※この作品はR-18です。

蛇獣書房   作:ヘビとマングース

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失われた物語

 新聞に報じられることのない事件から一日経って。

 素早く町を移動していた青年はホテルの一室で上機嫌に頬を緩ませていた。

 

 膨大な盗品の多くは協力した面々へ譲渡している。出す所へ出せば相当な金になるだろうが彼は一切興味を持たず、シャルナークに一任してしまったほど。

 欲しかったのは一つだけ。現在、青年の前にそれが置かれている。

 

 テーブルに置かれていたのは一体の像だった。

 掌大のサイズ、人間の眼球を模した形のそれが、台に乗せられている。見かけこそ派手さはなく、価値がある物にも思えないとはいえ、青年はそれが欲しかったらしい。

 事前に知っていた様子で、大事そうに手を触れて、角度を変えながらあちこちを調べている。

 知的好奇心から来る行動も、表情が緩んで子供のような姿であった。

 

 しばらくそうしているとバスルームの扉が開いた。

 中からは風呂上がりらしいシズクが下着姿で出てきて、タオルで髪を拭いている。

 知っているためだろう、青年は振り返らない。あくまでも目玉の像に集中していた。

 

 「上がったよ」

 「おう」

 「あれ? ルツ、入らないの?」

 「んー? 入らないと気になるか」

 「私はどっちでもいいけど。それより、ずっと見てるね、それ」

 

 歩く彼女はベッドに腰掛け、足を投げ出す。

 仕事を終えて以来、青年は像のチェックに没頭していた。ネットで情報を集めたり、事前に集めていた資料の情報と照らし合わせたり、実際に自分の手で触れたり、ひどく楽しげにしている。今までこんな彼は見たことがなかった。

 

 よっぽど嬉しいのか、子供のような姿に見える。

 昨日も結局一度だけで終わってしまった。

 別に不満な訳ではないものの、如実な変化を不思議に思い、シズクは彼の背を見つめる。

 

 普段と違う。

 ただそれだけの言葉が胸に残るのはなぜだろうか。

 

 「どうしてそれだけ残したの? 他は全部あげちゃったのに」

 「最初からこれが欲しかったからさ。他のはどうでもいい」

 「お金になるのに?」

 「今んとこ金には困ってないからな。金以外の物が欲しくなるんだ」

 「ふぅん。どうしてそれが欲しかったの?」

 「こいつが歴史的な発見に繋がるから、かな」

 

 振り返らぬまま笑顔で言われる。

 声が弾む彼に、シズクの表情はぴくりとも動かないままだった。

 

 「ルツって歴史好きだっけ?」

 「ああ、つい最近からな」

 「なんで? 前はそんなことなかったよ」

 「そりゃ、こいつだけは盗めないからさ」

 

 ようやく振り返った青年はにっと笑って言い始める。

 やはり見た事が無い。そこまで生き生きとしている彼は。

 

 「オレたちに盗めない物って思いつくか? 驕りでも何でもなく、オレはないと思ってる」

 「うん。だってルツが作戦決めるから」

 「それにメンバーもあの感じだろ。時間さえかけりゃ、どんな難しい案件だってやれる。今回だって実質動いたのはシャルとフェイとおまえくらいで、オレとフランクリンに関しちゃただの荷物運びだからな。たった五人で過剰戦力だった」

 「フェイタン、退屈だって言ってたしね」

 「だから、盗れない物が欲しくなった。それだけだ」

 

 席を立った彼はシズクの隣へ腰を下ろす。

 視線を合わすでもなく、互いに前を向いて。

 唐突に青年が問いかけた。

 

 「蜘蛛について、どう思う? 特に最近のな」

 「どうって、何が?」

 「うん、まぁ、ちょっと有名になり過ぎた気がしてな。最近じゃオレたちに報復しようと近寄って来る連中もいる。あんまりいい傾向じゃない」

 「そうかな。私、気にしたことないよ」

 「ハハ、そんな気はしてた」

 「それって蜘蛛が危ないってこと?」

 「ああ。今は大丈夫でもいずれは、な」

 

 まさかの人物から、まさかの発言である。

 幻影旅団をよく理解している彼から聞ける言葉だとは思えなかった。

 

 団員の誰かが負ける姿など想像できない。

 確かに復讐のため現れた人間は知っているが、その度に団員の誰かが始末してきたではないか。どんなに強い敵でも、彼らに敵う人間などそう居ないのが事実。

 

 以前の話も聞いている。

 森の奥で隠れ住んでいたとある一族を虐殺した話。

 強かったが、団員が欠けることはなかったと。

 

 とても自分の知る青年の言葉とは思えず、シズクはただ首をかしげるばかりであった。

 何かあったのかもしれない。そう思いながらも聞くのは憚られた。

 おそらく彼の表情が真剣だったからだ。自分の目で確認しなくても雰囲気でわかる。いつも通りを装う声色が、実は彼の本音をチラつかせている様子だった。

 

 「最近よく考えるよ。蜘蛛が死なない方法とかな」

 「私はあんまり考えない。団長とルツが居れば大丈夫だもん」

 「どうかな――」

 

 妙に気になる発言だった。

 しかし真意を問いただすのを許さず、青年に肩を押されて、シズクの背がベッドに着く。

 驚きもせずに彼の顔を見上げた。これはいつものことだ。真面目な顔で語っているよりもよっぽど安心でき、かといって表情が変わることなく、じっと見つめる。

 青年は微笑んでいた。

 気分を変えようとしているのか、声色も違って話し始める。

 

 「難しい話はこの辺にしとこうぜ。オレも余計なこと言い過ぎた」

 「いいの? 溜め込むと体に悪いよ」

 「だから発散しようとしてんだろ」

 「あ、そっか」

 

 あっさり納得したらしく、近寄って来る顔をじっと見つめる。

 ちゅっと音が鳴った段階で目を閉じた。

 恋人同士がするようなキスを始め、しばし離れたりくっ付いたり、無心で繰り返す。そうしていると気分や雰囲気も変わってきたらしい。シズクの手がゆっくり彼の背へ回された。

 

 シズクは元々異性に対して興味がある訳でもない。常にぼーっとしていて、自分の意志は持っているものの、よっぽどの状況でなければ強く主張する性質ではなかった。

 青年とこうした関係になったのは、ひとえに青年が歩み寄ってきたためだろう。

 彼の女性関係が派手なのも知っている。

 知った上で、大した問題だとは捉えていなかった。

 

 「んっ……んちゅ」

 「眼鏡外すか」

 「うん」

 

 一度始まれば余計な詮索もない。シズクは大人しく彼に従った。

 顔中にキスを落とされつつ、抵抗せずに受け入れる。

 青年の手は慣れた動きでシズクの肌を撫で、腹や胸の谷間へ指を走らせた後、するりとブラジャーの下へ潜り込んでしまった。

 ふにふにと形が変わるそれを揉む。

 可愛らしい見た目に反して胸のサイズは大きかった。気を良くした青年は耳を甘噛みしながら、低くなった声で囁く。

 

 「また大きくなったか?」

 「そう? あんまり変わってないと思うけど」

 「きつくないのか、ブラジャー」

 「そう言えばきつい気もする」

 「おまえ……いつもながら心配になるよ」

 

 注意力がないのか、あまりに能天気なのか。

 胸への愛撫から小さな声が漏れ、わずかに身じろぎする。表情や仕草からどことなく鈍感に見える彼女でも感度は良好。確かな反応が返ってくる。

 

 しばし静かに愛撫が続いた。

 キスを続け、肌を撫で、胸や腹や腰、或いは首筋を指でくすぐる。

 甘ったるい雰囲気が嫌が応にも快感を意識させた。

 淫らな空気はあまりなく、独特の気怠い空気に包まれてのろのろと触れ合う。こうした雰囲気は彼女としか共有しない。というより、できないのが現状だった。

 

 シズクが持つ空気感は独特で、そこらの女性には真似できない物がある。独特の緩さが落ち着かせ、安心させ、とても進化を感じさせる物ではないがそれが良い。

 黙って触れ続けて、反応は大きくないとはいえ変化は如実に起こる。

 ゆっくりと腹を撫でた右手がショーツの中へ潜り込んだ。

 あまり使われずにぴたりと閉じた女陰が、じっとり濡れている。中指の腹で撫でてやると、体がぴくぴく反応していた。初めてではないが初心な反応である。

 

 「シズク、ちょっと銜えててくれるか」

 「んっ……いいよ。舐めるの?」

 「ああ。じっくりやりたい気分なんで」

 

 一度手を離し、青年が自らの手でズボンと下着を脱ぐ。

 シャツは着たまま、そうしてすぐにシズクの顔を跨いで腰を下ろし、ペニスを彼女の顔へ突きつけた。半ばほど硬くなっているがまだ完全に勃起していない。嫌がりもせず亀頭をぱくりと銜えて、すぐに唾液を絡めようと舌を伸ばして触れ始めた。

 

 笑顔になって青年がシズクの股に顔を埋める。

 下着の上から舌を這わせ、割れ目に沿うように舐める。

 反応は良く、特にクリトリスを弄った時には腰が緩やかに前後し始めた。

 

 ゆったりした時間。再び無言で愛撫が続く。

 性行為の最中で、実際いやらしいことをしているのだが、不思議にも普段とは違って落ち着く時間である。興奮はしている。しかしがっついて貪るような気になれないのが不思議なところだ。

 時間をかけてじっくり愛し合いたい。

 そんな気分で舌を動かし、女陰を舐めてペニスを舐めてもらった。

 

 数分経って彼女のショーツを下にずらす。

 態勢の関係上、全て脱がすには無理もあって、膝の辺りに放置されたまま。

 今度は直に舌を這わせ始め、さらに強く舌を突きつける。シズクの口から洩れる声が甘く、大きくなった気がして、対抗してかペニスを舐める舌に力が増した。

 

 「んんっ、ふむっ――」

 「ん、はぁ。もう結構ほぐれてるな」

 

 指を使って少し広げつつ、膣の入り口を舌先で撫でる。同時に親指でクリトリスを転がした。

 触れれば触れるほど蜜が溢れてくるかのよう。

 シーツを濡らしかねないそれをずずっと飲み込み、青年の機嫌はさらに良くなる。

 代わりにシズクは余裕を失くし、耐え切れずにペニスから口を離してしまった。

 

 「うんっ、はぁっ……」

 「離すなよ。イッたか?」

 「ううん、まだ。でも危ないかも」

 「別にいいぞ。時間はたっぷりあるんだし」

 

 右手の中指を膣へ挿入し、抜き差ししながら青年が窓の外を見る。近頃の彼は悪天候に好かれているらしい。暗い曇り空からは雨が降り出そうとしていた。

 シズクは両手でペニスを支え、先端をちろりと舐めだして、同じように窓を見る。

 いつもと違う。そう思ってしまうのはこの天候のせいもあるかもしれなかった。

 

 「雨やまねぇな。何かに憑りつかれてんのかね」

 「天気予報、良かったはずなのにね」

 「死んだ誰かが恨んでるんじゃねぇか? フェイが殺しまくるからだ」

 「ルツが止めればよかったんだよ」

 「やだよ、オレが殺される。あいつそれもちょっと狙ってるんじゃねぇかな」

 「そうかな。フェイタンは団の意志に従うよ。団員同士のマジギレ、ご法度だから。いつもちょっとじゃれてるだけじゃないかな」

 「どうだかね。ウボォーくらい分かり易かったら助かるんだけど」

 

 膣の内部に指の腹を当て、引っ掻くようにぬぽぬぽと肉を抉る。シズクの嬌声は小さくも確かに口から出ていた。ただし表情はそのまま、至って冷静な様子で会話も問題ない。

 こんな反応も彼女でしか見られず。恋人というより友人のような関係もそのせいだろう。

 シズクも淡々とペニスを刺激していて、快感は確かに伝わっている。

 

 遊ぶように時間を過ごし、しばらくした後青年が起き上がった。

 シズクの上に跨ぐのをやめ、今度は寝そべる彼女に覆いかぶさる。再びのキス。舌を伸ばして口の中まで割って入り、熱い吐息を掛け合いながら没頭した。

 

 口を離し、見つめ合った時。青年はあやすように彼女の黒髪を撫でる。

 子供っぽい部分を多く残す彼女だ。愛でる仕草を嫌と思わず、表情もそのまま、されるがままを受け入れていた。

 

 「シズク、キス好きか?」

 「うん。好きだよ。どうして?」

 「いや、あんまり変わんねぇなって思って」

 「もうちょっと声とか出した方がいいかな。あんまり他の人の感じ、知らないから」

 「そのままでいいよ。別に演技されたって嬉しくねぇし、おまえはそっちの方が印象がいい」

 「そっか。じゃそうする」

 

 もう一度深くキスをして舌を絡めた。今度はねちっこく、熱烈に。

 唾液を交換し合う勢いで二人の喉が鳴る。

 同じタイミングで青年の指がシズクの膣へと滑り込み、丁寧に中をほぐそうとしていた。すでに挿入しても問題ない柔らかさだが、この急がない時間を楽しんでいるらしい。

 

 おそらくシズクも、どちらでもいいと思っている。挿入しても、しなくても。

 彼と抱き合っている時間で気分が落ち着くのは事実だった。これで良いと思っているし、これ以上があっても構わないし、このまま終わっても多分文句は言わない。

 今は口内で動く彼の舌に気を良くし、彼の動きにもしたいようにさせていた。

 

 「オレやっぱ、この指でほじくる感じ好きだわ。クンニも好きなんだけど」

 「へぇー。そういうものなのかな」

 「シズクは? チンポ舐めるの好きか?」

 「んー……わかんない。嫌いじゃないけど、自分から頼むほどじゃないし」

 「んじゃセックスは。オレが頼んでも断らないけど」

 「ルツは安全だって知ってるから。知らない人に頼まれても頷かないと思う」

 「襲い掛かったとこで掃除機出してぶん殴るからな。その点に関しちゃ、正直おまえのことはそんなに心配してないよ。立ち振る舞い見てたら結構危なそうなのに」

 「私だってしっかりしてるよ、これでも」

 

 膣から指を抜き、透明な糸が伸びて落ちるのを体感で知りつつ、青年の腰の位置が変わる。

 脱がしかけたショーツを脚から抜き取り、舐められた末に勃起したペニスが、いよいよ彼女の秘所へ触れたのである。

 シズクは冷静に受け止め、理解し、ただ気になっただけという顔色で尋ねた。

 

 「入れるの?」

 「ああ。もう準備はできてるみたいだし」

 「ゴムは、しないよね」

 「しない方が気持ちいいだろ。ま、ガキが出来たらそん時は言ってくれ」

 「ルツって子供何人くらいいるの?」

 「さぁな」

 

 答えはせずにずるっとペニスが挿入された。

 閉じていた肉のひだを押し広げ、奥へ奥へと突き入れていく。痛みはない。潤っているそこから感じるのは快感のみ。シズクは、流石に目を閉じて感じているようだ。

 一番奥へ亀頭が達すると動きが止まる。

 包み込む感触を味わうように、青年はそのままの状態でキスを始めた。

 

 「んー、いい具合。そっちはどうだ?」

 「ん、硬いね。でも昨日もしたし」

 「そんなどうでもいいみたいに言うなよ」

 「どうでもいいとは言ってないよ。ただいつもと同じってだけ」

 「それもひどい気はするけどな」

 

 ゆっくり腰が動かされ始めた。きゅっと包んでくる肉ひだを押し広げ、ペニスが前後へ動く。

 白い肌に唇を触れさせ、胸の谷間に顔を埋めた青年は両側から押して乳房を寄せた。これにより彼の顔が乳房に挟まれた状態となる。

 そんな間抜けな姿で腰を振って、スローペースで快楽の中に身を浸した。

 

 「んっ、んっ、んっ――」

 「乳でけーな。揉まれず育ったんなら何食って育ったんだ」

 「うーん、なんだろ。あんまり気にしてなかった。えっとね」

 「思い出さなくていいぞ。どうせ思い出さないだろうし」

 「そう?」

 「おまえ、一度忘れたら二度と思い出さないだろ。そんな大した話じゃねぇし」

 「そうだね。それじゃ忘れとく」

 

 色っぽい雰囲気などなく、平然と話したまま続けられる。

 人が変われば内容も変わるものだ。

 わかっていたことだが如実に違えば思わず関心してしまう。

 

 スローペースとはいえ、腰を振り続けていれば快感も大きくなり、徐々に青年の動きが速くなってくる。分かりづらいだけでシズクも正常に感じており、決して集中していない訳ではない。加えて愛撫も続けていれば当然それだけ快感も増していたことだろう。

 胸を刺激しながらの膣へのピストン。

 確かにシズクの体には変化があり、抱き合っていればはっきり伝わってくる。

 

 小さな嬌声を聞きながら、汗を掻かない程度に動かれていた。

 雨の音が聞こえ始める頃になって、シズクがぽつりと呟く。

 

 「んっ、んっ――ねぇルツ」

 「ん?」

 「蜘蛛、やめないよね」

 

 なぜそんなことを言い出したか、思わず気になるほど突然の一言だった。

 青年は全く顔色を変えずに彼女の乳房を掴み、右側にある乳首を甘噛みしながら答える。

 

 「やめる訳ないだろ。なんだよそれ」

 「みんな言ってたよ。フェイタンもシャルもフランクリンも。最近のルツはおかしいって」

 「あいつらにおかしいって言われるのは心外だな。オレが一番まともだと思ってた」

 「ルツは、何も変わってない?」

 「さぁな。それはおまえらに判断してもらわなきゃどうにもできねぇことだ」

 

 胸を弄るのをやめ、顔を上げた彼は上からシズクを見下ろす。

 腰は振り続けたままだ。ペニスで膣内を刺激しながら微笑んで彼女を見つめる。

 シズクも彼を見つめ返し、脱力して寝そべった状態で話を聞いた。

 

 「おまえの目から見て、オレが変わったように見えるか?」

 「うん。ちょっとだけ。でもルツが団長を裏切る姿は想像できなくて」

 「ならそういうことだ。あんまり心配し過ぎんなよ」

 

 唇にちゅっとキスを落とし、頬と頬を触れさせて首筋に顔を埋めるような姿勢となった。

 彼の両手がシズクの腰を掴み、今になって全力で腰を振り始める。ペニスの動きはより一層強く、激しくなって彼女を責め立て、溜まっていた物が一気に破裂するように全身を駆け巡る。

 

 その最中にも耳元で囁かれる。

 おそらく彼は微笑んでいたことだろう。

 それを想像しながら目を閉じ、シズクは与えられる快感に従って声を漏らした。出していても小さいのだが、何度かの経験から感じていることは伝わっており、安心して行為が続けられる。

 

 「んんっ、んっ、はっ――」

 「いいかシズク、自分の感覚には従えよ。他の誰が何言ったって最後に決断を下すのはおまえ自身だ。だから最終的に信用するのは自分にしとけ。な?」

 「う、んんっ……」

 「はぁっ、もうイクぞ。全部膣内(なか)に出すからな」

 「んっ、いい、よっ――」

 

 もはや端的に答えることしかできずに、シズクが彼の両肩に手を置いた。

 しがみつくでもなく、好意的に見ていない訳でもなく、控えめな様子であって。

 そんな状態できつく腰が叩きつけられて、荒ぶるペニスが膣内を乱し回り、最後には果てて精液を放った。彼女の子宮を狙い、孕ませようとするかのようにその瞬間は亀頭が奥へ置かれる。

 勢いよく体内へぶっかけられ、体が震える。

 

 全てを受け止めたシズクは全身を弛緩させた。

 程よい疲労感と脱力感に包まれている。目を閉じればすぐに眠れそうな、穏やかな心地だ。

 青年は射精が終わった後でペニスを抜き、そこに絡みついた体液を、じゃれるように太ももへ擦り付けつつ、自身もシズクの隣へ寝そべった。

 

 右腕は自分の枕に、左手が大きな胸を掴んでやわやわと揉む。

 シズクも彼へ体の前面を向け、向かい合ってしばし脱力感の中で目を合わせた。

 

 「はぁ~、こういうのもやっぱいいな。サンキュな、シズク」

 「うん、いいよ。いつものことだし」

 

 もう少し身を寄せ合って、背に腕を回して抱き合う。恋人であるという意識はないが、キスをするのはどちらも自然な動作と流れであった。

 唇で触れ合うだけのキスを数度繰り返し、顔を離すと力を抜いて思考を投げる。

 

 良い状態だった。激しくはないせいか、疲労感とはまた違った理由で眠気に襲われ、まどろんでいる時間が楽しい。その上で相手の肌の柔らかさが心地よい。

 青年の手がシズクの尻へ触れ、掴んだり撫でたりしながら、耐え切れず目を閉じてしまう。

 シズクも彼の胸へ額を当て、同じように目を閉じた。

 

 「あぁ~今日はだめだな。一旦寝るか。どうせやることもねぇんだし」

 「そうだね。眠い……」

 「起きたらもう一発頼む。尻触ってるからバックがいいな」

 「ん……」

 

 先にシズクがうとうとし始めたらしい。

 苦笑した青年もまた意識を手放そうと言葉を止め、柔らかな空気の中に身を任せた。

 

 彼女はこれで意外に敏い。勘が鋭いと思ったことはないが、否、だからこそ意外な一面を見た。

 忘れさせるためには疲れて寝るのはちょうどいいだろう。

 なぜなら彼女は、一度忘れたことは二度と思い出さないから。

 

 自分に感じた違和感も忘れてしまえばいい。

 目を閉じる青年は密かにそう思っていた。

 

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