※この作品はR-18です。

蛇獣書房   作:ヘビとマングース

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原点回帰で、ヤンデレらしさを追及しました。一応、続編です。
あんまり明るい話じゃないかも……。


推奨する関係(リリなの・シグナム)

 

 本来であれば、私は自分が気にいらないことを押しつけられて黙っていられるほど、素直な性格ではないつもりだ。確かに状況によっては対応の仕方も変わってくるだろうが、主はやてのことと、仕事に関することでは妥協を許すつもりもない。

 しかしこの件に関しては、いつからだったか私はすでに諦めていた。これは手を出してはいけないことだと、自分の心に蓋をするようになっていた。

 自分が望むべきものはある。夢を持ったし、希望も持った。だけど私は自らそれを捨て、新たな決意を持ったのだ。

 それなのに、私が望む望まぬに関わらず、再び手を差しのべられてしまった。今度は、私たちを救ってくれた彼ではなく、その男の妻となった少女から。

 

 「私は、兄さんに他の女が近付くのは許せない――だって兄さんはやさしいから、きっと勘違いしただけの女も見捨てないもん」

 

 諦めたつもりだった。彼が選んだのは最も大切にしていた存在。後から出会った私が敵うような相手ではなかったはずだから。

 それに普通に話すことはできたし、お互いに管理局で話すようになってからはぐっと距離も縮まった。仕事の話が多いとはいえ、二人きりで話せる時間も多くなった。なにより、あの笑顔が私だけに向けられるような時間を得ることができたのだ。

 私はそれだけでも満足することができた。これまでとは違う距離感、信頼が伺える視線、求めてやまなかった笑み。たった一時だけでもそれを独占することができるなら、それがどれほど幸せなことか。

 ただ敵を切るだけの剣はなくなり、今では誰かを守るための剣を手に入れた。ならば私は新たな人生を、新たな剣を持って生きていこう。それを与えてくれた主と、彼を守りながら。

 そう、思っていたはずだったのに。

 

 「でもシグナムにだけは許してあげる。兄さんが私のことを深く愛してくれるように、兄さんが私への愛情をもっと素直に出せるように協力してくれるなら――シグナムにだけ、兄さんに触れることを許してあげる」

 

 その言葉と共に差し出された手を、馬鹿馬鹿しいと笑うことなど、今の私にはできそうもない。騎士として生きていた頃ならまだしも、彼や主はやてから「人間として生きていい」と言われてしまった今、同じことなどできない。

 振り払うべきはずの、不貞を促すその手を、私はじっと見つめることしかできなかった。

 

 「だけど、兄さんは私のだから、愛しあうのはダメ。ただ、シグナムが一方的に兄さんを愛しすぎちゃって、自分の欲求を無理やりぶつけるだけなら、それは咎めない――だって兄さんはあんなにかっこいいんだもん。その気持ちはわかるつもり」

 

 暗闇の中で、囁くように届けられる美しい声。それはきっと、聞く者が聞けば天使のような美声に思えるだろう。

 だが今の私には、逡巡したまま「否」と応えられない私にとっては、その声は悪魔のものにしか思えない。

 

 「堕ちてもいいんだよ、シグナム。兄さんを愛してるなら――私の夫を、思う存分好きにしてもいいんだよ?」

 

 その悪魔の声に従い、手を取ってしまった私も、ひょっとしたらもう悪魔の類なのかもしれない。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 時間にして、夜の九時。いつもならすでに彼は自身の研究室を後にして、家に帰っているはずの時間だった。

 しかしこの日は仕事の仕上げがあり、愛する妻がめずらしく残業を許してくれたこともあって、彼は研究室に残って仕事を続けていた。

 それが悲劇に繋がったのである。

 

 「恭介――すまない。本当に、すまない……」

 

 今、明かりを消された暗い研究室の中には二人の人間がいる。一人は桃色の長い髪をポニーテールにして、局員の茶色い制服に身を包んだ、切れ長の目が特徴的な女性。もう一方は、彼女に両手首を背にまわされた上で縛られ、身動きが取れずに床に転がされる、半裸の青年。

 管理局でも有数の戦闘力を持つ局員、シグナムというのが女性、その彼女に腕を縛られ、猿ぐつわまでされて床に転がされたのが、最近結婚したばかりだという恭介であった。

 彼は白衣だけを残され、上着は胸の上にまであげられ、下着とズボンは完全に脱がされ、尻を高々と上げる体勢を取らされている。

 腕を縛られ、口を塞がれ、恭介は目を潤ませながら背後にいるシグナムに目を向け、呼吸も荒く睨みつけていた。

 まるで今にも命を刈り取られる獲物が、最後の抵抗を見せているようにも見えるのだ。

 

 「できることなら、私は――おまえのことを見守っていこうと思っていた。元から私は騎士プログラム、普通の人生を送ろうとも想っていない――だからせめて、大事な存在になったおまえを、見守っていこうと……」

 

 そんなことを言いながら、冷徹な表情を浮かべるシグナムは淡々と服を脱いでいき、茶色い制服を床に放り、上下の下着すらもすぐに放り捨てた。

 今、暗い研究室の内部で彼女の裸体が露わになり、家族以外は誰も見たことがないその肉体が恭介の眼前に晒される。

 ずっしりと重量感すらある張りのある大きな乳房、その先でツンと立つ乳首。柔らかな印象を与えながらも、所々に見える筋肉が力強さを主張し、女らしいしなやかさを持ちながら頼りになる強さを見せる体がゆっくりと動く。

 やがて彼女は、尻を掲げさせた恭介の後ろで膝を折り、跪いて彼の尻へと顔を寄せる。

 そして至近距離で彼の尻の穴を見つめながら、ほぅとうっとりしたため息をつき、見る見るうちに頬を赤くしていった。

 

 「んぅー、ふむぅ、んんー……」

 「心配するな。大丈夫、おまえがテスタロッサと結婚したことは知っている――前は使わないさ」

 

 シグナムの潤んだ瞳は一心に恭介のそこへ注がれており、もはや迷いなどないことを簡単に推測させる。いつものまじめで、凛とした彼女の姿ではないのだから。

 潤んだ瞳も、赤らんだ頬も、蕩けたように歪められる口元も、もはや本来のシグナムではない。それはもう本能に支配された、ただの一匹の雌なのだ。

 なぜそうなったのか、恭介がその理由を知る由もないが、どちらにしてもその行動を止めることなどできない。

 伸ばされた赤い舌がぺろりと尻穴を一舐めしても、腰を掴まれ、足が動かせず、腕や口すら封じられてる恭介は抵抗すらできなかった。

 

 「その代わり、こっちは使ったことがないだろう? 悪いとは思ってる、でも、やっぱり私は――おまえが欲しい」

 

 ちろちろと舌先で入口に力を込めながら、両手で尻の肉を撫で、そのままシグナムは静かに語る。興奮したような、それでも冷静さを失わないようにと頑張っているかのような、そんならしくない声で。

 恭介が口を塞がれた状態で、くぐもった声しか出せないのをいいことに、彼女の愛撫は続けられた。

 

 「だからこっちを使わせてくれ――テスタロッサではできないことを、私がしてやるから」

 「んんっ、んふぅ――」

 

 そう言った直後、穴の中に浅く埋められていた舌が、ぐっと奥まで押し進められる。途端に恭介は目を見開き、初めての感覚に戸惑いながら腰を揺らした。

 それは決して受け入れるための動きではない。むしろ、腹の中に異物感が侵入してきたことによる、心配と嫌悪に満ちた咄嗟の判断だったと言えるだろう。

 その証拠に、恭介は先程よりもさらに呼吸を激しくして、悲鳴とも思える声を必死に発していたのだ。

 

 「んんーッ、んん、ふむぅっ――!」

 「んっ、ちゅ、はっ――はぁ、これは、すごいな……」

 

 シグナムの舌は妖艶に、自分勝手に動いていく。

 入口や尻を舐めまわすようにゆったりと這ったり、中を突き進むように舌を押しこんだり、まるで蹂躙するかのような動きで恭介の尻を責め続ける。

 両手ではしっかりときれいな形のそこを掴んで離さず、逃がさぬようにとしながらも、指や手のひらを使って肉を揉んで感触を楽しんでいるようだ。

 とにかくその時のシグナムは、神経のすべてで彼の肉体を感じようと集中力を高め、特に尻へと注目を集めていたらしい。日頃妻との情事を楽しんでいる男のシンボルではなく、まだその妻ですら触れたことがないはずのそこへと。

 まだ誰も触れていない場所に触れ、妻ですら独占できていない場所を自分が開拓し、独占する。その行為にひどく興奮した様子のシグナムは動きを止めず、どれほど恭介が嫌がろうとも尻を舐め続けた。

 その行為は数十分にも及び、彼女はただひたすらに没頭して、恭介の尻を責めた。

 

 「んっ、ふっ、ふっ、んんっ――」

 

 その光景は明らかに異常なものだった。

 一人の女が一人の男を拘束し、何かを言うこともなく淡々と、しかし熱心に尻を舐め続ける。異様な熱気に包まれたその場所を見れば、おそらく誰もが顔色を変えて硬直するだろう。

 それほどまでに彼女は、恭介を襲うシグナムには危機迫るものがあり、されるがままになっている恭介も涙を流しながらうめき声をあげていた。

 早く誰かに助けてほしい。その願いを胸に抱きながら、ほんの少しでも抵抗しようと。

 しかし彼の声が誰かに届くこともなく、無理やりな行為はひたすら続けられる。

 専用の研究室を与えられていたことが仇となったか、それを裏手に取ったシグナムが優れていたのか、時間が遅いこともあって邪魔者が入ることはないのだろう。

 彼女の愛撫は黙々と続けられ、局部に触れないままのやさしいそれは一時間近くに渡って行われた。ひどく丁寧で、愛おしさを込められた、だけど無理やりな愛情表現を。

 おかげで嫌がっているはずの恭介の陰部は固くそそり立ち、先端の割れ目からだらだらと透明な液体を吐きだして、小刻みに腰を振っていることもあって床を汚している。

 その様子をずっと目で確認していたシグナムは紅潮した頬を緩ませ、笑みを浮かべながら、それでもそこには手を出さないと言ったことを後悔するかのように、うずうずといった様子で裸体を揺らしていた。

 彼女はついに口を開き、自分の口から言葉を伝えた。

 

 「はぁっ、はぁっ――そろそろいいだろう。では、始めようか」

 

 立ちあがったシグナムは名残惜しそうに恭介の尻を一撫ですると、歩き出して彼の傍から少し離れ、脱いだ制服の近くにあった紙袋へ手を伸ばした。

 床に転がり、ぽろぽろと涙を流しながらぐったりして動かない恭介が不安に想う中、何かを取りだしたシグナムは再び恭介の元へ戻ってくる。

 彼女は手にしていたそれ、双頭ディルドの一方を自分の膣内に銜えこませると、もう一方の先端を恭介の尻穴へと触れさせた。

 途端に、恭介は目を見開いて驚愕し、身を捩って逃げようと動き出した。まるで芋虫のような動きではあるが、しかしすぐにシグナムの手で腰を掴まれて逃げられなくなる。

 すぐに彼の尻の穴には人工の亀頭が押しつけられ、シグナムの表情が喜色に染まる。

 

 「ふぅ、ふぅ――そんなに、怯えなくてもいい。大丈夫、痛いことはしないから――ちょっとだけ我慢してくれれば、すぐに気持ちよくなる」

 「んふぅ、ふむっ」

 「あぁっ、だから、そんな、そんな目で見るな――もう自分を抑えられなくなるっ……!」

 

 穴に先端が触れた直後、高揚しきったシグナムは勢いよく腰を前に突き出し、勢いよくディルドを恭介の中へと埋めていった。

 ずぶずぶと肉を押し上げて、中も外もたっぷりと唾液を塗りたくられたそこへ、彼のものと同サイズの陰茎が押し進む。それは迷いもなく奥まで入れられ、猿ぐつわの向こうから嗚咽を漏らす恭介の意思を無視したまま、シグナムによって出し入れを開始される。

 そこからはやはり、一方的な凌辱だった。二人の腰が勢いよくぶつけられ、男女が逆になって後背位で繋がる。

 シグナムは光悦とした表情で恭介の尻を犯し、泣きじゃくる彼を使って快楽を貪る。

 本来ならば愛する彼と、深く愛しあうように恋人のような行為をしたかった。だが今になって、恭介の泣き顔を見た時、胸の中に込み上げてくるものがあったのだ。

 もっとその顔を見せてほしい。誰も見たことがないその顔で、自分だけを見てほしい。まさに、今のように。

 そう思うシグナムは必死に腰を振り、男のように陰茎を使って、自分の膣で快感を得ながらも心で快楽を得ていく。恭介を犯すその過程で、泣き顔を見て、くぐもった声を聞いて、無理やりに尻から快感を与えるその腰の動きで、彼女は確かに感じていた。

 シグナムはこれまで男性経験がないので、彼女の性器とて行為に慣れているわけではない。日頃から仕事での激しい戦闘や、自らが課す厳しい訓練に臨んでいる彼女であり、そもそもが“闇の書”から生まれた純粋な人間ではない存在。処女膜などというものがないのは確かだが、それにしても余裕が見える動きである。

 明らかにラストスパートと思える動きで激しく責め立て、恭介を抱くシグナムの顔は、まさに至福の一時を感じていた。

 

 「あぁっ、はぁっ――すまない、恭介、すまない……」

 「んむぅ、んふぅ、んごぉっ」

 

 激しい肉音が連続して続き、途切れることなく室内に響く。その間中、恭介は苦しそうな声を出しながらも涙を流し続け、ひたすら終わることだけを願って耐え続けた。

 対するシグナムは彼の体を好き勝手に触り、何度も体位を変えながら、涙に濡れる顔を見詰めつつ犯し続ける。後背位から始まり、正常位、騎乗位、さらには立った状態で後ろから、体の自由が利かない彼はシグナムが動かすままに遊ばれる。

 それでも恭介の勃起した陰茎には一度として触れられず、先走り液を出し続けるそこは突かれる衝撃でぶるんと揺れ、それ以上の刺激が与えられることはない。

 それもまた、恭介が涙を流し、苦しむ要因の一つになっているのだ。いくら丁寧な愛撫をされた後とは言え、乱暴に尻の中を突かれるばかりではさほどの快楽も得られない。腹の中の異物感と、男としてのプライドが壊されるばかりである。

 だからこそ、なぜ触ってくれないのか、なぜ苦しめられるばかりなんだと、混乱した恭介は自分の友人をどんどん恐れていった。自分が知るシグナムはこんなことをするはずがないし、どうして彼女が自分を苦しめるのだろうと。

 怖くなった彼はもはや抵抗することもやめ、この苦しい時間が終わる時をひたすらに待った。

 頬を紅潮させ、自分を犯す動きを止めないのに謝り続ける、シグナムの声を聞くこともなく。恭介はただ涙を流し続けた。

 

 「あぁっ、んんっ、はぁっ――恭介、恭介ぇっ」

 

 そうして、どれほどの時間を一方的な行為に費やしただろうか。

 シグナムはその動きの中で何度も絶頂を感じ、全身を震わせながらも腰の動きを止めず、飽きることなく彼の体を抱き続けた。そして恭介は、されるばかりで一度も絶頂を迎えることなく、ぼんやりと開いた目をどこかへと向けている。

 しかし、ぴたりと動きを止めたシグナムが尻からディルドを抜き、自身の膣からも抜いて床に放ると、ついに床に転がる恭介は傍に立つシグナムへと目を向けた。

 彼女は全身に汗を掻き、肩で激しい呼吸をしながらも、じっと恭介を見つめて離さない。

 

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 そしてゆっくりと動き出したシグナムは、同じく汗にまみれた恭介の体をひっくり返し、床に背を預けさせた後に両足をがばっと開けさせ、その股間にそびえている物をじっと見始めた。

 これまでチャンスはいくらでもあったのに、ただの一度も触れなかったそこ。ついにシグナムはそこへ目をつけ、もう辛抱できないとばかりに鼻息を荒くしていたのだ。

 

 「ふぅー……ふぅー……!」

 

 その後はついに、それだけはしまいと考えていたシグナムも考えを変え、自らの秘部をそこへ近付けていった。

 二人の秘所がぴとりと触れあい、男女逆の正常位のような体勢で、今度こそ二人の視線はばっちり合わさる。

 涙に濡れる瞳はいまだにシグナムを嫌っていない。できれば元に戻ってほしいと、以前の彼女に戻ってほしいと想っているかのような揺らぎがあった。

 だが彼は知らなかった。それがむしろ、より一層シグナムを燃え上がらせるということに。

 

 「あぁ――恭介っ」

 

 ずぶりと膣の中に亀頭が入りこみ、シグナムが腰を降ろすだけで奥の方まで繋がっていく。ここは越えないでおこう、と思っていた一線を越えてしまったのである。

 それだけで彼女は至福の声をあげ、自分の体内にある恭介の一部の熱さを感じ、またしても勢いよく腰を振り始めた。

 今度は本来の男と女の繋がり、互いの性器が一つになり、肉体を一つにして快楽を共有する形だった。おかげでさすがに恭介も、熱く締めてくる膣に陰茎を包まれたことにより、快感を得るようになる。

 しかしそれでも彼の表情は変わらず、悲しみや恐怖を感じたまま、変わらずされるがままで抱かれていた。

 その表情を見下ろしながら、シグナムは尚も腰の動きを速める。

 

 「うっ、はぁっ、あぁっ、んっ――あぁっ、すごいっ、これが、これがっ……!」

 

 興奮は増すばかりで、彼女の動きは執拗なまでに恭介を責め立てる。もう感じたくはない、そう思う彼を無理やりに高みへと連れていくのだ。

 一体何回出し入れを繰り返した後だったか。ようやく、絶頂を繰り返していたシグナムも、嫌がっていた恭介も初めて、限界を迎えた。

 彼らは繋がったまま絶頂し、熱い膣内へと射精が始まる。

 シグナムがそれを嬉しそうに受け入れると、恭介はまたもぽろりと涙を流してくぐもった声を洩らす。

 やはりどちらも対称的な姿のまま、二人の行為はひとまずの終わりを迎えたようだ。

 

 「うぅ、うぁっ、はぁぁ――これ、がっ、性行為か……す、凄い……!」

 「うっ、うぅ、うぅぅ――」

 

 ずるりと萎えた陰茎が抜かれ、露わになったシグナムの秘所から、内側から溢れ出た精液がぽたりと垂れ落ちる。

 寝転んだままそれをぼんやりと見ていた恭介にはもはや生気のようなものが感じられず、まるで人形のような姿にも思える。

 彼のその姿を改めて見たシグナムは少しだけ悲しそうな顔を見せたが、もはやどうにもできないと思っているのか、ゆっくりと彼の拘束を解きながらも何も言わなかった。

 縛っていた腕を解放し、猿ぐつわを取って、自由にされたというのに動かない恭介。空中へ視線を放って、何の行動も見せず、何の感情も見せずに横たわるままだ。

 シグナムはそんな彼の体を抱え、床に正座をして、ぽつりと小さな声をかける。今も聞いているのかどうかわからない、ぼんやりしたままの恭介へ向けて。

 

 「恭介……私は、おまえのことが好きだ――でもおまえからしてみれば、それはもう、きっと受け入れられないだろう」

 

 先程の興奮具合はどこへやら、悲しげな顔でそう告げるシグナムは彼の頭を自分の膝に乗せ、やさしい手つきで頭を撫でる。真心が込められた、恋人にそうするかのような動きである。

 誰もいない、二人だけしかいない暗い研究室の中で、静かな声色で語られた。それは彼女の懺悔であり、そして決意でもあったのだ。

 

 「こんなことをして、許してもらえるとは思っていない。私を恨んでもいい、命が欲しいと言うなら、くれてやる――だが私はそれでも、おまえのことを守っていきたい」

 

 慈しむような目を向けて、彼女は自分の意思をきっぱりと告げた。

 いまだに迷いは持っている。後悔もしている。それでもやはり、おまえの傍を離れたくはないと。

 そう語る自分自身を未練がましい、女々しい女だと罵りながら、シグナムはそれでも言葉を止めることができなかった。

 これほどまでに自分勝手に相手を傷つけておきながらも、それでも、彼を捨てて生きることなどできない。

 そんな自分の弱さを憎く想ったことは、この時が初めてのことだった。

 

 「恭介、おまえの命は、何があっても私が守る――たとえおまえに嫌われても、見捨てられても、それだけは変わらない。だからおまえは安心して――テスタロッサと生きてくれ」

 

 そう言いながら、彼女はまた恭介へと覆いかぶさり、今度は熱い口づけを送る。愛情がこもった、しかし無理やりなそれを。

 恭介は何一つ反応を見せることはなく、またしてもぽろりと、涙を流した。

 それから二人はまたも体を交わらせ、快楽を貪りあう。それもシグナムの主導で、人形のように動かない恭介は何も反応を見せないままで。

 それが彼女の決意だった。愛する男を守ると決め、何があっても傍にいる。たとえ嫌われようと、必要とされていなくても。

 ただそこで、嫌われてもいいのなら、彼を無理やりに抱くこともいとわない。そう考えるシグナムは手を止めず、彼の全身に触れていった。

 

 「恭介……本当に、すまない……だけど私は、おまえを、本当に――」

 

 どうしてこうなってしまったんだ。

 そう思っていたのはどちらだったか、それとも両者だったのか。

 それを知る者はおらず、二人の行為はそれからまた一時間かかってすべてを終える。

 夜の管理局の研究室内部で、防音がしっかりとしたその中で、一人の女の嬌声が響いた後で。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 愛する旦那が帰ってきた時、あまりにも遅いのでうとうとしていた彼女はすぐに飛び起き、急いで玄関へと向かっていった。

 パジャマ姿で玄関へ赴き、そこに立つ人影を見ると、待ちぼうけていたフェイトはパッと笑顔を輝かせる。しかしその直後には、そこに立つ人間、自分が愛する旦那である恭介の様子がおかしいことに気付き、表情を変える。

 心配したような顔で彼を見るフェイトはゆっくりと歩き出し、ただ呆然と立ち尽くして動かない恭介へと近付いて行く。

 それでも恭介はフェイトに目を向けず、黙って動かないままだ。

 

 「兄さん……おかえり。どうかしたの? 結構遅かったけど、何か――」

 「フェイト……」

 「うん、何? 兄さ――あっ」

 

 フェイトが恐る恐る近付いたその時、靴を脱いだ恭介は突然彼女の体に抱きつき、さらりと揺れる金髪に手を触れ、彼女の頭を自分の胸に抱え込んだ。

 ぎゅうっ、と抱きつく力は強く、いつもならそうした行動を恥ずかしがる彼らしくない出来事。フェイトは頬を赤くしつつも恭介の顔を覗き見、照れた様子で何かを言おうとする。

 その拍子に、ぽつりと、フェイトの頬に一つの水滴が落ちた。

 

 「うっ、ふっ……うぅ……」

 「……兄さ――恭介? どうしたの? 何か、怖いことでもあった?」

 

 彼女に抱きつき、情けなくも泣きじゃくる恭介はまるで子供のような姿で、縋る者がなければすぐに壊れてしまいそうなほどの危うさがあった。

 何があったかは想像できるはずもない。しかしそれでもフェイトは彼を安心させようと、自分も腕を伸ばしてぎゅっと抱き返す。

 彼には自分が必要だと、そう思っているのだろう。すぐに表情は恭介を安心させようとするかのように、やさしげな笑みを浮かべていた。

 

 「安心して、大丈夫だよ、恭介――私がいる。私が恭介の傍にいるから……ずっとずっと、傍に居続けるから」

 「……うん……うん」

 

 子供のようにぽろぽろと涙を流しながら、フェイトの声を聞く恭介は何度も頷く。彼女を心配させないように、自分を納得させるかのように。

 何度も何度も頷いて、痛いほどに腕に力を込めて自分の妻を抱きしめる。そうされるフェイトも、多少の痛みを感じながら何も言わず、黙ってそれを受け止める。

 時間にして五分ほど。二人はずっと抱き合ったまま動かず、玄関で立ちつくし続けた。

 しかしいつまでもそうし続けているわけにはいかないと、恭介が泣きやみ始めた頃を見計らってフェイトが促し、二人はゆっくりとリビングへ移動する。

 そこにあるソファに並んで座り、いまだ抱き合うことは止めず、お互いの体温を感じ続けた。

 それから、ようやく恭介が腕を解いたことをきっかけに二人は体を離す。その直後、らしくもなく恭介の方からフェイトへキスをした。

 

 「――んっ」

 

 ちゅっと音が立つ、触れるだけの口づけ。いつもはフェイトから送るはずの、小さな愛情表現。

 今日ばかりはそれは恭介の方から送られ、続けて彼の口から舌が伸びる。それもいつもならやさしいはずの動きは、かなり乱暴な様子で。

 まるで攻撃するかのような動きを見せる舌はフェイトの口内に入り込み、好き勝手に暴れまわった。フェイトはそれをすべて受け入れる。

 悦ぶようなその姿は、可愛らしい少女のようでもあり、妖艶な女の雰囲気すらも見させた。

 

 「んっ、ふっ、あっ――きょうす、けっ」

 

 口の端から漏れ、顎を伝い落ちる唾液も気にせず、二人の口はぴったりと合わさって一つになる。

 ただただ荒々しく、相手を気遣わない強い動き。恭介らしくない動きに、フェイトは驚きながらもそれを享受した。

 ぴちゃぴちゃと淫靡な音が立ち、同時に両手が動いて、彼女の豊満な体がまさぐられていく。大ぶりの乳房がたぷんと揺れ、くびれのある腰や、下着に守られた秘部すらもゆっくりと触れられる。

 その力のこもった手つきすらもずいぶんと乱暴なのだが、フェイトが抗議しないどころか、嬉しそうに受け入れているせいで改善はなく、そのままで続けられる。

 唇に触れていた恭介の口は、いつの間にやら彼女の首筋や顔に触れている。

 激しい行為はすぐに次から次へと行動を進めていき、やがてフェイトの体はソファの上に押し倒された。

 

 「あっ、きゃん――」

 「はぁっ、ふぅっ、フェイト――フェイトっ」

 

 必死な様子で、恭介はフェイトのパジャマを次々に脱がし、彼女を裸にしていった。

 遮る物がなくなったことで見えた彼女の秘所は、すでに十分すぎるほど濡れており、それを目で確認した恭介はすぐに自らもすべて服を脱ぎ、屹立した肉棒を取り出して、準備が整っているそこへと触れさせる。

 ぴとりと触れあった瞬間、肉棒は一気に奥まで突きあげられ、フェイトの膣内へと侵入していく。彼女は驚いたように目を見開きながらも、それを嬉しそうに受け止めていた。

 すぐに素早い出し入れは開始され、じゅぷじゅぷという水音が立ち、それに伴って甘い嬌声が室内に広がった。

 フェイトは嬉しそうな笑みを浮かべつつ、彼の首に両腕を回し、激しく突かれることを悦んでいる。泣きそうな顔でそうする恭介を、赤らんだ顔でじっと見つめながら。

 

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 「あんっ、んぅっ、はぁぁっ、あぁぁっ」

 

 最初から最後まで、叩きつけるような動きで腰がぶつかり、肉を抉るように貫かれる。

 そうし続けて、およそ数分のことだ。あまりにも動きが激しすぎたこともあり、二人の限界はすぐにやってきた。

 「うっ」と小さく呻いた恭介は膣内に肉棒を差し込んだまま射精を開始し、フェイトの体内へと精液を注ぎこんだ。彼女もそれを、快く受け入れる。

 蕩け切った表情を浮かべて、一滴もこぼすまいとするかのように竿をぎゅっと締めつけて。

 

 「あぁっ、あはぁっ、あぁぁぁぁっ!!」

 

 びゅくびゅくと吐きだされる熱い液体をすべて注ぎこまれ、やがて恭介は体の力を抜いてフェイトの上に覆いかぶさった。

 泣き顔はようやく消え、ひどく疲れた様子で目を閉じ、フェイトに体を預ける。そうする彼の姿は、まるで子供のように見えた。

 そのせいか、慈愛が溢れ出る姿でフェイトの両腕は彼の頭を撫で、胸にすがりつくようにして目を閉じる恭介に声をかける。

 ひどくやさしい、いつもの彼女よりも落ちついた声だった。

 

 「恭介――大丈夫? 気持ちよく、なれた?」

 「あ……ああ……ごめん、フェイト」

 「ううん、いいの。辛い時はいつでも言って。今日みたいにしてくれてもいい――私にだけは隠さなくていいから。全部、私にだけは明かして。恭介がどこで何をしてても、私は全部許してあげるから」

 「……うん」

 「だから、一人で塞ぎこまないで。一人になろうとしないで。私はいつでも兄さんの――恭介の味方だから」

 「……うんっ」

 

 そう言われた途端、再び恭介は涙を流してフェイトにすがりつき、豊満な胸に顔を押しつけて小さな声を洩らす。そんな情けない姿を見せる夫を、フェイトはぎゅうっと抱きしめた。

 

 「大丈夫だよ。私が一人だった時、兄さんはずっと私の傍にいてくれた――だから今度は私が、兄さんのこと一人にはしない。ずっとずっと、二人いっしょだよ」

 

 幸せそうに微笑む妻に抱きしめられながら、恭介は静かに涙を流す。なぜそれが溢れてくるのかはわからないが、心の中はひどく荒らされ、そうしなければ元の形を整えることができないのだろう。

 悲しみか、恐怖か、不安か、それとも別の何かなのか。自分が今、どういう状態になっているのかは恭介自身にもわからない。

 ただ一つわかっていることは、自分の姿を見失っている彼を受け入れるフェイトはとてもやさしく、涙で濡れる彼の目にはまるで女神のようにすら見えていたということだ。

 

 「何があったか、言いたくないなら言わなくていいから、泣きたくなったら泣いていいから、ずっと私の傍にいて。私は誰よりも、兄さんのことを愛してるから――」

 

 二人はその後も抱き合い、今度はいつものように甘い行為を終えてから、二人並んでベッドで眠りについた。

 その時には恭介も落ちついていたようだが、それ以上に、フェイトの顔は幸せそうに緩んでいたという。

 

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