原作再構成的な感じで、一応主人公はイッキです。
南樹は、親の顔を知らない。
幼い頃に知り合いの家に預けられたせいだ。
以来、彼は物心ついても自分の親の顔は知らず、赤の他人を家族と思って育っている。
中学生になった頃。
昔からわんぱくだった彼は一つのものに熱中していた。
世界初のコンピューターを搭載したインラインスケート、エア・トレックである。
コンピュータ制御で4kWの出力が出せる超小型モーターを搭載したこれを履いて地面を蹴れば、それだけで人は翼を得て、まさしく空を飛べることができる。
飛行機やヘリコプターとは違い、個人に翼を持たせることに成功した道具。
人々はこれを“
いつからか樹はこれに夢中になり、暇さえあれば外へ飛び出して空を飛ぶ。
勉強、努力、継続などは彼が苦手とするところだが、好きなものについてなら苦ではない。
毎日飽きることなく空を飛び続ける姿にはいっそ狂気すら感じられるが、本人は至って真剣で、同時に楽しんでもいる。もはや無くてはならないものだった。
しかし時にはそれが仇となり、ミスを犯すこともある。特にそれは日常生活においての問題であって、何度繰り返しても学ぼうとしないのも熱中の証だろう。
小さなレジ袋一つを提げ、A・Tで必死に走る彼は心から焦っていた。
「ハァ、やべぇ、やべぇっ。急がねぇとリカ姉ぇにキレられる……!」
A・Tを始めて数年。力量が上がって彼は風のように走り、住宅街の屋根を蹴りつけ、何度も飛び上がって空の上を走っていた。速度はA・Tを操る“ライダー”の中でも上等なものだろう。特に彼は
しかしそれはそれとして、そもそも気付く時間が遅過ぎた。
そのせいで焦り続けているのだ。
外へ出たきっかけはお使いを頼まれたからだった。
切らしてしまった調味料があるから買ってきて欲しい。ただそれだけの用事。
何気なく引き受けた樹だったが、ついでにとA・Tを入れた鞄を持ったことが些細なミスで、ほんの少しだけと始めた練習が気付けば一時間を超えていた。
風のように走る樹が焦るのには理由がある。
彼には恐ろしい姉妹が四人居た。
南樹が預けられた家、それが野山野家。こちらも両親はおらず、年の離れた四人の姉妹が協力して日々を暮らしており、特に長女は怒らせると最も怖い。
現在の樹は彼女らの支配下にあり、同い年、或いは年下の女の子にさえ頭が上がらない。
空から落ちてきて道路に着地、火花を散らしながら滑って速度を殺す。
気付けば彼の家が目の前にあった。
おそらく帰宅までかかった時間は自己ベストを超えただろう。今までで一番速いはず。などと言っている場合でもなく、玄関の前に到達した彼はA・Tを脱ぎ、鞄に入れていた靴に履き替え、今まで履いていたA・Tは鞄の中に隠して、息を整える。
心を落ち着け、平静を装った顔で横開きの玄関を開けた。
「ただいま~――」
「遅ぇ」
「はぐっ!?」
扉を開けた途端、彼を襲ったのは姉による強烈なドロップキックだった。
腹の辺りを思い切り蹴られ、玄関から外へ弾き出されて樹が倒れる。
両手に持っていた鞄とレジ袋が地面を転がって、同時に彼も地面に背をつけていた。
すっくと立ちあがるのは野山野家の次女、
外ハネが目立つ薄い桃色のショートカットで、パーカーとショートパンツという格好。顔立ちにしろ表に出した脚にしろ、女性らしくてきれいなものだが、どことなく粗雑な様子も感じられる。悪く言うなら粗雑だが良く言えば男らしいとも表現できた。
彼女は腰に手を当て、仁王立ちして倒れた樹を見下ろす。
明確な上下関係にあり、よろよろ起き上がる彼は強く出れない態度で彼女を見た。
「買い物一つで何時間かかってんだ。小学生以下かよお前は」
「ぐっ、ミカンてめぇ、低空ドロップはやめろ……」
「あ~? お姉様に向かって口の利き方がなってねぇなぁ。お仕置きするか?」
「遅れて申し訳ありませんでした! お姉様ッ!」
「それでいいんだよ」
急いで立ち上がってビシッと敬礼する樹に、納得したように頷き、膝を曲げた樒柑は小さなレジ袋を拾い上げ、中身をちらりと確認した。
どうやら買い物は終えたようだ。
その一方で、もう一つの鞄にも気付いており、中身も理解する彼女はやれやれと苦笑する。
「ま~たエア・トレックか? リカ姉ぇに言ってねぇんだろ? バレたら取り上げられるぞ」
「うっ、んなことわかってるよ。だから秘密にしてんだろうが」
「ケケケッ、お前にとっちゃエロ本バレるより死活問題か。お~いウメ~」
しゃがんだ状態で振り返り、樒柑が妹の名前を呼ぶ。すると末の妹がやってきた。
長い黒髪を持ち、少し奇妙な形で大きめの服を着た少女、白梅が現れる。
独特なデザインの人形を腕に抱え、どこか無気力に見える表情。
興味が無さそうな顔で近付いてきて、姉である樒柑に答えた。
「なんでしか、一体。あっ、イッキちゃん帰ったんでしね」
「補給物資だ。リカ姉ぇに持ってってくれ」
「自分で持って行けばいいのに……」
「俺はこれから用があるんだよ。こいつに折檻してやらねぇとな」
「はぁ!? なんで! ちゃんと買ってきただろ!」
「あぁん? 一時間以上も遅れた奴がちゃんと買ってきただぁ? てめぇのせいでこちとら肉お預けされてんだよ。もう一回聞くが、ちゃんと買ってきただと?」
「うぐっ……すいませんでした……」
「つーわけでよろしく~」
「しょうがないでしねぇ。ま、遅れてきたのは事実なので、イッキちゃんが悪いでし」
白梅はレジ袋を受け取り、廊下の向こうへ歩き去っていく。
その間に樒柑は樹の首根っこを掴み、力尽くで無理やり引っ張って歩き出した。
行先は違い、階段を上って二階へ向かうのである。
「ちょっ、待てってっ。これから晩飯……」
「あーあー聞こえなーい」
引っ張られるように歩かされて、辿り着いたのは樹の部屋だった。乱暴に扉を開けて押し入り、足で扉を閉めると樒柑はすぐにベッドへ近付き、ぐいっと投げるように樹を倒す。
ベッドに四肢をつき、樹は戸惑っていた様子だ。
慌てて振り返るとにんまり笑う樒柑が居る。
嫌な予感がする。彼女はゆっくり近付いてきた。
樹の両肩に手を置き、力を入れて押し倒すと、彼の上に跨るのである。
特別なことではない。これが普段の光景だった。
彼女は、彼女だけでなく他の姉妹もだが、躾と称しては樹の体に教え込む。長女曰く、性の暴走で道行く人を傷つけないためらしい。そんな理由で、家族以上の繋がりがあった。
「さぁ~てお仕置きの時間だ」
「ま、待てよ。俺そこまで悪いことしてない……」
「あ? なんか言ったか? 腹を空かせたお姉様を待たせまくった弟くん」
「……い、いえ、なんでも」
笑顔のままで威圧感を発し、無理やり黙らせた樒柑が樹の両頬を掴む。
そしてぐっと力を入れて唇を塞いだ。互いの唇が触れ合い、柔らかい感触と、すぐにぬらりと動き出す舌が彼の唇を割り、口の中にまで侵入していく。
樹は苦しそうな声を出した。
だがそんな表情を眺める樒柑は嬉しそうな顔になり、さらに舌を躍らせる。
「ンっ、むっ、ふっ……」
深いキス。
吐息が漏れて、一つになる。
樒柑は喜々として舌を動かし続け、樹はされるがまま。一方的な光景だった。
今や上に乗るというよりのしかかるという風にも見える。樒柑は彼の全てを支配するように、深く甘いキスで徐々に警戒心を溶かしていって、時間をかけて固さを取っていく。
もはや慣れたものだ。
本人が否定したところで、樹は樒柑の所有物であり、玩具であり、愛玩動物である。それでいて兄弟ながら恋人のようであって、家族でもある。とても言葉にはできない複雑な関係なのだが、ただ彼女本人が思っている以上に深く愛してもいた。
樒柑の目つきが見る見るうちに変わっていく。
苦しむ顔の樹を見下ろす、それだけで興奮してしまい、全身が熱くなる。それこそ頭の天辺から足の指先まで隙間なく。彼に対する異様な愛情が為す状態だった。
彼女の目は蕩けて喜色を表し、興奮は荒々しくなる舌の動きでも明らかだった。
初めこそ甘く、だんだん乱暴になっていった長いキスを終えて、唇が離れる。
どちらも呼吸を乱し、暗い部屋に木霊した。
至近距離で見つめ合う。
相変わらず樒柑は樹の頬を掴んでいて、時折ぎゅうっと力を入れては顔を動かして遊んでいる。どうやらそれが気に入ったらしい。
乱暴な手つきは彼女にとって最大限の愛情表現。
樹が苦しむ度、困る度に、嬉しくなる樒柑はもっと虐めてやりたいと思うのだ。
「あーあ、チンポ勃っちゃった。キスだけなのに。しかもお姉様相手にさ」
「し、しょうがねぇだろ。こんなの、誰だってそうなる」
「また口答えか、コラ」
「いや、今のは別に口答えじゃ……!」
「あーうっさい」
再び樒柑がかぶりつくように唇を塞ぐ。強く吸い付き、舌を出して舐め始めた。
今度は唇や口内だけに飽き足らず、そこから這い出て肌を撫で、顔中に舌を這わせる。まるで自分のものだと言わんばかりに、頬や鼻先、目玉まで舐めて、抵抗する樹を力で押さえ込む。
「わっ、おまえ、目は……!?」
「うるせぇって。あとパンツ下ろせよ。どうせヤラれんだから」
舌や唇で触れながら耳へ移動して、まずは耳の中を舐め、次に耳たぶを甘噛みし、いつまで経っても動かないため歯を立てて噛んでやる。ぎゃっと悲鳴が漏れ、樹は手を動かしてズボンとパンツを脱ぎ始めた。その姿もやはり主従関係のものだ。
下半身が露わになり、勃起したペニスが若々しく反り返る。
今は樒柑の下腹部に触れていて、いつもながら元気な姿。彼女は笑みを深めた。
耳を舐めながら右手が下に降りていく。
外気に触れたペニスを掴み、その感触を確かめた。
亀頭は膨らみ、陰茎はガチガチに硬くなって、勃起した拍子に皮が剥けている。これも彼女らに触られた結果のようで、もはや扱いは慣れたものだった。
樒柑は男を作ったことがない。処女は樹にくれてやり、興味を持つ異性も彼だけだ。
当然、ペニスを肉眼で見るのも触れるのも彼のものだけで、それだけに愛着を持っている。
いつものように硬くなった陰茎を握り、上下に擦って反応を窺う顔はひどく楽しげであった。
「ふぅ、うっ……」
「なぁ、今日出したか?」
「い、一回……学校で、リンゴが……」
「またか。あいつはずりぃよなぁ。学校のトイレとか屋上でセックスしてるわけだろ?」
「はぁ、あぁっ……!」
「そうだ、今度忍び込んでみようぜ。たまにはベッド以外の場所でシタイだろ」
「い、家でだって、ベッドだけじゃねぇだろ……うぐっ」
「バーカ。そういうのとは違うんだよ。学校でヤることに意味があるんだろうが」
上機嫌に陰茎を擦る樒柑は樹が苦しそうにする顔をじっと見つめていた。
自分がどんどん機嫌を良くしていくのがわかる。
快感に打ち震え、射精感が強まり、眉間に皺を寄せて歯を食いしばる。そんな樹の顔が、可愛く見えて仕方ない。目を輝かせる樒柑はその表情が大好きだった。
自然と手を上下させる速度が速くなり、さらに強く射精感を感じさせようとする。
「うぐっ、うぅ……!」
「ほらほらぁ、きもちいい~きもちい~」
「あぁっ、で、出そう――」
射精感が高まり切り、樹がもう達するのではと考えた時、ぴたりと手が止まった。それだけでなく陰茎から離れて一瞬でどこかへ行ってしまう。
射精の寸前で見放されてしまう絶望感。
寂しさからか、反射的に顔を上げてしまった樹は樒柑の顔を見て、楽しげな様子に気付く。
「あ~ごめ~ん。イキたかった? 全然気付かなかった。ごめんな~」
「お、お前、そんなのありかよ」
「だから悪かったつってんだろ。次はイカせてやるからよ」
そう言って樒柑は体を起こし、彼の隣に座って見下ろした。
「その前に全部脱げ。上もだぞ。全部な」
「あのさぁ、もう晩飯――」
「いいから早くしろよ。イキたくねぇのか?」
「……イキたいけど」
「じゃ早くしろ」
言った直後に樒柑が服を脱ぎ始める。パーカー、ショートパンツ、他にも下着は全て脱ぎ捨て、裸になった。脱いだブラジャーとショーツは挑発的に樹の体の上に置かれる。
樹もまた、のろのろと自分の服を脱いでいく。
太股の辺りに下ろしただけだったズボンと下着、それからシャツも脱いで、こちらも裸。
全裸になった彼を見下ろして、樒柑はいそいそと場所を変える。
自分の股間が濡れているのがわかる。触られてもいないのにひどい状態だ。
興奮はもはや抑え切れず、考えることは最初から一つ。
樒柑が樹の足の間に入った。
慣れた様子で両足首を掴むと、ぐいっと持ち上げ、脚を広げさせる。
その間に体を置いて、股間を触れ合わせた。正常位を男女逆にしたような体勢である。
樒柑は常にこの体位を好んだ。樹を責め立て、一方的に攻撃する快感に酔いしれる。
いつものことであり、樹は不服そうにしながら、無駄な抵抗はしない。どうせ抵抗しても押さえつけられるだけだとは体験した上で理解していた。
その不服そうな顔さえ興奮する材料になり、二人の性器がくちゅりと触れる。
あっ。と樹が声を漏らした。
大体の事情は察するが、樒柑は敢えて悪戯っぽく尋ねる。
「どうかしたか?」
「いや、ゴム……してないし」
「ふ~ん。して欲しい、と」
「そりゃそうだろ。リカ姉ぇだって、それだけはちゃんと守れって」
「でもだめだッ」
「あっ!?」
ずるりと入り込む。
腰を動かしただけでペニスが膣に挿入されてしまい、コンドームは付けられておらず、生身の感触が直に伝わる。樹の声は悲鳴でもあり、嬌声でもあった。
しとどに濡れた感触が彼のペニスに絡みつく。
初めてではないものの、久しぶりの感触に彼の腰はがくがく震えていた。
「あっ、はっ――!」
「別に初めてじゃねぇんだし、いいだろ別に。つーか今更ゴムとか生温いこと言ってんな」
「うおおっ。やっ、べぇ……!」
「はぁ、チンポ、ビクビクしてる……」
うっとりした顔で樒柑が彼の膝を掴み、大胆に腰を振り始めた。
慣れているため男女が逆になっても正常位として機能する。
上が樒柑で、下が樹。
男の方が一方的に攻められている状態でぐちゃぐちゃと音が鳴った。
樹が眉間に皺を寄せて目を閉じ、快感に耐えながら震えている。
樒柑からすればその表情が堪らなく愛おしい。気付けば彼女は自分でも気付かぬ内に、半開きになった口の端から涎が漏れて、目はとろんと呆けていた。
激しく腰を打ち付けながら上体を倒す。
樒柑が樹の唇を奪い、乱暴に動く舌で舐めながら声をかけた。
「はぁっ、おまえ、またそんな目ぇしやがって……こっち見ろ。舌出せ。あと、絶対動くなよ。俺が動いてやるからじっとしてろ、なっ?」
「うぅぅ、ミカン……」
「あぁぁもうっ、そんな声、出すなってぇ……♡」
高ぶった樒柑は彼の首筋に顔を埋め、ガリッ、と歯を立てて噛みついた。
当然そこには歯形が残り、痛みも生じるわけだが、激しい腰使いが樹の言葉を止める。
ペニスから感じる快楽が彼の抵抗を殺し、今は嬌声以外の声が出そうになかった。
それをいいことに樒柑は次々証を刻んでいく。
痛みが生じるほど強く手首を掴み、首筋や頬や耳たぶを噛んで、至る所にキスマークを残す。
彼を愛したという証明。自分が抱いてやったのだという証。これらを肉体に刻み込むことが彼女の趣味の一つでもあって、喜々とした動きは止めることができない。
同時に痛みを感じさせることが趣味でもあって、樒柑の動きは非常に大胆だった。
射精の時が近付いている。樹の限界まで手に取るようにわかる彼女はちゃんと理解していた。
樒柑自身もそう長く耐えられそうになくて、耐える力が歯型となって肌に残されていく。
腰を叩きつける速度がより一層速くなり、言いようのない音が室内に広がっている。
今となってはお仕置きだとか折檻などというものはどうでもいい。そもそも口実に過ぎない。
樒柑は蕩け切った顔で樹にキスをして、最後の瞬間へ駆け上がっていった。
「はぁっ、あぁっ、ミ、ミカン……!」
「オラッ、イケっ! くぅ、うっ、ううっ――!」
上から押し潰すようにして力を加え、弾む仕草でペニスが膣を貫く。一突きする度に樒柑の膣から飛沫が飛んで、どうやら彼女はイキ続けているようだった。
ラストスパートを迎えた腰の動きはしばし続き、樹もぐっと歯を食いしばる。
その瞬間に射精が始まり、彼女の膣内に精液を吐き出して、思わず樒柑の背が反り返った。
びゅっ、びゅっと吐き出される動きに合わせ、彼女が震える。
いつの間にか樹の頭を胸に抱きしめ、少し小ぶりな乳房の間に顔があり、きつく目を閉じて苦しげな顔をしている。だが頬は紅潮しており、辛いのではなく幸福そうにも見えた。
大量に吐き出し、しばらく続いた射精が終わった。
樹の頭を離した樒柑は彼の上に倒れ込む。
体は一つになったまま。肌を合わせて寝そべり、荒れた呼吸が耳に入ってくる。
汗を掻いた肌が吸い付くようで、ただ脱力して寝ているだけで心地いい。
二人とも目を閉じ、独特の疲労感に身を委ねながら動かなかった。そっと動いた樹の腕が樒柑の背に回され、柄でもなく抱きしめる仕草で、気付いた樒柑が微笑む。
抱かれるのは好きではないが思ったより気分は悪くない。
ふーっと大きく息を吐いて。
倦怠感はまだ残るもののセックスの快感で気分は良くなった。
樹の胸に頭を預けた樒柑がそのまま動かず口を開く。
「あ~出たなぁ。すげぇ出てきた、ザーメン。つーか出し過ぎ。溢れてるぞ」
「んなこと俺に言われても知らねぇだろ」
「まだ口の利き方がなってねぇな。んじゃ、もう一回」
「もういいだろっ。だから晩飯があるから――」
「残念だけど、晩御飯、もうちょっと待ってくれるかしら」
寝そべったままで樒柑がゆるりと腰を振り始めた頃だった。わずかに硬さを失った、しかしまだ縮んではいないペニスが膣の中で動いた時、部屋の入り口から別の声が聞こえる。
二人は同時にそちらを見た。
そこには末の妹、白梅と共に、長女の梨花が立っている。
何やらひどく威圧感を醸し出す笑顔だった。
二人は経験から知っている。あれは怒っている時の顔だと。
長身で髪が長く、プロポーションも抜群で、誰が見ても美人だと称する完璧な姉。
料理もできて家族想いで収入も多い。まさに完璧な人物。しかし彼女は怒ると怖い。そのため姉妹たちと樹は梨花が怒る瞬間を何より恐れていて、必要以上に気を使うほどだ。
今、その怒りが樹に向けられていた。
彼自身はセックスの名残も忘れて顔を青ざめさせ、その上に居る樒柑は他人事のように呟く。
「イッキ。お楽しみ中のところ悪いんだけど、少し話したいことがあります」
「リ、リカ姉ぇ、本日もいつも通りとてもお美しくいらっしゃって――」
「ありがとう。でもお世辞はいいから、座って?」
「あーこれは完全キレられるわ」
ぬぽっ、とペニスが膣から抜けて、先に樒柑が彼の上から降りる。脇に座って、自分は巻き込まれないようにと存在感を消し始めた。
そんな彼女を恨めしく想いつつ、余裕のない顔で樹が床に正座する。
梨花は樹の前までやってきて、同じく正座して彼と向かい合った。
「まず最初に。私はあなたに何を任せましたか?」
「か、買い物です」
「そうね。それで買ってきて欲しいと頼んだ物は?」
「えーっと、塩コショウ、でしょうか」
「その通り。そこでこれを見て欲しいのですけれど」
梨花が手に握っていた物を顔の前まで持ち上げる。
そこにあったのは入れ物こそ塩コショウに似ていても、中身は似ても似つかない、別物。この瞬間に樹はようやく自らのミスに気付き、背筋に悪寒が走った。
急いでいたことも理由の一つだ。走りながら適当に取ってしまったのも悪かった。
全ては姉に怒られまいと急いでいたのだが、その理由が仇となってミスに繋がってしまった。
そう説明すれば、おそらくさらに悪い結果となるだろう。
正座したまま縮こまり、樹の声から覇気が無くなる。
その様を見ていた樒柑はやれやれと首を振り、呆れた様子。自分の行いを反省する気はない。
一方で彼の正面に居た白梅は、恐怖心からすっかり縮こまってしまったペニスを見やり、ふむふむと何かを納得する様子で観察していた。
「これは、塩コショウですか?」
「い、いいえ、違います」
「そうですね。あーよかった。私の弟は塩コショウかそうでないかも判別できないのかと思いましたよ。ちゃんとわかってたんなら、なんで、別の品物を買ってきたんですかね?」
「い、急いでて……」
「ずいぶん時間もかかってましたが。どこで何をしていたのやら」
「すみません……」
一方的に追い詰められてぐうの音も出ない。
頭を垂れてしょげ返ってしまった彼を眺めた梨花は、思わず溜息を零した。
昔から手のかかる子だったが愛情はある。そこまで落ち込まれては何も想わないでもなく、怯えさせてしまったことに対しては多少悪いとも思う。
しかしそれはそれ。別の問題として処理しなければならない。
目つきを鋭くした梨花はにやりと笑って言った。
「言ってもわからないようなら仕方ありませんね。お仕置きです」
「ええっ!? いや、でも今、ミカンが、ほら……!」
「何か?」
「いいえなんでもありません!」
「よろしい」
笑顔で問い詰められ、反射的に言葉を呑んだ。これも長年の教育によるものらしい。
立ちなさい、と言われれば立ち上がり、気をつけ、と言われれば直立する。
全裸の彼をじっくり眺め、梨花は彼の肩に手を置いた。
「これだけは慣れたところで辛いでしょう? いつも通りです」
「リカ姉ぇ、俺ちゃんと反省するからっ。今度こそっ」
「はいはい。そうやって反省していてね」
床に跪き、萎えてしまったペニスを指で挟む。
少し角度を上げ、ぺろりと舌で舐めた。
「うっ――」
「ミカン、ウメ、あなたたちも手伝って」
「はいよ」
「はいでし」
声をかけられた二人も動き出す。どことなく待っていた様子だ。
樒柑は彼の側面に立って身を寄せ、首をぐいっと引っ張って傾けさせ、深くキスをする。再び彼に舌を伸ばさせてそれを絡め取り、上機嫌な顔だった。
そして白梅は樹の背後に立ち、梨花と同じように跪いて、両手で尻を開く。
奥にある穴を見つめると、どこか楽しそうな顔で舌を這わせた。
姉妹の趣味趣向は異なっており、それぞれの好みは違う。
樒柑は力でねじ伏せ、一方的に追い詰め、樹の歪んだ顔を好む。苦しんでいたり痛がっている顔を可愛いと思い、どうしようもなく愛でたくなる。いわゆる逆レイプが趣味であった。
白梅はそれを変わっていると称するが、彼女自身もまた変わった趣味を持っている。
彼の尻の穴、アナルを弄り、開発することを趣味としていた。
若いというより幼いとはいえ、彼女も樹のペニスを弄り、舐めたり膣に迎え入れたり、相手は樹のみだがそういった経験はすでにある。しかしそれら以上に尻に対する執着が強く、セックスがしたくなくても樹の尻の穴を責め、彼を鳴かせたいと考える時があるほどだ。
どうやら白梅も樒柑とそう変わらぬサディストらしく、本人の自覚がないまま尻を愛で始める。
一方、事の発起人、梨花は思いのほか普通だった。
以前は恋人も居たようだが今は他に男を作る様子も見られない。
樹を弟として、家族として愛す一方、男として愛している素振りが見られて、それは普段の会話では感じないものの、こうして肌を合わせる時が顕著だ。
誰よりも優しく触れ、誰よりも愛情のある艶っぽい触れ方をする。
今もペニスを舐め、先端を銜えて舌を絡め、そうしている姿は色気のある女の顔だった。
樒柑がキスをしながら指で乳首を撫でる。
白梅は尻の穴を舐め回し、それどころか中に舌を入れようとすらする。
何より梨花がペニスを刺激して、手では玉を転がし、どんどんペニスが勃起していく。
完全に大きくなった時、ちゅぽんと、梨花が音を鳴らして口を離した。
樹の顔を見上げながら竿を扱き、掌で亀頭をこねくり回して、玉を舐めて濡らしてやる。動きを止めようとする気配は感じられず、さらに責めようとする姿勢はあった。
そうして続けながら妹たちへ言い聞かせる。
「あまりやり過ぎないでね。これは“おしおき”なんだから」
「わかってるよ。まぁ一番重要なのはリカ姉ぇだけどな」
「でもこっちも重要でし。イッキちゃん、もうお尻だけでイケるから」
「マジ? つーかアナル好き過ぎだろお前。んなとこ舐めて面白いか?」
「人に噛みつくミカン姉ぇに言われたくないでし。それに、ちんちん触ってないのにイッちゃうのは見てて楽しいでしよ。イッキちゃん、凄く追い詰められた顔するし」
「へぇ……お前、こんなガキに追い詰められてんだ」
「興味持ちました? あと年齢は関係ないでし」
樒柑と白梅が平然と話をしている。家族が一致団結して裸の男を責めている状況で。
妙な興奮があった。
そこへ三人それぞれの刺激が無視できないほど大きくなり、射精しかけた樹は息を乱して、何も言わず射精しようとする。その瞬間、パッと梨花の手が離れた。
お仕置きとは、射精を我慢させること、言わば寸止めのことである。
梨花の動きに気付いた樒柑と白梅も彼から離れ、全ての刺激が無くなった。寂しげにペニスを震わせる樹は懇願するように梨花の顔を見下ろすが、微笑まれるだけで答えはない。
当然、再びペニスを握ったり舐めたりすることもなく、ただ見るだけ。
寂しく、辛い時間が続いて、やっと射精感が落ち着いた頃に手が伸ばされた。
「ねぇイッキ、私たちだってこんなことしたくないのよ。あなたには気持ちよくなって欲しいって思ってるわ。だけどあなたが悪いのよ? 言うことを聞いてくれないから」
「うっ、うぐっ、悪かったって。これからは、ちゃんと、はぁ……言うこと聞くから」
「いつもそんなこと言う。でも実際、どこで何してるかもわからないで、買い物にもあんなに時間がかかって。まさか彼女ができたとかじゃないわよね?」
「で、できてない、よ……」
「そう。なら安心した。あなたは元気が良過ぎるから、無理やり襲っちゃうなんてことがあるかもしれないし、やっぱり射精は私たちが管理してあげないとね」
「流石に、そんなこと……しないっての。うぅ、あぁっ――」
年齢もバラバラ、経験もそれぞれ違う。
三人の女が絡みつき、一人一人が喜々として彼に快感を与え、苛め抜く。
奇妙ではあったが、慣れてしまうほどにこれが野山野家の普段だった。
「今リンゴが代わりに買いに行ってくれてるから、それまで晩御飯はお預け。イッキは射精を我慢すること。いいわね?」
「ふっ、んむっ、うっ……」
「返事は?」
「は、いぃぃ……」
「あぁ~、んな顔すんなって。まためちゃくちゃにしたくなるだろうが」
「ミカン姉ぇのそれはやり過ぎでし。体中キスマークとか歯形とかつけたり、他の人のこと考えてないでしよ。独占欲強過ぎ。あと趣味悪過ぎ」
「うっせ。ケツばっか舐めてるお前に言われたくないね」
「一回試してみればいいのに。イッキちゃんのお尻、可愛いでしよ」
責められて、高められるのだが最後の一瞬だけは許されず、辛い時間が続く。
いつものこととはいえ、樹は苦しみ、その苦しむ顔を見て姉妹は心から喜んでいた。
本当はあと何話か続ける気だったけどとりあえず。
その気になれば書くかもしれません。