結局、結論を先延ばしにしたクルスは、キャロットに何もしなかった。
何か気晴らしをしようと彼女に釣りを教えたり、旅の話を聞かせてみたり、一緒に料理をしようと誘い出したりした。しかしどれも反応はいまいち。困惑しながら、おそらく当人は気付いていないが興奮しながら、キャロットはずっとクルスにくっついていた。
どうすることもできずに時間が経ち、夜。
これ以上はもはや逃れることはできないと悟る。
ベッドに並んで座った二人。クルスは緊張しながらも覚悟を決めた顔をしており、キャロットは相変わらず辛そうな、何かを我慢するような顔をしていた。
彼女は今もクルスに腕を絡めており、肩に頭を預けた状態で体の力が抜けていた。
ふーっと一息。クルスの手がキャロットの手を握った。
「キャロット。辛いか?」
「ふぇ? うん……よくわかんない」
「今、どんな感じだ?」
「よくわかんない……ぽかぽかして、ぎゅうっして、切ない感じ……」
「そ、そうか」
艶っぽい声。
最初に声を聞いた時は元気な少女という印象を抱いたのに、今は全く違っていた。
こうなってしまった、或いはしてしまった責任は取らなければいけない。騙し討ちのような気がして少し悪いと思ってしまうも、彼自身とて興奮が治まらなかった。
キャロットが常にくっついて動いてくるため、色んなところが当たり、柔らかい何かに触れ、モフモフした感触が彼の心を暴れさせた。
いつからだったか、服の下に隠した怒張は萎えることなく硬く在り続けていた。
今こそ、解放する時。
それは自分のためにもキャロットのためにもなる。
「多分、なんとかしてやれると思うんだけど……」
本当にいいか。
おそらくわかっていないだろう彼女に聞くのはずるい気もするが、確認は必要だと思って尋ねようとした時だった。
潤んだ瞳でじっと見つめてきて、身を乗り出し、何かを求めるように顔を近付けてくる彼女。
本能なのかもしれない。知識としては知らなくても動物として体は知っている。
戸惑い、驚く彼が反応できない間に、キャロットの顔は目と鼻の先にあった。そのまま少し動いただけでも触れそうなほど近い位置だった。
クルスはごくりと喉を鳴らし、キャロットは熱い吐息を唇に当てる。
「せ、責任は取るぞ」
「うん――」
咄嗟に出た一言に彼女はうっとりと目を閉じた。
意味を理解していなくても嬉しく感じたのだろう。待つ体勢になった途端、彼女はどこか幸せそうな様子に見えて、クルスが動き出すきっかけを与えた。
右手を頬に添え、左手で彼女の手を握ってやり、そっと顔を近付ける。
小さな口に彼の唇が重ねられた。
キャロットの体が一瞬小さく震えたが、それを感じる余裕もなく、彼女の方から強く口を押しつけてきた。積み重ねた我慢がそうさせたようでクルスは逆に驚かされる。
彼の手を振り払い、両肩を掴まれ、気付いた時にはベッドへ押し倒されていた。
どうすればいいかもわかっていない、とりあえず押しつけるだけの我武者羅なキス。何かが欲しいのだがその何かがない。ひたすら顔を動かして角度を変えたりするのだが、満足できていない様子でキャロットの動きは落ち着きがなかった。
押さえつけられたクルスは身動きが取れずにいる。
意外に力が強い。悪気はなかったとはいえ長時間の我慢を強いてしまったせいだろう、一切の遠慮なく全力をぶつけてくる感じに彼は目を白黒させていた。
呼吸すら困難になるほど力強く押しつけられる口。色気も何もあったものではない。
一度落ち着かせる必要があるとなんとか手を動かし、クルスは彼女の頭を撫でた。
それが逆効果だったらしい。キャロットは口を離して勢いよく顔を上げる。
目には今にもこぼれそうなほど涙が溜まって。
腰のあたりががくがく震え、暴走した感情は止まらず、震える声は助けを求めていた。
「はーっ、はぁぁっ、クルスぅ……! 体が、熱いよぅ……!」
「わ、わかった。今なんとかしてやるから……」
再び覆いかぶさってきたキャロットは無理やり口を塞ぎ、しかしそれ以上はどうすればいいのかわからずに何もできず、ただ乱暴に口を押しつけてくるばかり。
一方で強く彼の体に抱きつき、勝手に腰が動いて乱暴に振っていた。
もはや自分でも止められない様子のその動きは非常に卑猥で、服を着たままとはいえ、一方的に犯されるかのような動きにクルスは嫌な予感を覚えた。
(なんか、想像したより激しい? 兎は性欲が強いなんて言うが……)
かくかく振られる腰はクルスの下腹部に擦りつけられ、その勢いに危機感さえ覚える。
冷静に考えている暇もなく、このままにしておくのは可哀そうだと、クルスは多少慌てた手つきで彼女の服に手をかけた。と同時にぶつけられる口に対して舌を出し、ぺろりと舐めてやる。
それだけで舌を出せばいんだと気付いたキャロットは彼の唇を激しく舐め回し始めた。
知識がないだけ。学ぶ頭脳はあり、本能はそれ以上の何かを持っている。
舌を出すと、それだけを学んだはずのキャロットは即座に己の舌で唇の中に割って入り、驚くクルスの舌を絡め取り、舐め回し、歯列をなぞって唾液を啜った。
たった一つ理解しただけであらゆることを試そうとする。更なる快感を求めている。
一方的に口内を蹂躙されたクルスは服を脱がす手を止めてしまい、呼吸をしようと顔を振った。
熱烈なキスから逃れて大きく息を吐き、すかさず吸う。この調子では再び即座に押しつけられても文句は言えない。先を呼んでの行動だった。
しかしキャロットは唇を追わず、すかさず彼の首筋に噛みついた。
「いっ!? いでっ、キャロット……!」
「フ~っ、フーっ……!!」
「あぎっ、がっ……!?」
甘噛みなどではない、本気の噛みつき。痛みを感じるどころか死さえ近く感じたクルスは目を白黒させており、無我夢中で手を伸ばし、訳も分からず動く手が何かを探した。
必死に探した結果、辛うじて掴むことに成功したのはキャロットの耳。
かつてない力でぎゅっと掴めば、その途端に力が抜けた様子で口が離れる。クルスが死ぬことはなく咄嗟に安堵した様子で大きく息を吸い込んだ。
「ふはぁっ……!? あうっ、くぅん……!」
「あ、あっぶねぇ……!? 本気で、殺されるかと思った……!」
右手でしっかりと耳を掴んだ状態だとキャロットは力が抜け、苦しげに声を洩らしていた。
これはこれで後にひどい結果をもたらしそうな気がするものの、今は好都合。
今の内に服を脱がそうとひとまずクルスは自身が履かせた短パンに手を伸ばした。
初めは海で溺れた女性を介抱するために服を着替えさせただけだった。下着を履かせてやる余裕もなかったため、短パンをはぎ取ればそこは露わになった。
興奮が引き起こした惨状。その全てを確認しようとする。
彼女が抱きついてくるため指先で恐る恐る触れてみた。白く美しい毛並みは自らが分泌した愛液で濡れてしまい、まるで洪水。ずっと一緒に居て今までよく気付かなかったものだと反省してしまうほど濡れそぼっていた。
興奮しきった挙句長時間焦らされ、耳まで掴まれたキャロットにもはや羞恥心などない。
早くそこにある熱を冷ましてほしくて、何も考えずに脚を開いていた。ここをどうにかしてくれと伝えるかのように。
思わず喉を鳴らして、クルスは彼女の耳から手を離すことなく自身のズボンと下着を降ろす。
いきり立っていたペニスは外に出た瞬間ぶるりと揺れる。
彼とて我慢はあった。辛かったのは焦らされたペニスも同じで、快楽を求めて天を向いている。
もう挿入した方がいいのか。ふと考えた一瞬、迷いが生じる。
確認はしていないとはいえおそらく彼女は初めて。こんな状態でも無理を強いるのは躊躇った。
その迷いに気付いたかのようにキャロットが辛そうな声を出す。
「あぁでも、どうしようっ。濡れてるだろうけどちゃんと指とか使った方がいいかな? 俺も久々だからわかんねぇし、初めてなら尚更……」
「クル、スぅ」
顔を上げて彼女と目を合わせる。
すでに限界を超えているらしいキャロットはぽろぽろと大粒の涙を流し、気が狂いそうな衝動に今も耐えながら彼へ懇願していた。
「ほしいよぉ……!」
何が、とはわからないまま、生物としての本能がそう言わせていた。
ハッとする暇もなく、咄嗟にクルスはペニスを彼女の膣へと勢いをつけて挿入する。
「ああぁぁぁっ!?」
悲鳴に近い絶叫。キャロットの全身に電気が走った。
四肢を突っ張って絶頂を感じた後、脱力した彼女はクルスの上に倒れ込む。凄まじい衝撃だ。今まで感じたことのない感覚に目は虚ろになり、体のどこにも力が入らない。
少なくとも一時、ようやく得られたものに安堵した様子だった。
彼女がそうなった一方、クルスも必死に歯を食いしばって耐えていた。
ただでさえ久しぶりの性行為。しかも相手が初めて、おまけに人間ではなくモフモフの、今日出会ったばかりとはいえ少なからず好意を持っていた相手。挿入しただけで達してしまいそうになるだけの条件は揃っていたように思う。
ここで出しては男が廃る。
小さなプライドにしがみついた彼は必死に我慢して波が去るのを待っていた。
ようやく波が去って落ち着けるようになった後。
自分の上で動かないキャロットを心配してクルスが顔を覗き込んでみる。
それに気付いた彼女が視線を合わせた。
少し惚けているようだが身体的な問題はなさそうだろう。
クルスが目視で判断した瞬間だった。
バチンッ、と腰が叩きつけられる。
突然の行動で何をされたのか理解できなかった。
惚けた顔のまま、焦点の定まらない目をクルスに向けたキャロットは、器用に腰を動かして限界までペニスを引き抜き、全力で腰を降ろして再び呑み込んだのである。
膣の中を移動したその摩擦、その快感。クルスは目を剥いて射精感を堪えた。
「おおっ、おっ……!?」
「あっ、はぁ……これ、しゅごいぃ……」
もう一度思い切り引きあげ、全力で叩き落とす。
ズパンっと乾いた音が響いて根元まで吸いこまれる。その衝撃にクルスの体は激しく揺れ、本人は悲鳴が出そうになるのを必死に呑み込んだ。
何度かの経験があるとはいってもこんな衝撃は感じたことはなかった。
これは、まずいと、彼の本能が告げていた。
反対にキャロットは嬉しそうに笑う。
目は惚けているが口元ははっきりとした弧を描き、これを待っていたと言わんばかり。
彼女は無我夢中で、嬉々として腰を振る。
「これぇ……! これがほしかったのぉ……!」
「うあっ、あっ……!? キャロット、ちょっと待っ――!」
「んんんっ、あああぁっ! きもちいいっ! きもちいっ、きもちいいよぉ!!」
ずんずんと小刻みに腰を振り、ペニスを抜いては差し込んで、ほとんど狂乱の域でピストンを繰り返す彼女にクルスの声など届いていなかった。慣れているかのようなスムーズさでクルスのペニスを扱い、自分の膣の中に擦りつける。
内壁を抉り、先端が一番奥にぶつかって、また抜けてしまいそうになるほど引かれる。
乱暴な動きがキャロットの精神を高ぶらせ、大声を出す彼女はとても幸せそうに笑んでいた。
しかし一方的にそうされるクルスはとても平常心ではいられなかった。
一突きする度に電気のような感覚が全身を駆け抜け、体の自由が利かず、抵抗することも不可能ならば我慢することさえできやしない。まさに今この瞬間、キャロットに生殺与奪を握られてしまったかのような状況だ。
その証明と言うかのようにキャロットの両手がクルスの両手首を掴む。
彼を動けないよう押さえつけて、ピストンは一切速度を緩めずに続けられる。
悲鳴とも嬌声とも感じられる声が出た瞬間、キャロットはクルスの首筋に噛みついた。
もはや彼は声の一つも出せず、されるがままを受けて声にならない声で叫んでいる。
「フーっ、んんんっ……! これっ、しゅごいっ、きもちいい……!」
「あ、あ、あ……」
いつの間にかクルスの目は焦点が合っておらず、思考力の欠片も残ってはいない。
ただ上に乗っかったキャロットの動きに応じてベッドの上で跳ねる。それほど脱力して為すがままの状態となっていた。
キャロット自身、今自分がどうなっているのかわかっていない。
イッているのかいないのか、その概念すら知らないままに暴走を始めてしまったのだろう。
とにかく動く。とにかく続ける。全身を駆け回る電気が途切れさせないために、常にクルスのペニスで膣内を抉る。考えることもできず体がそのために動いていた。
彼女はだらしなく舌を伸ばし、クルスの首筋に噛みつく力も失って尻を弾ませている。
ある時、唐突にクルスが射精した。
限界などとっくに越えていたはずなのだがなぜ今になったのか。本人にさえわからない。
あまりにも突然にペニスから精液が吐き出され、それはキャロットの膣内に吐き出された。
彼女の体が大きく震え、一時的に動きが止まった。しかしそれもほんの一瞬だけだ。
今となっては自然な行動として激しく腰を振りながら、キャロットは彼の顔を舐め回す。
呆然とするクルスは大きな反応を見せることすらできない。
「あはぁぁっ、これしゅきぃ♡ クルスきもちいいっ……!」
「ま、待っ、て……あ、チンポ、おかしくなる……」
制止しようとした口を煩わしく思ったのか、ぶつかるように唇を塞がれる。
腕を押さえつけられ、体全体でのしかかられ、喋ることさえ許されない。
これでは当初と逆だ。彼女を気遣って許可まで取ろうとしたのに全くの無駄だった。
押し潰すかのようにきつく締めてくる膣内へ、激しく乱暴にペニスを抜き差しする。一度射精したが与えられる刺激で強制的に硬くさせた。それも乱暴だったためだろう、今にもはち切れてしまいそうなほど膨らんで余裕の無さそうな様子だ。
多少の無理をしていようが、今のキャロットには関係ない。
本能に従うままに腰を動かし、疲労を感じる暇すらなくピストンを続けなければならなかった。
「あーっ♡ あーっ♡ あーっ♡」
「ぐああっ、だめだっ! イクっ、イクぅ!?」
「んんんっ……えへへ、また熱いのくる? くる?」
高速で腰が動き、膣にペニスが呑み込まれ、またある時射精した。
今度は本人の言葉があった直後でキャロットもそれを認識しやすい状況にあり、びゅっと飛び出した瞬間にわかりやすく尻が跳ねる。
キャロットは至福の表情で背をのけ反らせて、逆にクルスは苦しそうな顔で背を丸めた。
「きたぁぁぁっ♡ 熱くてきもちいいのっ、お腹の中にびゅって……!」
「うぐぅっ。うぅぅ……!」
一番奥で取りこんでやろうと思い切り腰が沈められた。
大きく揺れるペニスが精液を吐き出しながら根元まで埋め込まれる。
逃げることもできず、大きな快感に囚われてクルスは低く呻いた。
二度の射精を経て彼はすっかり疲弊していた。そもそも性行為自体久々であり、ピストンの勢いも凄まじく、おまけに休む暇も与えず連続しての二回。ぐったりした様子を隠せないほど力の抜けた顔と体勢だった。
それなのにキャロットは再び腰を振り始める。
彼の疲弊など何のその。自らが動く刺激でペニスを勃起させようとしていた。
この時になってクルスは混乱と恐怖に包まれる。
だらしない顔でキャロットは笑い、疲れを一切感じさせず非常に嬉しそうだったのだ。
「えへへ~、きもちいいね~。んぅ、はぁ、これもっとほしいよぉ~」
「はぁっ、ちょっと、待て……! そんなすぐには――!」
「クルスっ、クルスぅ♡」
キャロットの動きが弱められることはなく、心底嬉しそうに彼を責め続けた。
無理やり押さえつけられたクルスに為す術はない。
彼女の欲求に逆らえず、長時間に渡って犯され続けた。