しては、安かろう悪かろうが必ずしも当たるわけじゃないなって思ったのよ。アダルト色マシマシのサイトでも、まともに作ってくれてるとこはちゃんと考えて作ってくれてるよ」
もちろん私なりに、色々見て学んだ基準はあるけど……と呟いて、メロはスマホを置いた。
大方絞りこめたので、翌日の朝になって心が決まっていれば、注文しようという心づもりらしい。
そして、心を決めて発注ボタンを押したのが、昨日の朝の話。
なんと、その日のうちに発送されて、翌日には着くという。
「じゃあ、早ければ明日にでも使えるかなぁ」
傍目から見ても、メロがうきうきと一日を過ごしているのが分かった。
ネットでおおっぴらに出来ない話題だけに、彼女の旦那やボクらの間と、心の内だけに留めているみたいだけど、それすらも楽しみのうちだったらしい。セルフプレジャーの時間に新たな快感や展開があるかもしれない、という期待値が、彼女の中でぐんぐん上がっている。
その楽しみだけで、ここ最近モチベーションの上がらなかった問題集に取り組んだり、なかなか気の向かなかった料理や家事をしたり、ほんの少し人に優しくなれたり、する程度には。
そんな光景を見ながら、ボク自身はピンと来なくて少し不思議だったけど、まあ彼女が楽しく過ごせるならそれでいいや、と思っていた。
夜に、隣で肌を触れ合わせるのも、悪い気分じゃない。
わざわざ、ボクと触れ合う時間を持つためだけに、彼女がさっさと寝支度を済ませて寝室に入って来ることも、布団を綺麗に整えてくれることも、声が漏れ聞こえないよう、ひっそりと襖を閉めた彼女と悪戯っぽい微笑みを交わすことも。
「まだ届いてないのに、気が早いね」
「だって、明日まで待てないんだもん。今日は、今持ってる玩具をしっかり味わって、明日新しいのと比べることにする」
既に眠気に負けそうになりながらも、隣に寝転がる彼女は、ほどよく涼しい外の風がカーテンを揺らすのを見上げながら、リラックスしているようだった。
が、いい雰囲気になってきたその頃、やがて何かに気が付いて、さっき置いたばかりのスマホを弄り始める。
「ねえ、子宮頸がん検診って、前日にセックスしてもいいやつ……?」
律儀な申告にずっこけそうになったけど、確かにそんな予定があるって言ってたっけ。よくそんなことにまで気が回るな、と感心してしまう。
「ボクが知るわけないだろ。ていうか、それネットで調べて出て来るの?」
「えーと……わ、あるある。検索候補に『子宮頸がん 検診 前日 仲良し』って出る。すごいなあ」
なんでもかんでもネットで調べて……と大人が呆れるかもしれないけど、こういう時は間違いなく便利って思う。ページを漁っていた彼女は、半泣き半笑いの顔で転がりながら、こっちに戻ってきた。ずーんと音がしそうな表情で、ボクの胸に顔を埋めている。
「一時的に細菌が増えて検査の支障になるかもしれないから、ダメですって書いてあった……」
「……〝性行為〟じゃないからセーフってことはない? ボクとなんだし」
「人体だろうと玩具だろうと挿れてたら同じじゃない!? っていうか、その基準で照らし合わせると、そもそもどっからどこまでが〝性行為〟なの? 生殖器を舐めたり、体へタッチするのも? こうやってただ隣で抱き合ってるのも入るの???」
そう言われると、たしかによく分からなくなってきた。
一応ボクなりにフォローしてみたけど、結局は我慢するつもりらしく、メロは半泣きでぐちぐち言いながら、脱いでいた下着とズボンを身に付け直し、悲壮な顔で布団を被る。
あまりの健気さというか真面目さに、思わずちょっと笑ってしまった。
「どちらにしろ、明日届くんでしょ。少しの間だから。今日は添い寝で我慢して」
「私は、やりたい時にやりたいんだよぅ……。折角精神的にもそういう気分で、時間もあって、気候も申し分ないのに。なんでそういう時に限って……ヨハネさんとするためだけに、寝る準備してきたのに……」
なんとか、ぽんぽんと肩を叩いて、慰めながら眠りにつかせる。
それが、昨日の晩の話。
そして、今日。
検査のためとはいえ、まともな時間に早起きしてきたメロの態度を見れば、どれほど検査後のお楽しみを待ち侘びていたのかは、よく分かる。
奇しくも、丁度彼女の旦那が一日がかりで遠方へワクチン接種に行っていて、不在の日。人目を気にしなくていいってことも、あったんだろうな。
朝から布団を干したりシーツを洗ったりして完璧に環境を整え、歩いて検査に行った後、荷物が届く時間帯までのほんのわずかな間、耐えきれなかった彼女が先んじてささっと一回
けど、問題はその後だった。
指定していた2時から4時の間に、例の荷物が届かなかったのだ。
番号追跡を見ても、最寄りではない県内の郵便局から先に荷物が動いておらず、彼女は首を傾げはしたものの、もう半分諦めたようだった。
「まあ、昨日祝日だし、まだ郵便局が通常営業してないんじゃない?
それならそれで、明日にでも来るだろうから、楽しみが伸びるだけだと思えばいいよね」
そう自分に言い聞かせながら彼女は怒っていたけど、お気に入りのカップでコーヒーを飲みつつ、プリンをつついているうちに機嫌は完全に直ったらしい。
ボクもそれに同意したし、いっその事、本当にその通りに荷物が遅れて、来なければよかったと思う。
何故か5時くらいに――彼女がとっくに諦め、しかも旦那が帰って来るか来ないかという、かなり際どい時間帯に、それは届いてしまったんだ。
「……」
動作確認も兼ねて、段ボールの中身を開封したまま黙り込んでしまった彼女の気持ちもわかる。
なんで、あと一時間早く届いてくれなかったんだろう。
ボクが使うわけではないとはいえ、彼女が痛いほどそう思っているのは想像に難くない。
単にヌければいいとかじゃなく、彼女がいつも雰囲気や快感の盛り上がりを何より重視して、相当の時間を掛けなければ気持ち良くなれないことくらい、ボクは知ってる。
ちらり、と彼女が赤色のスマホを見た。
彼女がさりげなく旦那に帰宅時間を聞こうと思い、連絡したLINEの返信はなし。
時計を睨み、彼女がばばっとシャワーをしに、脱兎の勢いで風呂場へ駆け込む。
「使ってみたい。どうしても」
「さっきヤったのに!?」
「私だってそう思ってるよ! もっかい気持ちを盛り上げなきゃいけないのは辛いよ! けど、今を逃したら夜まで時間がない……っ、大丈夫! 40分あれば一回くらいはイける! とりあえず使用感だけ確かめて、残りは夜じっくり楽しむってことにするから!」
半泣きで、慌ただしく上の衣服を、触りやすく綺麗なTシャツに着替えていた。
なんか……そこまで計算込みで自慰行為に勤しまないといけない彼女が、哀れに思えてきた。
時間を気にして追われる中では、上手く快感を生みだせない事くらい、彼女も了承済みだ。
それでも慌てるのは、本当にこの新しい玩具を楽しみにしていたからなのだろう。
体を慣らし始めた彼女が、途中でスマホの着信に気付いて、片手で返信しながらガッツポーズを取る。
「よかったぁ……! 6時過ぎないと、接種会場から職場に帰って来ないって! てことは、そこから帰宅する時間を加味すれば、6時までに終わらせてそこからご飯を炊けば完璧……!」
僅かな時間稼ぎに過ぎなくても、思わぬラッキーに彼女が喜んだのは言う間でもない。
それからの彼女が、短い時間を掛けてどうやって体を濡らし直し、どれほど歓びに身を捩らせていたのかも……見てたけど、今書くのは控えておこう。
予定通りならば、一回は絶頂に達せたはずだったし、事実彼女も、もうすぐそうなりそうだった。
目を閉じながら、彼女がゆっくりと高みを目指して上ろうとしていたその時――がちゃり、と鍵の回る音が聞こえた。
心地よい音楽を中断された人みたいに、彼女がばちっと両目を開く。
そして、そこからの彼女の判断と行動は、実に速かった。――本当に。
「おかえり~!」
何事もなかったかのように、股から引っこ抜いた玩具を放り出して一瞬で体を跳ね上げ、万が一と言って傍に用意していたショートパンツを穿くまで、僅か3秒。
ドアを開けて帰って来た彼女の旦那に、すたすた歩いて出迎えた彼女を怪しむ様子はまったくない。
「6時前に帰って来れたわ~。なんか、6時くらいに職場着くのかと思ったんだけど、ここまで直接送ってもらえてさ」
「そうなんだ。よかったね!」
……にこにこと部屋の電気を点けながら会話に応じる彼女の背後に揺らめく殺気が、ボクにだけ見える。まあ、そうだよね。多分、あの様子じゃまだイってないと思う。一番いいところで、強制終了されなきゃいけなかったんだから。
本当に、何ていうか、最初から最後まで間の悪い一日だ。
ワクチンを打ってきた旦那の容態を聞いたり、その無事を喜んだりしながら、さりげなく洗面所に立ち、今さっき使っていた玩具をさっと洗って隠すのにも余念がない。夕飯は昨日の作り置きでいいよね、と話しながら、台所で平然と米を研ぐ彼女の傍に立ち、ボクはそっと聞いた。
「……よく誤魔化せたね」
「別に玩具使ってることは知られてていいんだけど、今さっき使ってたってバレて、からかわれたりしたら嫌だからね。死んでも隠す。まあ、さすがにちょっとろれつが回んなくなったり、脚ガクガクしそうで焦ったけど。それほど効く玩具だったってことで」
飄々とそうは言うけど、悔しさで拳が震えている。
彼女の旦那が先に風呂に入ることになり、完全に姿を消すと、メロはもう怒りと欲求不満で半べそ状態だった。頭を掻き毟りそうになりながら、イライラと机に突っ伏す。
「もうやだ……もうやだぁ……! ねぇなんで!? 6時まで帰って来ないって言ってたじゃん!? なんで早く帰って来んの!? バカなの!? ねえ!」
今さっきまでの夢心地を返せ、と言わんばかりの、恨みに溢れた泣きそうな顔。
まるで彼女が、旦那が大キライで帰って来て欲しくない人みたいだけど、あくまで一人きりで勤しむ時間が欲しいだけ、っていう理由ありきの発言だということを、ボクが代わりに弁明しておこう。別に誰も読んでないと思うけど。
「ボクからはもう何も言えないけどさ……旦那が予定時間より早く帰って来るっていう、万に一つの可能性を徐さなかったあんたの危機管理能力はさすがだって思うよ」
「なんとなくそんな予感がしたんだよ……叶って欲しくなかったけど。愛理だったら、パートナーが一人エッチしてるところ見れてラッキースケベに発展するからいいだろうけどさぁ。これ、自分の身に起こると全然嬉しくない」
一応、今だって旦那の入浴中は時間がある……と言えるはずだけど、さすがにここまでくると心が折られたみたいで、メロの文句はぶちぶちと止まらなくなっていた。
「なんで宅配、時間通りに来てくれなかったの……? ねえ……最近ずっと鯨氏在宅勤務だから、今日だけだったんだよ、昼間に家で一人で楽しむチャンス……
え、まだ火曜日だよね? 今週もうずっと家にいるからさ……水、木、金、土、日……少なくともあと五日はずっと同じ屋根の下ってこと? 安心して一人になれないってこと? し、信じられない……我慢出来るはずない……」
蒼白になりそうな勢いで、絶望に震えているメロ。
こうして、やり場のない怒りをパソコンに叩きつけている彼女を、今ボクがここで眺める羽目になったというわけだ。
「……夜は? 昨日は襖閉めても怪しまれなかったでしょ」
「検診も入れたら、今日もう3回も物突っ込んでるんだよ……? あんだけ舞い上がって興醒めしてを繰り返したら、もう楽しめる自信ないよ……
それに、そんなに何回もちび達を放って寝れない……」
そう言って、またべそべそと俯く。
確かに、興冷めさせられたのが悔しいって思う気持ちは消えはしないし、そういう不快要因が積み重なるにつれて、快感を得るための集中力は下がっていくし、イライラだって募る。
旦那と寝室が離れているとはいえ、物音が聞こえるのではないか、と危惧するよりは、誰もいない一人きりの家が、どれほど理想的な環境かということも、理解はできるよ。
けど、たまにはいいんじゃないかな。ちび達に目を瞑ってもらっても。
あんたが、ずっと発散できずにストレスを溜めるよりはさ。今日が無理でも明日。明日が無理でも明後日。あんたの大事な道具は、一度届いたんだから、消えはしない。
そうは言いたいけど、もう少し落ち着いてから後にしよう、と思い、ボクはそっと溜め息を吐く。
――体が弱い割に、結構性欲モンスターだよね。メロって。
それに付き合えるボクの方も、どうなんだって感じだけど。
それに……ボクが彼女とすることを受け入れてしまってから、彼女の欲求が高まってしまったんだとしたら、正直なところボク自身もちょっと、一抹の責任を感じる。
自分やアイリの指先で快感を得て満足していた彼女に、本能的な何かを目覚めさせてしまったのかも……って。
いずれにせよ、離れるつもりはないから。それで、彼女が安心したり、安らいだりしてくれるなら、ボクは彼女がどんな人でも、いくらでも傍にいたいと、そう思ってるんだ。
「ねええ……私は! セックスが!! したいんだよ!!!
あやめさんや愛理さんは、無理なくそういう欲求を自然と受け入れてくれる相手がいて楽しめるのに、どうして私はダメなのぉ!?
ねぇ! せめて邪魔をしないでぇ! 私がしたい時にしたい人と溺れられる自由をくれ!!!」
……そう。それがたとえ他の人間には理解できない、ちょっと頭のおかしい事を叫んでいる女性だとしても。
何ちょっといい話風に終わらせようとしてるんだ、って? 生憎だけど、それもやさしさってヤツだよ。ボクにとっては、大事な人なんでね。