TS娘はふたなりゴブリンの肉床! 作:六花リンデル@TSメス堕ち信奉民
風が頬を撫ぜ、ざわざわと葉擦れの音が聞こえる。
目覚めれば、そこは木漏れ日が射し込む清浄な雰囲気の森の中。
意識はしっかりとしていて、夢を見ているという感じはしない。
俺の死や女神との邂逅、異世界転生はちゃんと現実の出来事だったようだ。
まあ、死んだ時の激痛は本物だったし、夢だとは微塵も思っていなかったが。
……ここが異世界アルディロンドか。
予想していたよりも静かな始まり方だな、などと思いながら木に背を預ける形で座り込んでいた俺はゆっくりと立ち上がった。
周囲には人や動物の気配は無く、魔物とか怪物とかそんな感じの危険そうな生き物だって当然影も形も無い。
もしかしたら、この森は聖域的な何かなのかも知れない。食べ物や飲み水さえあれば、一応のセーフティポイントにはなるだろうか。
とはいえ、何が食べられて何が毒みたいなのは前世の知識が当てにならないだろうから、今はここに留まるという選択肢は無い。
一先ずは街を目指すべきだろう。
自分の物語は異世界転生物でも、結構オーソドックスな部類に入る導入だったし、序盤の基本的なところはテンプレートに従って動く方が良いはず。
幸い、森自体は深くなさそうだ。一時間くらい歩けば抜けられるだろうか。わくわく。
「……?」
しかし、俺の高揚はすぐさま冷めることとなる。
歩き始めてまず最初に感じたのは、身体の違和感だった。
「え、胸? あれ、声も……」
ふよんふよんと胸元で自身の身体の一部が揺れる感覚。
声も男の物とは思えないほど高い。
一つ二つと違和感に気が付き始めると、180cm近くあった身長から考えると明らかに低い視点や、視界の端に揺れる綺麗なブロンドの髪の毛などにも意識が向く。
服装だって、RPGに出てきそうな町娘のような格好だ。勿論、俺に女装の趣味は無いし、俺は制服を着ていたはずである。
腕やスカートから覗く脚を見遣れば、白磁のように白く透き通っていながらも、何処か健康的な印象を抱かせる綺麗な肌があらわになっていた。
日本人の血しか流れていない俺の肌は黄色人種らしい色合いで、髪の色だって金ではなく黒だった。ぶよぶよのオタクじゃ締まらないと鍛えていたからそれなりに筋肉もあったのだが、それら全て見る影もない。
まるで根本的に正反対な別人になったような感覚だ。
今の自分の現状を理解するのに、一番手っ取り早い方法を試す。
「……無い」
スカートをたくしあげて、その下の白のショーツを捲ってみれば、俺のスーパー兵器の姿はどこにも無く。
そこには、ツルリとして無毛の丘が広がるばかりであった。
これは……。
「俺、女になってる……?」
TS転生。
男から女、はたまた女から男に
それしか浮かばなかった。
某小説サイトでもいくらか読んだことはあるが、面白いと思いこそすれ、自分自身がTSしたいという願望は芽生えなかった。こればかりは完全に想定外だった。
そういうパターンだったか……マジか。
軽く目眩がする。いきなり絶望を叩きつけられた気分だ。
多分、物事を円滑に進めるための容姿チートとして、この見た目が選ばれたのだろう。顔は確認する術が無いので分からないが、恐らくはこの世界でも上位のレベルで整っているはず。
しかし、たとえ容姿が整っていたとしても、これでは嬉しくない。
俺は男が良かったのだ。
どうして女にならなくてはいけないのか。別に男のままで良いではないか。未練タラタラである。
こんな姿で、どのような顔をしてあの二人に会えば良いのか。
クラスのオタク仲間はTSモノもイけるという口だから喜ぶかもしれないが、俺は全く喜べない。
「……はぁ」
出鼻をくじかれた俺は、性別の変化という予期せぬ出来事によって足を止める他なかった。
□
「ステータス、オープン」
たっぷり10分ほど打ちひしがれた。
気を取り直した俺は、自分の身体のことを気にしないようにする為にも、情報収集と気分転換を兼ねて歩きながら色々と試すことに。
「うーん。ステータスがあるタイプの異世界じゃないのか」
情報開示と念じたりとか、ステータス!と叫んたりとか、虚空に指を滑らせてみたり。
その何れも反応は無し。
ステータスには少なくない憧れがあったので残念。
しかし、自然と頭に浮かんだ言葉を紡いでみれば、
「……『ブレイズ』」
ボワッと開いた手のひらの中に、青い炎が浮かび上がる。
熱さは感じないが、これが炎であることはさっき葉っぱを燃やしてみたので把握済みだ。この魔法のようなもの、行使している人間には直接的に害が無いらしい。
こうして普通に魔法が使えるということは、この世界が普通にファンタジー要素を持った、あんまり設定が捻られていない世界であるということだと思う。というより、下手に設定が面倒な世界だと立ち回りを考えなくてはならないので困る。
もしも俺だけしか魔法が使えない、もしくは使える人間が希少だったり特別な血筋が必要だったりする場合は、俺という存在が目立ち過ぎて良からぬ事態を招くなんてこともあるかもしれないため、しばらく魔法は使わずに行こうと考えている。
一にも二にも、女神からの使命を果たす為に頑張るのが最優先。この身体のことも、使命を果たしたら女神がきっとどうにかしてくれるだろう。してくれ。
ちなみに、森の中は腰に帯びていた刀を振り回しながら道無き道を往った。
よく分からないが、凄そうな刀なので女神からの餞別か何かだと思う。財産は服とこれだけなので大事にしよう。
「マイナスイオンも良かったけど、やっぱり陽の光が良いな」
そうしてしばらく歩いていると、俺は無事に森を抜けることが出来た。
木々に遮られていた陽の光を全身に浴びて、軽く伸びをひとつ。
ぷるんっと揺れた小ぶりながらも形の整った胸に、違和感と羞恥心を抱きながらも、気にするとまたさっきの得も言われぬ絶望感がぶり返して来そうなので、それらを無視するように務める。
やっぱり、一時間もかからない浅い森だった。
動物などに会わなかったのは気になったが、スムーズに来れたのでむしろ良かったかも知れない。
見渡す限りの平地の中、遠くには一軒家くらいの高さをした防壁に囲まれた街が見える。
俺が森から抜けてきた道から少し歩いた所に、街の方から森に繋がる石造りの街道があるのを見るに、この森は全くの手付かずではなく人間もそれなりに出入りをしているのだろう。
「最西端の街、クローラ……か」
街道に沿って歩いて行けば、途中に看板。
この先にある街は、最西端の街クローラと言うらしい。
文字は普通に読めた。
気になったので、試しに引き抜いた剣で地面に文字を刻もうとしてみれば、そちらも問題無い。この調子なら会話も問題無さそう。そこら辺の翻訳機能は、転生特典とかではなくデフォルトで備わっているようだ。
TSの件はしばらく根に持つが、こういうところは本当に頭が上がらない。
「よーし、頑張るぞ……!」
異世界転生後、初の人間との出会い、異世界の街という知らない文化との接触。あるかも知れない冒険者ギルドや、学園。
まだ見ぬそれらに心を躍らせながら、俺は街への歩みを進めるのであった。
次回からしっかりエロを入れていく予定……!