(ぱっつん)ヘアと彼シャツとはだし 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
「ふはぁー♪ いやー、良いお湯でしたー」
ほこほこと湯気を立てながら、脱衣所から出てきたおかゆがサッパリとした笑顔を見せた。タオルを大雑把に巻いて、髪の毛の湿気を吸わせているようだ。
続いて自分も雨水を流すために、着替えを持って脱衣所へ向かう。すると当然、おかゆの姿が視界に入るのだが、彼女の予想外だった姿に目を剥いてしまう。
「あ、着替え貸してくれてありがとうねー。ゆったりしてて、かなり良い感じだよ」
ひらひらと、余った袖を陽気に振ってくれるのはありがたいことだが、お礼よりも先に言うべきことがあるだろう。
おかゆは自分のワイシャツとカーディガンだけを羽織って、下に何も穿いていなかった。だというのに、戌神家から貰ったおかゆ専用のスリッパにはしっかりと足を通し、リビングへと入ってきたのだ。
そのちぐはぐで扇情的すぎる姿に、驚かない男はいないだろう。こちらの慌てている様子を見て、おかゆは不思議そうに小首を傾げる。
「どうしたの? このお洋服、きみが用意してくれたものだよね?」
おかゆは何かを意図してその格好になったわけではないようだった。
どうやら、ルームウェアのハーフパンツを貸し忘れてしまっていたらしい。
おかゆに謝って、急いでタンスを漁るが、その忙しなく動いていた肩にポンと手を置かれる。
「あー、ズボンなら気にしないでいいよー? 僕、これぐらいラフな格好の方が気楽でいいからさぁ」
おかゆは身体をゆらゆらと揺らしながらそう言うが、その衣服だけではあまりにも心許なさすぎるだろう。
なにせ、シャツとカーディガンの下に着られるものは何も貸していない。以前、泊まりにきていたおかゆにTシャツを貸したら「おっぱいがきつい」と言われていたためだ。
ボタンの隙間から覗くおへそや、ブラのフロントが見えない膨らみの谷間が艶めかしい。タンスを漁る自分を覗き込んできたせいで、トップバストの豊満な隆起が露わになっていた。
ワイシャツのだぼついた裾から、ちらちらと脚の付け根や危ない肌色が見えてしまっている。おかゆが少しでも動くたびに、男の欲情を煽る熱風が舞い踊っていた。
「やーん♡ そんなにジロジロとおっぱいばっかり見ないでよ、えっちー♡」
こちらのスケベな視線に気付いたのだろう。おかゆは恋人の背中に絡み付き、うりうりと頬を押し潰してきた。
すぐにシャワーを浴びるから、と。上半身裸のまま油断していたのがよくなかった。
こちらの無防備を嘲笑うように、魅惑の暴力が襲い掛かる。ぷにぷに、むりゅむりゅと背中にあたる健康的な女の子らしさが、そのハリの良さを主張してきていた。
シャツ一枚越しに感じる、たわんで、融け込んでくるかのような流体的な温かさが身に沁みる。ふたつの可愛らしいぽっちが、いたずらに背中をつついてくるため神経が敏感になってしまう。
そのおっぱいの優しい肉圧力は、男の衝動と想像力を掻き立てる。シャツの向こうにある、なだらかな肌の隆起や、双丘の頂点に咲く薄桃色の花が脳裏をよぎる。
こちらの意思を介在させず、強制的に、胸の中に男の情熱を注がれるようだった。
「ふふーん♪ 僕よりもきみの方が露出が多いんだから、文句なんて受け付けないよーだ!」
そう言いながらおかゆは離れたが、女の子の甘い残り香とおっぱいの感触は消えてくれない。
それに加えて、おかゆは隙だらけの胸を隠そうとしないまま、普段の生活に戻ろうとしている。あろうことか、いつもの部屋デートと変わらず、そのままベッドに寝転がって漫画を読み始めた。
「……あれ? ここ、前も読んだ気がするなぁー……こっちかな?」
ベッド脇の本棚から漫画を取るために寝返りを打ったせいで、シャツの裾がぺろりとめくれて、お尻の肉の丸みが半分近く見えてしまっている。
その恥ずかしい格好に気付いているのかはわからないが、おかゆは何も気にする素振りも見せなかった。
「……んー? 僕に見惚れてくれるのは嬉しいけどねー。きみも、早くサッパリしてきちゃった方がいいと思うよ?」
いつまで経っても浴室に向かう気配がないことを察したのだろう。こちらを見るために横向けた身体は、女の子の魅力を強調して見せていた。
微笑を浮かべている整った顔立ち。シャツの隙間からぷるりとこぼれ落ちそうな乳房の豊穣。光を吸い込むかのような艶美を孕む下腹部。そして、重なった脚で隠された股間の見えそうで見えない花園の潤い。
その全てが誘引の甘美な香りを放ち、興味と心を釘付けにさせてくる。
「今の僕の格好さー、抱き枕カバーとかで出したら、みんな喜んでくれそうだよねー。きみも、僕が恋人だっていうのに買いそうだもんね♪」
ころころと鈴の音のように笑ったおかゆが、ぱっつんヘアーの庇の下から、妖しく煌めく眼光を細めて舐め上げた。
自分の可愛さを理解し、惜しげもなく披露するタイプの女の子には、男は絶対に勝つことができない。
その真理をむざむざと見せつけられて、ドライヤーをベッドに押し付けるように手渡して、逃げるように脱衣所へ逃げ込もうとする。
「……うふふっ♡ やっぱり、きみはかわいいねー♪ 僕のこと好きすぎー♡」
あどけなく笑っていたおかゆの視線が、こちらの目立っていた下半身に向いていた。収まる気配がない欲情のことは、きっとバレていたことだろう。
初夜を迎える童貞のように落ち着かない心を、力でねじ伏せるように。荒っぽく身体を洗い流して気を紛らわそうとした。
しかし、その浴室には石鹸の香り以外にも、嗅ぎ覚えのある色香が残っていた。その残り香が、どうしてもおかゆのシャワーシーンを妄想させてくる。
結局、身体を洗い終えてもドキドキは収まらなかった。そして、浴室から出てもなお、おかゆの色っぽい格好に不意打ちをされて心を跳ねさせる。
この家にはもう安息の地はないらしい。それは絶望的な事実であるはずなのに、この甘酸っぱい恋色の雰囲気には、はにかむばかりの嬉しさと幸せしか感じなかった。