※この作品はR-18です。

蛇獣書房   作:ヘビとマングース

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森の賢者

 苦しげな悲鳴と共に幻影が消えていく。

 ファントムガノンと名付けられたそれはガノンの影。存在しない幻。常人には触れることができないというのに、敵からは触れられるという、ひどく卑怯な存在であった。

 

 それを打ち払ったのは退魔の剣。

 リンクが持つマスターソードは幻影を切り裂き、死闘の末に敵を討ち滅ぼした。

 

 深い森の奥、森の神殿。

 静寂に包まれた広い一室での決闘。そして勝利。

 ファントムガノンが消えた直後、頭の中に響く声があり、リンクは剣を納めて辺りを見回す。

 それは懐かしい友の声だった。

 

 《リンク……ありがとう。あなたのおかげで、森に平和が戻ったよ》

 

 あの日と変わらぬ優しい声。

 懐かしさに胸が満たされ、不意に笑みが生まれた。

 頭に響く声は穏やかなままで、さらに言う。

 

 《ねぇ、外へ来て。あなたと話したいの》

 

 リンクは歩き出した。

 神殿の外へ出れば彼女に会える。それを楽しみにしている自分が居た。

 弾む足取りで神殿の中を進み、来た道を戻って、やがて出口を見つける。扉を押し開いて、彼は森の中へと足を踏み入れた。

 

 出てすぐの場所には誰も居なかった。

 すぐに頭の中へ声が届く。

 

 《こっち。来て》

 

 呼ばれただけだが方向がわかる。不思議だが事実だ。理由もわからぬまま、ただ彼女の声だけを信じてそちらへ向かい、小走りで森の中を進んでいく。

 迷いの森と呼ばれる場所でも迷うことなく。

 足を止めた時、リンクの視界にはステージのように大きい切り株と、その上に立つ少女。

 森の賢者で幼馴染でもある、サリアがそこに居た。

 

 背面で手を組んでいつかと同じ表情だ。

 優しい微笑みはあの頃のまま。それどころか外見も全く変わっていない。

 七年の時が経っても子供の姿で成長しておらず、それは昔の仲間たちと同じだった。

 

 コキリ族の人間は成長しない。子供しか存在しない種族なのだ。

 サリアもまた、七年前の姿でリンクの前に現れた。

 今はそれを驚きはしない。疑問を持ったタイミングでナビィに教えてもらったため、コキリ族には子供しかいないこと、そして彼らと共に育った自分がハイリア人であることを知った。

 

 大人になった自分と、子供のままの彼女。勇者と賢者。ハイリア人とコキリ族。

 七年後にこうして出会うとは、別れの瞬間にはまるで思わなかった。

 

 干渉に浸る。そんなリンクにサリアが微笑みかけた。

 

 「リンク」

 

 名前を呼ばれただけで様々な記憶が蘇ってくる。

 体感としてはつい昨日のことのよう。それも彼の場合は比喩ではなく、七年間の眠りにより、成長した外見とは裏腹に体験は子供の頃にあったことのみ。サリアと別れたのはそう遠い日のことではなく、懐かしいという感情も、ほんの数か月程度の物だ。

 

 だがサリアはそうではない。

 彼女は七年の時を過ごし、リンクとは違って時を止めることなく生きてきた。

 七年分の体験の後、ここにこうして立っているのだろう。

 

 なぜ森の賢者となったのか。いつ自分がそうであると気付いたのか、知ることはできない。しかし彼女はすでに森の賢者であるという自覚を持っているらしかった。

 

 リンクと向き合う彼女は以前にも増して美しい。

 ただリンクがそう思うだけか、それとも覚悟がそうさせるのか。

 どちらにしても互いに喜びを抱き、だがその奥には寂しさもあって、これからどうなるのかは正しく理解できている模様。もう昔のままではいられないのだ。

 それは成長と呼ぶのか。リンクにはまだわからなかった。

 

 「また会えて嬉しいよ。背、伸びたね。それにかっこよくなった」

 

 子供っぽく、少し弾むような、けれど愛らしい様子で。

 肩をすくめるサリアは心から喜んでいるようだった。

 リンクもまた喜んでおり、優しく微笑んで彼女を見つめて、同時に少し緊張してもいた。

 

 サリアも理解しているはず。緊張しないのだろうか。

 不思議に思う心を押しやって、今は彼女との再会を喜ぼうとする。

 

 「助けてくれて、ありがとう。あの人が来てから森の様子も変わっちゃったけど、リンクが倒してくれたからすっかり元通りになったよ。これでコキリ族のみんなも安心。私がこの森を離れてもみんなは安心して暮らせるね」

 

 そんなことはない、と言いたかった。

 サリアが居なくなればコキリ族の仲間たちはきっと寂しがる。実際、リンクが立ち寄った時もそうだった。突然サリアが居なくなったことで、みんなは明らかに気落ちしていた。

 

 元通りなんて嘘だ。

 何かが起こる度、森の姿は確かに変わっている。

 デクの樹サマが死んで、リンクが旅に出て、今度はサリアも居なくなる。

 その時ミドはどう思うだろう。彼はサリアに惚れていたはずだ。もしも居なくなったら悲しまないはずがない。それをサリアが気付いていたかは疑問だが、少なくともみんなにはバレていた。

 他のみんなだって悲しむ。サリアはみんなに優しく、平等に接していたから。

 

 そう言ってやろうかとも思ったが、言ったところで変えられないのだと気付いてやめる。

 森の賢者を目覚めさせなければならない。

 もはやハイリア王国だけでなく世界を賭けた戦いだ。個人の意見を優先してやめることはきっと許されない。それでは色んな人の覚悟を無下にすることになる。

 

 不意に口を噤んだリンクを見て、サリアが儚げに微笑む。

 多くの言葉は要らない。無粋になる。互いにそれがわかっていたようだ。

 

 そのため、ふと空を見上げた彼女は妙に達観した表情を見せた。

 初めて見た顔だ。長く一緒に居たのに、そんな顔をしたことは一度もない。

 やはり時の流れは現実として存在していて、彼が知らぬ間に時が流れていたのだ。

 

 「私、寂しくないよ。確かにみんなと離れちゃうけど、これからはリンクの傍に居る。森の賢者としてあなたを助けるから。この森を離れてもずっと一緒」

 

 サリアはそう言って笑う。

 ひょっとしたらそれは気遣いだったのかもしれない。

 自分が望んだ訳ではないだろう運命を知って、逃れられないと気付いたから、リンクを心配させまいとして言った可能性もある。だがその微笑みを見て、ただ素直に信じたかった。

 

 彼女は傷ついてなんかいない。これからはずっと自分と共に在る。

 そう信じて、リンクは力強く頷いた。

 些細なことだが、それだけでサリアは安堵した顔になる。

 

 「この森を離れるのは初めて。でも怖くないよ。先にリンクも外の世界へ出たんだし、今度は一人じゃないもんね。一人じゃないから、きっと何があっても大丈夫」

 

 うん、と笑顔で頷いた。

 その後すぐにリンクが歩き出して彼女の下へ向かっていく。

 

 「ほんとはね、嬉しいんだ。前はリンクに置いていかれたけど、もう離れなくていいから」

 

 間近に立ってリンクがサリアを見上げた時、彼女はくすぐったそうに笑って、トンッと軽く切り株を蹴って彼に向かって飛びついた。正面から受け止め、抱き上げる。

 軽い。体格差があるため当然だがそれにしても驚くほど。

 至近距離で見つめ合い、少し気恥ずかしさもあって、今になってようやく羞恥心も湧き上がる。

 

 「リンクが相手でよかった。恥ずかしくて、ちょっと怖いけど、リンクが相手なら大丈夫。初めてのことだから、任せちゃってもいいのかな?」

 

 リンクは安心させるべく頷く。

 自信のある風に装おうとするものの少し失敗して、緊張が相手に伝わってしまったらしい。

 そうでなくともサリアはずっとリンクを見てきた。七年の時を隔てようと、彼の変化は手に取るようにわかり、耐え切れなくてくすくす笑い出す。

 気付いたリンクも少し居心地が悪そうに、照れた様子で苦笑した。

 

 抱き上げたサリアを切り株に寝かせ、自身も上がって横になる。

 地面は硬いが今は気にならずに、二人とも寝転んだ状態で見つめ合った。

 

 切り株の中央、大自然の中。

 伸ばされたリンクの腕にサリアが頭を置き、しばし何も言わずに時を過ごす。

 再会を喜び、味わって、空白の時を埋めるかのよう。胸が高鳴り、だが妙に落ち着いていた。

 

 「やっぱり緊張するね。ちゃんとできるって思ってたつもりなんだけど」

 

 サリアの頬が紅潮している。それを見て可愛らしいと思った。

 思えば生活を共にしていた頃、彼女を女として見たことはないように思う。自分はまだまだ子供だったし、知識もなく、コキリ族にはそんな習慣もない。だから多少好き合うことがあっても結婚などという概念もなくて、それらを知ったのは外の世界を知ってからだ。

 性交について、サリアがどこで知ったかは定かでないが、こうする時が来るとは思わなかった。

 子供の頃に一緒に寝ていたのとは違う。今は、彼女を女として見ていた。

 

 右手でそっと頭を撫でる。

 グローブを着けたままだったことを後悔した。先に外しておけば、彼女の柔らかい髪をもっと感じることができただろう。指先だけでは足りないと思った。

 しかし左腕は彼女の頭の下。今はまだ我慢して右手だけで触れ続ける。

 

 太陽は高く、夜まではまだ時間がある。

 焦る必要はない。ともすれば逸る気持ちを必死に抑え、彼はサリアとの時を過ごした。

 

 リンクとサリアは、それからいくつかの話をした。

 コキリの森を離れた後のこと。自身の旅について。

 精霊石を求めてデスマウンテンやゾーラの里へ行ったことも話した。旅の道中、広大な草原にある牧場に立ち寄り、エポナという仔馬と仲良くなったことも告げた。

 サリアはその話を楽しそうに聞き、穏やかに微笑む。

 

 旅のあらましを話し終えて、今度はサリアが話し始める。

 リンクが旅立った後、やはりコキリの森は少しだけ様相が変わった。あれだけ彼をイジメていたミドは強がってはいても寂しがっていたし、その取り巻きも同じく。誰一人欠けることなくリンクの姿が見えない日常に違和感を抱き、寂しがっていたと。

 サリアも同じだったそうだ。

 みんなが落ち込まないよう元気付けながら、一人になったふとした瞬間、どうしようもなく寂しく感じる瞬間があったという。彼を思い出す度、別れを辛く思ったとも。

 

 初めて聞く話に少し申し訳なく思う。

 コキリ族の仲間と再会した際、それとなく聞かされてはいた。

 昔居た仲間が居なくなったのに、今度はサリアも居なくなって、それが辛いと言っていた。

 

 謝罪と感謝と、そして喜びと寂しさも。リンクの表情が変化して、サリアがそっと身を寄せる。

 

 「大人になるって良いことばかりじゃないね。私たちはずっと子供のままだけど、何も変わらないわけじゃない。時間が経てば心の形も変わっていくから」

 

 静かに語るサリアはリンクの胸に頭を乗せ、安堵した顔で目を閉じる。

 何も考えずにそんな彼女を抱きしめた。

 

 「でも、変わることも悪いことばかりじゃないよね」

 

 どういう意味合いなのかは、はっきり聞くことができない。それでいいと思う。はっきりとした答えを持っていなくても、彼女も自分も、変化することを拒んではいなかった。

 生きている限り、何も変わらずにいるなんて不可能だと思い知った。

 彼は今後も変わり続けなければならない。問題なのは変わった後がどうなるかであって、変化自体を恐れてはいけないのだ。

 それを、サリアとの語らいで気付けた気がする。

 

 言葉を止め、静かな時間が流れる。

 ゆっくりと空気が変わろうとしていた。

 大人になった自分と賢者になろうとしている彼女。やるべきことは一つ。

 

 首を上げて彼女を見れば、サリアも覚悟した顔でリンクを見つめた。

 時は来た、ということだったようだ。

 

 「リンク……」

 

 吐息交じりで艶っぽく、初めて実感する女の顔を見せ、囁く声に驚いた。

 女性とはこんな顔をするのか。

 練習のため抱き合ったシークとは違う。彼も男とは思えぬほどきれいだったが種類が違った。男と女ではこうも違うものかと、やっと実感を得て、また一つ知識が増える。

 

 急激に緊張感が増してきた。

 正真正銘、これが童貞を捨てる初めての体験となる。

 初めての相手がサリアで良かった。リンクは言葉にすることも忘れ、密かにそう思った。

 

 サリアが目を閉じる。それを見た後でリンクが動き出した。

 自身も目を閉じるため細めつつ、触れる場所を間違えないように直前まで顔を見て、ゆっくり顔を寄せていく。そしていざ触れようという時、唇を尖らせて目を閉じた。

 ふわりと触れる、柔らかい感触。

 思わず安堵してしまうそれは間違いなく女性の、サリアの唇だった。

 

 奇妙な感覚だ。

 興奮して頭が茹りそうになる一方、妙に冷静になっている自分が居る。

 嬉しさのあまり、今すぐにも暴れ出したいほど興奮しているのに、一方で現実の自分は冷静な行動ができているらしく、優しさに満ちたキスを繰り返す。

 心と体が一致しない一瞬。

 こんな感覚も初めてで、緩慢なキスを行いながら、彼は自分自身でも驚いていた。

 

 サリアはリンクの腕の中で、身を小さくして受け入れていた。

 子供同士の遊びじゃない、大人がする本気のキス。彼女も興奮している面持ちである。

 

 何度か触れ合って、あっさりと離れた。

 いつまで冷静で居られるのか。自分でもわかったものではない。

 少なからず不安を抱いている様子のサリアの髪に触れ、暴れ出しそうな自分を押さえつける。

 そうできるのもきっと、彼女を大切にしたい一心からだ。

 

 子供の頃の憧れ。再会への喜び。そして初めての女に対する尊敬や情念。

 単なる愛情に上乗せする物がこれでもかとある。

 喜びを噛みしめて、リンクは自身の素直な感情をつい吐露した。

 

 「うん……私も嬉しい。ここに居るのがリンクで、本当によかった」

 

 彼女も同じ想いであると知って、再びキスを始める。

 先程のように何度か触れた後、今度は舌で唇を割って、さらにその先を求める。多少は驚いた様子を感じるものの、予想していたのか、すぐにサリアも順応する。ひとまず訳も分からぬまま彼の舌を受け入れて、促されるがままに自分も動かしてみる。

 練習の成果はあり、リンクのそれはきちんとリードしていた。

 熱い舌が絡み合うだけで心が蕩けていくかのよう。平常心を溶かしていった。

 

 唇が離れた時、目を潤ませるサリアはさっきよりずっと色っぽかった。

 リンクを見つめて何とも言えぬ表情をしている。

 自然に彼の股間も熱くなり、服の下で限界まで大きくなっていた。

 

 「はぁ、ふぅ……ん、これがキスなんだね。大人の、愛し合う時のキス」

 

 嬉しそうに、視線を外して笑みを深めながら呟く。

 外見こそ子供でもれっきとした大人だ。彼女は少女ではなく、女の顔をしていた。

 

 リンクは先に両手のグローブを外し、少し遠くへ投げた。

 邪魔になってはいけない。彼女と触れ合う時に隔てる物はない方がいい。革のグローブも服も、普段は身を守るそれも今は邪魔になるだけだ。

 

 両手の素肌を晒して、警戒させないよう気をつけながら彼女へ触れた。

 背を撫で、太股を撫で、頭を撫でる。

 徐々に緊張を解していけばいい。急ぐ必要はないのだから。

 いずれはお互い服を脱がなければいけないのだが、まずは服の上から彼女に触って、その体の形状を少しずつ確認していく。くすぐったそうに、彼女もその手を受け入れた。

 

 「恥ずかしいよ……でも、しょうがないよね。これも必要なことなんだから」

 

 リンクが頷く。

 視線を合わせて、もう一度サリアが問いかけた。

 

 「ねぇリンク、私が子供で、ごめんね? 本当は大人の女の人がよかったよね……」

 

 気にした様子で言われたことで、リンクは即座にそんなことはない、と答える。

 年齢や外見は関係ない。

 サリアだから嬉しいのだ。昔からよく知る彼女と、恋かどうかは定かでないとはいえ好きだった相手と一つになれる。それだけで幸福過ぎるほど恵まれている。

 だからサリアで良かったと素直に告げて、彼女は嬉しそうに頬を緩めた。

 どうやら望んだ答えがもらえたようだ。

 

 「ありがとう」

 

 不安は消え失せた。ならば後は身を任せるだけ。

 サリアはリンクの胸に頭を預け、安堵した顔で目を閉じる。

 彼は頭を撫で、それからゆっくり動き出す。

 

 多少の緊張を残しつつ、サリアの服を脱がせ始めるのである。

 コキリ族特有の緑色の服。見慣れているそれはどんな構造かも理解していて、目を瞑っていたとしても苦労することはない。それだけ彼女を見ていたとも言える。

 そこだけは自信のある動きだ。

 一枚ずつ着実にサリアの服を脱がしていき、やがて彼女は、裸になる。

 

 仰向けに寝転がるリンクの上、今までとは違う姿がある。

 思い返せばコキリの森に住んでいた頃、みんなで裸になって川遊びをしたこともあった。子供だけで羞恥心もなく、それが当然の物として。

 だがその時、サリアはそうしなかった。他の女の子に誘われても川遊びをしていない。

 

 今にして思えばその頃から彼女だけは違っていたのだろうか。

 余計な思考が邪魔をしかけるが、すぐに消し去り、今は彼女に集中する。

 

 子供であることは否めない、小さく細い体。

 真っ白な肌はシミ一つさえ見つからず、予想していたよりずっと美しく可憐だ。

 彼の体はますます熱くなっていき、やはり我慢できそうにない。頭が沸騰しそうだった。

 

 「やっぱりちょっと……恥ずかしいな。ねぇ、変じゃないかな?」

 

 照れた顔でそう尋ねてくる彼女が愛おしくて堪らない。

 ぎゅっと強く抱きしめてやり、きれいだ、と掠れた声で呟く。それが答えになっただろう。きちんと意味を理解したサリアも微笑み、彼の体を抱きしめ返す。

 しかしまだ服を着たままだ。改めて考えれば、これが邪魔になる。

 余裕を取り戻した様子のサリアが、自分からリンクへ提案した。

 

 「リンクも脱いで。私だけなんてずるい」

 

 子供っぽくなっただろうか、と多少の後悔を抱きながら、やはり自分らしく言えなければおかしいのだから間違っていない、と思い直す。言い切ったサリアは敢えて自信満々にしていた。

 するとリンクも納得した顔で頷く。

 自分の手で服を脱ぎ始め、ゆっくり手をかけ始めた。

 

 「私も手伝うね。うふふ、こうした方が、興奮するんじゃない?」

 

 悪戯っぽく笑ってサリアの手がベルトに触れた。

 羞恥心が増すも言われた通りだ。そちらの方が興奮する。リンクはそれを拒まない。

 

 多少の時間はかかったが、リンクもまた全て脱ぎ去って裸になった。

 

 形の良い筋肉に覆われた白い肌。川遊びをしていた頃とは違う。

 逞しい胸板を手で撫でてみて、ほぅと溜息をつく。

 長い間ずっと見てきた相手だったが、これほど男を感じた経験は初めてのこと。七年の歳月を如実に感じるには十分な状況で、思わず胸が高鳴った。

 これが大人の喜びなのだと、初めて知った瞬間である。

 

 リンクの手がそっと彼女の肌に触れ始める。

 ゴツゴツした手の感触に驚くも、嫌ではない。むしろ少し嬉しかった。

 自分の体が性交に適しているとは思わず、不安もあった。

 しかしリンクの様子を見れば、それも杞憂だったと知って、今では安堵している。

 

 爛々と輝くような目は興奮し切って、股間の男根も硬くそそり立ち、すでに腹に触れている。その熱はどうあっても無視することはできない。

 自分も触れてみようか、と考え、リンクの愛撫を受けるサリアも手を伸ばした。

 

 背から移動した手は胸や尻を撫でる。

 負けじとサリアも彼のペニスを握って、初めての感触に動揺しながら力を入れる。知識も経験もないが痛くしないようにと心がけた。その甲斐あってか、リンクは苦しげに声を出し、しかし痛みからではなく、気持ちよさそうな声色だった。

 なんとなくそう感じ取ったサリアは笑みを深める。

 少し大胆に動かしてみて抵抗がないため、やはりそうなのだと確信を持った。

 彼女も見様見真似で愛撫を続け、互いの体を触り合う。

 

 ただ触れ合うだけで、大きな何かがある訳ではない。

 それなのにこの瞬間が、驚くほど心が安らいだ。

 

 リンクの手が優しく体を撫でている。

 胸の小さな膨らみ。小さいがわずかに丸みを帯びた尻。細い太股や、さらには股まで。

 誰にも触れられたことのない場所。毛が生えておらず、つるりとした印象。実際に目で見た訳ではなく、手で触れただけの彼は些か驚いた顔を見せる。

 

 柔らかい。それが最初の感想だ。

 男のそれと違うのは知識として知っていたし、シークにも教えてもらった。しかしこうも違うものか。二本の指で壊れ物を扱うかの如く触れ、胸の鼓動はさらに高鳴る。

 

 男を受け入れたことのないそこはまだ固い。

 彼のペニスを受け入れるには少々危なっかしくて、それがより一層の興奮を生んだ。

 

 「んぅ……そんなとこ。恥ずかしいよ」

 

 消え入りそうな声で呟かれた。

 今は、上手く反応してやることができない。

 リンクはすっかり彼女の股間に触れるのに熱中しており、自分をコントロールできない様子。

 指の動きは優しく、だが確実に、徐々に大胆になろうとしていた。

 

 今すぐ挿れたいと思うのは、浅ましいのだろうか。

 自分の煩悩を追い払うように、無理だと知りながらも、必死になって欲望を押さえつけた。

 

 揉みほぐすように円を描いて撫でてやる。

 それで変わるだろうか。何か違うことをしてやった方がいいのでは。

 考えるリンクはシークとの日々を振り返って、ある時はたと気付いた。

 

 挿入の際、女性器はよく濡らしてやらなければ痛みを感じる。そう聞かされた後、濡らすための方法を教えてもらったのだが、その一つが舌で舐めることだった。クンニリングスと言うらしい。気分を高めるだけで無理ならばそれが手っ取り早いと。

 焦ってはいけないと思っていながらも、自身の我慢にも限界がある。

 ましてや今は女性との初体験、初めての性交。相手はサリアだ。

 何かが起きてしまう前に、間違いが起こらないためにそうするのは悪くないはずだ。

 

 変わらぬペースで愛撫を続ける一方、リンクは提案する。

 舐めたい、と正直に言った。

 少々デリカシーに欠ける発言であろうが、経験がなければ無理からぬこと。加えてサリアはそれを許してしまうほどに心が広かったようだ。

 

 こくりと頷いて、恥ずかしそうに身を捩る。

 二人は体勢を変え始めた。

 

 「これで、いいのかな?」

 

 頬を赤くするものの拒否はしない。リンクの言う通り、彼女が仰向けに寝そべる。

 そして自ら足を開き、無毛の股間を晒し、両膝の裏を抱えた。

 隠されていた場所が露わになる。

 これだけでリンクの鼻息は荒くなり、限界までそそり立つペニスがふるりと震えて、先走りのカウパー液がとめどなく溢れ出てきた。

 

 まだだ。まだ我慢しなければならない。

 自分を律して必死に我慢して、顔を近付けるべく上体を倒した。

 サリアの秘部に唇を触れさせてちゅっと吸い付き、腰が震えるのを見た。

 耐え切れずに彼は右手でペニスを扱き始め、自らを慰めながらクンニを開始する。

 

 閉じられたままの二枚貝。どんな構造かは知らず、自らの舌で感じ取っていくことになる。密かに舌を伸ばす彼は、喜々としてそこを知ろうとしていた。

 

 ぴちゃぴちゃ、小さな音がする。

 やはり触れただけでは解せていない。判断は正解だったのだろう。

 それにしても小さな体だ。本当に挿入できるのだろうかと心配になって、優しくすることを心掛けながらも、舌先は必死に挿入すべき場所を探り、やっとの思いで彼女の膣を探し当てた。

 穴は小さく、閉じられていて、とてもではないがペニスが入るとは思えない。

 今更になって半信半疑になり、その一方でひどく興奮した。

 

 早く一つになりたい。強い衝動が体の奥底から湧き上がってくる。

 このまま我慢を続けるなど拷問に等しい。それでも秘部から口を離さず、舌で舐め解す行為をやめなかったのはサリアに対する気遣いがあり、自分がそこから離れたくなかったからだ。

 

 ただ舐め続けるだけの行為が、なぜこんなにも楽しいのか。

 楽しいと呼ぶのかはわからなくなるものの、とにかく口を離すのが惜しく感じられ、ずっとこうしていたいとさえ思う。初めて口で触れる女性の股間、頭がカッと熱くなって、湧き上がる興奮が止め切れなくなり、自分が淫らな行為をしているという実感が背を押すのだ。

 一度味わえばもう戻れない。そんな一時だった。

 

 熱中した様子で舐め続け、少しでも痛みを和らげられるよう、膣の辺りを丹念に舐め回す。

 そうした甲斐もあってサリアは甘い声を漏らし、そこから快感を得ている姿になった。

 着実に前へ進んでいる。そうして時間をかければきっとできるはず。

 リンクの全身を、更なるやる気が包み込む。

 

 「あっ……んんっ、はぁ」

 

 どれだけそうしていたのだろう。

 羞恥心に包まれるサリアは恥じらいを捨てきれず、股を開く自分にさえ興奮し、誰にも見せたことのない股を舐められて、体内にある熱は尋常な物ではない。

 軽くであれば何度かイっていたようだ。

 時折腰の辺りがビクビクと大きく震えるのだが、それがイっているとはリンクも気付けない。

 

 唾液と内から溢れる体液とで、すでに膣は濡れそぼっていた。

 ようやくそれを目で確認できるようになった頃、だがリンクも限界を迎えている。

 自分の右手でペニスを扱いたせいで、もはや射精寸前。これでは挿入を試みることさえ不可能だろう。触れた瞬間に出てしまうのは自分でも理解できている。

 

 そこでリンクは英断を下した。

 股から口を離してすぐ、体を起こし、サリアの体を跨ぐのである。

 

 次第に大きくなる快感の波に呑まれたせいで、ぼんやりしていたサリアは何をされるか、全く理解できなかった。ただリンクが腹の辺りを跨いだことだけは見えている。

 何も言わずにぼーっと眺めて、彼女は自分の呼吸を整えるので精いっぱいだった。

 

 ペニスを掴んだ右手が今までにないほど激しく動かされている。

 サリアの裸体を見下ろして、その刺激を使い、興奮は大きくなる一方。

 悪びれる様子もなく、リンクは、自らの手で射精した。

 

 「あっ、きゃあっ!?」

 

 突如宙を舞った白い体液。びゅっと飛び出すそれはサリアの胸や腹にかけられた。

 濃厚で量も多く、冷静になれば匂いも強い精液。

 自分の体に付着したその物体に半ば呆然とし、サリアは困った様子で呟いた。

 

 「あ……出しちゃったの? リンク、我慢できなかった?」

 

 肩で呼吸をしていたリンクは、そう言われて初めて罪悪感を覚えた。

 いつかナビィが言っていたではないか。自分だけ気持ちよくなってはいけないと。相手が居て初めてできることなのだから、相手に対する気遣いもきっと必要なはずだ。

 

 今のは彼の自己満足。自分だけで勝手に気持ちよくなった。

 これではサリアに対する侮辱とも取れる。

 あまりにも必死過ぎて、当然そんなつもりはなかったのだが、気遣いが無さ過ぎた。

 猛省する彼は射精直後の倦怠感を感じつつ、少し冷静になったこともあり、どこか落ち込んだ表情を見せる。子供っぽく見え、昔を思い出す様子だった。

 そんな彼に苦笑し、上体を起こしたサリアはぽんぽんと頭を撫でた。

 

 「落ち込まなくていいよ。私ばっかり気持ちよくなっちゃってたもんね。ごめんねリンク。何もしてあげなかったから、辛くなっちゃったんだよね」

 

 昔からその表情に弱かったという理由もある。

 落ち込まないよう、優しく声をかけて、昔のように頭を撫でてやる。

 その姿は何も変わらず対等な物だ。

 彼女の優しさが嬉しくなり、過去を思い出したこともあって、リンクの顔には笑みが戻る。

 

 「私、何をすればリンクが喜ぶかわからないから、して欲しいことがあったら言って? やっぱり任せてばっかりじゃだめだと思うから。力を合わせなきゃいけないんだよね」

 

 それはこれからのことを言っているのか。或いは先を見据えた考えだったのかもしれない。

 ただリンクにとっては純粋に嬉しい気遣いで、素直に頷くとすぐに答えを出す。

 

 挿れたい、というのが彼の要望だ。

 一度射精したとはいえまだ足りない。もっと彼女を感じたいと思う。

 欲望は収まるどころかさらに倍増するかのようで、我慢できない彼はサリアを抱きしめ、恐る恐るとだが唇を塞ぐ。彼女は嫌がらずに受け止めた。

 

 ちゅうっと音を立て、数秒。顔を離した時にはどちらも笑顔になっており、答えを待っていたリンクを見つめ、微笑むサリアが小さく頷いた。

 再び彼女の体を気遣い、痛みを感じないよう、胡坐を掻くリンクの上にサリアが乗った。

 

 「んしょ。重くない?」

 

 重くないと即座に告げる。むしろ軽過ぎるほどだ。

 肌をぴたりと合わせて正面から抱き合い、二人の性器が触れていた。

 まだ挿入には至っていないが、今の環境でするのならこれが最も適した体勢だろう。そう思ってのことだったがサリアは疑問を抱いたらしく、可愛らしく小首をかしげて尋ねる。

 

 「このままするの? 寝転んでするのかと思ってた」

 

 確かに彼女の言う通りだ。正直なところ、直前までリンクもそう思っていた。しかしそれなりに硬い切り株の上はベッドとは違い、彼女の背に痛みを与えてしまう可能性もある。それを恐れた彼はシークに教えてもらった体位の一つを選んだのだ。

 

 座ったままで抱き合い、自分が下になればサリアが傷つくことはない。

 そう説明すれば彼女もリンクを心配するが、その必要はないんだと告げる。

 

 今はとにかく、一つになりたい。

 ここで中断してベッドのある場所まで移動することは不可能である。そうやって素直な心情を吐露すればサリアも何も言えないのか、照れたように笑って頷くだけだ。

 そこまで強く求められて細かなことは言えないだろう。

 彼女も少し前からずっと、一刻も早くリンクが欲しくて堪らなかった。

 

 「それじゃあ、いれる? どうすればいいかな」

 

 腰を上げて、と要求して、切り株に膝をつくサリアが少し体を上げた。

 リンクがわずかに腰を振ると二人の性器が擦り付けられ、にちゃりと体液が混じり合い、長く糸を引いて一瞬繋がる。

 

 もはや我慢の限界だ。

 リンクは右手でペニスを支え、左手でサリアの腰を下ろさせ、膣に亀頭を触れさせた。

 

 「あっ……んんっ」

 

 少しずつ押し広げるように、ゆっくり腰を下ろさせていく。

 ペニスは、着実にサリアの膣へ入っていた。

 まだ固さの残るそこだがしっとり濡れていた甲斐はあり、想像よりずっと痛みは少なく、ずるずると呑み込まれていく様子で奥へ進む。中は熱く、きつい締め付けでペニスを掴み、今まで味わったことのない感触を硬い肉棒へ叩きつけるようだ。

 

 頭を振って、リンクが思わず声を出した。

 こんな世界があることを知らなかった。その衝撃が、彼の呼吸を一瞬で乱す。

 

 受け入れるサリアもまた、平常心を失くさずにはいられない。

 自分の体内に埋め込まれた異物。熱くて硬い、長い棒。しかもただ長いだけではなく、意外にも太くて、先端は閉じた道を押し開くべく、特に強い力を感じる。

 

 リンクと一つになった。

 その感動が彼女の体を大きく揺り動かして、とてつもない衝撃を生み出す。

 気付いた時にはすでに遅く、サリアは絶頂へ到達していた。

 全身がぶるりと震え、膣内の肉ひだまで激しく動き、さらにそれだけでは済まない状態となる。

 

 「あっ、あぁっ、だめぇ。リンク、ごめんっ。うっ、うぅぅ……」

 

 ぶるぶる震える彼女は必死でリンクにしがみつき、その肩口に顔を埋めた。その直後、腰の辺りに温かい水がかけられ、どうやら小便を漏らしてしまったらしい。

 凄まじい快感で体の制御ができなくなり、またその放尿さえ驚くほど気持ちが良い。

 かくかくと浅ましく腰を振るサリアは、淫らな表情で小さく喘いだ。

 

 「ごめんね、ごめんねリンク。かかっちゃってる、よね。でも、止まらないの。んんんっ、きもちいい……!」

 

 謝り続けながらも腰の動きは止まらず、放尿も続いた。

 内側から全身に纏わりつく快感が中々引かない。消え去らない。

 イキ続けているらしいサリアはその間もリンクのペニスを刺激していて、彼自身も耐えているのが辛くなり、必死に歯を食いしばって耐えなければ今にも射精しそうな状態だった。

 それも嬉しくはあるが、せっかくの状況。もっと楽しみたいと思うのも当然の思考。

 リンクは耐え抜き、改めて楽しむために我慢を続ける。

 

 やがてサリアが落ち着いた時、リンクが座る切り株は小便で濡れていて。

 冷静になって恥ずかしくなったサリアは顔を真っ赤にしていた。

 呼吸を乱しながら汗を掻き、動揺した声で、辛うじて聞き取れる声で話し出す。

 

 「うぅ……ごめん。汚いよね。えっと、どうしよう……」

 

 構わない、と考える間もなく言う。それにすごく興奮した、とも。

 その言葉を聞いてさらに羞恥心が増したらしく、もじもじと様子が変化する。

 

 「そ、そっか。えっと、うん……そうなのかな。リンクも大人になったってこと? 私にはあんまりわからないけど、でも……喜んでくれるなら、いいかな」

 

 半信半疑ではあるものの、恥ずかしそうに微笑んだ。

 サリアの顔を見てリンクも興奮し、両手で彼女の尻を掴んで、ぐっと持ち上げた。

 落として、腰を突き上げて、暴発寸前のペニスで思い切り奥を叩く。

 

 突然の行動でサリアが目を見開いた。

 全身に走る鋭い感覚。どうやらそれもまた先程と同じ快感のようだが、種類がまるで違う。電気のように一瞬で全身を駆け巡り、あまりの強さに訳が分からなくなって、呼吸もままならない。大口を開いて唾液が垂れてしまい、体ががくがく震えていた。

 それを見ながら、リンクは尚も腰を動かす。

 

 腰が巧みに上下へ動いて、ペニスの出入りが繰り返される。狭い膣を縦横無尽に暴れ回り、こうなればもはや気遣いなど考えている暇もない。

 ただ一心不乱に射精へ向けて全力で動いた。

 サリアが悲鳴を上げる暇もなく、余裕すら失われている。されるがままに声が漏れ出た。

 

 「あぁっ、うぅっ、はぁぁぁっ……!?」

 

 力のない嬌声が口をついて出ていき、悲鳴とも思える様子で途絶える瞬間がない。

 さっきよりも凄い。最初からずっとイキ続けていて、混乱の中でも幸福感を感じている。

 強く求めてくるリンクの愛を感じていた。

 それだけでなく途方もない快感によって苛まれ、幸福とも、辛いとも言える状態。

 少なくともこんな体験は生まれて初めて味わって、訳が分からないのも当然だ。

 

 サリアはリンクの首に両腕を回し、強く抱き着いた。

 決して離れぬように、己が持つ全ての力を使って抱きしめ、自分からも腰を振り始める。そうするとどうだ。自然と涙さえ流れ、呼吸すらできぬほど絶頂を感じる。

 

 リンクも全力で腰を振り続け、ペニスはぐりぐりと膣内を強く刺激し、ひどく喜んでいる。

 だがそう長くは続かず、あっと思った瞬間には射精してしまっていた。

 

 半ば反射的に、本能からの行動だったかもしれない。サリアの体をぐっと抱き寄せ、ペニスが一番奥まで突き刺さり、その瞬間に射精が始まる。

 勢いよく飛び出した精液は当然サリアの膣内へ注ぎ込まれる。

 あぁっ、と甲高い声。悲鳴のようなそれは確かに嬌声で、彼女の顔に笑みが戻る。

 

 体感としては何分続くのか、というほど長い射精だった。

 膣内に出された精液が溢れ出てきて、ペニスを伝って外まで出てくる。

 気にする余裕もない。リンクとサリアは互いに強く抱きしめ合い、呼吸は乱れ、大粒の汗を全身に掻き、時間は短かったかもしれないが凄い性交だったと振り返る。

 一つになった自分たちを包むのは、大きな疲労と幸福感、そして凄まじい快感だった。

 

 呼吸も落ち着かぬ内から、のっそり動き出した二人が顔を寄せる。

 どちらからともなく触れるだけのキス。

 心地良いそれは後に舌を絡め始め、落ち着くためではなく互いを感じるために続けられた。

 

 やがて唇が離れた時、しばしの静寂。

 森の静けさを近くに感じ、見つめ合う二人は、言い知れない寂しさを感じていた。

 

 「ありがとう……あなたのおかげで、私は森の賢者として目覚めることができました」

 

 口調が変わって、蕩けていたはずの声に少し冷静さが戻ってくる。

 来るべき時が来た。それを知ってリンクは表情を歪め、分かり易くも寂しがる様子を見せる。対するサリアは苦笑して、仕方ないとでも言うかのように語った。

 

 「そんな顔しないで。大丈夫。私はずっとリンクの傍に居る。ちょっとの間、会えなくなるかもしれないけど、これからもずっと……いつまでもリンクの友達だよ」

 

 そう言ったサリアの体は、気付けば光の粒子に変化しつつあった。

 体の端から徐々に、少しずつ光に変わって、空へ舞う。

 

 別れの時が来た。

 森の賢者として覚醒した今、隣に並んで行動することなどできない。

 二人にはそれぞれ役目があり、異なる場所で、互いに力を合わせる必要がある。

 ここで別れる必要があった。そうなると理解しているため、サリアは彼に笑顔を見せる。

 

 「私があなたを守るから……負けないでね、リンク」

 

 最後の最後まで、リンクは彼女を強く抱きしめて離さなかった。しかしやがて、サリアの体はその場から消えてしまい、後には緑色に輝く光だけが残る。

 腕の中から彼女の姿が消え、リンクは一人、裸でその場に取り残された。

 

 両腕は空を抱きしめたまま、しばらく動き出すことができなかった。

 必要なことだ。だが、やはり寂しさは拭えない。

 

 少し経つと見守っていたナビィがリンクの下へ赴き、穏やかな声で語り掛ける。

 

 「頑張ろうね、リンク。力を貸してくれるサリアのためにも、ガノンドロフを倒さなくちゃ」

 

 うん、と頷いて答える。

 立ち止まる訳にはいかない。サリアだけではない、多くのものを背負っているのだから。

 それでもやはり、胸の内には言いようのない寂しさが広がっていた。

 

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