リッチなネクロフィリアン 作:ルーフェ
リッチは、見事に肉体を手に入れ、そのまま勢いで自らの名前を「リオン」と名付けたが、リオンにとってまだまだ課題は残っている。
彼の体の実態は、金髪青目の優男、端正な顔立ち、少し鍛えた体に加え、冷たくなりつつある体温、瞳は濁り、白磁の肌の様相を呈している。
当然ながら、彼の体は生きてはいない。
致命的なことに自らの体に防腐処理を施しておらず、それに加え、下半身が元の
そして何より、完全に裸ということもあり、身なりとしては地上世界の文明人のそれではない。ただの獣のようなものだ。
幸いながら、死んですぐに体を乗っ取ったために、保存処理を行う時間は残っている。
結論としては、とてもじゃないがリオンは生きている風には見えない。
身体の問題に加え、作りかけの実験室や、死体をどのように使うか、荷物をどのように処分するか……問題は山積みだったが、ひとまずは自らの体の問題と死体の処理を優先することにした。
「先ずは……体を洗うべきか。軽装を持っていき、体を洗った後戻ってくる……しかしそもそも、水源がどこかがわからない」
リオンは少し考え込んでしまったが、しばらくして意を決したように外に出る準備を始めた。
「致し方無い、外に出て探す方が手っ取り早いものだ。服装は……」
リオンはそう言って、ヘンリーという名の男……魔法使いの男の死体から着ていた黒いローブを脱がせ、馬車の中にあった荷物から下着の替えを取り、後はローレンスが付けていた鎧以外の服装をとって、それに着替えていく。
リオンは、自らが見初めた美しい肢体に服を着せる行為に心躍らせながらも、服を着替え終わった。
その後、リオンは体を拭くためのタオルも持って洞窟を出て、ゾンビ馬が引く馬車に乗り湖か川を探しに出かけることにした。
外の世界は朝焼け前の、薄暗い時間帯となっていた。
「……夜明けか。アンデッドだからか、早く暗い所へと戻りたくなるな……」
そうつぶやきつつも、馬車の御者台で揺られている。
その右手には、冒険者パーティの持ち物にあったここら辺一帯の地図が握られていた。
「ふむ、ここは……ここなのか、とするとここがこうなる……」
そういいつつ、地形の把握に努めているとようやくどこにいるか分かったのか、リオンはゾンビ馬に指示を出して見つけた水源の場所に向かうことにした。
しばらくして、水の流れる音がリオンの耳に届いたことから、川が近いのだと考え、リオンは少し安堵した。
すぐにリオンの目の前に、大きく澄んだ川が見えた。
馬車を川の流れに沿って停めると、御者台から下りて、周りに誰かいないか確かめる。
「……ふむ、澄んだ川だ」
そして、誰もいないことを確かめると、物陰になるところを探してそこで水を浴びることにしようと考えたリオンは、上流のほうへと歩き出した。
丁度良い岩陰を見つけたリオンは、服を脱ぎ、川の流れに体を付けて、汚れを洗い流していく。
髪、うっすらと筋肉のついた胸部と腹部、背中、筋だった両手両足、最後に自らの逸物と臀部といった順に洗っていく。
「……死体が故に、この川の冷たさが味わえないのが痛いな……」
そういいながら、自らの体の汚れがとれたことを確認すると川を出て、持参したタオルで体を拭いた後、服を着替えなおしてローブを羽織ると馬車のもとに歩き出していく。
リオンは馬車の元へと向かう中、こう考えていた。
自分は、死体に自らの魂を宿している以上、人間の感覚も使用することはできない。
せっかくの体、美しい私だけの体。ここで文字通り腐らせるのは非常にもったいない……
だが死体保存の技術を、それこそすべてつぎ込んでも……できることは、死体の保存とその活用に過ぎない。
思考の海に潜りながら、馬車に乗り御者台に乗り込んで、洞窟に戻ろうとゾンビ馬に指示を出してこの場を離れた。
無事に洞窟に戻ったリオンは、顎を触りながら未だに思考を続けていた。
「ふむ……せっかくの体……」
すると、ふとある考えがリオンの中によぎる。
……死体を疑似蘇生し、受肉したのち……完全な蘇生を行う……
それすなわち、リッチの魂を宿した人間に他ならず。
「なるほど。これならゴーレム術と死霊術、治癒魔法の融合で問題なさそうだ」
これはまさに天啓であった。そして今の状況で実行可能な魔法、魔術であることも僥倖とリオンはふと笑っていた。
「地上に来てから、とてもよく物事が進む……どこかでツケが回ってこないといいが」
そういいつつも、リオンは完全な受肉の準備をすることにした。
最初の魔術は、死体の疑似蘇生……元は、死霊術で作成した精巧な死体を、生きているとカモフラージュするための魔術。
死体を、死にながらにして生きた状態にする。他のリッチの間では、「死に体に生を戻す魔法」と呼ばれた。
死体に掛けると、凝固した血液を活性した血液に戻し、心臓を再び鼓動させ、体温が常人に戻る。
これによって生きていると勘違いさせることができるのだが、脳は死んでいるうえに呼吸することがない……
次の魔術でこの弱点を克服する。受肉の魔術だ。
脳が魂の中枢と考えると、死体に魂はない為に脳が動き出すことはない。
しかしこの魔術は、異なる体に異なる魂を封じ込めることが可能になる。
脳が動き始めれば、臓器と筋肉を動かすことができるようになる。
今のリオンは筋肉を動かすことができるが、臓器を動かすことができていない……この受肉の魔術でこれを成す。
これだけでも十分すぎるほどだったが、リオンはもう一つ魔法を掛けることにした。
最後の魔術は、復活の魔術。
そう、最後は治癒魔術……死霊術と双璧を成し、犬猿の仲たる神聖に属する魔術。
リオンは、治癒魔術に対しても造詣が深かった。
死体の蘇生は、二通りの方法でなされる。一つは治癒魔法、もう一つは死霊魔術。
死霊魔術は死体が腐ってしまったり、消滅してしまうと無意味で、普通は意思を持たない傀儡を作り出すに過ぎない。しかし、魂のみの存在も作り出すことも可能だ。
治癒魔術は魂が失われれば、蘇生の意味をなさない。生きながらにして死んだ体を作り出してしまうのみ。逆に、魂さえあればどんな奇跡も可能にしてしまう。
それなら組み合わせてしまえばいい。魂も肉体もここにはあるのだから。
最後に治癒魔術を持ってきたのには、これに加えて理由があった。
リオンの
言い換えれば、魂が存在していれば不老不死という特徴を保ったまま、人間に転生するともいえる。
「我ながら完璧……とは行かないかもしれないが。試してみる価値はある」
「……………………失敗すればこの体を失うとなると……ちょっと気も引けるが」
リオンは久々に心の底から、微かに緊張していた。
リオンは複雑な魔法陣をミスリル粉の入ったチョークで書き記していた。
赤色と青色と黄色でそれぞれ意味の違う魔法陣を書き連ね、順々に発動させて完全な受肉を成功させるようだ。
「よし。後は私が上に寝て、発動させれば問題なかろう」
リオンは魔法陣の上に横たわると、最初の魔術を発動させた。
するとリオンの体の左胸が踊るように震えた。
心臓が激しく鼓動しているのが、大まかな体の感覚しかないリオンにすら分かった。
「こ……これは、随分激しいな……力が強すぎたか……」
少し困惑していたが、効果が落ち着くには時間がかかるのでリオンはしばらく待ってから、次の魔術を掛けることにした。
鼓動もだいぶ落ち着き、右手を左胸に当てると微かに鼓動していることが確認できた。
「ここまでは順調だな。次のステップに進もう……」
リオンが次の魔術を発動させた瞬間。
リオンの意識は途切れた。
しばらく経った後に意識を取り戻した時には、既にリオンは人間であった頃の感覚を取り戻していた。
左胸に添えた右手に温かさと、洞窟の生温い冷気が肌を刺しているのがリオンの魂によく伝わってきた。
リッチの頃とは違う、別の方向ではっきりした意識を自覚したリオン。
「よし、問題ない。次に行こう」
自らは魔術で生きる死体になっていたものの、完全に魂が体に結び付けられている状態であることを悟ったリオンは、続けて最後の仕上げである魔術を発動させる。
「ぐ……ぁ……!」
魔術を発動させた後、激しく体を焼かれたような、火傷の痛みのような感覚がしたリオンだが、しばらく耐えてみることにした。
その後10分経ってもずっと同じ感覚に苦しんでいたが、その後は次第に和らいでいき、1時間もすればそのような感覚は消え去った。
リオンは完全に痛みが消えたのを確認すると、立ち上がってみることにした。
前とは違う、はっきりとした地に足のついている感覚といえばいいのか。
大地を踏みしめた感覚が広がると、リオンは計画の成功を確信した。
その後もリオンは、魔法が全て放てるか確認したり、体の不全が発生していないかを確認し、問題がないと判断して改めてこの計画は成功したと歓喜した。
「よし……次はどうするか」
自らの体がしっかりと生に満ちている感覚を噛みしめながら、次をしっかりと考えることにした。
しかし体がどこかうずく感覚もする。
「……」
ふと自らの下半身を見ると、自らの逸物が怒張していると思わしき、股間のふくらみを見てしまった。
リオンは、自身の衝動すら抑えられないのか……とため息をつきつつも、この欲望を収めないと気が済まないだろうなと考えた後、丁度女の死体があることに気が付いた。
「少し使わせてもらおうかな」
リオンは着ていた服を脱いだ後、ナタリア……治癒士の女の死体に触れたところ、体が冷たくなっていたことから死体が固まりかけていることを察した。
そうならばと、リオンは女の死体に欲望を吐き出す方がいいと判断した。
そして、死体のそばで跪いた。
リオンは、熱くたぎっていた自らの陰茎を右手で包んで、前後に動かした。
「……っ……………………ふっ……………………ふ……………………」
リオンの余った陰茎の皮膚が右手と連動して、亀頭に絡みつくように抱擁したりまた離していく姿を見て、傍から見ているだけでは味わえない光景と肉欲が満たされる感覚に包まれた。
亀頭の刺激と、目から入る女の死体……顔は地下にこもる前の世界ではごく普通の顔立ちだったが、リオンがもたらした絶望に満ちた顔が人生では得難いスパイスとなって、より一層激しく右手を動かした。
「……うっ…………あ………………」
そして次は、女の乾いた唇に自らの陰茎を押しつけて、裏筋を刺激していく。
すると、瞬く間にその唇……その口の中に。絶望に満ちた顔を汚してやりたいという、欲望がリオンを突き動かした。
「あぁあああ……ぁ………………! ぁ……! ……゛………………゛!」
先程の欲望が口に入ることはかなわなかったが、吐き出した精は女の唇と頬、瞳を白く汚した。
「…………はぁ…………はぁ……………………」
女の顔と、その顔に掛けられた不純な白濁した液体を観察しながら、リオンは気づく。
「……この女も、汚せば意外と美しい」
そして、自らの陰茎を見下ろしながら後ろ向きにへたり込んで、その勢いで自らの体に精液がかかると。
白い欲望とうっすらと筋肉のついた体との対比に、また再び自らの欲望が燃え盛るのを感じた。
そして、もう一度手に陰茎を握りしめて、次は自らの体を燃料に激しく右手を振るのだった。