彼女はかつて、ただの人間の少女だった。
褐色の肌と、黒い髪。これらの特徴を持つ彼女の部族は、その肌と髪を持っていたために、彼女の部族は故郷───海に浮かぶ島々に存在する漁村から連れ去られ、白い肌を持つ人間の労力として奴隷にされた。それは、彼女が生まれる前からそうだった。
彼女は歌が好きだった。祖母から教えてもらった歌を、同じ部族の人々の前で歌った。しかし、白い肌の人間たちは不快だったのか、彼女が歌っているところを見ればすぐにやめさせた。
歌が好きな彼女は、それを悲しく思っていた。
ある日のこと。
いつも通りに村の広場に向かえば、その広場から聞いたことのない楽器の音色が響いていた。その音色が気になった彼女は広場へと向かうと、そこには初めて見る楽器を演奏する白い肌の人がいた。
その音色に惹かれた彼女は、その楽器を演奏する白い肌の人───音楽家だという彼に近づいた。
そこからは、夢のようだった。
音楽家に誘われて、彼の弾く楽器に合わせるように歌を披露し、その場にいた同じ部族の人たちも、それどころか白い肌の人間たちも一緒に大量の拍手を上げるほどに熱中させた。
演奏が終われば、音楽家の彼にパートナーとなってほしいと言われた。曰く彼は世界を回る旅する楽家であり、共に来てくれる人を探していたという。
彼女は困惑もしたが、それでも自分の歌声が必要とされていることへの喜びがあった。だから、音楽家の誘いに頷いた。
家族や近所の人は止めようとした。しかし、音楽家は黒い肌の彼らに対して頭を下げてまで彼女を連れて行くことを願った。
彼女の家族は困惑したが、音楽家の熱意に押されて彼女を連れて行くことを許可した。
そして彼女と音楽家は船に乗り、海に出た。彼女の家族に見送られて。
船内では、褐色の歌手と白色の音楽家が話題になっていた。もちろん、彼女と音楽家のことだ。
誰もが彼女たちのことを認めていた。彼女の歌声は素晴らしかったし、音楽家の演奏もとても良かったからだ。
ただ一人、白い肌を持つ貴族の令嬢以外は。
結論だけ述べると、音楽家は死に、彼女も死にかけた。
船が事故にあったとか、そういうことではない。少なくとも今回はそのような危険はなかったはずだった。
だから音楽家は、人の手によって殺されたのだ。
それは、船内でのことだ。彼女の部屋にケーキが置かれていた。一緒に置いてあった紙には「お食べ。未来の歌姫様」とだけ書かれており、それを音楽家からの贈り物だと勘違いしてしまった。
それは彼女を逆恨みした貴族の令嬢の罠だった。
令嬢は彼女を殺して、代わりに自分を音楽家のパートナーにしてもらおうと考えていたのだろう。正確な思惑はどうだったのかは、彼女にはわからない。
わかるのは、それを問い詰めようとした音楽家は令嬢に殺され、そして喉を痛めて話せない彼女に罪を擦り付けた、ということ。
彼女は船員に鎖で拘束され、海に投げ落とされた。
そこで彼女は死んだと、そう思っていた。
しかし、そんな彼女を救った存在がいた。
「大丈夫?」
ヒトデナシという存在を作り出した化け物、異形の娘。彼女は溺れ死にそうになっていた褐色の少女を助け、そして求めた。
人を辞めるか、否かを。
彼女は、人を辞めることを選んだ。
ここに音楽家がいたのなら、それを止めていたのかもしれない。けれど、音楽家はもうこの世に存在しない。
だから、彼女の選択を止める者は、誰もいなかった。
彼女は、異形の娘の手によって化け物へと変化した。
黒かった髪は真っ白になり、瞳は血の如く赤くなる。身体は色だけでなく、形までも変化していた。
褐色の肌を白い鱗が突き破り、全身を覆い尽くす。脇腹に何対かの切れ目――鰓が形成された。
下半身は崩れ溶けていき、その中から巨大な尾ビレが現れ、背中にはイソギンチャクのような花状の触手が生え伸びる。
両腕は甲殻に覆われたヒレに変化していくが、数本の指が残された。その先端には尖った爪が伸びており、ヒレの縁も人体を切断出来そうな切れ味だった。
人間の歯はボロボロと口から抜け落ち、鮫の鋭い歯が代わりに生え揃う。耳があった場所にはヒレのような聴覚器官が生えてきた。
褐色の少女としての面影が残るのはもはや目元だけになり、それ以外は完全に白い人魚……というより、人間の要素が少ない魚の異形となった。
彼女の歌声は、聞く者の精神を狂わせる。楽器のような歌声は他者を魅了し、しかし同時に人を異形へと変えてしまう。
その歌声で、彼女は多くの人間を海の藻屑と異形へと変えた。
彼女は───歌姫は、本当の意味で怪物となってしまった。
それからの歌姫は、ヒトデナシとして気ままに海に出てきた人間を自身の歌声でもって異形に変えてきた。
虫のヒトデナシの長たる蟲姫にこそ及ばないだろうが、それでもかなりの数の人間をヒトデナシにしてきた。
白い肌の人間であれば、より惨たらしく。それ以外であれば、手っ取り早く簡潔に。
歌姫は差別的に人を狂わせ、ヒトデナシに堕とした。
誰も彼女の邪魔をする者はおらず、また障害となる者もいない。人間にも、ヒトデナシにも。
敢えて言えば蟲姫や天使などがいるのだろうが、あれらも滅多なことがない限り干渉してくることはない。
しかし、異形の娘────名をゼノノアと決めた存在は、気まぐれに歌姫に干渉する。
初めてゼノノアが歌姫に干渉した日。歌姫は処女ではなくなった。
人間であったときから処女だった歌姫は、当然ながらヒトデナシになったあとも処女であった。
しかしゼノノアが戯れに呼んだヒトデナシによって犯され、処女を散らされた。
それ以降も、ゼノノアの気まぐれによってヒトデナシに犯される日々が続いた。犯してきたヒトデナシの子を産んだこともある。
歌姫にとっては不本意ながらも、その関係でゼノノアがいようといなかろうと関係なく、歌姫を犯し孕ませてくるヒトデナシが多数出てきた。
そう、例えば今のように。
「っ、んっ」
「相変わらず中はキツキツだねぇ。何度犯しても変わんないや」
「口まんこも良い塩梅だぜ……おっ、出るっ」
何処かの海にある、誰もいない無人の島。
その海辺で、歌姫は魚をモチーフとするヒトデナシに犯されていた。
頭を押さえられ、口の中に魚人の潮臭い肉棒が入れられ口中に広がり、そのまま喉の奥へと付きこまれ精液を流し込まれる。
ゴツゴツと後ろから突いてくる魚人の肉棒は大きく、歌姫自身の身体が小さいことも相まってお腹から肉棒の形が分かるほどだった。
歌姫の両手は指こそあるが肉棒を傷付けずにシゴきあげるには適していないため、誰も手を出してはいない。
しかしその分、使われていない髪の毛を肉棒に巻き付けたり、肌に擦らせたり、小さな胸で挟んだりと、歌姫の女体に余すことなく性欲をぶつけていた。
それでも余ったヒトデナシは、自身の手で自慰をして自分の番が来るまで発散し続ける。
ヒトデナシの有り余る体力及び精力のせいで、歌姫の身体はどこもかしこも白濁の精液だらけだった。
「んっ、はっ……んっぐ」
口を犯していたヒトデナシが肉棒を抜けば、次に待機していたヒトデナシが自身の肉棒を歌姫の口の中に突っ込む。
ここで噛むなりなんなり出来そうなものだが、過去にゼノノアがいる前でそれをしようとして酷い目にあった経験があるため、歌姫にそれをするという発想はなくなっていた。
だから優しく、傷付けないように舌を肉棒に絡ませ、奉仕する。
彼女自身、そうすることで自分も気持ち良くなっていることを自覚しているから。
だから拒まない。殺さない。逃げたりしない。例えそれで子を孕み、出産することになっても、その出産すら気持ち良いことと知ってしまった歌姫には拒むという選択肢は元よりなかった。
「お、おぉ。舌が俺の肉棒に絡んできて……うほぉ」
「うっ!も、もう駄目だ!出すぞぉ!」
「んんっ、んっ!」
気持ち良さそうに顔を歪めていた魚人が、力強く腰を掴んでラストスパートをかけるように腰を振り、肉棒を突き上げ叩き込む。
そして動きが止まった瞬間に、熱い精液の奔流が歌姫の子宮に流し込まれていく。
一頻り射精し終わると、歌姫を犯していた魚人は肉棒を引き抜き、歌姫のまんこからは先程出されたばかりの精液だけでなく、掻き出された古い精液もトロリと流れ落ちていく。
今ので妊娠したかな、と歌姫は考えた。あれほど出されたのだから、もう妊娠してもおかしくはないだろう、と。
でも終わりではない。妊娠したと歌姫が自覚したからといって、まだまだ性交が終わる気配はない。
「おい変われよ。今度は俺の番だろ」
「お、おぉ、悪い悪い。そらよ」
「ひひひ、前からまんことアナルを同時に犯してみたかったんだよなぁ」
ヒトデナシの性欲は尽きない。歌姫にタコの魚人が近づいてくる。
今度の性交は、いつまで続くかな。
そんなことを考えながら、歌姫は性交を続けた。
そうして、その日の性交が終わったのはヒトデナシの性欲を満足させることができた、次の日の朝のことであった。
白濁に塗れた歌姫のお腹は、まるで妊娠しているかのようにぽっこりと大きくなっていたのだった。
今回は説明のほうが長くなってしまいました。