自由な燕
ひどく満月が美しく、同時にどこか怪しく見える夜だった。
時間帯は深夜の頃。都心の辺りであっても人の姿は徐々に減り、静寂が町を包みこむ。当然住宅街の方になればさらに静けさが増し、家屋が少ない山間の方ではそれよりもさらに静けさが大きい。
とある技術屋はそこに居を構えていた。
元は無料奉仕のエア・トレックサポートチーム、
と言っても客などほとんどいない。昔馴染みが数人やってくるくらいのもの。
中でも厄介なのは予約もせずに必ず深夜にやってきて、勝手に作った合鍵で彼の家へ入り、無理やり叩き起こしてくる人物であった。
彼の家であり店でもあるそこはボロ小屋をわずかに改装しただけのこじんまりとした場所だ。一階にはガレージのみ、外に設置された階段から二階へ上がって扉を開ければ狭苦しい部屋。あらゆる物が雑多に置かれた一室で、ベッドは窓に面した壁の横に置かれている。
その上で、踊るように動く人影があった。
明かりのない薄暗い部屋に差し込む月の光。まるでスポットライトに照らされるようで、ベッドが軋む音をリズムとし、裸体で跳ねるように腰を上下させる。その下には裸の男が寝そべっていた。上に居る女性と違って一切動こうとはしていない。
どれほどそうしていたのだろうか。玉のような汗が肌に浮き、股を濡らす液体がシーツをぐっしょり濡らしている。
彼らは時も忘れて繋がり合っていた。
女は尻にまで届く桃色の髪を持つ、やせ細った美しい容姿である。それでいて出るべきところは出て、ひどく魅惑的な、一方で若々しい外見をしている。脚は長く、腰はほっそりと括れを持ち、胸はゆさりと揺れるほど。男の胸に手を置いて甘える様子を見せながら、一心不乱に腰を動かしている。主導権を持つのは彼女だった。
男は短髪で長身痩躯、筋肉質な肉体をしており、技術屋としてだけでなくライダーとして走ることができる筋力を持つ。珍しい部類の人間であった。
渇いた肉の音を室内に反響させ、交わりは数時間をかけて丹念に行われる。滾りを見せるペニスがほぐれた膣の中で暴れまわり、体液を掻きだしながら肉のひだを踊らせる。辺りに散らばった体液は二人の物が混じり合ったそれであった。
何度か果てようとも女が満足せず、今や半ば無理やりに彼の上で舞い踊る。
またも男が果てた。女の体内に精液が注ぎこまれ、満足した女がわずかに背を震わせる。
その後、力尽きたように男の胸板へ頬を預けた。倒れ込んだ彼女は満足した様子で微笑み、甘える素振りで頬ずりしていた。
乱れた呼吸が室内で響く。しばらく黙りこんだ後、呼吸を整えた男が声を出す。
「いつも言ってることなんだけどさ。俺は風俗嬢じゃなくて調律師だ。用もないのに来るんじゃねぇよ」
「ん……だからいつも言ってるでしょ? 彼女にしてって。聞いてくれないシギが悪いんだからね」
女らしい声色と表情で、男の名が呼ばれた。
シギ。本名ではなく鳥から取って名乗っている名前。彼は言わばコードネームのようなそれしか他人に伝えなかった。そのため彼の本当の名前を知る者はいない。
生まれも育ちも過去の多くが謎のまま。本人は決して語らず、周囲にも詳細を知る者はいない。
それは今抱き合っている女も同じだ。
燕のシムカ。広く名が知られているライダーで腕は一流。いつからだったかエア・トレックの調整をシギに任せ、事あるごとに彼へ付き纏っている人物でもある。合鍵も勝手に作り、頻繁に彼を訪ねては、隙を突いて彼と体を重ねるのが習慣。それでは性質の悪いストーカーではないかと本人に諭されたところで態度は変わらず、今夜もそうしている。
幸せそうな顔で目を閉じ、胸の内側で響く心臓の鼓動に気を良くしている様子。
しかしシギは行為が終わって、呆れた態度を隠そうともしていなかった。否、そもそも、自ら体を許そうと思っていたわけでもない。寝ている間に無断で入り込まれて叩き起こされ、寝ぼけ眼で居る内に挿入されていただけの話。しかも射精は三度。自分が満足するまで休ませようとすらしてくれなかった。むしろ怒らなかっただけマシだろうと、自分に言い聞かせている。
慣れた調子で桃色の髪を撫でつつ、憮然とした顔で天井を眺める。一体いつからこうなってしまったのか。改めなくとも奇妙だとわかる関係である。
不思議とため息が出た。確かに相手は良い女で、行為に満足したはずなのに、胸の内は晴れていない。やはりストーカーまがいの危険な行動が理由なのだろう。
それにむっとした様子で、シムカが顔を上げてシギに目をやった。明らかに怒っている表情だが、悔しいことに、やはり愛らしい顔である。
「ちょっと、どうしてため息つくのよ。私とえっちした直後なのに」
「レイプだろ、これは」
「レイプじゃないよ、合意だもん」
「合意だったら俺は嫌がってない」
「じゃあ嫌がってないから合意だね」
「おまえの目は節穴か、こら。俺の寝込みを襲ったの忘れたとは言わせねぇぞ。今日で何度目だと思ってる。毎日とは言わないが一週間の内に何度も何度も。俺の安眠が何回妨害されたか知ってるのか?」
「安眠なら私がいっしょの時もしてるじゃない」
「それはまぁそうか……いやいや! そういうことじゃなくてだなぁ」
「もー、せっかくのムードが台無しでしょ。そういうの後にしよ。とりあえず、今はぁ……」
楽しげに笑んだシムカが下腹部に力を入れる。すると膣がぎゅっと締まり、挿入されたままのペニスに刺激を与えた。
思わず声が洩れ、良い反応にシムカの機嫌はさらに良くなる。
無邪気で幼くも見える笑顔は、可憐であり、妖艶であり、なんとも幸せそうでとても美しい。口では色々と言いながら思わずシギも見惚れてしまう。彼女が自覚している通り、好意を抱いているのは嘘ではなかった。
少しばかり萎えていたそれを勃起させるため、わずかに腰を動かす。反応は見る見るうちに起こり、ペニスは瞬く間に勃起した。
やはり男の性は彼女に勝てないのか。
勝ち誇ったシムカが得意気にシギの首筋にキスを落とす。
「続き、しよ。まだできるよね」
「おい、もういいだろ。三回も中に出したんだぞ。ゴムもしてないし、いい加減――」
「おとといは五回だったよ?」
「体調によって変わるんだよ。しかもこの前だって最後はほとんど出てなかっただろ。男には弾数があるんだ。三回もすれば十分過ぎる」
「潮吹きしたことあるもんねぇ。あの時のシギ、可愛かったなぁ」
「うっ、おい……」
くちゃりと卑猥な音が鳴る。
ゆっくり、小刻みに動かす腰使いは卑猥で、眠気に襲われるシギを簡単にその気にさせてしまう。自ら快感を楽しむシムカは笑みを浮かべたまま目を閉じ、没頭するように膣内にある硬い感触を楽しんだ。
「あっ、んんっ、ここきもちい……先っぽ、どう? カリが引っ掛かって……んんっ」
「くっ、そりゃ、気持ちいいけどさ」
「んっ、あっ、ここっ。ここ好きぃ」
ペニスは膣の奥まで入れられ、腰が小刻みに振られることにより、亀頭が子宮の辺りを刺激する。シムカだけでなくシギにも嬉しい動きだった。しかし刺激はわずかで、さっきのように我を忘れるほどではない。すぐに物足りなくなった。
先に焦れたシムカが一旦腰を止め、縋る目でシギの顔を見る。目を合わせないように気をつけていたシギもその視線から逃げきれず、最後には正面から受け止めてしまったようだ。
見つめ合った後では逃げられない。わかっていたのに合わせてしまうのはおそらく彼女の容姿が整い過ぎているせいで、甘え上手なためなのだろう。彼女に勝てる自分の姿など想像できなかった。
「ねぇ、しよ。もっかい私が上でいい?」
「俺は寝たい」
「それはだめ。最低でもあと二回だよ」
「勘弁してくれ。明日だってあるんだぞ」
「どうせお客なんか来ないくせにぃ。はっきりわかりやすく言ってあげるけど、私が仕事とお小遣いあげてなきゃ生活できないでしょ。シギはほとんど私のヒモみたいなものなんだからね」
「……それを言うな」
首筋をぺろりと舐め、顎のラインをなぞるように舌先が動き、唇へ到達する。シムカはシギの唇を一周、舌先で舐めると至近距離で彼を見つめ、悪戯っぽく笑った。
「それにシギの浮気もわざと見逃してあげてるんだから。こんな時くらいサービスしてくれないと」
「浮気じゃなくてあれは調律――」
「言っとくけど、素肌と素肌で抱き合ったら誰がどう見たって浮気だから。今まで何も言わないであげたんだから感謝してよね。それとももっとがちがちに束縛した方がいい?」
「そもそも俺とおまえが付き合ってるわけでもないのに――」
「だったら付き合お。前から言ってるでしょ、恋人になった方がいいって。どうせ今も恋人みたいなものなんだし、シギは私のヒモなんだし」
「ヒ、ヒモじゃねぇよ」
「ふぅん。じゃあ私の調律もお小遣いもいらないんだ。炊事、洗濯、掃除も、それからレアパーツの差し入れとか、ぜーんぶ必要ないってわけ」
「うぐっ」
勝ち誇った顔を見せ、首に腕を回したシムカが強く抱きついた。
決して離さぬと力を込め、脚も絡ませる。その執着は込められた力で嫌というほど理解でき、今までの生活に先程の言葉を重ねられれば、ぐうの音も出ない。習慣とは恐ろしいものだと改めてわかる。
シギは深くため息を吐いた。応じるように彼女の背に手を回す。
「世の中なんでもギブアンドテイクだよ。正常位がいいなぁ。時間かけてじっくり愛して欲しい」
「くそっ、あと一回だけだからな」
「だーめ。最低あと三回だよ。さっきの約束の二回とちょっと傷つけられたから一回追加」
「で、出なくなるって」
「んふふ。私、シギの潮吹き好きなんだ」
押しても退かぬ相手では話し合いもできない。
シギは改めて彼女の厄介さを知り、もはや何も言うまいと体勢を変えた。上に乗る彼女をシーツへ押し倒し、自身が上になる。当然繋がったままで、首と腰に回された腕と脚が一切離れない。
上機嫌そうに笑う笑顔は可愛らしいのに、強行的な態度は悪魔にも似ている。
困った顔のシギだったがちゅうと吸いついてくる膣の感触に負け、シムカの腰を掴むと、気分を変えてゆっくり腰を動かし始めた。
「ん……ふぅ。あっ、その感じ、好きぃ」
「ゆっくりって言ったってな、おまえ今何時かわかってるのか? あと二、三時間で朝になるぞ」
「ふぅ、んんっ、昼まで寝ればいいよ。あっ、どうせ、くふぅん……仕事なんて、ないんだし」
「あぁぁ、それを言われたら何も言い返せない、俺」
「ん、やなこと忘れて、いっしょに楽しもう? 私でいっぱいきもちよくなってね」
落ち込んでしまったシギの頬にキスを与え、ねだるようにシムカが腰を振る。それに応えて少し速度が変わり、ペニスがずるずると膣を出入りした。
抱き合ったまま淡々と突く。時間をかけてじっくりと愛し合う恋人の時間。シムカはひどくこれを気に入り、一晩中繋がっているのも珍しくはなかった。
口では拒んでも一度始まればシギもその気で時間をかける。数分、数十分と繋がったままでゆったり動き、丹念にシムカの膣を味わう。
それだけでなく手で頭を撫で、頬を摘み、乳房を揉む。腰に触れ、腹に触れて、へそに触れる。そうする手つきはやさしいものだ。壊れ物を扱うかのような丁寧さがある。
撫でられながら、手先が器用な技術屋だからか、と思った。
こみ上げる嬉しさを抑えきれないシムカは強くシギに抱きついて離れず、幸せを噛みしめる。
口では色々言いながらも彼はいつだってやさしい。ただあまのじゃくなだけなのだ。彼女がいつも強硬手段に出るのも彼の本心が伝わる気がするだけで、何も自分が性質の悪いストーカーになったからではない。と、本人は思っている。
今も気遣いを感じる腰使いでペニスを出し入れしている。このやさしさが嬉しいと頬は緩み、我慢など少しもせずに正直な気持ちを言葉にした。
「はぁぁ、そこ、そこきもちいいっ。んっ、もうちょっと奥も……」
「あ、ああ」
速度を速めたり遅めたりと繰り返しながら、時間も忘れて耽っていた。
シムカの声は小さく、短く吐かれていたが、徐々に抑えきれず大きくなってくる。
誘うようにシムカの手がシギの手を取り、自身の胸へ運ぶ。大ぶりの乳房がぐっと掴まれ、ぐにぐにと指の動きに沿って形が変わり揉みしだかれる。
腰の動きも止まらず、ペニスが出入りする度に体液が噴き出してシーツが濡れる。シムカの気分はどんどん高まっていった。
もはや我慢の限界。自分の手はシギの両肩を掴み、蕩けた目で彼を見つめる。
「き、キス、キスしてっ。んんっ、もうイッちゃうっ」
シギが彼女の唇を塞ぎ、期待に応えて腰の動きが加速する。途端にシムカの舌が口内に入り込んで彼に絡みついた。
いよいよという瞬間は繋がっていればわかる。ひだの動きが些か変化し、絞り上げるように絞め付けられていた。そのため最後の一押しとすべく、シムカの両乳首を引っ張る。
膣にぐっと力が入った。しかしシギはこれに耐え、シムカだけが限界に達する。
シギの舌に強く吸いつきながら、脚が腰に巻きつき、腕は首に絡んで、決して離れないように抱きついた。
全身が震える。彼女は確かに達した。
くぐもった声が繋がった口の隙間から洩れる。膣の刺激に加えて乳首を捻られたことにより、耐えることもできず、一人で絶頂を感じている。
びくびくと震え、動きが止まった後。止まっていた舌がゆっくりと動き出した。
深いキスを繰り返し、余韻を存分に楽しむ。飽きることなくシギの口内を堪能し、満足したシムカは口を離してにやけた顔で彼の顔を見つめた。
「んふ、イッちゃった……でもひどいよ、シギ。私はいっしょにイキたかったのに」
「よし、あと二回だな」
「違うよ。私じゃなくて、シギがイクのがあと三回。今のはカウントしないからね」
「俺もう寝たいんだ。だから早く二回イッて終わってくれ」
「むぅ、このまま強行するつもりでしょ。だめだよ、あと三回。言っとくけどそれまで絶対離さない――あっ、ちょっ、んんっ」
抗議するシムカの声を無視してシギが動き出す。腰を動かしながら右手が下腹部を伝い、股へ触れて、ツンと立ったクリトリスを撫でた。中指の腹でぐりぐりと捏ね回し、彼女の弱点ともなるそこを重点的に責める。すると見るからに顔が赤くなって表情が途端に変わった。
「あぁっ、だめっ、クリは弱いっ……くふぅん」
「イッたばっかで辛いだろ。いつでもイッていいぞ。ほら、ほら」
「はぁんっ、やぁ、だめっ、もうだめっ……イクっ、イクっ」
再びシムカが達した。今度はしがみつくこともできずに脚をピンと伸ばし、首を勢いよく逸らして長い髪がシーツの上に舞い、衝撃から目が見開かれる。開かれた口からは声すら出ず、呼吸すら一瞬止まっていた。
膣からはまるで小便のように潮を吹き、気付かぬ内にシギの下腹部を濡らす。
そのまま彼女は力が抜けてくたりと倒れ、四肢を投げだした。目を閉じて荒い呼吸を繰り返し、快感の波が引いていくのを待つ。
だがシギは彼女を待つ気はないようだ。
繋がったままでシムカの腰を持ち、半ば無理やりに体の向きを変えさせ、横向きに寝させる。膣内をペニスでぐるりと捩じられるようだった。
この刺激は無視できず、慌てたシムカが抵抗の意思を見せるもすでにピストンは始まっており、さらに押し寄せる波に思考がいとも容易く溶かされていく。
「はぁぁ、あぁぁっ……待って、ちょっと待って、休ませてっ。んん、体が、敏感になっちゃって――」
「だから続けた方がいいだろ。ほらあと一回」
「んんっ、やぁ、だめぇ」
淡々と腰を動かして突く。犯しているかのような感覚があった。
シムカの艶やかな声が断続的に聞こえ、意識せずとも高ぶっていく。彼女を見つめ、月夜に照らされた裸体は汗によってわずかに輝き、驚くほどに艶っぽい。魅惑的な香りが溢れているようだった。
速度を変えずに突き続ける。刺激は着実に彼女から余裕を奪っていき、だが同時にシギからも失せていった。徐々に彼の表情も変わっていく。
水音だけがやけに際立つ。嬌声も大きくなっていき、目は美しい裸体を眺めながらも感覚はいつしか膣を掻き混ぜるペニスに集中していた。
ついにその時を迎えようという時、シギはシムカの腰を強く掴んで一気に速度を速める。
肉がぶつかる音が大きくなった。もはや我慢することなどできず、二人は叫ぶように声を出す。
先に限界を迎えて達したのはシムカだった。脳天まで貫くような快感から頭が真っ白になって、膣の中がぎゅっと締まり、ぶるぶると痙攣するかのように肌が震える。長い髪を振り乱して汗が飛び散った。
続けてシギが達した。ペニスを膣に埋めたまま射精が始まり、奥まで精液が注ぎこまれる。もうすでに今夜だけで四回目。自分でもずいぶん薄くなっていると実感があったが、受け止めるシムカは何とも満足そうな笑みを浮かべていた。くたりと力なく倒れたまま精液の感触を受けて膣が律動するように動く。ペニスをさらに扱こうという動きだった。
射精が終わってもまだペニスは抜かれず、半ば力を失くしつつ、ゆっくり前後に出し入れが繰り返される。続けて始めるためであった。
またシムカの体の向きを変え、うつ伏せにさせる。手で尻を掴んで掲げさせ、バックの体勢でピストンをゆっくり始めた。
シムカは嬉しそうに、というよりも幸せそうに小さな嬌声を発し、嫌がる素振りはまるで見せない。シーツを強く掴みつつ、自らも腰を上下に振っていた。
「うんんっ、はぁ、また、イッちゃった……あんっ、あんっ」
「ハァ、あと一回イッたら終わるからな」
「んあっ、だめぇ。もっと、もっとしたい……」
「無茶言うな。こっちはもう色んな意味で限界だってのに」
そう言いながらもシギの腰は止まらず、両手で肉付きの良い尻を力強く掴み、円を描くように膣の中を刺激した。
シムカは突かれる度に甘い声を発し、目を閉じて快感に没頭する様子。膣の中が掻き乱されると全身の力が抜けて抵抗できない。これが至福の瞬間だった。
彼と出会ったが故にすでに慣れたと言っていいが、もはや抜け出せない場所。彼の部屋で、彼のベッドで、彼と二人きりで抱き合う。これほど心が躍り、体が疼き、そして我を忘れて声を出すことなどない。最高に気持ちいいと思える瞬間である。
二人は飽きることなく行為に没頭していた。汗と体液でひどい状態になったシーツが微塵も気にならず、今ばかりは最高の快楽を与えてくれる相手のことしか考えられなかった。
「はぁっ、んっ、あっ、あっ――!」
「うくっ、また……」
またも限界を迎える。
今度はほぼ同時に絶頂へ達し、再び膣内に精液が注ぎこまれた。シムカが唇を噛み、きつく目を閉じて首を反らせる。
緩やかに何度か出し入れを繰り返した後、腰の動きが止まってペニスが抜き取られる。
シムカが寂しげに小さな声を洩らしたがシギは気にせず、彼女の隣へ寝転ぶ。
体はぐったりと疲れ、強い眠気に襲われて目を開けることすら億劫だ。シギは早々に目を閉じて眠りに就こうとし、脱力する。しかしそれを許さないと言わんばかりにシムカが彼の体にしがみつき、萎えたペニスを膝でぐいぐいと押し始めた。
「ん、もう終わりなの? シギ、もっかい」
「無茶言うな。二回出したんだからもういいだろ」
「約束だとあと一回残ってる」
「それだっておまえが勝手に決めたんだろ。当初の約束は守った。俺はもう寝る」
「えーっ、つまんなぁい。私寂しいなぁ。もっといっぱい愛して欲しいのになぁ」
「おまえな、それはもう脅迫だぞ。とにかく今日はもう終わり。いい加減寝させてくれ」
「んん、こんなに想ってるのに無視されるなんて、私かわいそぉ……」
「だめなものはだめ」
ちぇっ、とわざとらしく言い、懇願をやめたシムカはわずかに移動して彼の股間に頭をやる。互いの体液に濡れたまま萎えたペニスをぺろりと舐め、慣れた様子で口に含み始めた。
シギはわずかに眉間に皺を寄せて反応を見せるが、起き上がるのも面倒で抵抗はしない。どうせもう無理なんだからと彼女のしたいようにさせていた。
「言っとくけどもう立たないぞ。精液も出ない」
「んちゅ、そんなの、やってみなくちゃわからないでしょ」
「俺の体だ、わかってるっての……まったく」
尚も諦めようとしない彼女をそのままに、意識が遠ざかっていくのを感じた。
これはこのまま寝てしまった方が良いだろう。覚悟は決まっており、シギは抵抗なく意識を手放そうとする。この幸福な拷問のような時間を終わらせるには逃げるのが一番だ。
しかし眠りに落ちようとしたその瞬間、股間に鋭い痛みを感じ、噛み潰した悲鳴が口から出た。
もはや寝ていられる状況ではなく、顔を起こして自らの股間を見た彼は、してやったりと笑うシムカの顔を見る。銜えたペニスに弱弱しく歯が立てられており、先程より弱い痛みだがこれが原因だとすぐにわかった。
流石に怒りがこみ上げるも、強く言ったところでどうせ聞かない相手。彼は怒りをぶつけられる場所もなく深いため息をつく。
「おまえ……それはだめだろ。他のことは目をつぶったとしてもそれだけは絶対にだめだろ」
「だってシギが相手してくれないんだもん。おっきくなんないなら手と口で気持ちよくしてくれるとか、おもちゃ使うとか、キスしながら添い寝してくれるだけでもいいのに一人で寝ちゃおうとするんだもん。私結構寂しがり屋なんだからね」
「俺は疲れてるの。で、その疲れさせてる相手がそれを言うか」
「あ、そんなこと言っちゃうんだ。ほんとは私が来て喜んでるくせに」
嬉しそうにペニスを口に含み、ゆっくり頭を振り始める彼女を見るとまだ眠れないのだと納得するしかなかった。
彼女が来て喜んでいないと言えば嘘になるが、それでも限度がある。生活の世話をされて肉体は元気になるかもしれないが精神には些かまずい時間や触れあい方もあるのだ。終始離れない彼女にはどうしたって疲れさせられる瞬間というものがある。
今日も朝まで起きていそうだ。そう考えてシギはまた枕に頭を預け、しかしそれではシムカが怒るだろうと彼女に自分の顔を跨ぐようにと指示した。
まだ空には月が浮かんでいた。
*
日の光を瞼に感じて、意識が浮上してきたのだと気付いた。
眠たげに目を開いたシギは室内が明るくなっていることを知り、幸福な眠りの時間が終わったことを知る。体はまだぐったりと疲れていて回復の兆しは見られない。数時間前に寝たままの状態だとすら思えた。
目を開けた途端に隣で寝る人物がもそもそと動きだす。
「あ、起きた」
肌をぴたりと合わせてくるシムカが顔を覗き込み、視界の中心に現れて微笑む。
どうやらずっと抱きついていたようで、シギが目を覚ますや否や頬に口づけを送り、ちゅっとリップ音が鳴る。
部屋は相変わらずの状態。彼女が居ることも、誰かに起こされるでもなく眠り続けられるのも普段と変わらない。二人だけの寂しいとも幸せとも言える空間だった。
いまだ眠気は晴れないものの、起きた途端にため息をついたシギはシムカの頭を撫で、動物のように頬ずりしてくる彼女を受け止めて目を閉じる。再び眠ることは難しそうだがもう少し体を横たえていたかった。
「今、何時くらいだ?」
「んっとね、多分お昼くらい」
「ハァ、まだしんどい。だからあんなにすんのやめようって言ったのに……」
「もー体力ないなぁ。私まだ全然元気だよ。もっかいする?」
「しない」
「えーっ? 残念」
くすくすと笑う顔は幸せそうなもの。疲れ切ったシギの心境とは違いがあるようだった。
しばらく甘える素振りを見せていたシムカがそっと起き上がり、裸体もそのままにシギを見下ろす。
夜であろうが昼であろうが彼女の美しさに変わりない。堂々と裸を見せる彼女の姿にはどうしても視線が釘付けになってしまう。視線を惹きつけて離さない魅力は健在だ。
それに気付いたシムカはにんまり口角を上げ、自慢げにシギの顔の横に手を置き、わずかに姿勢を低くした。ゆさりと揺れる乳房が目の前にあり、自然とシギの目はたわわなそこに奪われる。シムカの機嫌はさらに良くなった。
「ふふん、そんなに私の体気になる? やっぱりもっかいする?」
「いや、しない。……でもやっぱ、きれいだよなぁ」
「えへへぇ、そうかなぁ。もっと好きになっちゃったでしょ」
「黙ってればな」
「んふふ、またまた。照れちゃって。素直になってもいいんだよ」
腕を曲げて乳房が顔に押しつけられる。上から圧迫するような様子だ。
柔らかい感触が顔を覆い、些か息苦しいものの嬉しい悲鳴である。シギは何気なく手をそこへ伸ばした。横から確かめるように指を埋める。するとシムカは嬉しそうで、嫌がる素振りは一切なく彼へ声をかけた。
「舐めてもいいよ。それとも吸いたい?」
「どっちもかな」
胸を揉みながら乳首を口に含む。シムカはわずかに体を震わせた。
「あんっ……ん、子供みたい。でも好き」
乳首を舌で転がし、乳房の柔らかさを確かめるのに没頭する。指先に力を入れれば簡単に形が変わり、感触が心地よく、不思議と甘い香りすら感じられるようだった。
女体というのは不思議なものだと実感する。抑えられない性欲に突き動かされている時にはさほど感じなかったが、妙に落ち着いてしまっている今なら驚くほど彼女の香りが感じ取れる。そのため胸に触れているだけで普段よりも大きな安堵が胸の内に広がった。
味わうように舌を動かし、赤ん坊のように乳首を吸って、気持ちが子供の頃に戻ったかのようであった。
一心不乱な動きにシムカの笑みはだらしなくなり、与えられる快感で我慢ができなくなってくる。自分でもわかるほど大口を開いて、よだれが垂れていないのは奇跡にも等しい。
気付けば意識していないのに腰が小刻みに振られていた。更なる強い快感を求めるせいか。羞恥心を感じて唇を噛みつつも、ついに耐えきれなくなったシムカが甘い声でシギを誘い始める。
「ねぇ、下も、下も触っていいんだよ?」
「んちゅ、今はいいよ。もうちょっとこっちで遊びたい」
「んっ、あっ、でもさ。ちょっと熱くなってきちゃって――」
「オナニーとかしとけば? いっつも俺が処理してやってんだから、たまには自分で処理しなさい。あ、そうだ。手伝ってやるからオナニーすればいいじゃないか。俺が胸弄って、下は自分の指で弄る。どう?」
「却下。全部シギにして欲しいもん」
「子供じゃないんだから自分で出来ることは自分でしろよ」
「子供みたいにおっぱい吸ってるシギに言われたくないよ、もう」
拗ねるように頬を膨らませたシムカが体を起こした。まるでシギから胸を取り上げるようである。
それを機にシギも起き上がって、まずは時計を確認した。時刻は十三時。昼時であった。
ずいぶん寝たような気もするし、しかし体の内側にある疲労が大して時間は経っていないと言っているようで、なんとも不思議な気分だ。
大きなあくびをするシギはベッドに座ったまま壁に背を預け、眠たげに何度も目を開閉させる。言わば隙だらけの姿であった。
シムカは唐突に彼の唇を奪い、軽く吸いついてちゅっと音を立てる。
触れたのは一瞬。すぐに離れたが頬は赤面した状態、笑顔も何かを期待していて、あからさまな様子にシギがため息をつく。
「先に言っとくけどぼくはもう限界なので出来ません。精液も全然作られてません。射精とか無理です」
「でもでも、ちょっと寝たんだし、一回くらい。ね?」
「やだ。さっき言っただろ、手伝ってやるからオナニーしなさいよ。ほら、こっちおいで」
「んん、違うの。シギがしてくれるから気持ちいいんであって、私が自分でやるのは違う――」
「見ててやるから。シムカのオナニーしてるとこ見たいんだ、な?」
不満そうな彼女を抱きよせ、背後から抱きしめる体勢となった。
嫌がっていたはずの彼女は最初こそ抵抗を見せたが、シギの一言を聞いた途端、ぴたりと動きを止めて反応が変わる。
シギの胸に頭を預け、しおらしい態度で彼の顔を見る。しかし目が期待で輝いていることは一目瞭然だった。どうやらシギが見たいならばと気持ちが変わったらしく、彼の本心を聞きたいと言うかのようである。
シギはチャンスを掴んだとばかりにいやらしく笑った。
「み、見たいの? でも、そんなに面白いものじゃないと思うよ」
「別に面白いから見たいんじゃない。シムカが可愛いから見たいんだよ。自分で弄って感じてる姿、今まで一度も見たこと無いし、見たいなぁ」
「しょ、しょうがないなぁ。そこまで言うなら、しないでもないけど……」
「好きだよシムカ。だから俺が知らないシムカが居るなんて嫌なんだ。どんな姿でも見せて欲しい、俺だけに」
「はふぅ……」
顔を真っ赤に染めて、満足した表情で目を閉じた。吐息はやけに熱っぽく、数秒前の言葉を噛みしめる姿にすら見える。
シギはその彼女を見、これは良い物を見つけたと微笑んだ。
シムカが自分を溺愛しているのは明白。あまりの愛の深さにストーカーなのではないかと感じるほどだ。だからこそ、好きだよと耳元で囁き、愛してると伝えればある程度は言うことを聞いてもらえる可能性がある。それなりの付き合いになるのに今になって新たな発見であった。
こうした思考を持つようになった自分に悲しくもあるが、背に腹は代えられない。腹上死を望む性質ではないのだ。使える手段はなんでも使っておかなければならないだろう。
幸せそうな顔になったシムカは彼の胸に頭を擦りつけている。嬉しい時に見せる仕草だ。わかりやすい姿である。
心中で一種の喜びを噛みしめ、シギもまた微笑んで彼女の頭を撫でる。桃色の長い髪は手触りもよく、普段から触れるのが好きな場所であったが今日は一段と嬉しさが大きいと思えた。
少しの間頭を撫でた後、両手を乳房に持っていく。どっしりと重そうに見えるそれは驚くほど柔らかい。先程も確かめたが触れただけでふるりと揺れた。指を広げて掴めばぐにゅりと手が沈みこむ。
唐突な行動でシムカが小さく声を洩らす。
嫌がっている様子はなく覚悟は決めたらしい。今度こそシギに背中を預けて寄り掛かった。
「じゃあ、いいか? 俺がおっぱい弄ってやるから、自分の指でマンコ気持ちよくしてみな」
「う、うん……でも私、オナニーってあんまりしたことないよ」
「大丈夫、怖いもんじゃないから。それに気持ちいいポイントがわからなかったら俺に聞いてくれ。おまえの体なら大概のことは知ってる」
「そうだよね。えへへ」
シギが彼女の首筋にキスを落としつつ、両手で胸を揉み始める。ぐにぐにと力を込めて揉み、時折思い出したように乳首を指でピンと弾く。慣れが見える動きだった。
対して、シムカはあまり自分のそこに触れたことがない。今まではずっとシギに体を預けるばかりだった。従って幾分恐る恐るといった様子で手が股へ向かっていく。
中指の腹で入り口付近を撫で、わずかに湿っていることを確認する。自分で触るのは驚くほど恥ずかしかった。これほど恥ずかしいのは初めてシギに抱かれた時くらいしか経験がないとも思い出す。しかし羞恥心が大きくなるにつれ、指の動きも速く活発になる。どうやら良いスパイスとなったようだ。
しばし無言で膣の入り口を撫でる。力を入れれば指が侵入してしまいそうな予感があり、それはまだ少し怖く、時間をかけて準備していた。
それを見たシギがシムカの耳元で囁く。小声でやけに低くなった声。反応したシムカの体が小さく跳ねる。
「怖いか?」
「う、うん。まだちょっと早いかも」
「これくらい濡れてりゃ痛くないよ。見てな」
胸を揉んでいた右手が肌を撫でながら下に降りてくる。そのゆっくりとした動きが妙に鼓動を速くさせ、静かにシムカは興奮していたらしい。
シギの指が股を弄るシムカの手に触れ、遊ぶように軽く握った後、その下にあった膣内に中指一本を挿入していく。
確かに痛くない。するりとスムーズに入った指は硬さを感じる男の物で、奥まで進まれると羞恥心がさらに大きくなる。
指は膣内で関節を曲げ、あらゆるところが撫でられた。好き勝手に動く様はよっぽど彼女のそこに慣れているのだろうと感じさせる。必然的にシムカの反応は良い物が露わとなった。
「あっ、んっ、そこぉ……」
「気持ちいいだろ? 次は自分で弄ってみて」
「うぅ、恥ずかしいよ。このままシギが触って。それも気持ちいいから」
「だめ。俺はシムカがオナニーするとこが見たいの」
ぬぽっと指が抜け、透明な体液が絡みついているのがよく見えた。
シムカは目を大きくしてそれを見ていたが、自分の体液で濡れた指が顔の前まで運ばれてくると、おずおずとシギの顔へ視線を向ける。彼はやさしい表情で笑うだけだった。
「舐めて。シムカのマン汁で濡れちゃった」
「い、言わないでよ、そんなこと。んっ――」
言われるがまま、従順に。舌を伸ばしたシムカがシギの指を口内に含む。
フェラチオする時のように、唇をすぼめて指を捕まえ、緩やかに頭を振る。彼の指だと認識すれば抵抗感など一瞬で消え、目は細められて嬉しそうだった。
シギは従順な態度に気分を良くし、そのままの状態でさらに耳元へ囁く。今なら言う通りにしてもらえそうだ。攻めるのならば今しかない。普段の鬱憤も含めて彼女に言葉を贈る。
「シムカ、自分の指入れてみな。ちゃんと見ててやるから。気持ちよくなっていいんだぞ」
「んっ、ふっ――」
恐る恐る、中指が膣の入り口に触れる。そのままするりと内部へ入り込んだ。
初めての感触に体が震えて気分が高まったようだ。思わずシムカは銜えたシギの指に軽く歯を立て、腰を揺らし、驚いたように声を洩らす。
左手で乳房を揉みつつ、シギが彼女の耳を舐める。
傍に彼が居るせいか、気付けば指の関節を曲げて内部を擦っており、確かな快感を得ていた。
自分は自慰をしているのだと、妙に顔が熱くなった。しかもそれをシギに見られている。今や羞恥心のせいで彼の顔も見られなくなって、目を閉じた状態で指を動かし続ける。やめようという気になれないのはやはり気持ちがいいからだ。
自分で自分の体を弄れば、意識しなくても感じるポイントがわかるよう。誰を頼るでもなく気持ちいい場所を撫で、腰が震えて、また愛液が溢れだしてくる。
頭のどこかで冷静な思考がこれは癖になりそうだと感じ取っている。シギに見られていれば自慰も心地いい。
「気持ちよさそうだな。いいもんだろ、案外」
「んんふっ、ふぅ――」
「別にもう指離してもいいんだけど……まぁいいか。喜んでるみたいだし」
右手の指を吸わせつつ、左手で乳首を摘みながら微笑む。体が疲れ切ってもペニスさえ使わなければまだできそうだ。力を入れて乳首を捻ってやり、ほんのわずかに噴き出した愛液に気分を良くする。
シムカも自ら指の動きを速くしているようで、互いにとって利のある状況。新しく発見した幸福だった。
時間も忘れて体を弄る。どうやらシムカの方が没頭しているようだ。
何気なく部屋を眺めながら彼女を感じさせていたシギが空腹に気付いた頃、ふとシムカが指から口を離し、くたりと胸板に頭を預けてシギの顔を見る。目は蕩けて開かれた口からはだらしなく唾液が垂れ、快楽に酔っている様相であった。
「はぁ、だめ、イッちゃいそう……私、オナニーでイッちゃうっ」
「見ててやるぞ。ほら、イケ」
「んっ、んんっ、はっ、あっ――」
速くなった指の動きに合わせてぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴る。
シムカはラストスパートを迎え、全力で指を速く動かし、そして達した。
体が大きく跳ねた後、腰がかくかく動いて快感の大きさを表す。
しばし無意識で腰を跳ねさせ、動きが止まるとぐったりして体が動かなくなったようだ。呆けた顔で中空を眺め、シギに体のすべてを預ける。
この状況に思いのほか気分が良くなり、興奮しているものの自分が一切疲れないで済むシギは喜んで彼女を受け止めた。胸から手を離して労るように腹の辺りを撫でてやる。
一方で気分が良くなったせいか、ふと思いつくことがあった。
耳を舐めながら右手を再度股に伸ばし、今度は中指と薬指の二本で膣に触れ、呆けたままのシムカへ声をかける。
「気持ちよさそうだな。じゃあ俺も」
「ん、ふぇ……? あっ、ちょ、んんっ――」
ずるりと勢いをつけて二本同時に、奥まで挿入する。
余裕を取り戻せていないシムカには強過ぎる刺激。首と背を逸らして見るからに反応を示した。
それだけに悪戯のような楽しさがあったらしい。シギは嬉々として指で膣内を掻き混ぜ、反応の良い彼女を責め立てる。
「んあっ、やっ、イッた、ばっかりなのに……!」
「こうされるとすぐイッちゃうだろ。イケ、イケっ」
「あぁぁっ、だめぇ、ほんとに、イッちゃ――!」
膣からびゅっと潮が吹かれた。
びくびく震える彼女は落ち着きを失くして悶え、腕や脚をバタつかせて必死に動く。しかし動けたのは一瞬で、絶頂を感じた瞬間には脚をピンと伸ばして震えていた。
手の動きを止め、二本の指だけを動かして膣内を弄る。震えが止まったシムカだが正常な思考を取り戻すのには時間がかかった。とどめとばかりに刺激されても明確な反応を示すことすらできず、時折ぴくんと腰を跳ねさせるだけだ。
口の端から唾液を流し、はしたない表情。もはや目が見えているかどうかすらわからない。
ようやく反応できるようになるとシムカの手がシギの手を握って止める。覗き込んでくる顔を見る目はうっすらと涙を溜め、力の入らない表情でぼんやりと見つめていた。
その表情は普段とは違う魅力があって、思わず見惚れる。シムカの反応で気分を高めて膣から指を抜き、濡れた指を再び口元まで運んだ。
「また汚れちゃった。自分できれいにして」
「ん……ふぁっ」
二本とも指を口に含み、シギが動かして口の中を刺激する。
ちゅぱちゅぱ音を立てて指が吸われる。今度は彼女が赤ん坊のようになっていた。達した直後の倦怠感から力が入らず、物も考えられない。ただされるがままだった。
あやすようにしばらくそうしていれば、ようやくシムカも落ち着いてきたようだ。シギの指から口を離し、その手を掴んで自分の胸に押し当て、大事そうに抱える。
大きく息を吸って、吐く。冷静さを取り戻すと脱力した体に幸せが満ちており、しかしそれだけでは満足できないのが彼女であって、またしても甘える声が彼に届けられた。
「はぁ……また、イッちゃった。シギ、やっぱりもっかいしよ。おちんちんちょうだい」
「だから無理だって。体力の限界」
「でもさっきから背中におっきくなったの当たってるよ? ほんとはできるんでしょ」
「勃起しても無理な場合だってあるの。それより腹減ったからメシにしよう。朝飯だって食ってないんだし」
「やだ。もっかい入れてくれるまで動かない」
「ハァァ、まったく。落ち着いたらこれだからな」
胸の谷間にシギの手を挟むシムカは確かに梃子でも動きそうにない。どうしたものかと考える。流石に同じ手は使えそうにない、それではいつまで経ってもベッドから降りられないのだ。先程の手が使えるのはおそらく一日に一回といった程度だろう。なお且つすべてを終了させるには他の手段が必要なようだった。
考えている間に部屋に置かれた固定電話が鳴った。仕事用にと用意したものである。
良いタイミングだとシギが笑う。
仕事を言い訳にすれば流石にシムカも無茶を言えないだろう。そう考えて嬉々とした様子で受話器を取りに移動する。反対にシムカはつまらなそうに眉を寄せていた。
全裸のままベッドを降り、反対側の壁際にある棚から受話器を持ち上げる。
シムカを放っておく状態で会話を始め、久々の依頼にシギの表情は緩んでいた。
「はいもしもし、お待たせしました」
「むぅーっ、シギィ……」
ベッドの上に一人残されたシムカは寂しげな表情で膝を抱える。ずいぶんと傷心した顔だ。
しかし数秒とせずに何かを思いつき、パッと笑顔を咲かせた彼女もまたベッドを降りた。
立ったまま電話の応対をするシギに歩み寄り、背後まで到達すると床に膝をついて、四つん這いの体勢で密かに彼の前まで移動する。メモを取ることに夢中でシギは気付いていないようだった。
前に到達するとようやくシギも気付いたらしく、驚いた表情でシムカの顔を見下ろしていた。してやったりのシムカは嬉しそうに微笑み、何も言わず勃起したペニスの先端を頬張る。すぐにずずっと音を立てて吸いついた。
「おい、こらっ。あ、すいません。いえこちらの話で、ぺ、ペットがね。ちょっと粗相をしてしまいまして」
「む。どうせ私はペットですよーだ」
彼の発言に気を悪くしたシムカはふくれっ面で呟き、亀頭を口に含んでじゅるじゅると音を立てる。まるで受話器を通した向こうに居る相手に伝えようとするかのようだった。焦ったシギが頭に手を置いて離そうとするも、両手で強く腰を掴んでいるため離れない。自然と彼は快感に耐えながら応対することを強いられた。
「くっ、おっ……あぁはい、すいません。大丈夫ですよ、ええ」
「んっ、んっ、んっ――」
「あぁ、今から。ハァ、はい、大丈夫です。ええっ、準備、して、待ってますよ……」
息が乱れそうになるのを堪え、シギが必死に言葉を絞り出していた。その表情が堪らなく愛おしくなり、ペニスから口を離したシムカは立ち上がる。
自ら背中を見せ、前かがみになって尻を突き出すと、股の間から手を伸ばしてペニスを掴んだ。そのまま背面から挿入しようというつもりらしい。
本番はまずいとシギが背を軽く叩くが、シムカは取り合わない。無言で位置を合わせようとしていた。
電話の相手は常連と呼べるほどの付き合いになる人物だが、今日に限ってやけに時間が長引いており、終わらせようとしない。タイミングが悪いとシギの機嫌が悪くなった。これではひょっとするとバレてしまうではないか。
シギの抗議を一切気にせず、シムカの手と腰の動きによってペニスが膣に挿入された。すでに潤ったそこは柔らかくも締めつけが強く、シギの形にぴったり合うよう。奥へ進んでいくだけで歯を食いしばって息を呑んだ。
ずるずると肉のひだを押しのけながら進み、見知った感触にシムカの機嫌が良くなる。幸せそうに目を細め、熱っぽい吐息をゆっくり吐き出していた。
「あんっ、硬い」
「しーっ、しーっ! あ、あぁ、なんでもありません。ただちょっと、ペットがね、今日はちょっと落ち着きがないみたいなんです、はい」
「んふふふ、ペットが動きますよ。ほら、ほぉら」
「うぐっ……い、いえ、問題ありません。はは、全然、全く、なんにも……うっ」
シムカが腰を前後に動かす。自ら卑猥な腰付きでシギを刺激し、ペニスが膣の中を掻き回す。
いつもの行為とはいえ状況が状況だ。絶対に変な声を出すわけにはいかない。ただでさえ数少ない常連なのに幻滅されて逃げられては生活に関わるのだ。
まずいと感じつつもそろそろ電話が切られようとしている。声を我慢するのはもう少しだけ。シギは尻の穴に力を入れて必死に耐えた。
「はっ、はっ、はっ、んっ、きもちい。おちんちん、きもちいい……」
「くぅ、はい、はい。わかりました。それじゃあ、うぅ、また後で」
ようやく電話が切られた。これに安堵したシギは多少荒々しい手つきで受話器を戻し、すぐさま両手でシムカの腰を掴む。
括れたそこを力強く掴んで、狙いを定めて、自ら腰を振って思い切りピストンの速度を速くした。まるで攻撃するかのような素早さである。
途端にシムカは大口を開けて叫ぶように甘い声を出し、怒りを隠せないシギも全力でシムカを責め立てた。
「あっ! あっ! あっ! んんっ、んんんっ、は、激しっ……!」
「このバカっ、いきなり何しやがるんだ! 危うくバレるとこだっただろ! 明らかに怪しまれてたんだぞ!」
「んっ、あっ、あっ、だ、だって……シ、シギが、私のこと、無視するから……!」
「ああそうかよっ。そこまで言うなら相手してやる、もう手加減しねぇからな。客が来るまでおまえのこと犯しつくしてやるっ!」
一度火が点いたシギは妙に荒々しく、昨夜の落ち着きなど嘘のようにシムカの膣を荒らし回った。
腰がぶつかって起きる肉の音は大きく部屋に反響する。ただでさえ二度達したことからどうしようもない快感が体内に溜まっていたせいで、シムカは見る見るうちに気を高めていった。
「あんっ、あんっ、やぁぁんっ!」
「くぅ、おぉっ、出るぞ! おまえが欲しかった精液だ! しっかり受け止めろ!」
「やぁ、くぅ、うあっ――!」
渇いた音が鳴り響き、何度目かで腰がぶつかった直後、動きが止まった。
その瞬間にシギの射精が始まり、膣内に精液が注ぎこまれていく。決して量が多いとは言えないが昨夜の最後よりも多いのは確かである。
すべて受け止め、ぐらりとシムカの体が揺れた。突っ張った両足が面白いほど震え、もはや立っていられない様子。
「んんんんっ、あぁぁぁっ!」
大声を発してシムカの全身から力が抜けた。シギに腰を掴まれたまま床に倒れ込んでしまう。
尻を掲げる余裕すら無くなって寝そべった。それでも腰は離れず、倒れた体勢のままでシギが腰を振り始める。初めての体勢だったがこれが心地よく、全力のピストンだったため凄まじい快感で声が抑えられなくなった。シムカは顔だけ起こして叫び声を上げる。余裕など声の一片にすら感じられず、ただひたすら本能に従う姿であった。
「ああんっ、シ、ギィ……! だめっ、んんっ、すごすぎぃ……! ばかに、ばかになっちゃうぅっ」
「はっ、はっ、おまえが悪いんだぞ。そんなに俺のチンポ欲しいならバカになるまでやってやるよ」
「して、いっぱいしてっ。シギのこと忘れられなくなるくらい、いっぱい、いっぱい犯してぇ」
「ハハッ、よく言うよ。もうすでに俺がいないとダメな癖にっ」
「うんんっ、そうなのっ。シギがいないと、生きていけないのぉ。もっと、もっと愛してっ!」
シムカの懇願に応えてシギは一方的にシムカへ快感を与え続ける。
この後仕事があるというのに手を抜かず、約束の時間は頭の隅に残しつつも、時間をかけてシムカを愛した。
気絶しかねないほどの快楽の渦は数時間に及び、その間二人は服を着ることもなく全裸で、ひたすら体液にまみれて行為を続けていたようだ。