導入です。
ヒトデナシ────そう呼ばれる怪物たちがいる。
原因不明の病から発生した怪物たちは、人間に発症して誕生する。なぜ病が生まれたのか、その病はどこから来たのか、誰が生み出したのかもわからない。
ただ、病を引き起こした原因とも呼ばれる怪物たちが、ヒトデナシという存在を生み出してしまったと言われている。人類は、それだけのことしかわからない。
ヒトデナシとなった元人間は、理性を無くす。正確には本能が強くなる、だろうか。歯止めが効かなくなるとも言うだろう。
ヒトデナシとなって人格が失われることもあれば、人格はそのままにヒトデナシに堕ちた者もいる。この、ヒトデナシの人外に変化してしまう病を、獣化病、あるいは異形病と人々は呼んだ。
ある者は獣、ある者は虫、そしてある者は竜。それらを模した、あるいはそのものであるヒトデナシは多く、ヒトデナシという存在は、人間よりも強大な力を持っていた。そして、その力を人間に向けて振るい、人を殺し、犯し、喰らった。
常人ではヒトデナシには敵わず、ただ殺され、感染し、ヒトデナシへと変わり果てる。
そう、ヒトデナシと呼ばれる存在は、殺した相手をヒトデナシへと変える力を持っていた。それ故に、どれだけ人が抗おうともヒトデナシは増え続ける。
その増殖力で持って増え続けたヒトデナシたちは、その存在を現してから瞬く間に世界へと広がった。ヒトデナシのいない土地など何処にも無いくらいには。
どの場所にも、安全という不確実なものは失われた。かつての人間が栄えた世界は崩壊し、今ではヒトデナシが握りつつある。人間が滅びるのも、時間の問題だろう。
人類の生存圏が消え去り、全てがヒトデナシで覆われることになる日は近い。
人間の中から、ヒトデナシを打倒する英雄などと呼ばれる者が現れることはないだろう。なぜなら、世界は残酷だから。
人間が勝つ───そういった結末を、望まれていない。故に、人間は敗北する。
ヒトデナシという、最悪の怪物たちによって。
★★★
その日も、一人の人間がヒトデナシの餌食となっていた。
「おぉ、よく締まる。やっぱ犯すなら処女だよなぁ」
「いっ、ぎ、ひぃぃ」
逃げ惑った女を追いかけ押し倒し、犯しているのは犬頭の獣人。女を押し倒すと服を剥ぎ取り、ボロボロの身体をさらに痛みつけるように腰を動かす。
女は初めてを奪われ、さらには身体の外と内から響いてくる痛みで口からはか細い泣き声を出し、ただじっと耐えた。嵐が過ぎ去るのを待つように。
「でももうちょっと締めてほしいよ、なっ」
「がっ!?」
しかし獣人は女の首を絞めつけてきた。ヒトデナシの筋力で首を絞められた女は、首からの圧迫感と息が出来ない苦しさにもがいた。
女の抵抗など些細なもので、手足を暴れさせていても獣人からすれば簡単に抑え込める程度。
むしろ首を絞めたことでペニスから感じられる膣の締め付けが強くなったことのほうが獣人からすれば重要なことだった。
その結果、女が苦しむことになろうがどうだっていい。
それがヒトデナシなのだから。
「おっ、出る、出るっ!」
「いっ、ぎ、ぁ……」
射精するときの感覚が肉棒から登ってきて、獣人は女の首をさらに強く絞めつけると、獣人のペニスが大きく膨らみ、精液を吐き出した。
びゅくびゅくと吐き出される精液は女の内を汚し、犯していく。
獣人は射精の快感に顔をだらしなく緩め、締め付けていた手をどかした。
「ふぅ、出した出したー。最高だったぜ……って、ん?」
獣人は力なく倒れる女を見て違和感を抱いたのか観察し、そこで違和感の正体に気づいた。
「なんだ、死んでるのかよ。しまったなぁ、もっと楽しむつもりだったのに」
がしがしを頭を掻き、しまったと反省の感じられる顔をしてため息をつく。
別に女を楽しむだけなら同じヒトデナシでも構わないが……人間の女は、ヒトデナシとは違った良さがあるのだ。
「まぁいいや。他のやつ探そ」
獣人は首の骨が折れた女の死体を放って、何処かにいる人間の女を探しに行った。
獣人が去り、残ったのが死体だけとなったところで、女の死体に変化が訪れる。
肉が裂け、骨が出て、血が散る。人の肌は獣の毛で覆われ、手先も鋭い爪を生やし、顔も獣の顔のように口と鼻が伸びたマズルへと変化し、頭頂からは獣の耳が生え代わりに人の耳が失われる。
そうしてヒトデナシへの変化は終わり、むくりと力なく元人間のヒトデナシは立ち上がった。
どこへ行くでもなくフラフラと歩き出し、そして姿を消した。
そのヒトデナシが何処に行くのかは、誰も知らない。
しかし、人ならざる者へと変わり果てたのだから、至る結末は一つだろう。
数日後、女の住んでいた村が獣人のヒトデナシの住処となり、沢山いた獣人の一人に、数日前ヒトデナシとなった獣の女の姿があったという。
これは、至ってありふれた人でなしの結末。
その、一つである。
とりあえず今日は2話目も出します