朝日が昇って眠りから覚めた後、ソウル・ソサエティの一角で、四楓院家の屋敷にある日常は問題なく続いていた。
食事を取って、身支度を整え、今日も仕事へ出ようとしている。
布団の上で目覚めた瞬間から二人はいつも通りに触れ合っていたが、玄関口に立ったその時、改めて向かい合い、そっと手を伸ばした砕蜂がソラの頬へ触れ、唇を合わせた。
隙間が生まれないようぴったりくっつき、何度も舐り合う。
舌が絡んで、彼女の体温が伝わり、それだけでソラは幸せそうだ。目を閉じているが、明らかに普段より表情が緩んでいる。これが好きだということだろう。
目を開いたままそれを見る砕蜂も気分を良くしている。
しかし近頃の彼には、少し気になることもあって。
自らが決めた事柄とはいえ、近頃のソラの女性関係は派手になり、広くなっている。確かに好きにすればいいと言った。だが嫉妬しない訳ではないのだ。
可愛らしい彼が他の女に誑かされているとあって、実は仕事中も気が気ではない。
やはり失敗だったかと思う瞬間もある。
唇を離した時、砕蜂はソラの目を覗き込み、囁くように注意する。それでいてどこか目つきはやさしく、声色には子供っぽく拗ねる様子が伺えた。
ソラはキスで蕩けたまま、彼女の視線を受け止める。
「ソラ。最近おまえは他の女にうつつを抜かし過ぎる。許可を出したのは私だが、ほどほどにしておけよ」
「す、すみません。でも、みなさんがいらっしゃるので、その……」
「おまえは求められれば誰にでも股を開くのか」
「ち、違います。だけどみなさんは、知らない人じゃありませんから、断るのも悪いかと思って……」
「自分の意志をしっかり持て。周りに流されてばかりでいるな」
もう一度唇同士が触れ合い、強く押し付けられて、ソラが小さく呻く。
甘く、切ない、どちらとも取れる感触だった。
あっさり離れて、二人は静かに見つめ合う。
「今まで何度も言った。これからも何度だって言う。ソラ、おまえは私の物だ」
「はい……」
「誰に抱かれてもそれだけは忘れるな。常に私の存在を頭に残しておけ。いいな?」
「はい。わかりました」
「それだけの時間もかけてきた。おまえとの間にある絆も、誰にも負けないつもりだ……そうだろう?」
少し不安を感じさせる顔で言われた。
ソラもまた不安げになってしまい、頬を掴んだままの彼女の手に、自分の手を重ねてしっかり握り、表情を変えてゆっくりと微笑む。まるで彼女を安心させようとするかのように。
「僕もそう思います。砕蜂様のこと、誰よりもお慕いしています」
「フッ……そうか」
胸の中にやさしく抱き留められ、ソラは安堵した。
自分の言葉に嘘はない。
長い年月が二人の絆を確かな物とし、今や誰にも邪魔できないほどとなった。それはひとえに、二人が同じ痛みを抱いていたから。まるで傷を舐め合うが如く、互いの心を理解し合った。
ソラもまた強く彼女へ抱き着き、離さないように腕へ力を込める。
しばらく抱き合ってゆっくり離れた。
こうした二人の時間は離れ難い物がある。けれど行かなければ。
履物を履き、外へ歩き出した砕蜂は振り返らずに呟く。
「前にも言ったが、外から人が来ても中には入れるな……旅禍の可能性がある」
「まだ、見つからないんですか」
「厄介な連中だ。何度か目撃して戦闘が行われているが、まだ捕まえられていない」
「そうですか……あの、怪我人などは」
「おまえが心配しなくていいことだ。治療なら四番隊が動いている」
「でも、僕にできることならお手伝いを――」
「おまえはここを離れるんじゃない。いつ危険が迫るとも知れんからな」
横開きの扉を開けて、わずかに砕蜂が振り返った。
表情には一抹の不安が伺える。
「ここなら護衛が居る。危険はない」
「はい……砕蜂様も、お気をつけて」
「私のことなら心配いらない。すぐに帰ってくる」
砕蜂がふわりと微笑んだことで、ソラの顔からも心配が消えた。
「夕食を支度しておけ。今夜は二人で食べるぞ」
「はいっ!」
「他所の女は入れるなよ。今日だけでも絶対に断れ。いいな?」
「う、努力します……」
最後にソラの頭を撫で、砕蜂は出かけて行った。
その背が見えなくなるまで見送った後、一人残ったソラは扉を閉めて屋敷の中へ戻る。
大きな屋敷に二人暮らし。管理はすべてソラが行っている。家事全般はすでに得意と言える域に達しており、また本人も苦としておらず、楽しんでいる節がある。
彼はいつも通りに自分の仕事を始めた。
毎日掃除しているためか、部屋もさほど汚れておらず、簡単な作業だけであっさり終わる。
優雅とも思える時間の過ごし方であった。
ゆったりと一日を過ごしている中で、変化があったのは砕蜂の出発からほどなく。およそ一時間が経った頃だろうか。何の前触れもなく、それはやってきた。
縁側を歩いている時に小さな鳴き声が聞こえてきたのだ。
気付けば庭に一匹の黒猫が居る。
珍しいこともあったものだ。普段四楓院の屋敷には、たとえ動物であっても近付かない。風格に怯えてか、それとも砕蜂を恐れてかは定かでないものの、ソラは猫を見つけて珍しいと思う。
掃除もそこそこに足を止め、ふと気になって声をかけてみた。
「どうしたんだおまえ。迷子になったのか?」
黒猫はソラを見上げて鳴き声を発するだけ。動く素振りはない。妙に人懐っこいせいなのか、ソラに対する警戒心さえも感じられなかった。
気になって見つめていると猫が歩き出す。
縁側のすぐ傍までやってきて、間近から見上げてきた。
ソラは縁側へ腰掛け、両手を伸ばしてその小さな体を抱え上げる。そうして、膝の上に乗せた。
「どこから来たんだろう。この辺りでは見かけなかったけど」
大人しく座ったままなのでやさしく頭を撫でてやる。
不思議と心が安らいだ。
久しぶりに肩の力が抜けたような気がして、なぜだか懐かしい気分にもなる。そういえば猫を見たのなどいつ以来か。初めてではないが、もうずいぶん昔のことのように思える。
微笑んだ状態で、しばし黒猫を撫で続けた。
すると、安堵していた様子の黒猫が、突如人の言葉を操り始める。
「変わっていないようで安心したぞ、ソラ。もう何年振りじゃろうな」
「えっ? 今のは――」
他に誰かが居るのかと思って辺りを見回した。しかし誰も居ない。
誰の声だったのだろう。
それがわかるより先、ボフンと白い煙が立ち上って、ソラの全身が包まれた。視界が真っ白に染まって何も見えなくなる。同時に、誰かに押されて床へ倒されてしまった。
「うっ、わっ――!?」
訳も分からず悲鳴を上げて倒される。
いつの間にか黒猫の姿が消えていて、代わりに真上に居るのが人間なのだとすぐに気付いた。褐色の肌で凹凸の激しい裸体を晒し、ソラの顔を挟むように手をついていて、にやりと笑う悪戯っぽい表情が視界に入る。あまりにも見覚えのある、もう努めて忘れようとすらしていた顔だ。
ソラはひゅっと息を呑み、全身を硬直させた。
忘れるはずがない。
ずっと心の奥底に秘められていた思いが一気に溢れ出してくる。
目の前に居るのは間違いなく、この屋敷を去ったはずの四楓院夜一だった。
見るからに上機嫌で、それでいて懐かしさを滲ませる子供のような笑顔。間違いないという確信はさらに強まり、自覚した瞬間にソラの目に涙が溜まる。
今にもこぼれ出しそうなそれを見やって夜一がくすぐったそうに笑う。
両手で頬を掴み、ぎゅっと顔の形を変えて、おどけるように声をかけた。
「ふふふ。ほれ、よく見ろ。おまえのよく知っとる顔じゃろう」
「ど、どうして……?」
「なんじゃ、せっかく会いに来てやったのに。もう少し喜んでくれるかと思っておったが」
「だ、だって、夜一様っ――!」
明らかに動揺しているソラを目にして、夜一は彼の頭を胸に抱いた。
布も通さず、直に肌へ触れて、妙に懐かしい心地になる。昔はこうして抱かれていた。きゅっとやさしく力が入る手が久々で、自然と動揺した心が落ち着いていくかのよう。ふにゅりと柔らかい大ぶりの乳房。何度この胸で眠ったかわからない。
すぐ大人しくなった彼の頭へ頬ずりする。
彼女にとっても嬉しい瞬間。この感触は何も変わっていない。
頬が緩んでしまうのも仕方なく、どうしてもだらしない笑みになってしまった。
「はぁ~、これじゃこれ。やっぱりソラに触れていると落ち着く」
「あ、あの、夜一様……」
「うん? どうした?」
「まだ、何がなんだかわからなくて。戻ってこられたんですか?」
「うむ。まぁ、色々あった。すべて説明するには時間がかかる。とりあえず」
両手がいそいそと服の下へ手を差し込まれ、脱がそうとする。
突然且つ身勝手な行動で、思わずソラが抵抗しようするも、やんわりと夜一が押し留めてそうはできなかった。勝手知ったる様子で下着まで取り去って裸にしてしまう。
再会から数秒。あっという間に裸で抱き合っている。
異様な状況だが、まだ現状を正しく理解できないソラには何も言えない。
いつ以来か。
改めて抱き合って、肌と肌が触れる感触に両者とも頬の紅潮を抑えられなかった。
「よ、夜一様……」
「先に、こっちを楽しませてもらうとするかの」
一体何年振りの瞬間となるのか。喜々として肌が撫でられる。
その手触り、どれだけ待ち望んだかわからない。再びこの地へ来ると決まって以来、絶対に会おうとは決めていたがチャンスを待つ必要があった。それだけに我慢の時間は長く、この瞬間に辿り着くまで悶々とした時間も多くて、今更我慢などできない。するつもりもなかった。
夜一がソラの首筋へ顔を埋め、ちろりと舌を伸ばす。
わずかに触れられただけで彼は身じろぎして、嬉しさと戸惑いが入り混じり、小さく声を漏らす。そんな態度もまた夜一がよく知る物。だがソラの躊躇いにも気付いていた。
「ひぃっ」
「ん。良い反応じゃ」
ちろちろと舌を動かして肌を撫でる。
恥ずかしがっているが嫌がってはいない。ただ戸惑っているのは確か。
ソラの中では複雑な気持ちが入り混じっていた。砕蜂に対する罪悪感、夜一に対する恋慕。同時にあってはならないと知っていながら自分ではどうすることもできない。どちらも大事で、捨てられるほどの軽さではないのだ。選ぶような真似はできずにいる。
抵抗すべきか、受け入れてもいいのか。態度に迷いが表れていた。
それを気にしつつ、我慢できない様子の夜一は尚も続ける。
「どうした、嫌か? わしを嫌いになってしまったのか」
「ち、違います。でも、ただ、僕は――」
「なんじゃ、言ってくれ。気遣う必要はない。おまえの素直な気持ちを」
「僕は……砕蜂様に、お仕えしています。ですので、夜一様とこういうことをするのは……」
「ふむ。そういうことか」
納得した様子で呟かれた。だが一方で肌を撫でる手は止まっていない。
全く気にした様子もなく触れられるため、ソラはやはり戸惑ってしまう。
「あ、あの……?」
「それに関しても色々言いたいことはある。じゃが、まぁとりあえずは良いではないか」
「ちょ、ちょっと!? その前に、砕蜂様に会いましょうよ。ね?」
「だめじゃ。あれに見つかるとうるさくなる」
「よ、夜一様ぁ……!」
腕や腹、太ももを撫でていた手が不意にペニスへ触れる。すでに痛いほど勃起していた。首筋へのキスや肌への愛撫だけでなく、久々に合わさる彼女の肌に我慢できなかったらしい。
複雑な心境とは裏腹に、体は夜一を求めている。
それが恥ずかしくもあり、情けなくもあって。
頭の中には砕蜂の顔があって、必死に抵抗しようとソラが顔を背けるのだが、それでも逃がそうとしない。夜一の手がペニスを扱き、閉じられた唇を舌で舐め始める。
「うぅ、はぁ……」
「おぉ~、久しぶりに見るのう、その顔。ずっとこうしたかったんじゃ」
「はぁ、だめです、夜一様……僕には、砕蜂様が」
「なぁに、元を正せばあれもわしの身内。おまえもわしの身内。ならこうすることになぜ罪悪感を抱く? まったく問題ないじゃろうに」
「う、あぁ、だ、だけど……」
「そうして感じていればよい。少なくとも今はまだ」
指先で裏筋を撫で、明らかに息遣いが荒くなっていく。
感じる場所は変わっていない。撫でているのが楽しくなってきた。
夜一は上機嫌な笑顔になる。
「ほれほれ、ここを弄られると我慢できんじゃろう? 出したい時に出していいぞ」
「う、うぅぅ……」
「くくくっ。おまえは変わらんなぁ。それでこそソラだ」
しつこく何度もペニスを撫でながら、唇を舐って、頬にまで舌を這わせる。
些細な挙動一つで動きが大きくなった。それが可愛らしくて、愛おしくて、久々の再会に心が躍る。嬉しくなって仕方ない。
耳の中へ舌先を突き入れ、遊ぶように股を擦り付ける。
まるで彼の脚を使って自慰をするようだ。また頬が緩んで、動きは大きくなるばかり。
のしかかる様子でねっとりした責めが続き、ソラの声が艶やかに変化していった。
「あっ、あぁっ……!」
「ふふん。どうじゃ、衰えておらんだろう」
「うぅっ。だ、だめですっ……!」
「お、イクか?」
抵抗の動きが徐々に大きくなってきて、ソラが強く歯噛みする。
もう絶頂が近いのだろうとわかっていた。
小刻みに震えて、きつく抱き着いてきて胸に顔を埋める。子供っぽくも昔と変わらない仕草だ。しがみついてくるのは愛情の表れで、また嬉しくなる。
手の動きが速くなって、ペニスが高速で扱かれ始めた。
ソラの動きがさらに顕著となり、悶えるように脚が震える。
「うあぁっ、あっ――!」
手による刺激でソラが達してしまう。ペニスからびゅっびゅっと精液が飛び出し、夜一の手や、自身の下腹部を汚した。ぬるりとした感触を得ながら尚も刺激し、最後の一滴まで搾り出される。
ひとまず夜一は満足した様子だ。
指を広げてねちゃりと伸びる感触を楽しみ、呼吸も荒く目を閉じるソラを眺める。
胸に顔を埋めた状態で甘えるのは彼の癖。
彼女もそれを受け入れて、左手で頭を撫でてやり、右手では尚もペニスをゆるりと撫でた。
「んん、イッたな。どうだソラ?」
「う、はぁ、んんっ……き、きもちよかった、です」
「ふっふっふ、そうだろうそうだろう。では続きを」
「あっ、それは……!」
やさしく撫でられたことですぐに勃起してしまい、硬くなってそそり立つ。やはり彼のツボを理解しきっているようで手慣れた仕草。撫でる指にも余裕がある。
体を起こした夜一は彼の体を跨いだ。
触れられずともしとどに濡れている陰唇を自ら指で開き、ペニスの先端に宛がった。
濡れた膣の入り口と亀頭が触れ合う。
流石にそれはまずいと感じたのか、ソラが血相を変えて起き上がろうとした。しかし夜一が左手一本で胸を押さえ、起き上がれない状態にさせて腰をくねらせる。
上機嫌でひどく楽しそうな笑顔だった。
「久しぶりの、ソラのちんぽ。楽しませてもらうぞ」
「ううぅ、あぁっ……だ、だめっ――」
腰が下ろされ、ずるりと入り込んだ。
蕩け切った肉の道にペニスが奥まで挿入される。
包み込むようで、ぎゅっと握るような、柔らかくも強い感触。そんな不思議な空間に捕らわれてソラは首を逸らし、目を見開いた。
こんな風に繋がったのはいつ以来だろう。
焦りながらもその想いが重なって、凄まじい快感が骨の髄にまで響き渡る。
膣に包み込まれたペニスは逃げられないように囚われているかのよう。
夜一の表情が明るくなり、ソラの顔色も赤みを増していくばかりだった。
「あっ、はぁ……やっぱり、んん、いいな。ソラ、どうじゃ?」
「はっ、あぁっ……!」
「ふふ、感じておるな。おまえはそのままでいい。わしが動くから――」
夜一が腰を動かし始めて、上下にペニスが扱かれ始める。
長い年月を越えて、再び味わうその感触。
気分の高ぶりも相まって平静が保てなくなり、見る見るうちに余裕が削られていく。
歯を食いしばるソラは夜一の乳房を掴んで、きつく目を閉じて縋るように抱き着いていた。見るからに余裕がないとはいえ、指は密かに動いており、柔らかい乳房を揉んでいる。本能的に彼女を求めているのかもしれない。可愛らしいと思って夜一の口の端が上がった。
「おぉっ、おっ……! くっ、はぁぁ。すごい、な……体の芯まで、来るっ」
「あっ、あっ、よるいちさま……! だ、だめです、も、もうっ――!」
「ふっ、い、いいぞ。そのまま、ナカに」
弾む尻の動きが活発になり、先端から根元までを激しく膣内で扱きあげる。
ぐぽっと卑猥な音が鳴る度にしぶきが飛び、互いの呼吸が荒く、吐息が熱くなる。
きつく抱き合ってもはや我慢すらならない。
ソラは突発的に射精してしまっていた。
いまだ余裕がある夜一は楽しげに彼の精液を受け止めてやり、膣内が精液で満たされる。それすらも甘美。長い間我慢していたせいか、激しい高揚感を感じて全身が震えていた。
「あっ、で、るぅ……!」
「んんんっ、来たぁ」
びゅるびゅると注ぎ込まれていき、搾り取ろうと膣内のひだが激しく動く。
体を震わすソラは凄まじい快感を覚えたまま、溺れるように時折呼吸を途切れさせた。平静を保つことができない。物を考える余裕さえなかった。
全身が大きく震えた後、ぐったりして脱力してしまう。
ただそれでも夜一の胸から手は離さなかった。初めての経験が彼女で、元々彼は大きい乳房に触れていると安堵する癖がある。そこに触れているだけでも落ち着けるようでそもそも離す気がなく、呼吸を荒れさせて我を忘れながら、しっかりと掴んだままだ。
余裕を持ったままの夜一だったが、今の射精は堪えたらしい。
久々に感じた、膣内を満たす子種。自らを孕まさんと活発に動く男の性。
ソラとの日々が思い出されるようで、軽く絶頂を感じていたようだ。
彼女もまたぐったりと四肢を投げ出してしまい、ソラの上へのしかかる。多少重さは感じるものの、決して嫌ではなく、胸に顔を埋めて頬ずりしながら顔が上げられた。
「はぁ、んっ、夜一様……」
「ああ……私も、イってしまったようじゃ。やはりおまえと居るのが一番良い」
「そ、んな」
「待たせて悪かった。じゃがな、これだけは言わせてくれ。儂がおまえのことを忘れた日など一日たりともない」
目を合わせて真正面からそう言われる。
その一言で、ソラは目に一杯の涙を溜めた。
これまでずっと理由がわからなかった。なぜ彼女は姿を消してしまったのか。誰にも聞くことができず、砕蜂と二人、今日までずっと悶々としたまま過ごしてきた。
まだ理由はわからない。それでもわかったことは一つ。
彼女は自分を嫌いになったから置いて行った訳ではないらしい。
それがわかっただけでも救いだった。
安堵した様子でソラが胸に顔を押し付け、きつく目を瞑る。長い間、本当に苦悩していたのだろう。複雑そうに、薄い微笑みを浮かべて、夜一は彼の頭を撫でた。
互いに抱きしめ合って時を過ごすのも、遠い日の記憶。
今は触れられる距離に居る。
離れていた期間の溝を埋めるように無言で抱き合う。いつの間にかソラは小さく嗚咽を漏らしているようで、涙を流していたのかもしれない。それを知るのは夜一だけだ。
しばらくして、二人が落ち着き始めた頃。
悪戯っぽく笑う夜一は、性交を続けようとまた腰を振り始めようとした。
彼女の膣からずるずるとペニスが抜かれていく。
ソラがあっと声を漏らすため、楽しそうに夜一が笑った。
「これで終わりではなかろう。まだ足りんのじゃ、ソラ。もっとおまえを抱きたい」
「あ、あの、でも……砕蜂様が」
「あとでちゃんと説明する。だから今は、な?」
「う……」
夜一から唇を奪い、静かなキスが始まった。ただ押し付けるだけでむっちりと触れ合う。
同時に再び膣がペニスを呑み込んでいき、根元まで納められる。
声が聞こえてきたのはその瞬間だった。
「ソラっ!」
庭へ降ってきた声に気付き、二人はすぐに振り返った。
血相を変えてやってきた砕蜂と目が合う。裸で抱き合い、繋がる姿をしっかり見られた。
その時、確かに夜一と視線が合って、瞬時に砕蜂の顔から表情が消える。怒りも憎しみも、感動や驚愕もなく、悲しみも表されていない。全くの無であった。
辺りの空気が一変する。
彼女のせいだろうか。それとも他の理由があったかはわからない。
重苦しい静寂が辺りへ降りかかり、しばしの間、何一つ音が消えてなくなる。
動揺するソラにも気付けぬまま、砕蜂と夜一が、静かに見つめ合っていた。