時系列的には多分一番最初、半蔵、紅蓮隊よりも前の話。主要メンバーの中で一番最初に若の相手をしたのは、斑鳩という設定です。
ただ若の方は……という感じ。でもそこまで気にしなくても大丈夫です。
その二人が出会ったのは、いわば必然というものだったに違いない。
否、最も古い記憶で言えば、二人が出会うその前にある小さな出来事があった。たまたまではあるが、校内にいた斑鳩が外にいる、見慣れない男の姿を見かけたのである。
学校の片隅で、自分たちを鍛える教師、霧夜と何かを話している狐面をかぶった少年。その外見は思いのほか衝撃が大きかったらしく、一体誰なのかと気になった斑鳩は後に霧夜へと尋ねたことがあるのだ。
「彼はこの学校の学生ですか?」と。
すると霧夜は真剣な顔で答えた。
「近々、おまえたちにも紹介する。ただ、よく覚えておけ――あれは他にはない貴重な存在だ」
斑鳩はその言葉を、なぜだか忘れることができずにいた。理由は自分でもわからない。ただなんとなく、そう言っている時の霧夜の顔はいつもとは違う気がしたのだ。やさしいような、困ったような、何とも言えない表情。斑鳩がその出来事を忘れずにいたのはきっと彼の影響もあったに違いない。
そしてその言葉や、彼が立っていた情景を、理由もわからないのに心の中へとどめ続けていた頃。
ついに霧夜の招集によって彼を紹介され、顔を合わせた後、斑鳩は自分がなぜそこまで彼のことが気になっていたのかを知ることができた。
「どうも――蒼炎です。呼びにくかったら、若って呼んでください。師匠がそう決めたんで」
初めて見たその瞬間から、その存在はあまりにも独特過ぎた。だからこそ頭に残って離れなかったのだ。
本当にそこに実在するのか、しないのか、はっきりと姿が見えているというのにそれすら希薄に思える立ち姿。まるで影か、或いは幻のように虚ろに見える存在。
だというのに、同じ忍だからこそ気付ける隙の無さや、ともすれば背筋が凍りそうなほどの殺気の無さ。そこにいたのはまさしく完璧に作り上げられた、唯一無二の忍だった。
善ではなく、悪でもない。だからこそそのどちらにも傾くことができ、どちらであっても完全な存在に変貌する忍。
それが斑鳩の目に映った蒼炎、通称「若様」という男の姿だった。
◆
護衛の任について、すっかりその生活が板につき、屋敷に赴くのが楽しみになってしまった後。
斑鳩の朝は早くなった。泊まりであっても、任務に就いていない日でも、どちらにしても彼女が屋敷に行く日はとても早く目が覚めてしまうのである。その姿はまるで、明日の遠足が楽しみで眠れない無邪気な子供のようであると、自分自身ですら思ってしまうほどだ。
例えばこの日は彼女が若の家に泊まり、同じ布団で眠りについた場合であった。
彼よりも早く、目覚まし時計も何もなく自然と起きた彼女は、まず動くことなくそのままの体勢で目を開ける。そして目の前にある子供のように安心しきった寝顔をじっと見つめ、生娘のように頬を赤らめながら見つめ続けるのだ。
「――若様……」
その行動に意味があるのかと問われれば、さほどあるようには思えない。しかし本人ははっきりとした口調で主張するのである。
「若様の寝顔を拝顔せずして、どうして良い一日が過ごせましょうか!!」
強くそう言う彼女はいつも通り、今日も隣で眠る裸の若を舐めるように見つめ続け、一日を頑張るための英気を養う。その時の彼女はひどく頬を緩ませていて、だらしないと表現できるような笑みを浮かべていて、とても他人には見せられない顔なのだが。
しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。別段若が指示したわけでもないが、彼が起きる前に朝食を用意したり、着替えを用意したり、風呂を焚いておかなければならないのだから。どこかで自分だけ起きだして、すべての準備を終えておかなければならない。無論、風呂はいっしょに入るためである。
そこで数分間身じろぎもせず若の寝顔を見つめ続けた斑鳩は、そっと動き出して若に近付き、ちゅっと口づけを送った。それも何度も、起きないようにと配慮しながらもしつこいくらいに、顔中へ唇を落としていく。
これまで、若との信頼関係が築けるまでは、彼は人前で無防備な姿を見せることはなかった。ぼんやりした外見は変わらないものの、常に隙のない姿だけを見せていたのだ。寝顔を見せるなどもってのほか、自分が彼を起こそうと部屋へ近付いただけでも、直前には完全に目を覚ましていたほどである。
それなのに今は、穏やかな寝顔を斑鳩に見せて、落ち着いて安眠を取っている。その事実もまた、今の斑鳩にとっては嬉しいものだ。
静かながらも数十回、若の顔にキスの雨を降らした斑鳩はゆっくりと身を起こし、若の体が冷えないように布団をしっかりとかけ直して、裸のままで部屋を出る。
そこから斑鳩はテキパキと慣れた様子でいくつかの仕事を終え、快く若を迎えるために準備を進めていく。風呂を沸かし、風呂上がりに着るための着流しを用意して、いつでも出せるようにと食事の準備を始める。豊満な肉体には自分専用の白いエプロンをつけ、誰にも言わないが気分は明確に新妻である。
そうして動いている中で、普段以上にぼんやりした様子の若がふらふらとキッチンに現れ、斑鳩へと声をかけた。
明らかに眠そうな声がまた斑鳩の胸をきゅんとさせるのだが、彼はそんな思惑も持たずに「おはよう」と告げる。するとパッと輝いた斑鳩の顔は若の全身を見つめ、まだ服を着ていない全裸を見た。それでまた斑鳩はポッと頬を赤らめるのだが、微塵も嫌そうな顔ではないのである。
「おはようございます、若様。まだ寝ていてくださってもよろしかったのに――よく眠れましたか?」
「ん……」
「あ、もう、若様、いけませんよ。ちゃんと歩かないと転んでしまいます」
ふらふらと歩く若は少しずつ前に進んでいるのだが、その姿は戦闘時の頼もしさと違ってなんとも危なっかしい。
斑鳩はすぐに包丁を置いて料理を中断し、今にも転びそうな彼へと駆け寄って体を支える。彼女も裸の上に白いエプロンをつけただけのやけに扇情的な格好をしているので、裸で抱き合う二人は朝っぱらから淫らな姿にしか見えない。
近寄ってきた斑鳩に、倒れかかるようにして抱きついた若は、ただの寝起きの子供のようにぎゅうっと彼女を抱きしめる。そうされる斑鳩はわたわたと両手を動かしながら、やけに嬉しそうに口元を歪めて、まるで抵抗する気を見せようとはしなかった。
「わ、若様っ、だめですよ――ま、まだ朝ですからぁ……」
「んー……ねむい……」
「も、もう、仕方ありませんわね――では、先にお風呂に入りましょうか。お食事はその後にしましょう」
「ん……」
呟きにすらなっていない返答を返す若と抱き合いながら、裸にエプロンだけを纏った斑鳩は風呂場へ向かって歩き出す。彼女がそんな格好をしていたのは、結局のところ朝から若といっしょに風呂に入るためだったのだ。
なにせ二人共、昨夜の激しい性交のせいで汗にまみれ、あらゆる体液なども混じってひどい状態にある。しかも、夜に二人並んで布団に入って、何もせぬままに朝を迎えることなどまずないため、朝になると必ず最初に風呂に入る必要があるのだった。
まるで幼子をあやすかのように若を連れていく斑鳩だが、その両手は怪しい動きを見せており、彼の体を這いまわるようにしてあらゆる場所を触っている。もっとも眠気に負けている若はそんなことを気にする状態ではないので、抵抗の一つもありはしないのだが。
「さぁ若様、つきましたよ。いっしょに入りましょう」
やがて広い風呂場に到着した二人。エプロンを脱いだ斑鳩が先導して風呂場に入り、二人は最初にシャワーを出して体を洗うことにした。
木製の小さなイスに腰掛け、まだ完全に開かない目をしばしばと開閉させる若の背後に、うきうきした様子の斑鳩が陣取ってボディーソープを手に乗せる。
彼女はそれを自分の裸体に塗りたくり、泡立てた後に自分の大きな胸を若の背へと押し当てた。すでにツンと立っている乳首は自己主張するように若の背に触れ、そこで斑鳩の声が発せられる。
ひどく嬉しそうなその声は、明らかにこの瞬間を期待しているとわかるようなものだった。
「それでは若様、失礼します――どうかお気を楽にしてくださいね」
「ん」
豊満な裸体が動いて、泡まみれの胸がずりずりと若の背に触れて動き出す。丁寧に、丹念に、若の体を洗うために胸を押しつける。断じて自分が気持ちよくなるためにそうするわけではないのだ。
張りがあると同時に柔らかい乳房がむにゅりと形を変え、男にはない柔らかさを楽しませる。それと同時に体を洗うという、奉仕する人間にとってはとても役立つ動きだ。
そうする斑鳩は悦に満ちた表情で、寝ぼける若を愛おしそうに見つめながら熱心に体を動かしていた。
それでもまだ、若の目は覚めていない。
「気持ちいいですか、若様? 他にしてほしいことがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「うん……だいじょうぶ」
「あぁ――若様っ」
ぼんやりした声を耳にし、ぶるりと体を震わせた斑鳩は感情を抑えきれないとばかりに動き出した。
乳房を押しつけ、背中を洗っていたはずがついに両手を動かし、彼に強く抱きつきながら首の角度を変えさせ、唇を強く塞ぎ始めたのだ。二人の唇はむっちりと押しつけ合い、直後には斑鳩の舌が若の口内に侵入する。
キスが好きな斑鳩は、暇さえあればそうして若の唇を奪い、じっくりと味わう。そうすることに慣れた斑鳩は今もねっとりと舌を絡ませていき、されることに慣れた若は文句もなく受け入れる。
その間も斑鳩の手は淫らな様子で若の体に触れ、洗うというよりただ愛撫を与えるばかりの動きを加えた。
おかげで大人しかったはずの若の陰茎がむくむくと首をもたげ、どんどん固くなっていく。すっかり大きくなってしまったそれはしっかりと斑鳩の目にも確認されており、胸から腹に伝って下りていく手が、ぎゅうっと嬉しそうに竿を掴んだ。
直後にはゆっくりとした速度で上下に扱かれ、さらに固さを増していく陰茎は先端の割れ目からだらだらと先走りを分泌し、泡にまみれながらもピクピクと震え始めていた。
「あぁ、とってもたくましい……若様、興奮なさっているのですね――んっ、ふむっ、んちゅ」
「んんっ、んっ、んっ」
扱く手の動きはどんどん速くなり、若に与える刺激が強くなっていく。その上、口内をべろりと舐められる感触も確かな快感を与えてきて、抵抗しない若は寝ぼけ眼のまま高まっていった。
柔らかい体を押しつけられ、固くそそり立つ肉棒を扱かれ、口内を舐めまわされる。そうして気分を高められた若は、いまだ寝ぼけていたこともあって、突然勢いよく射精した。
天井を向いたままだった亀頭の先からびゅくびゅくと白濁した液が発射され、重力に従ってすぐに落ちてくる。それらは若の陰茎や足、さらには竿や亀頭を扱き続けていた斑鳩の手に落ち、白い泡と混じってしまう。
熱く、どろりとした感触に触れた斑鳩は「あっ……」と小さく息を洩らし、どくどくと元気に脈動する肉棒を掴みながら頬を赤らめた。
そこでようやく若の意識ははっきりしたようで、彼は気持ちよさそうに目を閉じて、最後まで吐きだそうとするかのように腰を小刻みに揺らす。斑鳩もすぐに手を上下に動かし、手伝いをする。
すべてを出し切った後、ゆっくりと目を開けた若はまっすぐに斑鳩の顔を見つめ、その視線を受け止めた彼女は嬉しそうに微笑みながら、またも自分からキスを送る。
ねっとりと彼の唇を舐めつつ、徐々に萎えていく肉棒をきれいにしようと両手を動かす斑鳩は、触っていた陰茎が完全に落ちついてから唇を離した。
「んっ、むっ、ぷはっ――はぁ、ふぅ、若様、全部出し切られましたね。それでは、体を流させていただきます」
蕩けた目をシャワーへ向けた斑鳩がやさしい手つきで泡を流し、二人一緒に体を洗っていく。その間も斑鳩は時折若にキスをして、ぼーっとしたまま動かない彼の体に自分の胸を押しつけた。
暖かいお湯で泡を流し、昨夜の情事の名残を流し終えた二人は気分をさっぱりさせるためにも同時に動き、シャワーを止めて湯船へと浸かる。
若が先に入り、十人ほどは入れる広さがあるというに、彼に覆いかぶさるようにして斑鳩が入ると、二人の体はぴったりと触れあったまま暖を取る。
そのまま二人はそれぞれ違う意味で、深く息を吐いた。若はたっぷりの湯で暖まる気持ちよさに、斑鳩は若の体に触れ、そのたくましさに頬を緩めて。
その後、いつものようにすぐに斑鳩の唇が若のそれを塞ぐ。ひどく手慣れた様子で、たとえ若が油断していなくとも止められない動きであった。
「んんっ、ふぅんっ、若様ぁ――」
「んむっ、うんっ、んんっ」
目が覚めたとはいえ、やはりぼんやりした様子の若は迫られるがままにキスをされ、口内を舐められ、熱烈なまでの愛情表現に溺れさせられる。
二人は湯船の中でそうし続け、というよりも斑鳩が一方的に若の体に抱きついて離れず、一秒たりとも唇を離すことなく数分が過ぎた。
そして約十分ほど言葉もなくそうし続けた後、これはさすがにと思ったのか、やっと抵抗らしい抵抗を見せた若が斑鳩の顔を離し、彼女の顔を改めて見つめる。その時もまた斑鳩はかなりの抵抗を見せ、離れたくないとばかりにさらに強く抱きつき、舌を執拗に絡めていたが。
「斑鳩、時間は大丈夫なのか? 今日も学校があるだろう?」
「あっ……え、ええ、そうですわね。うぅ、でも――」
「帰ってきてからも時間はあるから。な?」
「うっ――はい」
若の口から、いつまでもこうしているわけにもいかないと提案したことにより、ようやく落ちついたらしい斑鳩は渋々といった調子で立ちあがる。若もそれに続き、二人は尚も体をぴったりとくっつけながら風呂場を出た。
二人は仲が良い様子でタオルを使って、体に付着した水分を拭き取っていく。これもまた斑鳩が率先して若の体に手をやり、やさしい手つきでそうしながらもまたキスをねだる。
ちゅっと軽い音を立てながら両者の体を拭いた後、斑鳩は若に服を着せるため、健気にも手伝いを始めた。まずは黒い下着を手に取って、足をあげるよう促してから履かせ、次に用意しておいた白い生地に青い模様の着流しを着せる。
「ふふっ、素敵です、若様――やっぱり何を着てもお似合いになられますよ」
「そうか、ありがとう」
若の着替えはすぐに終わった。それから斑鳩はテキパキと自分の服、学校に行くための制服を身に纏い、二人揃ってキッチンへと赴く。
そこで斑鳩は若に、すぐ近くの居間で座って待つように言って途中だった料理を再開させるのだが、なぜか若はじっと立ちつくして動かなかった。
包丁を持ってトントンと軽い音を立てる斑鳩の背にそっと近付き、ゆっくりとではあるが急に彼女を抱きしめたのである。
当然、そんな事態を予想すらしていなかった斑鳩は大層驚き、小さな悲鳴をあげて思わず包丁を落としてしまう。それがまな板の上を転がったのは、不幸中の幸いであった。
「きゃん!? わ、若様っ!? と、ととと、突然、どうなされたのですか――あ、いえ、その、嫌というわけではなくて、少し驚いただけで……!」
子供のように、しかし見方によっては恋人にそうする男のように、若は目を閉じて斑鳩の首筋へと顔を埋める。目を閉じた顔は安堵に満ちていた。
思わず慌てていた斑鳩も動きを止め、おずおずと首のあたりにまわされた腕に手を添える。こうしたような、若から手を出すようなことは非常にめずらしい。そのめずらしい機会を逃してなるものかと、すでに思考はそのことで一杯なのだろう。
もはや今日も学校の授業があることすら忘れ、彼女は若に全神経を向けることに必死だった。
そんな中で、少しだけかすれた若の小さな声が、斑鳩の耳に届く。
「斑鳩、少し変わったな。前よりちょっとやさしくなった――敵意がなくなった、って言うのかな」
「そ、そんな、私は最初から若様に敵意なんて――」
「うん、わかってる。でも緊張はしてた。いつでも俺に反応できるようにって」
「あ……それは、確かに……でも」
「いいんだよ。それは忍として正しい。俺も気にしてない――それに今は、信用してもらってるんだってわかってる」
「はい――いいえ、やっぱり違いますよ、若様。信用ではなく、信頼です」
きゅっと腕を握り返し、斑鳩は微笑みながらそう言う。直後に聞こえてきた若の「そうか」という声に、また少し胸の奥を暖かくしながら。
いつの間にやら、若の手がするすると動き、斑鳩の胸へむにゅりと触れる。途端に彼女は甘い声を出し、じゃれつくように後頭部を若の胸へとすりよせた。
再び若の小さな声が、斑鳩の耳元で囁く。
「斑鳩、おっぱい欲しい」
「わ、若様ったら、もう――はい、いいですよ」
斑鳩がそう返すと、若の手が迷いもなく斑鳩が着るワイシャツのボタンをはずしていき、すぐにすべてを外し終えた。
それから若は斑鳩の胸に手を触れ、黒いブラジャーを一気に上へずらすと、興奮したように大きくなった乳首が露わになる。彼は体勢を変えてすぐにそこへ吸いつき、口いっぱいに乳房を頬張りながら、舌で乳首を転がす。
嬉しそうに身を震わす斑鳩はそれを受け止め、興奮した面持ちでぎゅうっと若の頭を胸に掻き抱いた。やさしい力ながらも、もう離したくない、と言わんばかりの姿である。
ちゅっ、ちゅっという小さな音を立てながら、赤ん坊のように乳を吸う若によって快感を与えられ、斑鳩はだんだん腰砕けになって足を震わせ始めた。
「あぁっ、だめです、若様ぁ――そんな、そんなに強く吸われては……」
目を閉じて上を向きながら、それでも彼を押しのけようとせずそんなことを言う斑鳩は、確かに快感を感じている。同時に、その時間を楽しんでいた。
愛しい男との一時であれば、何をしていても幸せだと思える彼女。そんな斑鳩が、若から手を出されて抱かれようとしているのだ。これを幸せと思わぬわけがない。
もはや斑鳩の頭の中に「学校」という概念など微塵もなく、あるのは「若様」という目の前の男の存在だけ。
そんな彼女の状態を理解しているのか、それとも自分がしたいように動いているだけなのか、おそらくは後者だろうが若の手はゆっくりと下へ降りていった。乳房をもみしだき、乳首をつまむ左手と違い、下腹部を通り過ぎた右手は、スカートと黒いパンティに守られた秘部へと到達する。
「はぅ……若様、そんなところまで……」
「もう濡れてるな。さっき、風呂に入った時から濡れてたのか?」
「んんっ、そんなっ、こと、言わないでください……」
「うわ、すごいな、触ってるだけでどんどん溢れてくる――この調子だと、風呂に入るもっと前からかも」
「うぅ、そ、それはもういつでもいいじゃないですか」
両方の乳房を交互に口に含まれ、指先で膣の入り口を掻き混ぜられながら、とろりと愛液を垂らす斑鳩は身を捩って甘い声を出す。対する若はだんだん気分が乗ってきたようで、動きの速さや大胆さが増していく。
キッチンの中で、がくがくと足を震わせる斑鳩の体が若に思う存分弄られていき、それだけで彼女の限界が近付いているようだ。
しかしある時、存分に乳房を舐めまわした若は満足した様子で口を離し、同時に指も膣から離して身を起こした。
そのせいで、いいところで中断されてしまった斑鳩は寂しげに眉を寄せつつ、無言のまま彼の顔へ目を向けて抗議をし始める。もっと気持ちよくしてもらいたいということは、口で語らずとも目が語っていた。
それなのに若は気にした様子もなく、着流しの前をはだけて肌を出し、黒い下着を少し下へずりおろす。いつの間にか隆起していた肉棒がビンと勢いよく外気に触れ、斑鳩も思わず驚いたように目を見開いた。
「斑鳩、頼めるか?」
「――はい」
何をすればいいかなど、すべてを言われずともわかる。斑鳩は自ら床に膝をつき、眼前にいきり立つ肉棒を置いた。
びくびくと震えるそれは若が腰を突き出したことで、斑鳩の顔に熱い肉棒がぺたりと乗せられ、ゆっくりとした動きで擦りつけられる。しかしそんなことをされているのに、頬を赤らめる斑鳩は嬉しそうな表情だ。
ある時、彼女はゆっくりと舌を伸ばして若の陰茎に触れ始めた。口の端からよだれが落ちることも気にせず、丹念な様子で竿に舌を絡ませる。
その悦に入った顔はひどく淫靡で、同時に至福を感じているようにも見える。
まるで犬か何かのように舌を伸ばして肉棒をぺろぺろと舐める斑鳩は、飽きもせずにその行動を続けた。若もまた彼女の頭に手を置き、さらりと手触りのいい黒髪を撫でてそれを受ける。
キッチンの中でするにはふさわしくない行為だが、二人は気にせず、誰にも見られていないことをいいことにひたすら楽しみ続けた。
「んんっ、ふむぅ、んっ、じゅぷ――若様、気持ちいいですか?」
「ああ、気持ちいい――最高だ」
「ふふっ、それならよかったです――んっ」
膨らんだ亀頭をぐっと口内に含み、リズムよく小刻みに頭を前後させる斑鳩。大量の唾液が分泌されていることもあり、じゅぷじゅぷという淫らな音がリズムよく鳴って、二人の耳にも届く。
暖かくも柔らかい口の中に包まれたこともあり、熱い肉棒には大きな刺激が与えられ、さらには竿の部分とその下にある玉を手で揉まれて、気分はどんどん高まる。さらには口の中で、亀頭にある割れ目に舌先が強く押しつけられ、やさしい動きなのに必死に射精を促しているかのようだ。
若は目を閉じて徐々に息を荒くしていき、斑鳩もその顔を見上げながら楽しげに頭と舌、それから両手を動かす。
だが限界を迎えるその前に、十分に彼女の奉仕を堪能した若は頭を押して肉棒から口を離させ、斑鳩をその場に押し倒す。すると即座に順応してみせた斑鳩も小さな悲鳴を上げながらすぐに若の首に腕を回し、潤んだ瞳を彼の顔に向けた。
視線がぶつかるその中で、若はいつもと表情を変えずに静かに告げる。
「斑鳩、してもいい?」
「はい――もちろんです。私はもう、若様のものですから。好きな時に、好きなだけ抱いてください」
「ああ、わかった。それじゃあ――行くぞ」
「はいっ」
短い言葉のやり取りを終えて、位置を正した後に二人の腰が一つになる。固く勃起した陰茎が斑鳩の体内に押し入り、ずぶずぶと肉の壁を押しながら奥を目指して進み、すぐに亀頭が行き止まりにコツンとぶつかった。
斑鳩の甘い声が室内に響き、若のくぐもった声が彼女の耳に届く。
二人はぐっと目を閉じながらも互いの肉体を感じ取り、その熱さに、柔らかさや固さに気を良くして気分が高まるのを感じていた。
口からは熱い吐息を吐き出し、快楽に染まった表情を眺め合う彼らは正しく心を一つにしていて、現実から切り離されたような感覚の中にあった。
「はぁ、気持ちいいよ、斑鳩――」
「あぁっ、はぅっ、う、嬉しいです――若様っ、若様ぁっ……」
まるで世界に二人だけしかいないような、他のすべてを排外した中で見つめ合う二人は、やがてどちらからともなく唇を触れさせる。しかしその後は若の思惑と違い、斑鳩が首の後ろに腕を回して、腰に両足を回したことでぴったりと体を密着させ、そのまま解放されることなく行為が続けられる。
初めはひどくゆっくりと。肉のひだを一枚ずつ確認するかのように陰茎を前後させたり、途中で亀頭を止めて円を描くように腰を回したり、若は彼女の肉体を楽しむための動きを加える。同じく斑鳩も若の存在を明確に感じるため、彼の肉体を余すところなく楽しむため、口の中を乱暴に舐めまわしていた。
しばらくはそうして楽しんでいたものの、我慢できなったのか、若は腰を前後に激しく動かし、透明な液が溢れるそこを掻き混ぜるようにぐちゅぐちゅと突く。
斑鳩は我慢していたこともあってすぐに限界まで押し上げられていき、抵抗する間もなく一息に絶頂させられた。全身をびくびくと震わせ、より一層強く肉棒を締めつけ、自身がイッたことを体で示す。
「んんっ、んふぅ、んんんんっ――んむぅっ」
しかし彼女はそれでも若の体を離さず、口をぴったりと合わせたままで尚も舌を動かした。まだやめるな、という意思表示なのかもしれない。
どちらにせよ、解放してもらえない若は自分がイッていないこともあって、尚も腰を激しく動かす。一度射精したとはいえ、相性がバッチリな斑鳩の相手をしていることもあり、若もすぐに限界へと近付いていく。
その上彼はあまり我慢したりしないのだ。出したくなった時はすぐに出す、そんな若がそう長く行為を続けることもない。
おかげでひどい興奮状態にある斑鳩が二度目の絶頂を迎える時には、タイミングよく若も射精を開始していて、膣の一番奥に濃厚な精液を注ぎこむ。陰茎がどくどくと脈動する度、凄まじい勢いで子種が飛び出した。
その後であっても斑鳩は若の口を離さず、射精が終わって肉棒が大人しくなるまで、否、なってからも変わらず濃厚なキスを続けていた。
彼女が若の口を解放したのは、何かを言おうとした若が無理やり拘束から逃げ出してからだ。離れるのを嫌がった彼女が尚も抱きつこうとするのをなんとか押さえ、せっかく風呂に入ったのにまたじっとりと汗を掻きながら斑鳩を見つめたのである。
「斑鳩、気持ちは嬉しいけど――今日は学校だろ? いつまでもこうしてられないって」
「うぅ、でも、そんな――若様はひどいです。自分からしてきたのに、こんな状態で――」
「帰ってきたら、いくらでも相手するから。俺でよければ、いくらでも好きにしてくれていいよ。だから、な?」
「むぅ……絶対ですよ? 今日はすぐ帰ってきますから、私の言う通りにしてもらいますからね?」
「ああ、わかった。それでいい。だからとりあえず学校に行く準備しよう」
「うぅ、わかりました……」
ひとまず行為を終えた二人は、それから若に手伝ってもらいながら様々な準備を終え、一つ一つの出来事を終えていった。
まずは汚れてしまった体を湯で濡らしたタオルで拭き清め、それから朝食を終えて、ねっとりとキスをしてから斑鳩を送り出す。少し急がなければ遅刻してしまうかもしれない時間ではあったが、忍である斑鳩が遅れることはないだろう。
そう思って安心した若は斑鳩を見送った後、ようやく落ち着いた朝を迎えることができ、眠たげな足取りで縁側へ行くとごろりと横になった。
「ふわぁぁ……ねむ」
そして起きたばかりだというのにまた眠り始め、ぽかぽかと暖かい陽光に包まれながら、穏やかな寝顔で静かになる。
ひどくのんきで、穏やかな光景。その顔を見れない斑鳩がこの情景を知っていれば、きっと悔しがるほど平和な姿だった。
しかし、それが消えてなくなり、騒がしくなるのも今日のこと。斑鳩が帰ってきた後は彼女の好き勝手にされてしまうというのだから、それまでは少しでも体力を温存しておこうという彼の判断は、ひどく正しいものである。
◆
「んっ、ふっ、むっ――」
満月が出ている頃。つまりは夜である。
学校からまっすぐ帰ってきて、休む暇もなく若を好き勝手にし始めた斑鳩の行為は今も尚続き、食事を終えた後も続けられていた。
一糸まとわぬ裸体を晒した二人は一つになったまま広い庭に出て、駅弁スタイルで囲いの中にある庭を歩きまわっていたのだ。
口はぴったりと隙間なく合わさり、股はだらだらと溢れる透明と白い液体に汚れながら繋がって、がしっと抱きつく斑鳩を抱える若が草履を履いて歩く。その姿はひどく淫靡で、全身が汗にまみれた状態で快楽を貪る姿は健康的とは程遠い場所にあった。
ぐちゃぐちゃと音を鳴らし、ゆさゆさと女体を揺らす彼らは、もはや誰かに見られてもいいというような様子で行為を続ける。否、むしろたまには誰かに見られたいとでも言うかのように、斑鳩の熱望によってそんなことをしている。確かに個人所有の庭の中であれども、裸で外を出歩き、必死に性行為をしていることに変わりはないのだ。
おかげで二人の興奮はかつてないほどまでに高まり、これまでに何度絶頂したのかすらもわからない。しかし何度もイキながら、斑鳩がもっととせがむために繰り返されているのである。
「んんっ、ふむぅ、んむぅんっ」
「んっ、んっ、はっ」
熱烈なキスはほとんど離されることなく継続され、斑鳩の狂気じみた執着が伺える行為として今も行われている。彼女が帰ってきてから、服を脱いで、愛撫をして、最初に繋がって、その間もそれからもずっと彼女はキスをねだってし続けているのだから。
きっと彼女にとって、若にとっても、これほどまでの執着というのは見たことがないだろう。その行為にどれほどの想いが込められているのか、今となっては誰もわからないが、ともかく凄まじいことだけは理解できる。
斑鳩の唇は常に若のそれをむちゅっと押さえており、微塵も離したがらない。そのままで二人は繋がった腰を振って、呼吸の合った様子で快楽を貪っている。
夜の風が、汗にまみれた裸の体を冷ます中、独特の熱さに包まれた彼らは必死に動き続けた。
そして、またしても限界を迎える。
「んんんっ、んんんっ、んんんんっ――!」
「んむ、むぅぅ――はぁっ」
びゅくびゅくと勢いよく子種が噴き出し、それらをすべて膣で受け止めて、繋がり合った場所からどろりと大量の液が垂れ落ちる。もはや何度目かの中出しかわからないため、注ぎこむ瞬間から溢れ出て草へ落ちていくのだ。
絶頂を感じ、射精が終わっても、斑鳩は若の口を解放せずに口内へ舌を這わしている。快感のため、というよりもむしろどうかしている姿に見える。
そんな時、呼吸を乱した二人が庭の真ん中で裸で繋がり合い、ぼたぼたと液体を垂らしながら立ちつくしていた時のこと。
急に屋敷の縁側の方から、驚いたような声が聞こえてきた。
「なっ、ななな、なっ――なにしてるの、二人ともっ!?」
驚愕に満ちた、ひどく聞きなれた声。それは二人の知り合いの声だった。
即座に若はそちらへ目を向け、誰がいるのかを確認しようと首を振る。斑鳩はそんな彼の口を吸い続けており、聞こえたはずの声には微塵も注意を向けていない。
そのせいで彼らは今も深すぎるキスを続けたまま、縁側に立つ人影を見つけた。
白いリボンで一つにくくった黒髪、豊満な胸、幼さを残した愛らしい顔。普段は元気の良さを映している丸々とした目は驚愕に染められ、心細いと言わんばかりに抱き締める体は制服を纏っていて、まっすぐに二人を見つめる視線は涙で揺らぎながらも離そうとはしない。
そこに立っていたのは二人の知り合い、近々若の護衛につくはずだった、飛鳥という少女であった。
そんな彼女を前にして、斑鳩は尚もキスを続けていたのである。
「い、斑鳩さん、どうして若様と――ふ、二人共裸で、そ、そんなえっちなこと……!?」
「ん、むぅ、ふっ――いか、るがっ」
「はむっ、んむぅ、んちゅ、じゅる――はふっ、むふっ、ふはっ」
若がなんとかして唇を離そうとしているのに、優れた動きでその唇を追いすがる斑鳩は尚もキスを求めており、まだ飛鳥に注意を向けようとはしていない。
そこで困った若は抱えていた彼女の足を降ろし、手慣れた様子でくるりと体の向きを変え、斑鳩の体を背後から抱きしめた。無論、腰はまだ繋がったままで、固い肉棒で膣内を再び掻き混ぜながらである。
いわゆる立ちバックという体勢で繋がったため、斑鳩の意思に反して彼女の口は無理やりに若から離され、そこでようやく若は言葉を口にすることができた。その体勢になるということは斑鳩の激怒を買う可能性すらあったが、黙ったままで飛鳥を無視するわけにもいかない。
そこで若は抗議の叫びを続ける斑鳩を突きながら、飛鳥へ目を向け、何を言えばいいのかわからないためとりあえず挨拶することにした。
「わ、若様っ、何をするのですかっ!? 今日は私の好きにしていいと言ったはず! それなのにこんな仕打ちだなんて、いくらあなた様でも許しませんよっ!! はやく、はやくもう一度口吸いをっ――!」
「そんなに怒るな、斑鳩。せっかくの美人が台無しになるぞ――それと、こんばんわ、飛鳥。挨拶が遅れてごめん。よく来たな」
「わ、若様……斑鳩さん……その、それって、ひょっとして……」
ぎゃーぎゃーと叫び、「キスをさせろ」とうるさい斑鳩をそのままに、二つの巨乳を揉みしだきながら腰を振る若。そんな二人を見る飛鳥はもじもじと身をよじらせ、恥ずかしそうに顔を赤らめながらも視線を外さず、裸の彼らを見続ける。
その時になってようやく斑鳩は飛鳥の存在に気付いたらしく、瞬間的に顔を真っ赤にして両手で顔を隠した。どうやら自分から提案しておいて、いざ人に見られたとあっては思った以上に恥ずかしかったらしい。
「あ、飛鳥さんっ!? ど、どうしてあなたがここに――た、確か修行があったはず、ってそんな場合じゃなく!? 若様、若様っ、す、少しお待ちください! 後でお相手いたしますから、ひとまずここはおやめになって――ひゃんっ」
「飛鳥、ちょっとだけ待ってくれるか? もうちょっとでイケそうだから、話はそれから――んっ」
「い、いけそうって、それってもしかして――あ、あわわわわっ……!?」
飛鳥に見られているというのに、斑鳩の乳房を揉む若の動きはさらに激しくなり、彼女の体をすべて見せつけるように逸らさせながら、ぐちゅぐちゅと音を鳴らして腰をぶつけた。
それだけに斑鳩の羞恥はここへ来て限界を越えるほどに溜まり切り、もはや甘い声を出すばかりで抗議することすらできないようである。それを知る若はここぞとばかりに責め立て、斑鳩を絶頂させようと膣内を激しく掻きまわす。
飛鳥が見つめるその先で、淫らな行為に耽る二人はいつもとは違う状況に凄まじく興奮していた。
「あぁっ、あはぁっ、んんぅ、若様ぁ――み、見ないで、見ないでくださいっ、飛鳥さんっ」
「はぁ、くぅ、イクぞ斑鳩――また、膣内に……」
「ま、待って下さい若様っ、そんな急に――あぁぁっ」
再び若が射精を開始すると、つられて斑鳩も全身を震わせて絶頂する。飛鳥に見られながら、ひどく興奮した状態で。
縁側で立ちつくす飛鳥からは裸で背後から抱きしめられる斑鳩と、若の顔と肩ほどまでの裸体しか見えなかったし、辺りに明かりのない暗闇ではあったが、二人が繋がっている場所から大量の液体がボタボタと落ちていったのは見えた。そしてそれが若から出された精液だということも、飛鳥は知っている。
そこでようやく、これまでずっと行為を続けていた斑鳩が体の力を抜き、背後にいた若へともたれかかった。彼はそれを受け止め、あらゆる体液にまみれた豊満な体を横抱きにして、屋敷の方へと足を向ける。
草履を履いた足でぺたぺたと庭の中を横切り、縁側に辿り着いた若は己の裸体を隠そうともせず、まずは斑鳩を木目の床に寝かせた。その時、飛鳥の熱意に満ちた視線は裸の斑鳩ではなく、いまだに半立ち程度の陰茎へと注がれている。
若はそのまま、自分も縁側に腰掛け、飛鳥にも隣へ座るように促してから話をしようと試みる。大人しく座る彼女がちらちらと勃起しかけている陰茎に目を向け、顔を真っ赤にしながら恥じらいでいることも気にせずに。
「ごめん、待たせたな。ちょっと斑鳩のスイッチが入ってたから――それで、何か用事か?」
「え、えと、そのつもりだったんだけど――その、なんだか、ごめんなさい……邪魔、しちゃった、よね?」
「いや、いいよ。どうせ昼からずっとやってたし」
「ず、ずっと――そ、そうなんだ……」
恥ずかしそうに身を捩る飛鳥とは対照的に、若は裸で座っているというのに微塵も恥ずかしそうではなく、むしろ堂々とした姿にも見える。それが逆に飛鳥の羞恥を増やすことになるのだが、本人はそれに気付いていない。
何かを言いたいけど、恥ずかしくて言えない。本来の用事を済ますこともできなければ、この状況に関する質問を向けることもできない。そうして困る飛鳥は何かを言いだすこともできず、不思議そうに首をかしげる若の視線から逃れることもできず、ただ黙り続けて困ることしかできなかった。
その時、荒い呼吸を繰り返し、若の隣で寝転んでいた斑鳩がゆっくりと起き上がって、自分の体を隠すように若の陰へと体を寄せた。
彼女はそこで顔を赤くしたまま、明らかに恥ずかしがっている姿で飛鳥を見つめ、抗議するように若へと語りかける。どう見てもテンパっていることが丸わかりな姿だ。
「わ、若様、何を悠長に話しているのですかっ。は、早く服を着て下さい、飛鳥さんに失礼でしょう」
「でも斑鳩がたまに言ってたんじゃないか。エッチしてるところを誰かに見られたいって」
「そ、それはちょっとした冗談というか、気分を盛り上げるためのスパイスでして――ほ、本気でそう思ってたわけじゃありませんし、なにより相手に不快感を与えることだってあるわけでっ」
「せっかく念願叶ったんだから、このまますればいいじゃないか。ほら、おいで」
「だ、だめですよ若様っ、あ、飛鳥さんが見ている前で――あぁっ」
渋る斑鳩を半ば無理やりに抱きよせて、彼女の体を膝の上に乗せて、胸や股間へ手を伸ばす。柔らかい肉がぐにゅりと形を変え、押されるがままに動いて、同時に強弱様々な快感を与える。
飛鳥がじっと見つめる、その前でだ。
最初は嫌がっていた斑鳩も、動きが徐々に変わる内にだんだんと甘い声を洩らし始めて、膣内を指でほぐされだした頃にはついに嫌がりながらも悲鳴のような嬌声をあげて悦んでいた。
ちらりと、若が飛鳥を見る。彼女は顔どころか全身を赤くしながらも、ぴくりとも視線を逸らさず、指に掻きまわされる斑鳩の膣を眺めている。
しかしふと、自分を見つめる若の視線に気付いた時、飛鳥はパッと顔を逸らしながら座りなおした。知らない間に自分の股間を手が這っていた事実を隠そうとするかのように。
しっかりとその動きを見ていた若は、斑鳩を気持ちよくさせながらもにこりと笑い、飛鳥へとやさしい声をかける。
「……飛鳥もいっしょに、する?」
そう尋ねてみると、明らかに体を重ねる二人以外から、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
「わ、私は――」
その日を境にして、若の屋敷へ通う人間は一人ではなくなり、当番制でそこへ訪れる人間は二人になったという。
この事実に最も反対していたのは他の誰でもない、まず最初に若の相手をしていた斑鳩だったのだが、彼女も結局は若に勝つことなどできず、渋々と承諾することになる。
代わりに、彼女の要望によって半ば隠居に近い生活をしていた若が学園に赴き、戦術指南役として働くようになり、授業や訓練の合い間に斑鳩や飛鳥と体を重ねたりもするのだが、結局はそれが原因で他の面々にも若との関係がバレてしまい、屋敷に通う護衛が増えてしまったので、要望を叶えてもらった彼女にしてみれば予想外過ぎることばかりが続いて本末転倒だったのである。