転生前は人間のオスだったエルフの聖女、婚約者に嵌められ淫魔になり追放されたらしい 作:芥目たぬき
他人棒と他人穴は使用不可のルールが適用されています。
ユタ子の生涯においてまんこに咥えられるのはごしゅくんチンポか、ごしゅくんがいじわるで挿れるおもちゃくらいです。安心してください。
あとレズもないです。残念がってください。
「
その男と初めて会ったのは、自身が初めて仕事をする少し前だった。当時、まだ子供だったオレはその人物がとてもとてもすごい人だと言うことを、先生たちから教え込まれていて。
「はじめまして、おとうさま」
「さぁ、こちらへ来なさい。お前の話は聞いているよ」
暗い室内だった。
蝋燭の火が最低限しかつけられていなくて、しんと静まり返る館だった。足元は豪華なカーペット、壁には豪華な装飾品が飾られている。後ろには先生達が控えていて、オレは言われるままにその男の元へと近付いた。
人間の国の柱として、王を補佐し続ける———我が国の宰相。
すなわち、この国の中枢。オレの全てを構築した存在である。
生まれてからずっとずっと、人殺しの技術を徹底的に教え込まれていたオレ達の中でも特に
後ろに控えている先生の緊張が伝わるものの、オレは平常心を保ちながらおとうさまの前で傅く。
そんなオレと膝をついて同じ目線になった男は、じっとオレの顔を覗き込んだ。
「さぁ、契約をしよう。お前の魂は熟れて、きっとあやつが満足するものへと変わるからな」
「……けい、やく」
「お前は何も不安に思わずとも良い。ただ我が国のために、その肉体だけでなく魂までもを捧げればいいだけなのだから」
嬉しいだろう? と問いかけられた。
オレはわからずに、頷く。
「
「ふふ、うふふふふ……」
おとうさまの影から、ずるりと女が現れる。
灰色の肌をした女だった。目は黄金色に光り輝き、猫のように縦に割れた瞳孔をコチラにむけている。黒い羽根があたりに散らかりながらも、羊のようなツノを生やした女はオレを見つめていた。
それは、悪魔だった。
魅惑的な女。おぞましい女。
悪を体現したようなソレは、うっとりと微笑みながらも舌なめずりをしている。真っ青な舌が、ちろりと見えていた。
「私はルシファー。人間を永遠に喰らって生きる、貴方達の隣人。多くの人々に幸福と、ほんの少しの人間を齧る悪魔」
「我が国の5000年の歴史と深い関係を持つ悪魔だ。王族の裏に隠れ、そして人類のためを願う人々の魂を啜っているのだ」
5000年を生きる、大悪魔。
長命で有名なエルフでさえも寿命はおよそ500年程度と言われているのに、その10倍の時間を生きているだなんて。
そうして、おとうさまも悪魔と契約をしていると明かされる。
契約したら死後、オレの魂はこの悪魔の胎で永劫に咀嚼され続けるらしい。5000年の間、国のために悪魔に魂を売った者達は全て彼女の胎にいるそうだ。
ひとつの美しい思想に殉じて、多くの罪を重ねる魂。
それを、彼女は餌とする。それを、5000年間味わい続けて生きてきた。
「国に、殉ずる覚悟はあるか?」
「あります」
「肉体だけでなく、その魂も全て捧げる覚悟はあるか?」
「あります」
オレは、男の質問に即答していた。
そうやって教え込まれてきたから。
オレが生きるのは、ただ人間の国のためだけである。故に、自身の持つ何もかもを捧げてもいいと本気で思っていた。
「素晴らしい……ふふ、とても残酷な運命を背負っているわね、ボウヤ」
「お前は実に悪趣味だな」
契約は魂に、その対価は人を超える力。
幼い頃のあの日、暗い室内でオレは悪魔に魂を売り渡したのであった。
* * * *
「この世に神はいない」
クスクス、と笑う女の声が辺りに響く。
眠るユターシャの身体を強く抱きしめて、オレは走り出していた。洞窟から抜けて、木々の間を飛ぶように駆けていく。
途中、ユターシャが素っ頓狂な声をあげるものの無視をした。そんなことよりも、あの悪魔がわざわざ出てきてしまった事———そして、すなわちあの男もやってきたことに焦っていたのだ。
足掻いても無駄だとわかっている。
それでもオレは逃げていた。どうにかして、この場から逃れたかった。
「この星を構成する、ただの自殺願望強めな壊れかけの法則があるだけ」
オレの行手を阻むかのように、目の前に扉が現れる。
それは地獄の扉。
苦悶の表情を作り、出せもしない声で叫び続ける亡者の装飾。紫色の霧に包まれて、静かに扉が開いていく。
オレの周囲全方位に扉が現れていて、もはや逃れることはできない。濃い紫の瘴気はあの悪魔独特の魔力で、そして甘ったるい臭いが鼻を掠めた。
「幸せと不幸の対比は運命として決まっているのです。さぁ、散々いい夢を見たのでしょう……?」
「
開いた扉の闇。そこから2人の人影が現れる。
濃密な闇の気配を纏わせた2人は、静かにこちらへと歩み寄ってくる。
「……ご主人様、あの人たちは?」
「敵、だ」
ユターシャを隠すように抱きしめて、オレはナイフを構えていた。
「その女を寄越しなさい。お前を相手に、手荒な真似をするのは骨が折れる」
「……断る」
「何故だ? 無駄な事はわかっているだろう。お前は私に勝つことはできない」
義父もオレと同じように、ナイフを構えていた。
オレに暗殺の技術を教え込んだ先生達が、この男から殺しの技術を学んだと聞いたことがある。
その構えは、オレが教えられたものと全く同じで、そして洗練された無駄のない構えだった。
どくどくと心臓から嫌な音がする。
死ぬのは怖くないけれど……だが、死にたくはなかった。ユターシャと共にどうにかして逃げなくてはならないのだから。
「たしかにお前は、最高の逸材だった。お前と同時に教育を始めたものは今では全て死に、お前を成功例として同じように教育を施したものはどれも凡骨でしかない。お前が逃亡してから追わせた奴等も、結局はすぐにお前に殺されてしまったわけだ」
「何が言いたい」
「なに、お前が夢を見てしまうのも無理はない。自分が誰よりも強く、どんな罪を犯そうがどれだけ人を裏切ろうが、切り抜けられると思ってしまったのだろう?」
淫魔に籠絡されて、憐れなものだな。
男はそう言った瞬間、オレの目の前にいた。
見え、なかッ……!
「———ッぐぅ!」
「やるな。だが甘い」
すぐさまユターシャを突き飛ばしてナイフを受け止める。ギリギリギリ、と刃渡りの長い刃物同士が嫌な音を立てていた。
歳を食ってるくせにとてつもない力強さで、しかしオレはそれを跳ね返す。体制を崩した胴体に一太刀を食わせようと突っ込むが、そう甘くいかずに男の足捌きで距離を取られてしまった。
あまりにも早く、あまりにも的確な攻撃。
オレが教え込まれていた基礎の基礎を、この男は完璧に理解している。
「淫魔の血肉はうまかろう? あぁだが、お前には失望したよ」
———私の最高傑作が、女如きにうつつを抜かすなどと。
「ッ……! 違う、お前にはわからないッ! サキュバスだからじゃない、ユターシャだから、オレはッ……!」
「馬鹿め」
止まらない攻撃。一般人では目に捉えるのが不可能なその早すぎる斬撃を、オレは掻い潜りながらも反撃の目を探す。
オレは絶対に逃げるのだ。逃げて、逃げて、どこまでも逃げてやる。
これさえ逃れられればッ……最大の難関である、この男さえ殺すことが出来れば。
だが。
「飢えた日蝕、紫の玉座は運命を背負う……あは、あははは」
「あ、あぁぁぁ、あああ———ッ!?」
義父の背後の方で何もせずに佇んでいた悪魔が詠唱を行い、そしてオレの背後で尻餅をついていたはずのユターシャが、声を上げた。
思わず振り返ると、ユターシャのツノが少しずつ変形しており、そして翼がどんどん溶け落ちていく。苦悶の表情を浮かべるユターシャに気を取られて、オレは———
「そんなにその売女が愛しいか?」
「ぐ、ッ!」
間一髪で、急所を避ける。
それでもナイフはオレの肉を確かに裂いて、気がついた時には血が派手に飛び散っていた。
だがオレにとっては自身の傷などどうでもよくて、守りたい大切な女の元へと駆け寄る。つるりとした闘牛のような長いツノはゆっくりと伸びながらも先分かれしていき、まるで枯れ枝のような形へと変容していった。また、翼も溶けて、骨だけのような見た目へと変わっていく。
あの悪魔の言葉で、ユターシャの身体が変容していく。
ガタガタと身体を震わせて涙を流しているユターシャを抱くと、彼女の身体にオレの血がついてしまった。
「ユターシャ? ユターシャ、何をされた?」
「違うッ……やだ、なに、これぇっ…….! 違う、ちがううぅぅッ……!」
はたして、何が起きているのだろうか?
羽が溶ける、そしてツノが伸びていく。その様子を、オレはただ見ることしかできなくて。
「違うぅ? 私はただ、貴方を本来の姿へと変えてあげただけよ?」
楽しげに笑う悪魔に向かって、服裏に隠していた暗器を投げていた。それは呆気なく義父に叩き落とされるものの、その女を強く睨みつける。
いつもと同じように、嗜虐に顔を歪めた悪魔。
何もかもをわかっているとばかりに嘲笑う、5000年を生きる悪逆非道の美しい化物。
「……おねがいします、おねがいします……それ以上は、やめっ……」
「私はこれまで何百人もの魔王を見てきた。多くの人々の運命を啜って生きてきた。だから、ねぇ……私にはわかるのよ」
ユターシャは、身体を縮こませて泣いていた。
少しずつ、少しずつ大きく枯れ枝のように変化していくユターシャのツノと、黒い骨だけのような形になっていく翼。
何が起きているのかわからなかった。
だって、魔術ならもっと攻撃性がある。まるで呪いのようなソレは、ユターシャの在り方を歪めているようだった。
「この残酷な世界のルールでは、魔王という存在は生まれなくてはならないし、世界を滅ぼそうとしなくてはならない。そうやって定められている」
「やめて……」
「世界を正常に回すための、強い自浄作用。それが機能するように世界は貴方を運命付けている。だから貴方にはもう生まれた時から、貴方のせいで多くの命が失われる事が約束されている」
「もう、許して……」
「魔王は多くの命を殺さなくてはならない。どうしても世界を恨むように、作られている。とある人は屈辱、とある人は家族を、そして愛を引き裂かれた者もいる」
「違う……わたしは、魔王じゃ、ない……」
「そしてまた魔王である貴方には、永劫この世界を恨まなくてはならなくなる運命が決定付けられている。貴方は果たして、何を壊されたのかしら? ふふ、残酷ね」
「いやだ……私、は……」
ユターシャは、泣いていた。
小さく縮こまって、まるで現実を逃避するかのように違うと繰り返しながら。
助けたかった。
だけどオレは何も出来ず、こうして見ていることしかできない。
「……ルシファー、それでは彼女は?」
「えぇ、やはり私の予想は当たっていました」
やはり、魔王はいたのです。
そう言って悪魔は、とてもとても楽しそうに微笑んでいた。
「なんで……やめて、くださいよ……」
「ユターシャ、ユターシャ……いいんだ。動かないでくれ」
「……せめて、貴方には知られたくなかったのに」
そう言って、涙を流しながらもオレを見つめるユターシャ。顔を歪めて、彼女の身を案じるオレの傷口に手を伸ばす。
か弱く光る魔術によって血は止まり、その代償にユターシャの手が溶け落ちる。魔族の身体は光の魔法に特に弱いのだから、人間の肉体を回復させる光魔法を使えば壊れてしまうのだ。
「憐れなものね。魔力は多いのに、魔術を使うと自身の身体が溶けてしまうだなんて……」
「何故、ですか」
ユターシャはオレの腕からゆっくりと起き上がり、そして立ち上がって義父と悪魔に身体を向けた。
その瞳は虚で、悲しみをたたえている。
「何故こんなことを、したのですか?」
「怒ってるの?」
悪魔は煽るように言うけれど、彼女は何も言わない。ただ静かに悲しみを湛えて、拳を握っているだけだ。
悪魔の笑い声が、冷たい森に響く。
「私には、人をたくさん殺さなくてはならない運命が背負わされている。人にとっても、それは有害でしょう? 何故、私を……魔王として作ろうとするのですか?」
誰も殺したくなんてない。
ただ、静かにご主人様と生きたい。
そう言って涙を流すユターシャは、魔王という存在とは思えない。
「ふふっ……あはは、んっふふふふ……」
「なにがおかしいのですか?」
「いいえ、何もおかしくないわ。ぷっくくく……続けて頂戴?」
何かを言いたげな、それでいて何も言うつもりがないのだろう悪魔を尻目にユターシャは義父に問いかける。
男は困ったようにため息をついて悪魔を睨んだ後に、ゆっくりと口を開いた。
「エルフは、酷く自分勝手な生き物だと思わないかね」
「……?」
「我ら人間の繁栄を憎み、妬み、そして魔王の再来を願っていた。人間だけが大地のエネルギーとやらを吸い尽くす悪の権化で、魔王が現れないから人間をほぼ全滅させるような兵器を生み出そうとしていた」
その話を、オレは知らない。
だがユターシャは心当たりがあるようだった。
———人間を、ほぼ全滅させる兵器?
「な、んで……それを、知って?」
「彼が、教えてくれたのだ」
ルシファー、
そうして、悪魔の扉からゆっくりとオブジェが現れる。綺麗な白い霧とともに静かに、キラキラと神秘的な光を纏わせながら。そのガラスケースは美しい彫刻が施されていて、まるで鳥籠のような形状をしている。
閉じ込められているのは、1人のエルフの首だった。
エルフ国第二王子———ユターシャの、婚約者。
その生首は、綺麗に保管されていた。まるで寝ているかのような穏やかな表情で美しい花に彩られ、そして綺麗な指輪がひとつ飾られている。
キラキラと輝くように魔術がかけられていて、そしてその台座には「我、人を愛したり」と文字が彫られていた。
ユターシャが、小さく悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。慌ててオレは彼女を受け止めて、浅い呼吸を繰り返すユターシャの肩を抱きしめた。
「彼が、教えてくれたのだ。
魔王が現れないことで人間の消費文明は日に日に増していく。エルフ共は我々人間が繁栄することで必要となる大地エネルギーの供給量に不安を覚え、そして莫大な魔力を持つ聖女を使った兵器を作っていた。
人間を滅ぼすための兵器。
その砲丸が貴方だ、ユターシャ」
……
———は?
あの優しい聖女のユターシャがそんなことするわけがない。人を皆殺しにするような、そんな兵器に携わるわけがない。だが、義父が確信を持って語っているのも事実だ。
信じられなかった。信じたくもなかった。
でも確かに、目の前にいる彼女は震えていたのだ。
涙も流しながら、何かに耐えるかのように拳を握りしめているだけなのだ。
彼女の顔を覗き込むと、ユターシャは一言「許して」と呟いた。
「……許されるものか。許されるわけがない、この悍ましい魔王め。お前は、聖女の皮を被ったまま人々を殺そうとしていた。魔王としての運命を、遂行しようとしていた」
「うぅ……うぁ、ああああ……っ!」
義父の言葉に、ユターシャは肩を震わせて泣き続ける。違う、彼女は人を傷つけようとなんかしていない。
だって彼女はずっと、苦しんでいたじゃないか。
オレの知らなかったユターシャ。
綺麗で、美しくて、いつもオレを優しく愛してくれていた彼女の———本当の、姿。
「貴方の運命は、聖女のままで魔王としての事を成すことにあった。だけれどこの優しい勇者の手により貴方はエルフの国を追放され、そしてボウヤと出会った」
優しい勇者、と言って悪魔が第二王子の生首のガラスケースを撫でる。それはまるで、ペットに話しかけるような仕草だった。
悪魔の笑みが深まる。
愉悦に歪む瞳が、ユターシャを射抜く。
「ユターシャ……そう、なのか?」
その瞳にはもう、光はない。
人形のように虚ろな、死んだ魚のようになってしまった。
まるで幽霊のような、弱々しい声で……絞るかのように、ごめんなさいと呟いている。
「ごめんなさい……私は、私は……」
「息子よ、その女を渡せ。穢らわしい売女を。我が国を滅ぼさんとしていた、極悪の魔王を」
わからない。何を言っているのかわからない。
オレは国のために生きていた人間だった。だけどそれを裏切って、ユターシャと逃げ出していた。
だが、そのユターシャが実は魔王で———人間を滅ぼそうとしていた———
わからない。
なにも。
「ユターシャ……」
ただ、オレは静かに立ち上がる。
なにもわからなかった。ユターシャが魔王だというのも、人を殺す兵器というのも、何もかもわからなかった。きっとそれらは全部何かの間違いだと言われた方がしっくりくる。
だが、今目の前で語られたことはきっと事実なのだろう。ユターシャの涙が、そう語っている。
だからって、なんだというのだ。
オレがユターシャを愛し、そして守ると決めたことに変わりはない。
「約束しただろう。全部許すって」
きっとオレは、とてつもない大罪人なのだろう。
人を殺そうとしていた魔王を愛して、挙句に守ろうとしているのだから。幼い頃から忠誠を誓うように育てられた人間の国を裏切り、1人の女のために全てを捧げようとしているのだから。
それでも、オレは立ち上がった。ナイフを構えて、今までで1番深く集中する。
「お前がオレを救ってくれるなら、オレがお前を全部許すから」
オレ達を嘲笑う悪魔と、ナイフを構えた義父と対峙する。
「ご主人様……」
「愛してる、ユターシャ」
覚悟は出来た。もう戻れないのだろう。
オレは、ユターシャの望む世界を共に切り拓くのだ。たった2人だけの、ちっぽけで幸せな生活を送りたい。それだけが望みなのだ。
そうしてオレは刃物を振り下ろした。