彼女は頭がいい。状況を冷静に判断するだけの落ち着きもあるし、決して現実逃避をするような女でもない。これまで何度も危険な目にあってきたし、命が失われてもおかしくない状況だって見てきた。でもそれらをすべて乗り越えてきた経験を持つのだから、彼女は最後まで諦めるようなことはしないだろう。
しかし、今回に限ってはだからこそわかってしまった。頭がいいことが災いして、諦めるつもりがなくとも正しく理解してしまう状況というものがある。
春麗がジュリには勝てないと理解してしまったのは、彼女の蹴りが今まさに顔面に当たろうかというその瞬間だった。
「あうっ!?」
「あーあー……全ッ然つまんねぇ」
左頬に蹴りが当たって、春麗の体はいとも簡単に宙を舞う。無人の広い廃工場の中、彼女の体は砂塵を巻き上げながら地に落ちた。
ジュリの蹴りは強力にしてしなやかでありつつ、以前戦った時とは似て非なるもの、まるで別人のような動きだった。それが春麗を一方的に負かした要因に他ならず、彼女が困惑している理由である。
なぜこれほどまでに強くなったのか。なぜこれほどまでに差ができてしまったのか。キャミィが姿を消し、世界中から名のあるファイターが行方をくらましていた間に、一体何が。
そう思う春麗はジュリから受けた一方的な攻撃により、もはや立つことすら困難な状態だった。それも、手加減された状態で、ひどい怪我は一つも与えられることなく、体力を削るためのような長時間にも及ぶ戦いの末に。
いかに私情を挟まないようにと心がけている春麗であっても、これには屈辱を覚えずにはいられない。ほんの少し前まで、自分たちはほぼ同格の実力だった。それがほんの少しの期間で、圧倒的なまでの差ができている。これを無視することなどできない。
退屈そうに頭の後ろで腕を組むジュリの足元で、彼女は強く歯を食いしばっていた。
「もうちょっと楽しめるかと思ったのにさぁ、これじゃ全然気持ちよくならねぇよ。せっかくデザートにしようと思ってたのに、案外その価値はなかったかな? がっかりさせられちまったなぁ」
「くっ……ジュリ、あなた一体……?」
「フン、まぁいいか――ファイトはつまんなかったけど、その目ができるんならもう一つの方は楽しめそうだ……おい」
ジュリが呼びかけると同時、いつの間にか近くまで来ていたもう一人の人間がジュリと肩を並べる。
全身を真っ黒いマントで覆い、目深にかぶったフードで顔すら見せない人影はジュリより頭一つ分小さく、体を隠しながらもどこか禍々しい雰囲気を放っていた。
「ゼロ、遊んでやりな――アジトに帰る前にまず一発だ」
そう呟かれた途端、全身を覆っていたマントが投げられる。その下から現れたのは、靴以外何も身に纏っていない、全裸の少年だ。
股間をビンと大きくさせて晒し、無表情で直立、瞳の中には空虚さだけが感じられる奇妙な少年。
彼の顔には、春麗にも見覚えがあった。確かキャミィの知り合いで、彼女がずいぶんと気にかけていた日本人だ、と。
しかしそう思った直後には、違う、と心のどこかがざわめく。それも当然だ、全裸で股間を隆起させたまま倒れた女に近付くなど、かつて見た本来の彼の姿ではない。
春麗はジュリに強い眼差しを向け、歯をむき出しにしながら怒鳴った。
「――彼に何をしたのッ!?」
「あたしじゃねぇよ。シャドルーがやって、たまたまあたしが先に拾っただけでな」
「くっ、どうしてこんなことを――!」
「うるせぇ奴だなぁ。おいゼロ、とっとと始めろ。一発やったら連れて帰るからよ」
「うん」
痛みと疲労で動けない春麗の体に、ゼロの手がすっと伸ばされる。触れられたのは大きくて丸い、尻だった。
直後、彼女の下半身を覆っていたストッキングがビリビリと破かれ、秘部を隠していた布も無残な姿になり、肉付きのいい白い尻が露わになる。
悲鳴をあげる暇もなく、驚愕していた春麗が目を見開いて背後に振り返ったその時、すでにゼロの固い陰茎が彼女の秘所にぶち込まれていた。
愛撫もされず、まだ潤っていないそこへと。
「あぁぁぁっ!?」
「クククッ、アッハッハ! いい顔すんじゃねぇか、おまわりさんよォ! いいぜ、その声が最ッ高に気持ちいいよ――もっと鳴いたらどんなに気持ちよくなれるんだろうなぁ?」
「うぐぅ、くっ、ふっ――あぁぁ、だ、だめぇ……」
か細く吐きだされる声には従わず、肉の中に入り込んだ陰茎は激しく動き出した。しかも春麗の体をいたわることもない、ひどく身勝手な様子で勢いよく奥を叩くのだ。
亀頭の割れ目からだらだらと垂れ流れる大量のカウパー液だけがほんの少しの潤滑油になり、乱暴でやさしさのない行為が春麗を責め立てる。快感よりも痛みの方が大きく、彼女の顔は明らかに苦痛が原因で歪んでいた。
だからこそ、地面に倒れ込んだ春麗を見るため、股を開いてしゃがみ込んだジュリは楽しそうに笑っているのだ。その顔が見たかった、楽しくて仕方ないと訴えるかのように。
気付けばジュリも自らズボンとパンツを脱いでいて、しっとりと濡れる秘所を外気に晒していた。右手の指がいやらしく動いて、小さな水音を立てながら快感を生み出す。
さながらそれは、至近距離で股を向けられる春麗を挑発するかのような自慰だった。
「あはぁっ、いいっ、最高だよ――あの生意気な口叩いてた女が、涙流しながら犯されてるんだぜ。こんな最高なセックスシーンはねぇよ。あぁっ、そんな顔するなよ――もっとぐちゃぐちゃにしたくなっちまうだろ」
「いぎぃぃ、うぐぅ、あぁぁぁっ」
甲高い悲鳴が工場内に響く中、ゼロは顔色を変えることなく淡々と腰を振る。それもかなり速い速度で、彼女を攻撃するかのような激しい動きだ。
冷たい地面に無理やり押し倒され、尻を高々と掲げられてぎゅっと掴まれて、潤っていないそこを掻きまわされる。ただでさえ仕事が忙しく、男と交わったことがないまじめな女だったのだ。春麗がその行為に慣れるには時間が足らず、やさしさが足らず、もはや苦痛しか感じられない。
しかしその愛がないように見える行為が、いつしか泣き喚いていた春麗の膣を揉みほぐしていくのを、彼女自身は気付いていない。
パンパンに膨れ上がった赤黒い亀頭が膣の肉壁をぐっと押し上げ、無理やりに形を変えながら浅い場所と奥とを移動する。カウパー液を出しながらのそんな単純な動きが、気付かぬ内に春麗の顔色を変えているようである。
経験はなかったはずの春麗はだんだんと甘い声を洩らし始め、それを受け入れたくないと言うかのようにぐっと目を閉じ、唇を噛んで声を抑えようとしていた。するとジュリは機嫌も良さそうに言う。
「なんだよ、もう気持ちよくなってんのか? クククッ、思った以上に淫乱だったな。これじゃあ調教する甲斐がねぇじゃねぇか――まぁ相手がゼロじゃあ仕方ねぇか。もはや本物の淫魔だからな、あれは」
「ふぐぅぅ、うぅっ、ふぅぅ――ひぃぃっ」
涙と共に流れる声。それは多大な悲痛そうな色を含めつつ、ほんの少しの甘さも加わっている。
その証拠に、春麗はわずかとはいえ自分から腰を振っていた。頑張ってゼロの動きに合わせようとするかのような、痛みから逃れるための本能に任せた動きに見える。
ぎこちないがそんな春麗の動きも手伝って、すでに限界を近くしていたゼロは思い切り射精を開始し、彼女の膣内を一気に満たしていった。そこにもまた気遣いも何もない、自分勝手でしかない行動だ。
すべてを注がれた春麗は思わず目を見開き、全身を痙攣させながら小さな声を発し、言葉にならない想いを吐露する。だがそれは誰かに伝えられるようなものではなく、その声を耳にしていたジュリはわけがわからないと口にしながらも楽しそうに笑っていた。
「アッハッハッハッハ!! 最ッ高、あんた最高だよおまわりさん! しゃべれねぇほどイキまくってんのか、おいッ! なんて言ってるかわかんねぇよ!」
「あっ……あっ……あっ」
「ククククッ、アハハハッ、アッハッハッハッハ!! そうだよ、その顔だッ! それが見たかったんだよ、この雌豚女ァ! いいか、たった今からあんたは人間なんかじゃねぇ――あんたを犯したこの男の性奴隷なんだよ。身の程を知ったか雌豚ちゃん? アハハハハハッ!!」
膣を貫いていた肉棒を抜かれ、自分の体を解放されたというのにぴくりとも動かず、地面に倒れたままだった春麗の頭はジュリによって足蹴にされた。裸足の右足が彼女の頭を踏みつけ、屈辱を与えるかのようにぐりぐりと左右へひねられている。
その時のジュリはこれまでゼロと過ごした時間の中で、最も幸せそうな顔をしていた。少なくとも彼本人は彼女の姿を見てそう想い、それを口にすることなくジュリを見つめる。
ぽつりと呟かれた言葉は、彼の表情に見合った無感情なものだった。
「ジュリ、やり過ぎだ。ここで壊しちゃうと意味ないだろ。言ってたじゃないか――お楽しみは、アジトに帰ってからだって」
ゼロがそう言ったことをきっかけにして、その場にいた三人は某国の某場所、元はシャドルーの基地だったアジトへと戻っていった。
◆
アジトに連れ帰られた春麗がまずされたことは、自分専用に与えられた部屋に閉じ込められることだった。
服はすべてはぎ取られ、素っ裸の状態で体の自由を奪われた上でだ。右手は右足首と革のベルトで縛られ、左手は左足首と縛られ、股を開いた上に動けない状態。彼女はそのまま一室に押し込められ、自分一人では生活できない環境に置かれていた。
このままでは食事を取ることも、トイレへ行くこともできない。そこで同じ部屋で生活し、終始春麗の面倒を見るためにやってきたのが、一切服を纏っていないゼロだったのだ。
裸の男女が同じ部屋で、すべての時間を共有する、そこは異質な空間だった。春麗の食事はすべてゼロの手から食べさせられ、排便を行う際は移動や性器を拭くことすら含めたすべてを世話され、何も隠せないままですべてをさらけ出す。これはプライドの高い春麗にとって、予想だにできなかった屈辱だった。
しかもその上、自分を世話する男が常に裸というのも大きい。いまだに見慣れぬ大きな陰茎は彼女が思わず赤面してしまうほど自然に外気に晒され、力なくぷらぷらと揺れている。おまけに気ままに勃起した時には部屋の外から女を呼び、春麗が見ている前で激しい性交を行ったりもするのだ。一日につき、三回程度ならば少ない方、多い時では一日中女を抱きながら彼女の世話をすることもある。
さらに一週間も経たない内から、ジュリから指示を受けたのか、それまで普通に世話をしていたゼロが突然、直接的ではないにしても春麗にちょっかいをかけ始めたこともあった。彼女がトイレで用を足しているその時、目の前で勃起した陰茎を激しく扱いたり、彼女のために運ばれてきた料理に大量の精液をかけたり、することがないが故に彼女の裸体を見て自慰を行い、春麗の全身をきつい匂いを放つドロドロの液体で白く染めたことも一度だけではない。その度、汚したゼロ自身が風呂で春麗の体をきれいにするのだ。ただ彼女にとって不思議だったのは、ここまでしておきながらゼロは全く春麗を犯そうとしなかったことだった。
それだけでなく、春麗の精神を削り取るようにしていたのは、新たに連れて来られた女を初めて犯す瞬間を見せられたことだ。
日本の格闘家だという、空手の道着を着た「まこと」という女の子がアジトへ来た際、彼女は真っ先に春麗の部屋へと連れて来られ、ジュリとゼロによって犯される様をむざむざと見せつけられた。
「クククッ、よぉく観とけよ雌豚。おまえが負けたせいでここへ来た、おまえが救えなかった人間だ。いずれはおまえもこうなる――肉便器は肉便器らしく、いつもみたいにマンコ濡らして犯されるの期待してなよ。ま、相手するかどうかはゼロの勝手だけどな」
「――あぁっ、いぃぃっ、あがぁぁっ」
「ん、きついな。ちゃんと濡らしたのに」
黒々と光る陰茎がぴったりと閉じた秘所を無理やりこじ開け、ずるずると押し進む光景も。その痛みでまことが泣き叫び、涙を流しながら首を振る、拘束されて動けない哀れな姿も。そのすべてが春麗のために生み出されている。
彼女がジュリを倒し、ゼロと合わせて二人を捕まえていれば、こんなことにはならなかったのに。まことが苦しむ必要はなかったのに。ジュリは唇が触れそうなほどの至近距離まで顔を寄せて何度もそう呟き、疲労に包まれる春麗を揺さぶる。そしてその効果は確かにあった。
まことが正常位でゼロに貫かれている時、悲鳴にも思える声を聞き、犯されるその姿をはっきりと見ていた春麗は静かに涙を流して、眉を寄せて顔をしかめながらも目を逸らすことはなかった。だがその一方で、大きく開かれた足の奥では、とろりと液を垂らしてもいたのである。
「あぁ~……また濡れちゃったなぁ。欲しいのか? ゼロのあれが――おまえのせいで被害に遭ってる女を犯してる、ゼロのチンポがよォ」
「ふぅー……ふぅぅ……」
「鼻息が荒いぜ。もうそろそろ素直になったらどうだ? ここはわかりやすく濡れてんだからさ。ククッ、弄ってもねェのに勝手にパクパクしてるぜ、何か欲しいんじゃねェのか?」
いやらしく動く指によって、春麗の秘所が触れるか触れないかというところで弱く触れられ、それだけで反応して震える体にジュリの笑みがますます深くなる。さすがの強情さ、まだ堕ちるには早いと思う一方で、彼女は誰よりもこの時を楽しんでいた。
その眼前では激しく腰を振るゼロがまことの膣内を荒らしており、その最中に引き裂くようにして道着を脱がしていく。もはやまことの体に纏わりついているのはただの布切れで、およそ服と呼べるようなものではない。
半裸を晒した女が、男の気ままによって犯され、抵抗する気力すら失くして泣いている状況。縛られている春麗はそれを見ていることしかできない。
「あぁっ、あぁぁっ、んんんっ、んいいっ」
「はっ、はっ――締まりがいいな。ちょっと固いけど」
それは初体験を迎えたまことが絶頂するまで、さらに言えばゼロが三度射精するまで続けられ、その日以降、春麗の部屋では毎日二時間ずつのまことの調教が行われ、熱心なそれはまたしても春麗の精神を削る出来事となった。
また、それ以外に彼女が体験したことでいえば、最も大きかったのはゼロが呼びだして抱いた一人の女のことだ。
とある日、まことの調教を終え、ゼロ親衛隊から半分の六人を一斉に抱いて盛大な乱交を行ったゼロは、その直後に一人の女を呼びだして性交を始めた。
親衛隊のメンバーと入れ替わるようにして部屋にやってきたのは、いつからか春麗の大切な友人となった、キャミィだったのである。
「きゃ、キャミィ……!?」
「はぁっ、はぁっ――春麗……」
「キャミィ、おいで」
着てる意味があるのかどうかもわからない、乳首や陰毛すら透かして見せるボディスーツを着て、股間には一本の振動するバイブを銜えこみ、紅潮した顔で呼吸を乱す友人。その目は春麗を映しておきながら、彼女を見てはおらず、ただ恥辱と快楽、そしてゼロだけを映していた。
ペットを呼ぶかのようにやさしい声色と手招きを向けられ、すぐさま歩き出したキャミィは迷いもせずゼロの胸の中へ飛び込み、猫がそうするように頭を押しつけて甘え始める。すぐ傍には両手と両足を拘束されて、淫靡な格好をさせられて動けない友人がいるというのに助けもせずに。
それは春麗にとって、アジトへ来て初めて感じる絶望というものだったに違いない。これまでは気丈に振る舞い、自分を叱咤して心を奮い立たせ、なんとしても彼らを捕まえると思っていた。絶対に諦めるものか、そう決意してザーメンにまみれた料理も口にしたし、ゼロの自慰のためのネタにされても泣かなかったし、全身をザーメンまみれにされても諦めなかった。
肉棒を無理やり銜えさせられたこともあった。全身に擦り付けられたこともあった。手と口で体のすべてを遊ばれ、一日中舐められ続けたこともあった。アジトにいる親衛隊が入れ替わりで部屋に来て、休む暇もなく三日三晩愛撫され続けたこともあった。
それでも頑張ってきたのに、この瞬間にこれまでの努力すべてを忘れた春麗はただ呆然と、嬉しそうにゼロとキスをするキャミィを見つめていた。
「んんっ、んふっ、んんむっ」
「んっ、ふっ。キャミィ、がっつき過ぎだ。もうちょっと落ち着け」
「はぁんっ、んんぅ――もう、もう無理ぃ……我慢できないのぉ……」
あの強気で冷静だったキャミィが、遊女のように男へ媚びて尻を振り、自らの指を秘所へ這わしている。同時に、勃起した陰茎をぐっと掴んで、慣れた様子で上下に扱く。
そんな彼女の姿を見た春麗は言葉を失くし、身動き一つ取れずに、ただ呆然とすることしかできなかった。
その間にも二人の動きは変わって、あっさりと裸に剥かれたキャミィは春麗が座るベッドに両手をつき、自分から高々と尻をあげて、ゼロを迎え入れる準備をした。体勢を指示されたとはいえ、それにしても迷いのない速さである。
ゼロは自分の陰茎を手で掴んで位置を正し、もう何度目かもわからないキャミィの膣への挿入を始める。途端にキャミィは甲高い嬌声をあげて悦び、力が抜けた腕と共にベッドへ顔をつけながら、口の端からよだれを垂らしていた。そこにある表情はまさに至福の一時を感じている時のもの、これ以上の幸せはないと伝えるかのようだった。
「あぁっ、んんっ、あはぁぁぁっ――すまない、春麗、すまないっ、あぁぁぁんっ」
「うっ、ふぅ、今日はいつも以上に締まりがいいなキャミィ。これならひさしぶりに、丸一日やるとするか」
「あっ、はぁっ、う、うれしい――ゼロ、もっと、もっと強くっ、いっぱい突いてっ。壊れるまで専用マンコ使ってぇ」
ぐちゃぐちゃと卑猥な音が鳴って、しばらくすればキャミィの膣から大量の精液が溢れ出て、当事者ではない春麗でも膣内射精されたことが理解できた。その一連の動きをすべて、彼女は見せられていたのだ。
この日から約五日間、春麗の部屋にはゼロと共にキャミィも滞在するようになり、二人で春麗の世話をするようになったのである。生殺与奪、そのすべてを二人に握られた状態で寝食を共にし、おもちゃのように体のすべてを遊ばれる日々だ。
しかも彼らは暇さえあれば春麗に見せつけるように、激しくも甘い性交を何度も繰り返した。様々な体勢で、時にはベッドの上に転がした春麗に覆いかぶさるようにして、二人は何度も体を重ねてそれを見せつけた。
そんな日々が続いて、春麗がアジトへ連れて来られて、三ヶ月が経った頃。
二人きりの室内でゼロがねっとりと春麗の乳房や膣を弄っていた時にジュリが現れ、心身ともに疲弊しきっていた春麗がついに自ら口を開いた。
「もう、いいわ……もう殺しなさい……」
「まぁだ自分の役割がわかってねぇようだな。まったく強情な奴だぜ――そんなアヘ顔晒してまだ知らんぷりとは」
「くっ……あなたは、最低よ……」
膣をひくひくと動かし、拘束を解かれているのに動くこともできない春麗は、真っ赤な顔で目を潤ませながらそう言う。しかしその姿に覇気はなく、ただ弄ばれるだけの人形にも等しい。
そのためジュリは機嫌よく笑ってゼロの体にしなだれかかり、背後から屹立した肉棒を掴んで刺激する。非常に手慣れた様子なのは春麗も何度もジュリの痴態を見せられたおかげで知っている。
ゼロが春麗に愛撫を施し、ジュリがゼロに愛撫を施して、そんな中で会話が行われた。
「あははっ、最低だって? よく言うよ、口ではそう言いながらあんたも楽しんでるんだろ? 三日前から拘束を解いてるってのに、逃げ出すどころかこれまで通りゼロに全部任せっきりで、こいつに体を触られるのも喜んでるじゃないか。クククッ、それなのによくそんなこと言えるな」
「私はこんなこと、望んでない――」
「ほんとにそうか? あんたは今日までたくさんの女を見たはずだ――ゼロに抱かれて喜ぶ女を。あんたのお友達のキャミィも、新しいメンバーのまことも、親衛隊もあんたの先輩も、それにあたしだって、みぃんなゼロに抱かれて気持ちよくなってる。誰も逃げられないのさ、ゼロから与えてもらえる快楽からはな」
「私は、違う……!」
「フン、そうかよ」
つまらなそうに吐き捨てたジュリは見つめていた春麗から視線をはずし、次いでゼロへと向き直ると彼を立ちあがらせるように促した。
全裸で向かい合い、春麗の前に立って抱き合う二人はすでに体の準備も出来ており、淫靡な雰囲気を纏っている。また見つめ合う姿も様になっていて、二人が深い仲にあることが容易に確認できた。
春麗はほんの一瞬だけ、その目と目でわかり合う姿を「羨ましい」と感じてしまっていた。気付いた時にはもう遅く、一度そのような想いを抱いてしまってはもう戻れない。
悔しそうにぐっと唇を噛みながら、それでも春麗は二人の姿から目が離せなかった。
「それじゃああたしはこのままやらせてもらおうかな。あんたと違ってあたしは素直で、ゼロもゼロのチンポも大好きだから――さぁゼロ、おいで。いっぱい気持ちよくなっていいよ」
「ああ、わかった」
どんな女でも抱くゼロだが、彼はジュリを相手にする時だけは雰囲気を変える。まるで子供に戻ったように、愛しい女にそうするかのようにやけに熱っぽく抱くのだ。
太ももまで垂れるほど愛液を出す膣へ、ゼロの陰茎がずぶりと差しこまれる。その時もやはりゼロはジュリへ熱い視線を向けており、彼女もそれを嬉しそうに受け取っている。
深くキスをしながらの性交は、二人が特別な関係であることを示すかのようなものだった。それをすぐ傍で見せられる春麗は二人から目が離せず、知らず知らずのうちに自分の腰が勝手に動いているのを理解できていなかった。
「んんっ、あぁっ、ジュリ、ジュリぃ――」
「んっ、はっ、相変わらずの興奮具合だな。そんなにがっつかなくても逃げないっての――あっ」
まさしく見せつけるために、ジュリは立ったまま片足をあげて、二人の接合部を春麗に見せやすい体勢でゼロを受け止めていた。太い肉棒が滑らかに彼女の体内へ入り込んで、じゅぷじゅぷと音を立てながら素早く出しいれされている。しかもその時のゼロはこれまで通り幸せそうな表情で、他の女を相手にしている時より気持ちよさそうだ。
拘束されていないこともあって、無理やり見させられる春麗はついに動き出し、自分が意識していない中でそっと腕を動かしていた。
今ならば敵を倒せるこの状況下、春麗が選んだ行動は、自らの指で秘所を慰めることだった。
「はぁっ、んんっ、はっ――」
二人が激しく腰をぶつけ合う光景をじっと見つめ、もはや何を考えているのかわからない表情で、一心不乱に自分の秘所を撫でる春麗。その手つきは初めこそ戸惑い混じりのものだったが、時間が経つにつれ、ゼロがジュリを突く度に大胆に、力強くなっていく。
そしてついには春麗は自らの指を膣の中へと埋め、くちゅくちゅと中を掻きまわし、水音が立つのも気にせず快感を貪り始めていた。それが、彼女が最後の一線を越えた瞬間であったのだ。
激しいピストンを続けていたゼロがおもむろに射精したその瞬間、ジュリはしっかりとそんな彼女の姿を確認しており、甘い声を発しながらも口元をいやらしく歪めていた。
「あはぁぁぁっ、イクぅぅぅっ!」
「くぅ、ジュリ……!」
勢いの凄まじい膣内射精が行われ、思わずジュリは春麗がいるベッドへ倒れ込むようにして膝を折り、汗にまみれた背を春麗の愛液がしみ込んだシーツへと預ける。繋がったままだったゼロもそれにつられてベッドへ昇る。
彼はそのまま射精が終わっていない間からまたも腰を振り、ジュリはそれを当たり前のように受けながら、だらしなく緩んだ口元をそのままに春麗へと目を向けた。
咄嗟に壁に背にし、体を縮めて彼らを見ていた春麗の手は止まっており、驚いたような目で激しい性交を目にしている。
「あはぁっ、んんあっ、春麗――き、気持ちいいよ。最ッ高だよ、ゼロのチンポ。そんなに怖がらなくたっていい、だって、こんなにっ、んあぁっ……き、気持ちいいんだからっ」
「じゅ、ジュリ……」
「んふぅぅっ、はぁぁ――な、なぁ、聞いたか? キャミィの奴はつい先日、つっ、ついに受精したって喜んでたよ。はぁっ、あっ、ゼロの子を孕んだんだ――人体改造されたあいつに、んんっ、か、家族が出来たんだよ」
「キャミィに、家族が……?」
「んあぁっ、そうさ、家族だ。孤独だったあいつが、んんっ、自分の娘を持った。ゼロとっ、キャミィの子――あいつは跳びはねて喜んでたんだよ。シャドルーに操られてたことを、後悔してたからっ」
勢いよくゼロに貫かれながらの言葉は、甘い吐息混じりにしっかりと春麗に伝えられる。潤んだ目はしっかりと戸惑う彼女を捉えており、以前のようなサディスティックな感情は消えている。
そのせいもあって、これまで決してジュリに対して良い感情を持とうとしなかった春麗が、自ら彼女の傍へと近寄った。体の疼きもいまだに消えず、むしろどんどん増しているが、それでもその話を聞きたかったから。今の彼女はすでに正常な思考など持っておらず、まるで赤子のように無垢に、無知な状態にあった。
キャミィはこの場所で苦しんでいたのではない、喜んでいた。ぐちゃぐちゃになった思考の中で輝いていたのはその言葉だけだったのだ。
だからこそジュリは急激に態度を軟化させ、いたわるような声色で春麗に話しかけている。
「あんたはっ、誤解してたかもしれないけど、あたしはあんたと仲良くなりたかっただけさ。んんっ、はぁっ、ここにいる奴らはみんな、仲間を欲してた奴ばかり――ああんっ! はっ、ふっ、あたしらは……な、仲間を集めてただけだった」
「仲間、を――それは、なんのために……?」
「シャドルーを倒すため」
その時、再び限界を迎えたゼロが膣の奥まで亀頭を叩きこみ、またしても激しい射精を開始した。あまりにも勢いが強すぎるため、先に出された分が大量にボタボタと噴き出し、白いシーツへと落ちていく。
彼女と目をしっかりと合わせたまま絶頂を迎えたジュリは甲高い嬌声をあげ、全身を震わせ、春麗を見ながら精液を受け止める。
春麗はその快楽に染まった表情を、微塵も目を逸らすことなく見据えていた。
「はぁっ、あぁっ……ゼロ、来な。このまま舐めてやる」
「わかった」
呼吸も荒いジュリがそう言うと、まだ衰えを見せない陰茎を揺らすゼロが動き、ジュリの体を跨いで陰茎を口元へ押し付けるように腰を前に出した。
彼女はそのあらゆる液体にまみれた亀頭へぺろりと舌を伸ばしながら、尚も春麗へと語りかける。両手はすでに竿と玉を触っていて、巧みな様子で絡みついていた。
「はぁ、ふぅ――わかってほしいのは、あたしらはべつに、悪いことをしたくてこんなことしてるわけじゃないってこと。シャドルーに立ち向かうためには戦力が必要で、あんたらへの協力を頼みたかった。でもほら、あたしらの関係は最悪だっただろ? だから方法を間違えるしかなかったんだよ」
「ふぅっ……ふぅっ……」
「それに仲良くしたいのはほんとだ。ほら、こうして――んっ、ゼロに気持ちよくしてもらえば、つまんないこと気にせず頭まっ白にできるだろ?」
にたりと笑ったジュリが愛撫を行ったせいで、ゼロの肉棒はあっという間に精液を吐き出し、彼女の顔を白く染めていく。同時に、勢いよく飛んだ少量が春麗の体まで届き、膣の入り口を出入りしていた右手の甲に付着した。
春麗はそれをじっと見つめ、顔を真っ赤にして、全身をぶるりと震えさせる。
「あっ――」
「ふふっ、熱いだろ? これが癖になるんだよ。どうだい、試してみたくはないか?」
「た、試す?」
「もうわかってるだろ。要するにゼロとやるんだよ――あたしがしたみたいな、気持ちいいセックスをさ」
そう言うとジュリはゼロをどかせてゆっくりと身を起こし、にじり寄るようにして春麗へと近付いた。
すぐ近くにいたこともあって彼女はすぐに春麗の肌へ手を触れ、やさしく、体の線をなぞるように手を動かす。
慈愛が込められたとすら思える手つきに、緊張と混乱に包まれていた春麗の心がゆっくりと揉みほぐされるようだった。
「ゼロ、君と……私が?」
「そうさ。男と女だ、問題ない。何も間違っちゃいない。動物が子供を産むためにセックスするのはこの世の摂理だ。それにしたいと思ってるなら、迷う必要なんかない――あんたもただの女なんだから」
「あっ……でも、私は――」
「難しい仕事のことなんか忘れちまえよ。けいさつかんの前に、あんたは一人の女、普通の人間だろ。セックスするのは当たり前だし、気持ちよくなるのも罪じゃない。いっしょに気持ちよくなって、力を合わせてシャドルーを倒そうぜ――あたしと仲良くやろう」
「シャドルー……そう、父さんの仇……」
「あぁそうだ。あいつらを見逃しておくと不幸になる人間がたくさんいる。あんたや、キャミィ、親衛隊の連中も――でもゼロなら、みんなを幸せにできる。実際、親衛隊はゼロを心から心酔してるし、キャミィは孤独じゃなくなった。今のあいつらは不幸じゃなくて、どうしようもないくらい心から幸せなんだ――あんたももう救われてもいいんじゃないか?」
大ぶりの胸をゆっくりと撫でられ、濡れそぼった秘所へ触れられ、奥にある子宮を感じさせるように下腹部を撫でる。ジュリの手はやさしく、春麗の体から困惑を取り除いていった。
そうしてようやく、春麗の顔つきが変わる。その瞬間にジュリは春麗にぎゅっと抱きつき、彼女からは見えない場所でにやりと口の端をあげた。
二人は正面から体をくっつけたままベッドの上に倒れ、抵抗も恐怖もない状態で四肢をシーツの上へ放りだす。春麗がそうなったことを確認すると、ジュリは移動し、そんな彼女を膝枕するために頭の方へと裸体を運んだ。
肉付きのいい太ももに春麗の頭を置き、準備が整ったところでゼロへ声がかけられる。
「さぁゼロ、春麗にもやさしくしてやってくれ。彼女は疲れてる。心も体も癒されるような、甘いセックスを――」
「ああ、わかった」
ベッドの上で仰向けに横たわる春麗にそっと近付き、固く屹立している肉棒を扱きながら、ゼロはまず彼女へキスを送った。触れるだけの、安心させるようなキス。それを受け取った春麗はそっと目を閉じ、これまでにない安堵した表情で身を捩った。
頭上ではジュリが目を爛々と輝かせて笑っているとは少しも気付かず、二人は目を閉じてキスをしながら、非常にゆっくりと体を一つにしていく。
「んっ――」
「痛い?」
「だ、大丈夫……少し、驚いただけだから」
「そうか。じゃあ、このまま」
ぐっと亀頭が割れ目を押し開き、中にあるひだを一枚一枚押し上げるようにしてゆっくりと進み、二つの肉体が一つへ繋がっていく。春麗は未知なる感覚にきゅっと眉根を寄せ、不安を感じるかのようにゼロへとしがみついていた。
しかし彼は安心させるように、やさしい手つきでそんな彼女の頭を撫でながら、かすれた小声で伝える。
「大丈夫だ。全部俺に任せろ」
「……はい」
春麗が目を開き、嬉しそうに微笑んだ後のことだ。ジュリの時とは違って非常に遅いペースながらもゼロは腰を振り、膣内の状態を確認するかのようにゆっくりと肉棒を前後させる。
一度奥まで亀頭が押し込められ、カリ首が肉壁を引っ掻きながら入口まで戻り、また奥まで肉を押し開きながら進む。単調ではあったが、その効果は確実に存在し、回数が十を越える前に春麗の甘い声が室内に広がる。
ずるずると慣れた様子で動く肉棒によって、春麗は確かな快感を得ていた。待ち望んでいたものが得られた、と言ってもいい。
故に至福の表情で嬌声をあげ、真っ赤になった顔の口元を緩やかに上げる春麗を見たジュリは彼女へ声をかけた。
「どうだい、気持ちいいだろ?」
「あぁっ、んんっ、気持ちいい……気持ちいいっ」
「クククッ、いいよ。全部忘れて感じろよ。あんたもちゃんと、あたしらの仲間だから――」
「あっ、んっ、んふぅっ……な、かま」
徐々にゼロの腰の動きは早くなっていき、春麗を責める動作も変化が見える。一番奥をゴツゴツと亀頭で叩いたり、全体を舐めるように大きな動きで突いたり、相手を気遣いながらも巧みな技術を見せ始めていた。
その気遣いの効果もあってか、それとも我慢していた期間が長く、感度が異常なほど高まっていたせいか。春麗はあっという間に限界を迎え、それを感じたゼロも腰の動きを速めて続こうとする。
二人同時に、とはいかなかったが、先に春麗が絶頂し、すぐにゼロが射精するまでそれほど時間もかからなかった。
「ああんっ、あぁぁぁっ!?」
「うっ、くっ……」
膣内へ飛び散る熱い精液。春麗はその温度を如実に感じて舌を伸ばし、絶叫と共に全身を震わせた。おまけに衝撃が強すぎたのか、尿道からちょろちょろと失禁しながらである。
二人が体を震わせて絶頂したその後。ジュリの判断によってまだ行為は終わらず、楽しげな声によって続行が告げられる。
「ゼロ、春麗、まだだ。三ヶ月分溜めたんだ、全部発散するまで止まるなよ――お楽しみはこれからだろ?」
言われた途端、ゼロの萎えていない陰茎が再び動き出し、先程よりもスムーズに腰が振られる。春麗も甘い声で順応してみせ、二人は対面座位になって行為を続けた。
ゼロの顔が春麗の乳房に埋められ、ピンと勃起した乳首やぷるりと揺れる乳房の形をなぞるように舐めながらも、抱きついた春麗の体がリズムよく上下に動いて水音が鳴る。一度動く度に彼女の膣から精液が溢れ出る状態であった。
速度はさっきよりもよほど速く、最初から強い快感を求めるためのもの。その状態で二人の体は止まることなく動き続け、更なる快感を求めて呼吸を合わせる。
ジュリはそうした彼らを前にして、指を自らの膣の中へ突っ込み、どろどろと垂れ出てくる精液を塗りたくった後に春麗の尻へ触れた。白い液体に覆われた人さし指が、やさしい力で尻の穴を撫でる。
これに驚いた春麗は思わず後ろを振り返ろうとしたが、それよりも速く首を伸ばしたゼロに唇を塞がれ、ねっとりと舌を絡まされることで抗議の声も上げられないようになってしまった。
「んんっ、んんっ、んんんっ!」
「そんなに心配すんなって。大丈夫、こっちで悦ぶ奴も多いから」
しばらく遊ぶようにそこを撫でていたジュリだが、そう呟いた直後には一思いにずぶりと指を穴へと挿入し、中をほぐすように掻きまわす。
その最中もゼロによる激しいピストンは続いているため、前と後ろの両方から刺激を与えられる春麗は悲鳴のような声を発し、しかし唇を塞がれているせいでくぐもった声しか出せずに感じるばかりだった。
ジュリが参加し始めて数分、またも早々に限界を迎えた春麗は自分から唇を離してから、ゼロの頭を胸の中に抱き締めながら大声で言う。
「あはぁぁっ、だめぇぇ、イクっ、イクのっ、もうイッちゃうぅぅっ!!」
上手くタイミングを合わせたゼロが射精をすると同時、春麗は全身を痙攣させて絶頂し、それでもぐっと腰を降ろして肉棒を奥まで呑みこんだ。
長く続いた射精が終わり、溢れた精液がどぷりと飛び出してくるまで、ジュリは指を抜くことなく尻の穴を刺激していたが、二人が再び動き出す前に体を離した。
そしてゼロが尚も元気よく腰を振るう姿を見てにやりと笑いながら、だらしない顔で悦ぶ春麗を見ながら小さく呟く。
「あーあー、墜ちちゃったねぇ……クククッ、アハハハハッ。時間はかかったが、まぁ楽しめたよ――これでおまえもただの雌豚だなぁ」
聞こえないほどの小さな声で、楽しげに笑うジュリは二人の姿から目を離さない。幸せそうに繋がり、動く彼らもまた止まらない。
先程と同じように自分の膣へ指を突っ込み、掬いあげた精液を舌の上に運ぶ彼女は人知れず、妖艶な雰囲気で呟く。
「もうめぼしいとこは手に入れたしなぁ。そろそろ動くか――つまんねぇ鬼ごっこはやめて、とっととフィナーレと洒落こもうじゃねぇか、変態ジジイ」
甘く大きな嬌声に紛れて消えていったその言葉は、宣戦布告にも等しかった。
◆
それはある日突然、何の前触れもなく始まった。
某国、とある辺境の地に存在する建物の中で響いた轟音は本来ならばそこにはありえないはずのもので、つまりは侵入者があったことを示すものに他ならなかった。
音の出所は一人の男と、一人の女。赤い軍服に身を包む男、ベガと、突如として現れて彼に襲い掛かったジュリとの、鋭い攻撃がぶつかり合ったことで生じたものである。
二人は最初の一撃をぶつけ合い、強い衝撃を受けながらも距離を取って、改めて対峙した。
ベガは怒りを表す表情で、対するジュリは余裕が醸し出される笑みである。
「よォベガちゃん。束の間の休息は楽しめたかよ? もうおまえと遊ぶのも飽きたからとどめ刺しに来たぜ」
「小娘が――我が組織を相手にずいぶんと好き勝手してくれたようだな」
距離を置いて向き合った二人の間にあるのは明確な敵意と、思わず背筋が凍る濃厚な殺気。しかし当人二人は少しも怯える様子もなく、お互いに意識を向けながら平然と言葉を交わしている。
これまで自分のアジトをいくつも潰され、親衛隊のメンバーを奪われていたベガは怒りを露わに拳を握り、自分に敵対するジュリを睨みつけている。その拳を止める必要などなく、ベガは彼女をこの場で始末するつもりだろう。
だが対峙するジュリは余裕の態度を崩さず、以前に会った時とは何かが違うと感じさせる姿だった。そのせいでベガはさらに警戒心を高め、いつでも動けるようにと警戒心を高めていた。
それすらもどうでもいいと言うかのような、ジュリの声が広い廊下に木霊する。
「そりゃあだって、こっちは大ボス探してんのに全ッ然出てきてくれねぇからさぁ。ちょっとイラついちゃったりもしたんだよね――で、ついでだからあいつらもらっていったわけ」
「どうやって懐柔した? あれらはすでに洗脳を終えている。おまえを敵と認識することはあっても、味方と思うことはない」
「あぁ、そうだったそうだった。出会いがしらにいきなり襲いかかって来たもんな。ま、わりと簡単に返り討ちにしたんだけど。……懐柔した方法? そんなもんただ一つだよ。あたしがあいつらを仲間にできたのは――すべてあんたのおかげ」
「何?」
ジュリがそう言うと、ベガは怪訝な表情を浮かべていたのだが、その瞬間にも動く人影があった。
暗い廊下の中では顔も確認しづらいが、ゆっくりと廊下を歩いて新たに現れたのは真っ黒いマントをかぶった人間。隣に立つジュリが親しげに頭を撫でる、フードをかぶった誰かだった。
この時点ではまだベガはそれが誰なのかを理解していない。ただ少なくとも自分の敵であることは理解していた。
まだわかっていない、という事実に反応してジュリが低く笑い声を発する中、彼女の手によって黒いフードが降ろされる。するとすべてを理解したのか、ベガは先程以上の怒りを露わにし始めた。
「あんたが残した最高の贈り物だよ――あたしが捕えたのは全部女。男に抱かせるための、な。つまりあいつらは一人残らずこいつの生贄で、性奴隷にするために集めてやったのさ。色んな国を回って、アジトを潰して、一人ずつ蹴り飛ばして連行してなぁ。そりゃあ大変な仕事だった」
「貴様ッ、その少年は――越えてはならん一線を行ったな。もはや肉塊すら残らぬと思えッ!」
「アハハッ、そうキィキィわめくなよジジイ。どうせあんたはもう、終わりだ――こっからはこいつが覇権を握る。あんたのすべてを奪い取って」
「小娘がッ、生意気な口を――!」
怒り狂ったベガが前へ飛びだし、ジュリを今にも始末しようと素早い動きを見せる。だがその瞬間、二人の背後から現れた新たな人間が彼の体を勢いよく蹴り飛ばし、思わぬ反撃を受けたベガはあっけなく宙を飛ぶ。
歯を強く噛みしめ、くるりと体を回した彼は見事に着地し、飛び出してきた影に目をやる。
新たに現れたのは一人、ではなく、後からゆっくり歩いてくる者を含めて十二人。
「貴様らはッ――!」
「みんなあんたに言いたいことがあるんだとさ。ただし、語るのは言葉じゃなくて拳でだけど」
ゼロに寄りかかるようにして背後から抱きしめるジュリがそう言うのは、周囲に立つ十二人のゼロ親衛隊についてであった。元はベガ親衛隊と呼ばれた彼女たちが、今は全員が強い意思を持ってベガを睨み、拳を向けている。
更なる怒りが心底から沸き上がり、思わず言葉を失くしてしまうベガだが、現在の状況がどういったものなのかわかっている。自分の絶対的不利も、逃げる隙すらないことも。
素早く行動したゼロ親衛隊は瞬く間にベガの周囲を取り囲み、決して逃す隙は与えないと厳しい視線を向けているのだ。これではいくら彼が強力な“サイコパワー”の持ち主であっても、全員に勝つことはおろか、上手く逃げることすら難しい。
包囲が完了すると同時にゼロの体を離し、この状況に心を躍らせるジュリは自身もゆっくりと前へ進みつつ、にたりとした笑みをベガに向けて口を開いた。
「悪党ってのは、最後にはやっぱり滅ぼされるものなんだよ。今の状況だと、言わばあたしらは正義の味方――どっちが勝つかなんて、もうわかりきっちゃってるよなァ?」
「貴様ら如きが、このベガ様に勝てるとでも――」
「あぁ思ってるさ。なんたって最初っからモノが違う。ボスの器じゃウチのが上だぜ、男色ジジイ――てめぇ如きじゃ百人居たって感じねぇんだよ」
そう言うとジュリはトンッと軽く地面を蹴って、ふわりとした動きでベガへと肉薄する。
軽やかな動きと違ってその速度はあまりにも速く、以前に戦ったことがあるベガが思わず驚愕してしまうほどの違いがあった。
彼女のしなやかな蹴りはあっさりとベガの頬へ叩きこまれ、呆気ないほど簡単に攻撃が届いたその瞬間、ジュリは変わらぬ笑みのまま小さく告げていた。
「自分の部下を満足に支配できねぇ奴は、とっととその席を開けろ――ゼロが座れねぇだろうが」
小さな声は勢いよく地面に叩きつけられたベガの耳にも届いていたが、そこから何かしらの返答が聞こえることもなく、シャドルーアジト内での戦いは三十分とかからず終わった。
この日を境に、全世界へ規模を広げていたシャドルーは壊滅。頭を潰されたことで傘下にあった組織や構成員も次々に各国で捕えられ、罪を問われた。
しかし世界中でそんなことが起こっても、シャドルー総帥であったベガの姿は発見されず、また組織を潰した張本人の名は出なかった。
そして同時に、世界各国で行方不明となった数人の女たちの行方も、わからぬままだったという。
◆
「シャドルーは終わった。こっから先は、ゼロ、あんたの自由だ」
「俺の自由?」
「そうさ。あんたが思い描く世界を作ればいい。そのための戦力と道具、基地も資金もすべて揃った。あとはあんたがこれだと言えば、思うがままに変えられる――さて、どうしたい?」
「うーん、そうだなぁ……」
そこは幾人もの女たちの嬌声が木霊する、淫靡で狂気的な空間であった。
すべての人間は生まれたままの姿になり、すべての人間が快楽を貪り、すべての人間が人の持つ欲求に従った本来の姿を晒している。ある者は獣のように尻を突きあげて低い声を発し、ある者は前も後ろも女に犯されて尿を垂らし、ある者は愛情を確認し合うかのようにねっとりと舌を絡ませる。そういう常軌を逸したような、女ばかりが性を貪る光景が広がっていた。
その中央に位置するベッドに腰掛け、一度に数人の女を相手にする男と、彼の背に抱きつく女がいた。その二人こそこの痴態が満たされた空間を作り出した張本人、性と快楽を操ってみせた淫魔のような人間である。
彼らは舌をちろちろと合わせながら話を続けていた。その一方で男は己の陰茎で金髪三つ編みの女を貫き、片手をお団子頭の女の秘所へ触れさせ、片手を十代のショートカットの女の胸に挟ませて指を舐めさせている。さらに足元では一人の女、褐色の肌と白い短髪を持つ少女が陰茎の根元へ顔を寄せ、玉を口内に含んで転がしている。
周囲で様々な女たちが入り乱れ、体を重ねて快楽を欲する中、彼らだけが一際異彩を放っていたのだ。
「俺はジュリが望む世界を作りたい。これまでのことも、全部ジュリに任せておいたからできたことだ」
「クククッ、わかってるじゃねぇか。それにしたって欲がない答えだが――ま、あたしに惚れてるあんたらしい、可愛い答えだよ」
「ただ、できることなら」
「ん?」
「もっと色々な女を抱いてみたい――それが俺の仕事だし、ジュリからもらった大事な役割だ」
これまで様々な女を手中に迎え、今も尚その女たちに愛される男は、さらに望む。世界中の女を抱いてみたいと。それはまさしく悪魔にも等しい、快楽を支配する一人の王の姿だった。
故に、女は笑顔で彼の返答を喜び、愛おしそうに頭を撫でながらつつき合うように舌を絡ませる。彼女の姿も男とそう違うようには見えず、裸で淫らに体を捩る女たちの中でも特別に見える。
夢見がちな、しかし実現不可能なわけでもない空想を続ける二人は尚も語り合った。それもすべて、大きな嬌声に包まれる室内の中のことである。
「アハハッ、そうか、いい答えだ。あんたがそれを望むなら、叶えてやることはできるよ。ちょうど目標がいなくなって退屈になるところだったしな――めぼしい女どもは全部、あたしらがもらうとしようか」
「ああ、それがいい。組織はできても、まだ人員は少ない。大きくするためにはもっと仲間が必要だ――それならやっぱり、俺は自由に抱ける女がいい」
「わかってるよ。あんたが望む女は、すべてあんたのもの――あたしが持って来てやるよ、ゼロ。裏社会の時代を掴んだあんたは何をしても許される。許さない奴らは、あたしらがすべて消してやる」
「ありがとう、ジュリ。……でもやっぱり俺は、色んな女を抱いても、一番好きなのはジュリだ」
勢いのいい射精を始めて、三つ編みの女へ何度目かもわからない中出しを行った男はそう言って笑い、己の男根を包む快感に目を細める。
すると背から抱きついていた女も微笑んで、普段はまず見せることのないやさしい表情のまま、男の唇をぺろりと舐めて呟いた。
「わかってるさゼロ、それはよくわかってる――あたしもあんたが大好きだよ」
数多の敵を打ち破り、数多の女を奪った一つの組織はひとまずの目標を果たした。しかし彼らがそこで立ち止まるとは思えない。
なぜなら組織のトップに立つ男を支える女は、他の誰にも言わないだけで海より深い愛情を胸に秘めており、男の望むことはすべて叶えてやりたいと思っているのだから。
たとえ世界を敵に回しても、彼の願望を邪魔する者は一人として許さない。男ならば絶望の淵へ叩き落とし、二度と這いあがれないように腕と足を潰してやろう。女は一度落としてそこから掬い上げ、彼への生贄に捧げよう。
そう心に決めているジュリはゼロの願いをまた耳にし、今度はシャドルーなどという一部の敵ではなく、世界を相手にして活動することを決めたのだった。
とりあえず「ストリートファイター」シリーズはここで終わろうかと思います。
ただ感想の方でも「他の格闘ゲームとクロスオーバーさせてはどうか?」というご意見もありましたので、そちらの方面では考えようかなぁという感じです。鉄拳は公式でクロスオーバーしてますし、一番有力かと。