妙に急かして若の手を引く斑鳩は誰かから逃げるようで。速足で歩く二人はビーチを離れ、近くにあった簡易の更衣室へと入った。こじんまりとした男性用の一室で固く扉を閉める。
しっかりと鍵をかける様を見つめても若はぼんやり眺めるまま。
この状況を理解しているのかいないのか、文句の一つも言わずに立ち尽くしていた。
「ふぅ。騒がしくして申し訳ありません。さぁ若様、早速お着替えをしましょうか」
振り返った斑鳩は喜々とした笑みを表していて、普段の冷静さとは裏腹、わかりやすい様子がありありと見えた。ビーチに居た時とは目の輝きまで違っている。
彼女は片手に持った鞄を床へ置いて静々と若に歩み寄り、そっと胸に手を置く。
控えめながら甘える素振りに見え、受け止めるのも慣れている若は顔を見つめていた。
頬を上気させ、目は潤みを帯びて何かを期待するよう。
斑鳩はの胸に頬を預けて、上目遣いで普段とは違う声を発した。
「私がお手伝い致します。水着に着替えましょう」
「俺も泳ぐのか?」
「できればお願いしたいです。普段はこういった機会もないのですから、思い出を作るにはいい場所ですし……ですが無理にとは言いません。若様のしたいように振舞っていただければ。ただ、やはりこの気候では汗を掻くでしょうし、体のことを労わって肌を出した方がいいと思います。決して、いやらしい意味ではなく。若様の御体のことを考えればこそです」
「俺は別に構わない」
「ありがとうございます。ふふ、それでは、まず服を脱ぎましょうか。私がお手伝いしますので、どうぞ体の力を抜いてください。すぐに済みますよ」
「悪いな」
端的に答えれば斑鳩の手が若の体から服を剥ぐ。
帯を解いて床に落とし、着流しを脱がせる。するりと手の中に持てば若の肌があっという間に露わになり、熱っぽい溜息が吐き出された。妙に色気のある音である。
着流しを畳んで、帯もきちんと回収し、室内にあるベンチへ置いた後。鞄の中に用意している水着を取り出すよりも先に斑鳩は若の胸に頬を寄せ、何も言わずにちゅっと音を立てて口付けした。
大した反応はない。だが無言で頭が撫でられる。
彼なりに受け入れる気があるということだろうか。或いはただの習慣か、どちらにしても怒る気は微塵も感じられない。嬉しくなって思わず強く頬ずりしてしまう。
すでに斑鳩は当初の目的をほとんど忘れて、自らの欲求ばかりを優先している様子。
それを咎めることなく若の手が彼女の背を抱き、髪に指を絡ませる。すると斑鳩の笑みがさらに深くなり、だらしなく呆けて、今や目も当てられなくなっていた。
鍛えられた胸板に何度もキスを送る。ちゅっちゅっと小さな音が鳴って、所々わずかながらに赤い痕が残り、その度に部屋の静けさが余計に際立つようで。
顔を上げた斑鳩の目は恥辱と興奮で濡れていて、ただ視線を合わせるだけで彼女の意思が若へ伝わった。とめどない興奮はもはや抑えようがなく、彼の体を求めていることが伝わる。
「若様、なんてたくましいお体……私、もう我慢できません」
「したいのか?」
「も、申し訳ありません。我慢しなければと思っていたんですが」
「いいぞ。俺は構わない。斑鳩がそうしたいなら」
斑鳩の笑みは輝き、目は期待に満ちてキラキラしていた。
わずかに頷いて首を伸ばす。再び若と口付けを交わし、今度は舌を出した。
積極的な態度で斑鳩が若の唇を舐め、応えた若も舌を絡める。ぴちゃぴちゃと卑猥な音が鳴って、ますます斑鳩の頬の紅潮が増していった。
そうしながらも手が下に降り、彼の下腹部へ触れる。
若の股間を覆う物は白のふんどしだ。そっと指で触れて脱がせようとし、着せ方を知っているためか、ひどく簡単にそれを脱がしてしまった。
萎えたペニスが露わになる。
キスに没頭しながらそちらにも意識を移動させ、持ち上げるように掌がそっと亀頭に触れる。やさしい力でぐりぐりと押し付けるよう触れてやれば、徐々に力が入って芯が感じられる。
固さは徐々に増し、ゆっくりと勃起してきた。
舌を絡めながら斑鳩は笑みを浮かべ、固くなったそれを握って上下に扱き始める。
そっと唇を離し、至近距離で見つめ合う。斑鳩は幸せそうに微笑んでいて、いつしかそれを見た若も普段より幾分表情を柔らかくしていた。
恋人のように抱き合いながら、若が彼女の髪を撫でた。
「んっ……若様」
「なんだ」
「体が、熱いです。どうかこの火照りを治めてください」
「わかった。それで斑鳩が喜ぶなら」
胸板に頬を擦り付けて、感極まった彼女は濡れた声で甘えるように告げた。
「私はもう、若様なしでは生きていけません」
顔を見上げ、目を閉じて唇を尖らせ、キスを要求しながら。右手だけでペニスを扱く様はひどく手慣れて淫靡さを感じさせ、常に冷静な若の表情を変えさせる。
確実に快感は与えられていた。
その気になった若は彼女の唇を塞ぎ、両手を尻に伸ばして肉をぎゅっと掴む。途端に甘い声。嫌がるどころか斑鳩は彼の行為を気持ちよさげに受け入れている。繋がった唇の隙間から甘い声すら出ていた。とても大きな幸福感に包まれる。
また無言で愛撫を続け、静かな時間が続いた。
換気も行わない、冷房もつけない密室はむっとした空気に包まれていくようで、徐々に体温が上がっていく。端的に言えば熱いのだ。二人は深いキスを続けながら玉のような汗を掻き始めた。
頬を伝い落ち、全身を濡らす大量の汗。海水に触れるのとはまた違った状況だ。
もはや互いの汗を舐めることすら気にならず、一心不乱にキスを続ける。そうしながらも斑鳩の手はペニスをやさしく揉んで刺激を続けて、若の両手は肉厚の尻を揉んで離さなかった。
しばらく続いたキスが終わると、異様に厚い室内で二人は汗まみれ。
それでも外へ出ようという気はなく、斑鳩がその場へしゃがみ込んだ。
「はぁ、失礼します。これを、ご奉仕させて頂きますね」
「ああ。頼む」
手で触り続けた、汗に濡れるペニス。勃起したそれにゆっくり舌を這わせる。
アイスを舐めるのと同じように。美味そうにも見える顔で集中し、色欲に支配された目は彼のペニスを見つめて離さない。凄まじい執着が感じられた。
自分の存在を擦り込もうとしているのか、熱心に唾液を絡める。竿に舌を巻きつけ、カリを丹念に舐め、割れ目に舌先を突っ込もうとした。慣れた様子で余すところなく刺激する。
しばし舌での愛撫を堪能した後、亀頭をぱくりと銜えた。
口をすぼめて強く吸い付き、頭を振って頬の内側を自ら突かせ、ペニスを口内の至る所に擦り付けていた。彼女のそれはひどく熱心でとても心地よく、気持ちがいいと溜息が漏れる。
若は斑鳩の頭を撫でてじっと顔を見下ろした。
嬉しそうな表情は嘘ではなく、視線に気付くと上目遣いに、若の顔を見つめながらしゃぶりつく。じゅるじゅると卑猥な音が鳴り、快感が波のように襲い掛かっていた。
腰の内側から伝わる波に気分を良くし、薄いながらも若は笑みを浮かべる。
「気持ちいいぞ、斑鳩。おまえは上手いな」
「んんっ、んふっ、ふっ……んぷ、ありがとうございます。若様のためならこれくらい、努力も惜しみません。私で気持ちよくなって頂きたいですから」
上機嫌な彼女はさらにペニスを深く銜える。
亀頭は喉に達するほど呑み込まれ、苦しげにも見える表情だがどこか幸せそうで、喜々として自らペニスをしゃぶっている。彼女の献身的な奉仕は驚くほど熱烈だった。
決して若を離さずにじゅるりと音を鳴らす。
丹念な舌使いはしばらく無言で続けられたものの、ある時若が彼女の頭に手を置き、気付いた斑鳩と目を合わせると声をかけた。竿に手を添え、亀頭に吸い付いたまま話を聞く。
「おれも斑鳩を舐めたい。横になってくれるか」
「んんっ、んぶっ、はっ、若様、それは――」
「互いに舐め合おう。俺もこのまましてもらいたい」
「わ、わかりました。恥ずかしいですが、若様がそう仰るなら」
そう言うと斑鳩は自ら彼の体を離れ、おずおずと更衣室の床へ寝そべった。
大ぶりの胸がたぷんと揺れて、恥ずかしげにそっぽを向く。けれど逃げるような素振りはなくて、頬を赤らめて期待を伺わせる目は若の行動を待っていた。
落ち着いた様子で若が彼女の上へ覆いかぶさる。ただし体の上下は逆だ。
斑鳩の顔へペニスが突き出され、若の顔の前には水着に覆われた股間がある。
態勢が整えばどうすればいいかは言われずともわかるようだ。互いに何も言わず、斑鳩は差し出されたペニスを再び口に含み、舌を絡め始めて、若は片手で水着をずらすとそこを舌で舐めた。
ほんのわずかに毛が生えた秘所。割れ目を舌でつついて徐々に濡らす。
くぐもった声が聞こえて、感じているのが伝わった。亀頭をしゃぶる動きに変化はないが羞恥心を感じて股を擦り合わせて反応する。冷静とは些か遠い、可愛らしい仕草だ。
汗のしょっぱさを感じながら、丹念な舌使いで没頭し続けた。
室温がさらに上がるようにも感じられ、それも気にせず相手の股を刺激する。そうしていると確かに心地いいが、更なる快感を求めて欲求が首をもたげる。
勃起して包皮を剥いたクリトリスを軽く歯で噛んだ若は、腰を跳ねさせて反応する斑鳩の下半身を見やり、小さな声で告げていた。
「もう十分濡れてるんじゃないか。溢れてきてるぞ」
「んんっ、はぁ、はい……大丈夫です」
「そうか。なら、入れよう」
「お、お願いします。あ、でも少し待って」
体を起こし、向きを変えて抱き合おうとした若を斑鳩が止める。
ぐったりした様子だがなんとか起き上がって、若と共に立ち上がった。二人は正面から抱き合って肌をぴたりと合わせ、吸い付くような感触を覚え、頬を緩ませながら見つめ合う。
背に手を回し、斑鳩の右手はペニスを掴んで自らの下腹部に擦り付けた。
潤んだ目は期待を表す。熱い吐息が若の胸を打った。
「できればこの態勢で挿入してください。あの、激しくしてほしいです」
「わかった。期待に応えられるよう努力する」
狙いが斑鳩につけられたため、腰をぐっと突き上げればペニスが膣の中に挿入された。途端に斑鳩は首を振って吐息を漏らし、光悦とした表情に変わる。
気分が高ぶって強く抱きついて来る彼女を受け止め、ゆっくり腰を動かし始めた。
肉をかき分けるようにペニスが前後する。その擦り付ける動きがなんとも心地よくて快感を与えられ、どうしようもなく体が震える。斑鳩の唇が若の首筋へ吸い付いた。
熱い息を吹きかけながら無意識のうちに腰を振っていたようだ。
自らの股から卑猥な水音が鳴るのを知りながら、自分の意思では止めることができない。かくかくと浅ましい様子で腰を振ると一心不乱に膣でペニスを扱きあげた。
「んんっ、はぁ、あぁっ……」
ぐるりと腰を回せば刺激される場所が変わるようで、思いのほか刺激がいい。
気付いた斑鳩は少々動きを変える。
目を閉じて集中し、ますます息は乱れていった。
「はぁっ、あぁっ、すごいです若様……たくましいっ」
「斑鳩、気持ちいいぞ」
「はいっ。わ、私も、最高です……!」
徐々に前へ体重を寄せるため、若が足を踏ん張って耐えることとなった。
腰を動かすのは斑鳩だけとなり、一方的に刺激する。きつく締める膣でペニスが上下に激しく擦られて、快感は強まるばかり。しかしより感じているのは彼女の方だ。
冷静さを失っていない若は余裕を称えて快楽を楽しむ余裕があるが、すでに斑鳩は気分ばかりが高まって冷静さを欠いている。自らが責め立てながらも追い詰められていくのは自分だった。
息が乱れる。汗が噴き出して首を振れば髪から飛んだそれが地面へ落ちる。また、抱き合う若の肌をも濡らしていた。目を開けてその様を見つめると不思議に嬉しくなり、自分と彼とが一つになっている感覚が、体と体液が交わって隔たりがなくなっていく感覚が得られる。
まるで肉体と精神が一つになっていくようだ。そんな風にすら思っていた。
だらしない笑みを浮かべて若の顔を見る斑鳩は、疲れたのか腰を止める。緩慢な動きで若に全身を預け、一人では立つことすらできていない。信頼してすべてを預けていた。
荒い呼吸が室内に響く。重苦しいほど熱い空気に包まれ、二人はしばし立ち尽くす。
環境が違えば感じ方も違うのか。どちらも新鮮な気持ちを味わっていたようだ。
「ふぅ、んん、すみません。少し、力が抜けて……」
「熱いからな。辛ければいいんだぞ」
「い、いいえ。若様が満足するまでやめるわけには」
「俺が動けば問題ない」
「えっ、あっ――」
若の手が左足をぐっと上げさせ、片足を上げた状態の斑鳩はさらに強く若に寄りかかる。
驚きを感じている暇はないらしい。今度は若が腰を振り始め、ずぶりと深くまでペニスが膣へ突き立てられたかと思えば、子宮口に先端がぶつかる。
一瞬、呼吸を忘れるほどの衝撃。脳髄までビリビリと震わされた彼女は驚愕した。
彼との行為には慣れたと思っている。もう何度となく抱き合っているし、そこを亀頭で叩かれた回数も数えきれず、子種を注がれるなど日常茶飯事。今更驚くことはないと思い、脚を持たれた時点で覚悟もしていた。なのにたった一度ペニスで肉を抉られただけで自分のすべてが乱される。
思考が形を成さなくなって、音もなく涙がこぼれる。
深く息を吐いた彼女はもはや顔を上げることもできなくなり、顔を若の胸板に押し付け、声を我慢するかのように唇をきゅっと結ぶ。無駄な行動だろう、とは思いつつ。
我慢できるはずがない。彼はあまりに彼女のことを知り過ぎている。感じる部分もどうすれば喜ぶかも、今日まで共に過ごした時間で多くを理解しているのだ。
勝てるわけがないと思っていると、勢いをつけて若が腰を振った。
「あっ、あっ、あぁっ、はぁぁっ――!」
まだ余力を残して反応を伺うかのような速度。けれどすでに斑鳩が動いた時より速い。
カリが引っかかって肉をかき分け、膣内で分泌された体液が掻き出される。無色透明なそれは床に落ちるとわずかな音を発して、見る見るうちに広範囲を濡らしていく。
一度動かす度に量が増えていくかのようで、次々足元が濡れていった。
裸足でそれを感じる若は、もう余裕がない斑鳩の顔を見下ろし、頭に口付けを与える。
感じ取っている余裕などないのだろう。泣き叫ぶような嬌声を聞き、右手で尻を掴んでぐっと引き寄せた。動きに応じてさらに深くペニスが突き刺さる。
「んあっ!? はぁ、うぅ……!」
「イキそうか」
掠れた声で囁けば必死な様子でがくがくと頭を縦に振る。
限界は近い。会話することもできそうにないか。
左脚から手を離し、下ろさせて、若の両手が尻の肉を掴んだ。
さらに強く腰がぶつけられる。亀頭が子宮へ叩きつけられ、嬌声が高くなった。
「はぁっ、あぁっ、あっ!」
「もういいぞ。いつでもイケ」
「んんあっ、あぁぁっ――!」
首を逸らせたかと思えば唇を塞がれていた。
二人は深くキスをし、舌を絡めた状態で最後の瞬間を迎える。斑鳩の腰が淫らに前後して誘うよう、直後に全身が震えて絶頂へ至っていた。潮を吹いて若の脚が濡らされる。
一方の若はまだ射精には至っておらず、気持ちいいと感じながら冷静な表情。必死に唇で舌に吸い付いてくる彼女の頭を撫でてやり、あやすように触れ続けていた。
呼吸が落ち着いていない。だが震えが止まる頃には目を閉じた顔に笑みが浮かんでいた。
唇を離し、名残惜しそうにする顔を見つめる。
いまだ呼吸が整わない斑鳩は若の頬に両手を置き、うっとりした目でじっと見つめる。その表情は恋をする少女の物であって、向けられる感情がわからないほど若も子供ではなかった。
お返しに頬を撫でてやり、くすぐったく笑う彼女へ声を出す。
「イったか?」
「は、はい。お恥ずかしながら……申し訳ありません。私一人だけが気持ちよくなって、勝手に達してしまって」
「気にするな。俺も気持ちよかった、感じていたのは斑鳩だけじゃない」
「ですがまだ大丈夫です。どうか続きを。若様にも満足して欲しいですから」
再び斑鳩が数度キスを与え、応じるべく若も顔の向きを変える。
ちゅっと小さな音が何度も起こった。飽きることなく繰り返し、十回はしただろうか。それでも満足した様子はないが斑鳩の方から顔を離して、目を見つめ合った状態で言う。
「私が動きましょうか?」
「いや。態勢を変えたいな」
「お好きな体位を仰ってください。若様のためならどんなポーズでも取ります」
「後ろからがいいな。立ったまましよう」
「わかりました。それでは……んっ」
繋がったまま、斑鳩が器用に足を動かして体の向きを変える。
向き合う態勢から若が彼女の後ろに立つ状況へ。大きな尻が下腹部に押し当てられて、膣の内部に触れる角度が若干変わり、両手はおもむろに乳房を掴む。
よっぽど胸が好きなのだろうと、気を悪くするどころか良くした斑鳩が微笑み、体の全面まで伸びてきた腕を掴み、自ら小刻みに腰を振る。
ペニスが刺激され、即座に若もその気になった。胸を掴んで態勢に問題はなく、ペニスの出し入れを再開する。その瞬間からぐちゃりと音が鳴って、愛液が掻き出された。
一突きごとに体を揺り動かされる斑鳩は若の腕を持ちつつ、前を向いて目を閉じ、声を発した。
「あっ、あっ、んっ、んっ――!」
「すごく蕩けてる。いい感触だ」
若のペースで突かれるのは気分がいい。自分で動くよりよっぽど気持ちよかった。
どちらも彼と繋がっているのならば文句はないのだが、やはり抱かれている時の方が安心する。口元にわずかな笑みを浮かべる斑鳩は幸せそうな表情で、我慢せず安心して嬌声を放つ。その声が室内で妙に反響し、耳の中に残るのは彼女の声が大半だった。
腰と尻がぶつかり、肉を打つ音が連続する。
淡々と腰を動かす若はまだ余裕があるように見えるも、斑鳩を気遣ったのか、それとも長くその場に居続ける気がなかったのかもしれない。ある時から急速にペースを上げ始める。最初はただただ気持ちよさそうに喘いでいた斑鳩だがすぐに余裕を失っていき、笑みが消えた。
眉間に皺を寄せて妙に力が入った表情。高い声で大きく鳴いている。
一度達したばかりだというのに気分はぐんぐん高まっていき、このままではまた先に一人で限界を迎えてしまう恐れがある。それはいけないと唇を噛んで耐えるのだが、努力も空しく全身を苛む快感は抗いきれないもので、若の責めは本気で手加減がない。
ハァと息を漏らせばもう声が我慢できず、再び口を閉じることなど不可能。
斑鳩は達することの恐怖感と期待を抱きながら、大声で叫んだ。
若の両手が強く乳首を捻った瞬間に限界へ達し、また頭が真っ白になる。脚ががくがく震えて今にも倒れそうな様子、口の端から唾液を垂らしてみっともない表情だった。
「あっ、あっ、だめ、だめっ! イクイク、イキますっ、あっ、あぁっ――!」
強烈な快感が体の内側で弾け、自分という存在が一気に揺らいだ。
パンっと弾けるように視界を失くした斑鳩は我を忘れ、脚の力が抜けて崩れ落ちた。若が抱えるため怪我を負うことはない。二人して床へ座り込む。
荒い呼吸を待つように動きを止めるが尚も二人は繋がったままだった。
力が入らず背を預けてくる斑鳩を抱きしめ、膣内にあるペニスがぴくぴくと動かされ、微弱な快感で刺激を続ける。まだ一度も精を吐き出していないためそろそろ出したかったようだ。無理に動かそうとはせずに些細な動きをすれば、斑鳩が気付かないわけもなく、ひどくゆっくりな動きで若の顔を見る。快楽に支配された表情は普段とは違う美しさを称えていた。
「はぁ、んんっ……わか、さま」
「悪いな。まだ治まらない」
「い、いいんです。私のことは、気にせず、続けてください」
「だが疲れただろう。今日はいつもより感じてるように見える」
乳房を離した右手が股間へ降りてクリトリスを触る。確かに存在感を示すそれを指の腹で撫でて、押し潰すように力を込めれば反射的に首が逸らされた。
少量潮を吹いて、軽く達した様子。耐えきれずにだらしなく舌を伸ばしていた。
斑鳩の痴態に気を良くする若は左手で胸を揉み、耳に舌を突き入れながらもやさしく声をかける。行動と彼女を気遣う言葉がそぐわないものの、別段何を気にするでもなかった。
「もう少しだけだ。我慢してくれ」
「はいぃ……どうぞお好きに。お好きに使ってください」
「ああ」
腰を振る。ゆっくりとした動作から始まり、徐々に速度を上げていく。
卑猥な音がいくつも重なって、一秒たりとも休む暇は与えられなかった。
それでも嫌がる素振りは皆無。光悦として声が出された。
「あっ、んっ、あっ、あっ――」
「今日はどこに出そうか。口に出したら飲んでくれるか?」
「は、はいっ、もちろんっ。んっ、んっ、若様がお望みならいくらでも……!」
「わかった。じゃあそうしよう」
股に触れていた右手が口元へ運ばれ、開いた口から入り込んで舌を絡め取る。左手では相変わらず乳房を掴んでこねくり回し、妙に強気な態度。ペニスの出入りも速くなっていく。
しばし無言で突き続け、静かなまま時間が流れる。
どれほどそうしていただろうか。正確な時間はわからない。それほど長い時間はかかっていなかったが体感では数時間にも思える。汗が滴り落ちて全身が熱く、疲労や快楽でもはや忘我の状態。
短い時間でさらに何度か達した斑鳩に対し、ようやく若が限界を感じる。
激しく腰を叩きつけた状態で、落ち着きのある声で囁いた。
「イクぞ。斑鳩、いいか?」
「んっ、はっ、はいっ。い、いつでも……ううんっ、あぁっ!」
「よし。おまえもイケ。最後の一回だ」
ごつごつと亀頭で子宮を叩けば、斑鳩は全身を震わせて首を逸らすと絶頂を感じ。
射精直前となった若は勢いよくペニスを引き抜き、へたり込んだ斑鳩が床に尻をついてなんとか座った態勢を維持すると、がに股になってペニスを突き出し、唇を割って口内に亀頭を突っ込む。
数度腰を振り、舌の上でペニスを刺激させて射精を始める。
濃厚な精液が大量に放たれ、喉の奥まで飛び込んだ。抵抗せずにごくりと飲み干す。
目元で笑みを作る斑鳩は自らの意思でペニスへ吸い付き、尿道に残った精液をも吸い出した。嬉しそうにすべてを腹の中に納め、それからわずかに頭を振った。
唇でペニスを挟んでずるずると扱く。名残惜しそうに口を離せば、唾液がたっぷり塗りたくられていた。それを見て満足そうに右手で握ってやわやわと刺激する。
若は表情を変えず、何も言わずに彼女を押し倒し、あっと声を出す斑鳩に覆いかぶさる。
至近距離で見つめ合った後、どちらからともなくキスを交わした。
「んっ、ふっ……はぁ、若様、素敵でした」
「俺も気持ちよかった」
「満足、できましたか?」
「ああ。ありがとう」
「ふふふ、いいえ。私も若様に愛して頂けて満足です」
舌を絡めてぴちゃりと音を発し、まどろむ時間が続く。
一分ほどは舌を触れさせていただろうか。そっと顔を離すと斑鳩が強く抱きついた。
互いに全身が汗まみれでべたべたする。そのことを再認識すると笑って若の頬を舐め、しょっぱいと感じながら嫌な顔一つせず、甘える声色の彼女が言った。
「少し時間がかかってしまいましたね。みなさん待っているかもしれませんから、着替えて戻りましょうか。きっと今頃、飛鳥さんが探しているかもしれませんし」
「そうだな」
「でも、その前にシャワーを浴びた方がいいですね。このままだと私たちが何をしていたかバレてしまいます。せめて汗だけ流しましょう」
「わかった。多分、バレると思うけどな」
のろのろと二人で起き上がって、斑鳩が鞄を手に持つと、二人はそのまま外へ出た。
暑い日差しの中へ淫らな格好のまま立つが、肌に風を感じたことにより気分が変わる。若は裸のまま外の空気を感じ、その場に立ってから斑鳩がずれた水着を正した。
辺りに人目がないことを確認すると、鞄を下ろして中から若の水着を取り出す。
両手でそれを広げた斑鳩は可憐に微笑み、ひどく布の面積が少ないそれを若へ見せた。
競泳用か、或いはそれ以上に小さいビキニパンツ。光沢のある黒色で股を隠すだけの用途。裸に着れば健康的というよりも卑猥な様子を感じさせるだろう。
斑鳩は心底楽しそうな笑顔でそれを見せ、若は大した反応を見せずに見つめていた。
「さぁ若様、これを履いてください。若様の肉体美にはぴったりです」
「それは、小さいんじゃないか」
「そんなことはありません。若様が身に着けてかっこいいと思われるちょうどいいサイズを選びました。さぁどうぞ、足を上げてください。私がお手伝い致します」
妙に生き生きとした様子で言われ、しゃがんだ斑鳩が萎えたペニスの眼前で若の顔を見上げ、微笑む。構えるように水着を足元へ運んで彼の行動を待っていた。
仕方ないと、若が足を上げる。
片足ずつ足を通して、腰まで上げられる。ようやくこれで裸ではなくなった。
立ち上がる斑鳩は上機嫌に若の手を握ると、まるで恋人がするように手を引いて歩き出す。ひとまず更衣室の近くにあるシャワーへ向かった。
外に設置されたシャワースペースへ辿り着き、水を出して頭からかぶる。
抱き合いながら二人は互いの肌を撫で、汗を流す。そんな瞬間にふと斑鳩が彼の唇を奪い、キスを始め、すぐに舌を絡めるほど濃厚になっていった。
「んんっ、んっ、ふぁっ……」
色っぽい声が口の端から漏れた。目を閉じる二人は唇の柔らかさを感じて没頭し、周囲の状況もまるで意に介さず、野外の風を感じて独特の心地よさを覚える。
しばしそうして体の火照りを取ろうとしていた。
そこへ怒りを含めた声がかけられ、途端に斑鳩の肩がびくりと反応する。
「斑鳩さんっ! もう、また若様を連れ回して!」
「あ、飛鳥さん?」
怒りを感じさせる足取りでやってきた飛鳥がシャワーを止め、強い眼差しで斑鳩を睨む。危惧していた通りだ。やはり目を離した隙に抜け駆けした。
この状況では厳しい視線から逃れることもできず、斑鳩はただ苦笑することしかできない。
「抜け駆けするつもりはないって言ったのに」
「た、ただお着替えを手伝っただけですよ。私は別に何も……」
「若様、本当に何もなかった?」
「更衣室で一回出した」
「ほらやっぱり!」
「わ、若様、それを言ってはいけません……!」
慌てふためく斑鳩に飛鳥は腕を組んで憮然とした様子。注意する者とされる者、普段とは立場が逆転していて若が不思議そうに二人を眺める。しかし一方的に責めるような雰囲気も一変して、表情を変えた飛鳥が若を見た。眉根を寄せて何やら困惑した顔だ。
「まぁ、斑鳩さんへのお説教は後にするとして」
「う、一応私、年上なんですけど」
「それより若様、大変なんだよ。柳生ちゃんとあの華風流って子がいがみ合ってて――」
「ん?」
いじけるように唇を尖らせ、そっぽを向く斑鳩をそっちのけに。
若は飛鳥の言葉に頷きを返した。