魔法少女リリカルなのは 愚王シリーズ R-18 作:ヒアデス
エリザとリヒトという二人の美女を妻にしてからしばらく経つものの、あの二人はいまだにぎこちないままだ。
エリザもリヒトも相手の事を嫌っているわけではなく、すれ違った際には挨拶だけでなく軽い雑談を交わしたり時折一緒に茶をすることもあるが、互いに妙な遠慮をしているところがある。
特に問題が起きているわけでもないが、エリザとリヒトの両方を娶ることにした俺としては何とかしてやりたいと思う。
そんな時に、ミッドチルダにいるサニーから俺のもとにあるものが届けられた。
サニーが届けてきたものはボトルに入ったありふれた酒だった。なんでもテスタロッサからもらったものらしいがサニー自身は下戸なため、縁がある俺たちに送ることにしたとのことだ。あいつ酒が飲める齢だったのか。
テスタロッサが見つけてきたこの酒はミッドチルダでも一部でしか流通していない、魔力が込められた魔法酒とのことだが、城の官吏が毒見のために試飲してみても特に問題はなかったとのこと。その後俺も一杯だけ飲んでみたがなかなかうまい酒だった。
何はともあれ、これはいい機会だと俺はリヒトとエリザの二人を呼んで例の酒を一緒に飲むことにした。
俺からの誘いにエリザは複雑な顔を見せながらも了承し、リヒトは正妻であるエリザに遠慮して辞退しようとしたが、そのエリザが了承していると説いて強く誘い、やっと首を縦に振ってくれた。
それがまさかあんなことになるとは、この時は夢にも思っていなかった
酒が届いてから数日後、俺とリヒトとエリザは城の談話室を使って三人で酒を共にすることにしたのだが……。
「それじゃあとりあえず、俺たちの息災と今の生活に乾杯」
…………。
「……乾杯」
「……乾杯」
俺が音頭を取ってから長い間を空けてエリザの方から乾杯と告げ、リヒトも彼女に続いて「乾杯」と言って俺に向けてグラスを掲げ、次いでそれぞれ横にいる相手の方にグラスを掲げ薄赤色の酒を口につける。早くも空気が重くなってきた。
そんな空気を払うために俺は二人に尋ねる。
「どうだ二人とも? 今の関係になってしばらく経つが、ここでの暮らしで何か不自由しているところとかはないか?」
それに対しエリザは、
「いいえ何も。このお城での生活も慣れましたし皆様私にとてもよくしていただいてとても居心地がいいです。何よりケント様が側にいて――いえ、何でもありません」
彼女に続いてリヒトも、
「私も特に不自由などしていません。むしろ今のような待遇は私ごときには過ぎたものかと。もしそれを不愉快に思う人間がいるのなら私は――」
「まさか! そのような方などいるはずがありません。そうですよねケント様?」
「あ、ああ。エリザの言う通りだ。リヒトは何も気にせずにどんと構えているといい」
エリザに促されてそう答えた俺に、リヒトは「……はい」と言って再び酒に口を付けた。
やはり
俺への想いが含まれた言葉を途中で止めたエリザといい、二人ともやはり相手に遠慮し合っている部分がある。
張り詰めてきた空気の中でグラスの底に残っている薄赤色の酒を飲み干すと、体が少し熱くなってきた気がした。
それからしばらく経ってボトルの中身も半分ほどになってきた頃、ふとエリザはリヒトに聞いてきた。
「ところでこの後はどうしましょう? 昨日の相手は私でしたし、今夜はリヒトさんに譲るべきでしょうか?」
「要らぬ気遣いはするな。エリザは王妃であり主との間にお世継ぎを設けなければならない立場だ。主から相手に求められた時ならともかく、そうでない時はお前が優先的に主の相手をさせてもらうべきだろう。私はこれを飲んだら部屋に戻るから、お前は心置きなく主との夜を過ごすといい」
「そういう訳にはいきません。そんな理由でケント様の相手を譲られても面白くもありません……もちろんケント様とはしたいですけど……」
エリザは小声で付け足して俺の方をちらりと見る。
……いつの間にこんな話になっているんだ? さすがにこの状況で今夜の相手を選べというのはあまりにも酷な要求だろう。
聞いてないふりを装うためにエリザを見ずに酒を口に含むものの、彼女の口から出たのは先ほどまでよりはるかにとんでもないことだった。
「そこでなんですけどリヒトさん。もういっそ今夜は私とあなたの二人でケント様の相手をさせて頂くことにしませんか?」
――ブッ!
「――主!? 大丈夫ですか?」
「あらあらケント様、はしたないですよ。……それとも私たちの体に唾だけでなくあなたが口に含んだものまでつけるおつもりですか?」
エリザの一言に俺は飲もうとしていた酒を噴き出し、むせ込む。噴き出した酒は運良く二人にかからずにすんで、リヒトは席を立ち俺のそばに駆け寄って背中をさすり、エリザは俺に注意しながら嫌がるそぶりは見せずそんな挑発的な事を口にした。
そんなエリザにリヒトは、
「エリザ、いくら妻とはいえ失礼だぞ。いきなりあんなことを言ったら主とて驚かれる……ただ、私たち二人で主の相手を致すというのはいい考えかもしれんな」
「えっ!? リヒト? お前まで何を言って――」
咎めるかと思いきや、リヒトまでもがエリザの妄言に同調するようなことを言う。思わず彼女の顔を見る。
リヒトは顔を赤くしながらエリザ以上に熱っぽい目で俺を見つめてくた。今にも口づけを仕掛けてきそうな表情だ。しかしこの部屋には俺たち以外にもう一人いて……。
「あらあら、お熱いですねお二人さん。でも今日は私がいることもお忘れなく」
そう言いながらエリザも席を立って俺の方へにじり寄る。彼女の顔もリヒトと同じように赤く染まっている。彼女たちの向こうには三杯もの空のグラスと半分以上なくなった酒のボトルが……まさかあの酒のせいか? ……そういえば俺もさっきから体が熱く頭もボーっとしてきたような。
「ケント様……」
「我が主……」
二人はすっかり火照った顔で、目を潤ませながらねだるような仕草で俺を見てくる。怪しげな酒による酔いに加え彼女たちの長い銀髪と金髪から漂う香りが俺の思考を溶かし、そしてとどめとばかりに俺の腕に彼女たちの大きくて柔らかい胸が当てられたことで俺の理性は砂のように崩れ落ち、気が付くと俺の手は二人の巨大な胸をわしづかみにしていた。
「やんっ! ケント様のエッチ!」
「主……よろしいのですか?」
途端にエリザはわざとらしい悲鳴を上げ、リヒトは期待に満ちた笑みを浮かべながら問いかけてくる。彼女たち二人の妻に俺は……
「ああ、今夜は三人でしよう。お前たち……いや、俺たちが満足するまで存分にな」
◇
王宮の長い通路を一人の少女――いや女性が歩いている。
腰に短い剣を差し、小麦色の髪を後ろに編み、青い瞳を持ち、なによりリスのような耳と大きな尻尾が特徴的な、子供にしか見えないほど小柄な女性。しかし彼女の年齢はケントやエリザより2か3は上だという。
彼女の名はクラリフィエ・エインズ・パスティヤージュ。異世界の大陸フロニャルドにあるパスティヤージュ王国の元国王である。
彼女は魔物との戦いを重ねていくうちに魔物が放つ瘴気に蝕まれ、あと数年で死に至る体だったが、夜天の魔導書の力によって病を克服し、健康な状態に戻った。それからクラリフィエは自らが治める国の王位をアデライドに譲り、半ば強引にケントたちについてベルカまで来たのである。
その後は彼女もグランダム城に住むことになり、ケントから騎士に叙されて、今は守護騎士団ヴォルケンリッターに属している。
クラリフィエも他の守護騎士同様、昼間は兵士たちの指導をしたり賊の征伐に赴き、夜は城の見回りなどを行っており今夜もその途中だった。しかし……
「それでは主、履物を下ろさせていただきますね」
「あら、もう大きくなってる。ケント様ったらすっかりその気ですね」
(――!)
扉の向こうから漏れてきた声が耳に届いた瞬間、クラリフィエは思わず足を止めてしまった。
(今の声はリヒトさんとエリザ様? それにケント様って――)
クラリフィエは扉を見て考えこむ。
先ほどの声は間違いなくリヒトとエリザのものだ。守護騎士として、リヒトとはもちろん、エリザとも何度か話をしたことがある。間違えようがない。それにグランダム城にいる者の中でケントなんて名前を持っているのは、この城の城主であるケントただ一人だけだ。
(リヒトさんとエリザ様、それにケント様の三人がこの部屋の中に? しかも履物を下ろしてってまさか、大きくなってるとも言ってたし……いや、例えそうだとしてもケント様とエリザ様は夫婦ですし、リヒトさんとの関係だってまわりに公表しているわけだから、ケント様がエリザ様やリヒトさんとそういうことをしていても何もおかしくは――いやいや、やっぱりおかしいでしょう! 寝室ならまだしも、ここって談話室ですよね!)
クラリフィエは頭をぶんぶん振って自分の考えを否定し、記憶を巡らせる。
確かにここは談話室だったはずだ。この城に来たばかりの時にこの部屋に通されてケントと話をした覚えがある。
一体なぜ談話室からあんな会話が聞こえてくるのだろう?
(…………)
クラリフィエはじっと立ち止まってその部屋を見る。
こういう経験は前にも一度あった。
あれはまだ自分がパスティヤージュにいてその国の王だった頃、寝る前にアデライドと話をしようとして彼女の部屋に入ろうとしたら、そこで彼女とヴァレリアが……。
その光景を見てクラリフィエは強い嫉妬を感じながら、この上ないほどの興奮を感じてもいた。あの日以来クラリフィエは自分を慰める時はずっと、あの二人の交わりを思い出しながら下半身に手を……。
あの時のような、いやあの時よりすごい光景がこの扉の向こうで行われている。
そう考えたらごくりと喉が鳴った。
見てみたい。久しぶりにあの行為をこの目で直接見てみたい。この機会を逃したらこんな好機はおそらくもう二度と巡ってこない。
クラリフィエの手が扉に伸びる。そんな彼女の心の内側からいけない、早く通り過ぎるべきだ、と自身を止めようとする声が聞こえてくる。しかし同時にこの扉を開ければ新しい刺激が得られるという誘惑の声もまた心の内側から聞こえてくる。
(……私が考えているような事をしているとは限らないじゃないですか。もしかしたらケント様が足とかに怪我をされてそれで履物を下ろさないといけないことになっているのかもしれないし、もしそうだったとしたらあの方に仕えている身として放っておくわけにはいきません。……ちょっとだけ、ちょっとだけ確認するだけなのです。……ケント様の無事を確認したら……)
クラリフィエはじっと考えて、迷った挙句に…………扉に手をかけた。
扉には鍵がかけられておらず、手で押すとギイと音が鳴らしながら向こう側に傾いた。今の音で向こうに気付かれはしないかとクラリフィエはひやひやするが、部屋にいる三人は気付いた様子はない。
クラリフィエは胸を撫で下ろしてからきょろきょろと辺りを見回し、こっそりと部屋の中を覗き込む。
そこで彼女が見たものは――。