ザックアイランドに夜が来た。
ただでさえ人の姿が少なく、静かな島内で更なる静寂が存在している。
こんな時間帯には出歩く人間も少なかった。
時刻は深夜。すでに寝静まっている者も多く、一日を終えている者も少なくない。
そんな中で彼女は一人、バーに居た。
グラスの中でわずかに揺れた氷を眺め、ウイスキーの美しい色を眺める。その表情は微笑みを称えつつ、彼女特有の冷たさも持ち合わせており、近寄り難い雰囲気を持ちながら妙に艶めかしい。
蛇柄のビキニだけを身に纏い、室内であっても肌を露出させている。
夜になってもまだ暖かさを感じるのが原因だった。
不思議と眠れない夜だ。グラスに口をつけて喉を鳴らした彼女は熱い吐息を吐き、カウンターの向こう側に居る人物へ声をかける。
「ふぅ……ここに来てから何もしていないな。自分がダメになっていく気がするよ」
「たまにはいいんじゃないですか? 働いてばかりだと疲れちゃいますから」
「たまにあるんだ。全部どうでもよくなる瞬間が。このまま危ない橋を渡らず、平和に暮らせたとしたら、それもいいかもしれないって……フッ。似合わないな」
「そんなことありませんよ。クリスティさんにだって幸せになる権利はあるんです」
視線を上げれば、人懐っこい笑顔が見えた。
少し前とも違う堂々とした立ち姿。
親しげに笑う彼は子供に言い聞かせるようにやさしく語る。
「クリスティさんも頑張ってきたんでしょう? そりゃ悪い事してたのかもしれませんけど、でもやり直すチャンスだってきっとあるはずですし。どう生きるかなんてクリスティさん次第ですよ。このまま平和に生きるのだって、難しくありませんって」
「やり直すチャンス、か」
「必要があるなら僕も手伝います。もう太陽の下で暮らしてもいいんじゃないですか」
やさしく問われてみれば、ふと考えてしまう。
これまでは裏の仕事に関わっていた。いつしかそこでプロとなった。敵う者などおらず、嘘をついて他人を蹴落とし、そちらの道では有名になった。
仕事にありつけたのもそのためだが、考えてみたことはある。それもごく最近。
もしこの道に居なければどんな人生だっただろうかと。
彼を見つめて考える。しかし真剣に考えてみようとしたのだが、今になって彼の姿を思い出し、ぷっと噴き出してしまった。
「裸で立ってる奴に言われてもね。そもそもあんたが太陽の下で生きられないだろう」
「はっはっは」
素っ裸で立つシオンはカウンターの向こうで笑っただけだった。
その体に布切れ一つ纏わず、美女を前にしたせいか勃起するペニスを見せつけたまま、隠すどころかむしろ腰を突き出すように、仕事をしながら悦に入っている。
雰囲気や態度とは裏腹な光景は常人ならば戸惑いを隠せないだろう。
案の定クリスティは呆れた顔になっていたが、それでも不意に微笑み、肩の力が抜けたようだ。
「いやこれが意外と心地いいんですよ。クリスティさんもどうですか?」
「私に、ここで裸になれって?」
「是非とも見たいです。あっ、いや、是非とも体感してもらいたいです。ヌーディストの素晴らしさを」
「ヌーディストと言うよりただの犯罪者に見えるが」
「仕方ありません。芸術の極みと犯罪は紙一重ですから。すごく遠いようで実はすごく近い場所にあるんだと思います、僕は。なのでそんなつもりはありませんけど、これで犯罪者と言われるならば甘んじて受けましょう。さぁ、罵ればいいじゃないですか」
「まさか罵られて喜ぶ訳じゃないよな?」
「はっはっは、そんなまさか」
「このクズ野郎が」
「おふぅ……!」
瞬時に頬を赤らめ、天を仰いだシオンは、自らの手でペニスを扱き出した。明らかに興奮している面持ちで我慢しきれておらず、きっかけとなったのは先の一言だろう。
言葉にせずとも分かり易過ぎる。
クリスティは上機嫌に微笑み、頬杖をついて楽しげにしていた。
突然始まったシオンの自慰を見守ってやり、そのやさしげな視線が余計に彼を高ぶらせる。
「はぁはぁ、そんな目で見つめられると、僕はもう……」
「言ってることと反応がちぐはぐだね。冗談で言ったつもりだったけど」
見る見るうちに割れ目から体液が漏れ出してきて、指に絡まってくちゅくちゅ鳴り始めた。
手の動きはどんどん速くなり、頬は緩んで紅潮し、一人で勝手に気持ちよくなっているようだ。なんとなく見ているもののおかしな状況である。
クリスティは口を閉ざして見つめていた。
別に嫌悪感がある訳ではない。かと言って見つめるものでもないが、他にやることがなかった。
興味を持つ訳でもなく、恥ずかしがる訳でもなく、ただなんとなく見つめられる。そんな素振りのせいか、余計にシオンが興奮してしまうらしい。目の色が明らかに違った。
「あぁ、うぅ、イキそうですよクリスティさん」
「へぇそう。別に頼んだ覚えはないけど」
ゴシゴシ激しく扱きながら、シオンがクリスティを見る。懇願するようでありつつ全身を舐め回すような視線でもあり、器用なことができるものだと感心した。
「どうでしょうかクリスティさん。この島に居ると男照りがひどいでしょう」
「そうだね」
「ここに活きのいいのが居るんですけど、どうでしょうか」
「何が? 遠まわし過ぎてよくわからないね」
「ああもうはっきり言いましょう。僕とセックスしませんか?」
明らかに興奮した面持ちを隠さず、問うてみれば、クリスティは表情を変えて淫らに微笑む。
彼の顔を見つめ、気分を害した様子もなく答えを出した。
「私としたいのか?」
「はい!」
「迷いがないな。確かに、ちょっと退屈にはなってきた感じはあるか」
ふむと頷いて、扱き続けられるペニスを見る。
カウンターの向こうで見えにくいはずが、彼が腰を突き出すせいで見せびらかすかのよう。そのせいで良くも悪くも分かり易く確認できた。
それなりのサイズではあるだろう。生娘ではない故に見た経験もあるとはいえ、前に見たのがいつだったかさえ思い出せない。ご無沙汰と言えばその通りだ。
面白い、と思ってしまう。
普段ならばまず思わないだろうがこの環境のせいだろうか。
男の自慰をじっと見つめる自分はおかしいと気付くも、悪い気分ではない。
たまには羽を伸ばして楽しんでもいいかもしれない。
艶めかしく手を動かして、左手で自分の胸を軽く持ち上げ、ぽよんと揺らした。
その柔らかな動きを見てより一層、シオンが鼻息を荒くする。
「なら、試してみなよ。そこから飛ばして一滴でも私に届かせれば、その時はこの場で裸になって股開いてやる。あとは好きにしな」
「マジですか!?」
「どうせやることもなかったしな。ま、たまにはいいだろう」
「絶対届かせます! そしてその時にはもう、そりゃあもう――!」
「うるさいな。さっさとイケよ変態」
「あふぅ……!」
「やっぱり喜ぶのか」
さらに手の動きが激しくなって、腰を揺らしながら射精した。
勢いよく飛び出した精液は宙を舞い、カウンターに落ちる物もあるが、越える分もあって、気合いの表れか確実にクリスティの頬へと届いた。
ほんの少量。ぺたりと付着する。
彼女は笑ってそれを感じ、指先で掬って眺めてみた。
ずいぶん濃い。濃厚と言うべきか、真っ白でどろりとしたそれは久々に見る物。微笑んだクリスティは試しにぺろりと舐めてみた。これは初めての経験である。
気分は良くない。従って床を目掛けて思い切り吐き出した。
あまりに乱暴で男っぽい仕草。
若干ではあるものの機嫌を害した表情も伺えたが、それを見てもシオンは怯むどころか喜んでいる様子にも見え、頬を紅潮させ、口元がだらしなく緩んでいた。
「まずっ」
「そ、そんなに言わなくてもいいじゃないですか……ハァハァ」
「まぁしかし、本当に届かせたね。じゃあしょうがない」
席を立ったクリスティは、全く考える素振りもなく水着に手を伸ばした。
ビキニを脱いで胸を露わにし、股を露わにし、ついでにサンダルを脱ぎ捨てる。
完全に裸となって、彼女は誇らしげな笑顔で腰に手を当てて立つ。薄暗いバーのライトの下、あまりにも美しい姿である。見惚れぬ男など居るはずがない。
射精したばかりのシオンはすぐに勃起して、慌ててカウンターを飛び越えた。
堂々と立つクリスティの前へ移動し、体の震えを抑え切れず、わなわなと手を伸ばす。
「お、おおぉ……!」
「約束だからしょうがないね。相手してやるよ」
「ぜひ!」
許可を待たずにシオンが彼女へ抱き着いた。
左手で乳房を掴み、右手で股間を撫でる。興奮し切ってどことなく乱暴に、熱い吐息を白い肌に吹きかけながら、さらには股間まで彼女へ擦り付け始める。痛いほど勃起したペニスが、カウパー液を太ももに塗りたくって強い刺激を求めていた。
浅ましい姿に、クリスティは笑みを深めて抱きしめ返す。すると間を置かず、髪を掴んでぐいっと顎を上げさせ、無理やり唇を奪った。
彼の口内に舌を突っ込み、縦横無尽に舐め回す。
嫌がるどころかシオンは喜び、自らも舌を動かした。
キスをしながら愛撫を始める。
クリスティも彼の肌に手を這わせて、やがてペニスにも触れた。
指を絡めて緩やかに撫でてやり、表情を変えたシオンが吐息を漏らす。反応してクリスティも、にんまり頬を緩めて喜びを表した。
「んんっ、ふぅ……はぁ」
「あんまり乱暴にするんじゃないよ。適当にやるならへし折るぞ」
「へし折られるんですか……そ、そんなっ」
「おかしいな。なんでそこで笑うんだろうな」
だらしない笑みを見せるシオンに呆れつつ、彼のペニスをきつく握りしめた。それもまた彼にとっての喜びとなっているらしく、彼女にとっては素直に喜べる様子ではない。
シオンはすでに我慢できないらしい。
荒々しく彼女の乳首を舐め、指が膣内へ侵入して内壁を撫でており、もはや自制できない状態。
そんな彼にクリスティが言った。思いのほか上機嫌な表情で、楽しんでいるのが伝わる。
「そんなにがっつくなよ。童貞みたいだぞ」
「クリスティさん、僕は中出しが好きなんですっ」
「はっきり言うね。もう入れたいって意味か?」
「もちろんそうです」
「前戯もそこそこなのに」
「でもクリスティさんだって濡れてるじゃないですか。もう入れましょうよ、ね?」
「気の早い男はモテないよ」
「いえ、一回出せば落ち着けますから。むしろそこから本番ですよ」
「さっき一回出してただろう」
「あれはオナニーですから、ノーカンということで。やっぱり中に出してからじゃないと」
「別に私は、中出しを許した訳じゃないけど」
「責任は取りますっ」
「今まで何人にそのセリフを言ったんだ?」
「大体四人くらいじゃないですかね」
発言を聞いてクリスティはやれやれと頭を振った。
あまり真面目に話してはいけないらしい。すぐに思考を投げ打って、仕方ないと割り切るようになった。そうできたのも事前に島内での彼の行動を耳にしていたせいでもある。
やはり暑さで頭のネジが飛んでしまったようだ。
ペニスを擦り付けてくる彼を受け止め、苦笑するも、逃げはしない。
あくまで仕方ないという態度で、手でペニスを導いて亀頭を股に擦り付けさせた。こうなればシオンの体が喜んで反応する。今すぐにも挿入したいと強く擦り付けて前後に動き出す。
射精したいと全身で訴え、表情には余裕がない姿だった。
「い、入れましょうクリスティさん。そっちの方が気持ちいいですから」
「ハァ、まぁいいよ。ちょっと面倒になってきたし」
「いいんですか!? じゃあもうイっちゃいますよ!」
「はいはい。好きにしな」
「それじゃあ、後ろ向いてもらえますか。そっちの方が、ね。良いですから」
「何が良いんだか……」
そう言いつつもクリスティは後ろを向いて、指示通りに尻を突き出す。挿入しやすい格好である。これを見てさらに興奮したシオンは尻を強く掴み、ペニスを膣口へ擦り付ける。
すでに濡れていることが確認できた。同じく彼もまた我慢できない。
狙いを定め、腰を前へ突き出した。
ずるりと膣へ入っていくペニスはぎゅっと締め付けられる。
心地良く、慣れを感じさせながら刺激が強くて、思わず溜息が漏れ出た。
しっかり腰を掴んでピストンが始められる。
座っていた椅子に手をつき、クリスティは淡々とそれを受け止める。表情こそ冷静で感じていないようにも見えるものの、わずかに声が漏れ、確かに感じてはいるらしい。しかしそこに気付く様子もなく、シオンは我武者羅に腰を振って楽しんでいた。
「はぁ、あぁっ、きもちいいぃ……!」
「んっ、んっ、んっ――」
「クリスティさん、どうですかっ? クリスティさんのおマンコ、いい具合ですよっ」
「ふっ、ふっ、そうか……んっ、んっ」
「僕のチンポはどうですか? これでもそれなりだと思うんですっ」
「んっ、あっ、いい、感じだよ……これはこれで、んっ、んっ」
突かれるままに体が揺すられ、胸が動き、尻が波打つ。
裸体の彼女はどこから見ようとも艶めかしく、背中に惚れたシオンは思わず上体を倒して口付ける。それでも腰は止めない。ペニスへの刺激が絶えず与えられていた。
静かな店内で肉がぶつかる音だけが聞こえる。他に雑音はなく、それこそが雑音だとも言えるが、余計な会話もせずに二人は行為に集中していた。
否、本気で集中していたのはどうやらシオンだけのようだ。
クリスティは彼の動きに合わせて喘ぎつつ、ぼんやり中空を見ている。感じてはいた。しかしそれに集中している様子ではなくて、片手間に楽しんでいる姿である。
淡々とした姿でしばし快楽を貪っていた。
雰囲気はちぐはぐで噛み合っていない気もするが、両者が共に快感を得ているのは確からしい。
シオンが天を向いて目を閉じ、気分を高ぶらせて叫び出した。
「ああぁっ、イキます! イキますよクリスティさん、中に出しますから孕んでくださいっ!」
「んっ、あっ、あぁっ――」
「おおおっ、奥に、奥に……孕めぇっ!」
膣内で勢いよく射精された。
クリスティは目を閉じて身を硬くし、シオンは全身を痙攣させて天を仰ぐ。直後に脱力してシオンが彼女の上へのしかかり、絶頂の余韻から動けなくなる。
膣からは大量に出された精液が溢れ出していた。一方でペニスの硬度は全く衰えず、今も彼女の中で硬くそそり立っている。
クリスティが気だるげに振り返れば彼と目が合った。
すでにシオンもその気で、緩やかな速度でペニスを前後させており、辛抱堪らんといった顔。
出したばかりでずいぶん元気だ。呆れながら苦笑する。
「クリスティさん、僕まだできますよ。もう一回しましょ、ね?」
「ん……仕方ないな」
「今度はクリスティさんが上になってくださいよ。僕を犯すみたいに!」
「おまえはどうなっちまったんだ」
何やら興奮した面持ちの彼に気圧され、仕方なく従ってやることにした。予想よりも良かったこともある。これくらいならば良い遊びになるだろうと、楽しくなってきた節すらあった。
シオンが床に寝そべった。
ペニスだけがビンと立っており、生真面目に気をつけする姿は間抜けである。しかし彼は恥じることもなくクリスティを待っていた。呆れを通り越して尊敬すらできてしまう。
溜息を一つ。
クリスティは足を伸ばし、何気なく彼のペニスを踏みつけた。
「おふっ!?」
「おまえ、マゾなんだろ? だから犯して欲しいとか言うんだろうが。だったらこういうのも好きなんじゃないか?」
「べ、べべべ別に好きなんかじゃ……」
「素直になれよ。ほら、ほらぁ。こうやって踏みつけられて嬉しいんだろ」
「ああぅ、う、嬉しいですっ。クリスティ様に踏まれて嬉しいですぅ!」
「ハハハッ、こりゃいいや」
最初は戯れに踏んでやっただけだが、予想以上の反応に気を良くする。
クリスティの顔は悪戯っぽい笑みで輝いていた。
「いいおもちゃを見つけたな。おいシオン、私の下僕になるって言うなら足でイカセてやってもいいけど、どうする?」
「なります! いえ、ならせてください女王様!」
「ちょっと従順過ぎて張り合いない感じだけど、まぁいいか。ならイカセてやるよ」
「はぅぅ……!」
踏みつけたままで足を使い、根元から亀頭まで扱きあげる。
力は強く、痛めつけるようだがそれで満足らしい。シオンは明らかに喜んでいて、我慢せずに声を出していた。バーの中には彼の声が響き、さらにクリスティの機嫌を良くする。
異質な二人のみが存在する空間。
そこへ静かに乱入する人影が一つあった。
「ククッ、浅ましいな。人間のクズみたいな格好だ。こんなんで気持ちよくなるなんてなぁ」
「あぁ、言わないでください……でも言って欲しいっ」
「強くして欲しいんだろう? ならもっと鳴いてみな。そんな声じゃ聞こえないよ」
「あああっ、きもちいいですぅ!」
「あら、ずいぶん楽しそうね」
聞こえてきた声にクリスティが振り返る。
店の扉を開き、入ってきたのは笑顔を称えるエレナだった。彼女が島に居ることは知っているが、その姿、全裸にも見えかねないほど小さな水着を纏うのみ。ライトに照らされた白い肌はあまりにも妖艶で、水着というよりほとんどヒモである。
踏まれるシオンは気付ける余裕がない。朗らかに喘いで目を閉じていた。
必然的に二人の視線が交わる。
店の中で全裸になり、股から精液を垂らすクリスティ。
ヒモ同然の水着でほとんど裸体を晒し、一人でやってきたエレナ。
似ていなくとも卑猥な格好で、不思議な空気に包まれるのも仕方ないだろう。さらにその場にはシオンが居て、全裸で寝そべり、暴発寸前のペニスを踏みつけられて喜んでいるのである。
ぐりぐりと動く足を動かさぬまま、クリスティはエレナを見て笑った。
表情は笑みでも、友好的な態度ではない。警戒しているのか、態度は決して柔らかくなかった。
「妙な格好してるね、お嬢様。こいつよりはマシだけど、男漁りでもご所望かな?」
「あいにくあなたが望んでいる通りではないわ。彼を探していたのは事実だけれど」
「男が喜びそうな格好で、こいつに会いに来たんだろ? なら思ってる通りじゃないか」
「あなたの方こそ、他人のこと言えないじゃない」
淫らな動きでペニスを踏む足は嫌がっておらず、自ら喜々として動かされている。
それを見てエレナが首をかしげれば、クリスティは鼻を鳴らした。
「私はいいんだよ。こいつは可愛いペットだからね。精処理くらいは手伝ってやるさ」
「あら、奇遇ね。私も似たような関係よ」
「へぇそう。別に驚かないけどね、こんな状態じゃ」
「うぅぅ、すべすべな足が僕を襲う――ハッ、新たな爆乳が!? エレナさんじゃないですか」
「楽しそうねシオン。相変わらずで安心したわ」
寝そべったままエレナを見つけ、扇情的な姿にシオンが目を輝かせた。何を想像しているのか、またしても口元がにやけている。
二人は呆れてしまい、対立の意志を失くしてしまう。
それでもクリスティの足は止まらず、尚もシオンを責め続ける。
奇特な空気の中で淫らな行為。独特の緊張感は失われたものの、やはり異常だと感じる。
今を異常だと感じるからこそ、シオンの声は大きくなっていたようだ。
「あはぁぁっ、もうだめですっ、出ますっ!」
「はぁ? まったく、堪え性がない奴だね」
「あああっイク! イクイクぅ!」
「うるさいな。イクなら早くイケよ、早漏変態男」
踏まれた衝撃でまたシオンがイッた。
勢いもそのまま、全く薄まらない精液が自身の体へ降りかかる。
クリスティとエレナはその様をじっと見つめており、落ちていく光景まで確認していた。
静寂の後、ふとエレナがくすりと笑う。
振り返るクリスティが訝しむ視線を向けても、ひどく楽しそうにしていた。
「ふふふ」
「何笑ってるんだ。面白い物じゃないだろう」
「そうね。面白くはないけれど、これが素直に生きている人間の姿なのかしら。そう思うと少しおかしくなって。私も見習った方がいいのかもしれない」
「フン、それでその水着かい?」
「どうせ誰も見ていないわ。それに風が当たって案外気持ちいいものよ」
「私は真似する気にはなれないね」
「その格好で言うの? 残念だけど説得力はないわね」
全裸でシオンのペニスを踏む姿を見て、クリスティはむっとして言葉を詰まらせた。人の事は言えない。彼女も裸で、しかもシオンと一戦終えたばかりだ。おまけに彼をペットだと称し、踏んづけて射精させて、少し前までは得意げにしていた。
エレナはそんな彼女の様子を笑っている。
同じ穴のムジナ、といった状況か。
強く言い返せずに眉間に皺が寄った。
その空気も感じずにシオンが顔を上げ、二人に目をやった。
何やら目は輝いていて、すぐに嫌な予感を覚えるも、彼は予想通りの言葉を発する。
「爆乳美女二人が揃ったということは、これはもう乱交ですかっ!?」
「何言ってんだ、おまえ」
「ふふ、本物のシオンね。全く変化が無くて安心したわ」
ようやくシオンのペニスを解放し、精液が着いた足を床へ下ろしたクリスティはエレナを見る。とても正気の発言とは思えない彼の言動だが、非難する様子は一切ない。
水着といい、態度といい、品行方正なお嬢様とは思えない姿だった。
「嫌がらないんだな」
「ええ、どうしてかしら。人生観が変わったのかもしれないわ」
「良い変化じゃないね……」
「あなたも嫌がってないじゃない。もう変わってしまったかしら」
「誰が。こっちはただ呆れてるだけだよ」
「二人とも早くっ。僕はもうこれ以上焦らされるのは……いや、それもいいけど、でも――!」
「うるさい」
「おふっ……!」
クリスティは呆れた顔で、エレナは笑顔で。
なんだかんだと言いながら彼女たち二人はシオンへ体を寄せ、バーの床で肌を合わせた。
良くも悪くも彼に関わると変化があるらしい。
島には女性しかおらず、唯一の男性が彼のみである。それもまた大きな影響となっていて、気分を解放的にしてしまう島の環境が、どうやら彼の大きな味方となっていたようだ。