なんていうかもう、すみませんでした。
「あーやば……もう朝か……」
部屋の中に置いた鳩時計が鳴き声を発したことで、遠坂凛はようやくもう朝になったのだと気付いた。
衛宮邸に用意された彼女の自室は、普段よりも乱雑に散らかっていて、完璧を目指す人間とは思えない様相を称えている。しかし言い換えれば、「常に優雅たれ」を家訓とする遠坂家に生まれたプライドを捨ててでも解明したい謎があったのだ。
アベレージ・ワン、などと称され天才と呼ばれる凛は腕利きの魔術師だ。どこかのポンコツでは十秒もかからずに灰塵にできる程度には、魔術師としての彼女は優れている。
にも関わらず、冬木の地を統括する彼女でも解明できない謎が、今現在の冬木市に蔓延していた。それは彼女も参戦したはずの、聖杯戦争という概念に起因している。
七体のサーヴァントだけを呼ぶはずが、わけのわからん一匹を追加した大聖杯。マスターの命令には従うはずのサーヴァントが、そのマスターを放り出して実力もない一人の魔術師に執心している状況。そしてその一人と一匹によって気付いた時にはすでに完全崩壊していた、今回で五回目となる聖杯戦争。
謎が謎を呼び、もはや収集がつかないほど理解不能な状況を招いている。この現状を受け入れられない凛は自身の知識を総動員させ、過去の文献を紐解き、今回の第五次聖杯戦争に起こった異常を解明しようとしているのである。
しかし、すでに数週間が過ぎても収穫はなく、わかったことはイレギュラーなサーヴァントの異常性と、一人の魔術師が全サーヴァントを使役できるだけの環境にあるということだけ。本人にその気がないだけで、その魔術師が本気になればひょっとしたら世界を滅ぼすことすら可能なのかもしれない。それほどの戦力が彼に懐いて、比較的簡単に命令すら聞いてしまうのだから。
「……やめやめ。そんなはずないっての。いくらあいつらがわけわかんなすぎるって言ったって、そこまでは――あーもうっ、一旦休憩。アーチャー、はいないか。もう、誰がマスターだと思ってんのよ」
そんなばかげたことを思いつつ、時計を見て現実味を思い出し、自分が空腹を感じていたことを初めて理解した凛は思考するのをやめた。さすがに肉体の限界なため、飲み物と少量の食べ物を口にして寝ようと考えたのだ。
彼女は一度自室を出て、自身のサーヴァントが他のマスターにべったり張り付いていることを憎らしく思いつつ、キッチンへと向かう。この時間であれば、ひょんなことから同じ家で暮らしている二人も起きているはずだった。
襖を開け、キッチンと隣接するリビングとなる和室へ入ると、そこで彼女は一度足を止めた。そこで自分が頭に想い浮かべていた二人の姿を見つけたからである。
「うぅ、桜、もう……!」
「んふっ、ぢゅる、んちゅぅ――先輩、イキそうですか? ふふふ、いっぱい出してもいいんですよ。私が全部飲んじゃいます」
朝っぱらから、日課である食事の準備もせず、淫靡な姿で快楽を貪る妹と家主。そんな二人を見た凛は肩を落とし、はぁぁと息を吐いた。
壁に背を預けて立つのはジーンズのチャックの間からいきり立つ陰茎を出した赤毛の少年、衛宮士郎。凛が現在住んでいる屋敷の持ち主で、魔術師としてはまだまだ未熟なため、凛に弟子入りした彼女と同年齢の男だ。人一倍の正義感を持ち、並々ならぬ努力でめきめきと腕を上げているのは冬木にいる魔術師たちにも知れ渡っている。
畳の上で膝立ちになってその彼の陰茎を嬉しそうな表情で口に含み、丁寧に頭を振って、どくどくと発射された精を喉を鳴らして飲んでいるのが、凛の血が繋がった妹で他家の養子となった少女、間桐桜である。彼女は自身の青みがかった長髪を片手で耳にかけながら、愛する男に熱心な奉仕を続けている。
聖杯戦争が破綻して少し。ここのところ、桜はひどく幸せそうな顔で日々を過ごしている。過去には何やら辛い出来事もあったようだが、今回の一件で急きょ反乱を起こした桜の手により、間桐家の爺は痴呆へ逃げてただの老人に成り下がり、今までは威張り散らしていた兄は彼女の顔を見た瞬間に震えてしまうほどのトラウマを植え付けられ、もはや実質的に間桐家を支配しているのは他家から来た桜となったためであろう。
そのため、他所の家に何日滞在しても誰にも怒られることもない。むしろ現在の家族は彼女がいない方が羽を伸ばせるので、ちょっとしたイタズラのつもりで敢えて家に帰ったりすることもあるが、それ以外では桜はほとんど衛宮邸に出入りしていた。
それもこれも、その家の家主、同じ高校の先輩である衛宮士郎を愛しているためだ。出された精をすべて呑みきった桜は士郎の肉棒へ舌を這わせながら彼の顔を上目遣いで見上げ、ふふふと楽しげな声を洩らしている。
「先輩、気持ちよくイケました? ちゃんと残さず出せましたか?」
「あ、ああ。気持ちよかったよ。ありがとう、桜」
「うふふ、それはよかったです。それじゃあ今度はどうしますか? お口か胸か、それともそろそろ――」
「お熱いところ悪いんだけど、その前に私に気付いてもらっていい?」
新たに部屋の中に入ってきた人間にも気付かず、そのまま行為を続けようとする二人へ向けて、凛は若干苛立った言葉を向けた。ただでさえ疲労困憊で眠気が襲ってきているのだ、カップルがイチャイチャしている姿を見せられるほど苛立つことはない。たとえ相手が自分の理解を得ていて、なお且つ自分すら巻き込んだカップルでも、世の男女が人前でイチャイチャしているというのは癇に障るものらしい。
一声かかってようやく凛の存在に気付いたらしい二人は瞬間的に頬を赤くし、慌てて自身の服装を直し始めた。といっても、普段の格好で陰部を晒していただけの士郎と違って、裸にエプロンをつけただけの桜はそれ以上体を隠しようがなかったのだが。
腕を組んで壁に寄りかかり、少し怒っている風な態度で眉をひそめる凛は、口の端を上げて怖く見えてしまう笑みを浮かべている。そんな状態で、彼女はまたも二人へ向けて声をかけた。
「なるほど、私が冬木のオーナーとしてまじめに聖杯戦争のことを考えている間、あなたたちはずいぶんとお楽しみだったってことね。へーそう、そうなんだ」
「う……と、遠坂、その、これは……」
「あ、あの、姉さん! い、今お茶入れますから、ちょっと待ってて下さい!」
「あっ、ちょ、さ、桜っ!?」
自分の裸体を隠している部分より晒している部分の方が多い桜は、自らを抱きしめるようにしながらキッチンの奥へと走り去った。困惑した士郎をその場へ置いて。
確かに士郎と桜は恋人関係となっているが、それは士郎と凛においても同じことだ。二股、などというものではなく、姉妹公認で士郎に二人共面倒を見てもらっているのである。とはいえ今回の一件のように、どうしてもどちらかが抜け駆けしているように思えてしまうような場面も存在する。
おかげで板挟みとなることが多い士郎の苦労も多く、それはこの日も同じようであった。急に不機嫌になってしまった凛の指示で、士郎は大人しく言われるがままに畳の上へ正座し、彼女がその膝に頭を乗せると、そのさらりと手触りのいい黒髪を撫で始めるのである。
「まったく、人がこんなに頑張ってるっていうのに、あんたたちも能天気なんだから……」
「う、申し訳ない。でもさ、そんなに大きな問題が起こってるわけでもないし――」
「そういうんじゃないの。いい? 聖杯戦争っていうのは歴史あるもので、そうでなくても聖遺物が関わってるわけだし、あんなわけのわかんない争いをさせてる場合じゃ――っていうか、あんたよく問題がないなんて言えるわね。あいつらがところ構わず戦ってるせいで、冬木市全体ですっかり有名人なのよ、あんたのサーヴァントも私のサーヴァントも」
「た、確かにな……ほんと、誠義には悪いと思ってるよ。毎度のことだけど」
「あーもうっ、考えてたらまた頭痛くなってきた――ね、士郎。ちゅーしてよ、ちゅー」
「へ?」
膝枕をされたままで腕を伸ばした凛は、士郎の両頬に手を触れて甘え始める。どうやら身体的にも精神的にも疲れがピークのようで、いい加減ストレスを発散したい様子であった。
桜がすぐ近くにいるというのに、らしくもなく甘え始めた凛は普段は絶対に見せないような隙だらけの姿を晒し、とにかく士郎へすり寄った。それを受け止める士郎も彼女のことをよく理解しているのか、邪険にするようなことは微塵もなく、むしろやさしく微笑んで存分に彼女を甘やかす。
「大体、なんであいつらのせいで私がこんなに苦労しなきゃなんないのよ。サーヴァントは言峰君にばっかり懐くし、マスターもまじめに動く奴はいないし、貧乏くじは全部私……もうー、私の想定してた聖杯戦争を返してー」
「まぁまぁ遠坂、それはそれでいいじゃないか。なんだかんだでみんな楽しそうだからさ」
ぽつりと呟かれた心からの願望を叶えてくれる存在はなく、もはや願いをかなえるための聖杯とは存在しているのかどうか、それすらも不思議に思える状況だった。
そんなやり取りが衛宮邸で行われている一方で、凛の頭を悩ませる要因たちは商店街付近で騒いでいたようである。雑踏に囲まれる中心には凛のサーヴァントも、士郎のサーヴァントもいる。
行われようとしていたのは凄まじいレベルの喧嘩だ。セイバーはどこからか持ち出した鉄パイプを正眼に構えており、その隣にいる長身で黒い服を着た、ショートカットの白髪の女性、アーチャーは木刀を両手に持っている。そんな恰好で往来のど真ん中に仁王立ちし、目の前に居る相手を睨んでいた。
対峙するのは颯爽と現れ、争っていた二人の間に割り込み、新たな主張を始めたのが奇抜なアロハシャツを身に纏った長身の女性だ。長く青い髪をうなじの辺りで括った彼女は、その辺に置かれていた店頭の旗を持ち、槍を構えるかのように腰を落としている。まるで今にも戦いが始まらんとするかのような雰囲気なのだ。
その原因となってしまったのはやはりいつも通り、もはや商店街の皆さまにはおなじみの一人の少年のせいである。電信柱の陰に隠れてぶるぶると震える言峰誠義を奪い合うための戦いが、今まさに、今日もまた始まろうとしていた。
ちなみにこの時、誠義は逃げ出そうと何度も試みているのだがやはり英霊の目から逃れられるはずもなく、逃げるチャンスを拾えずにいる。肩の上に乗る自身のサーヴァント、ネコカオスもあくびしてばかりで全く頼れなかった。
「アーチャーばかりでなくランサーまで――罪作りな妻ですね。しかし、我が伴侶を狙う輩はたとえ東西南北どこの英霊であっても許しません。あなた方は、我が剣の前に沈みなさい」
「やれやれ、やはり気が抜けない男だ。昔から今でも、やはり誠義の傍には私がいなければな――そういうわけで、彼の傍におまえたちは必要ない。一刻も早く退いてもらおうか」
「まったくどいつもこいつも邪魔しやがって……ヘッ、まぁいいか。障害が多い方が恋は燃え上がるってな。どかねぇって言うんなら、無理やり押し通る」
鉄パイプ、木刀、旗。普段の武器を使わないところは周囲への配慮ができているのだろうが、戦わずして雌雄を決する、などという気遣いはできないらしく、がやがやと賑わう商店街の中で英霊同士の戦いが始まろうとしている。しかしその場にいる人々にとってもそれは当たり前の光景なようで、誰一人として警察を呼んだり、やめさせようと動く者はいない。
だからこそ電信柱の陰で震えている誠義の苦難は終わらないのだ。戦いは終わらせたいが、自分の力ではどうしようもない。そこで誠義は自らの肩の上でぐでりと力を抜いて、ベランダに干された布団のような状態で眠そうにしているネコカオスへと声をかけた。
「か、カオス、あれなんとか止められないの? このままじゃまた派手な喧嘩が起こるって、絶対……!」
「それは激しく同意だな。しかし吾輩、あいにくと今日は燃料切れで動けそうにない――ううむ、やはり賞味期限切れの猫缶はだめだったか。なぜか吾輩の目の中で星がまわっている……おや? もしやあれが死兆星?」
「そんなぁ……あっ! そうだカオス、あれがあるじゃんか、ダミアンアーミー! あれでなんとかみんなを止めてよ!」
「おお、そうであったな。では彼らに頼むとしよう。吾輩のコマンド、↓↓BorCでおなじみ――これぞ、我が盟友にしてふやけたクッキーのような顔の面々、エリートネコ部隊ダミアンアーミーだッ!」
ネコカオスがそう叫びながら天に向かって拳を突き上げると、ポンっという小さな音が鳴ると同時、誠義の影から一枚の小さなメモ用紙が現れた。
全く同時に、不思議そうに小首をかしげた誠義とネコカオス。すると誠義がそのメモを手に取り、文字が書かれている方を眺めると、身を乗り出したネコカオスがそこに書かれている文字を声に出して読んだ。
「ふむ、にゃににゃに、突然ですが休みをもらいます。探さないでください――なるほど。つまり今は来られない、と」
「ああもうっ、なんでこんな時に限って――前に出てきた時は全く関係ないのに来て一晩中暴れていっただけなのに……! 来てほしい時に来ないなんて、なんて役立たずな……!」
「ふぅむ、こうなっては仕方ない。最近になって吾輩のマブダチになった奴を呼ぶしかないか」
「へ? マブダチ?」
三人が即席の武器を手にして睨みあう中、誠義の肩から飛び降りたネコカオスが丸々とした手で空を指し、気合のこもった声を発し始めた。外見が陳腐なせいでふざけているようにしか見えないが、彼は本気だ。
イレギュラークラスとはいえ彼もサーヴァントの一人。対サーヴァント用の強力な宝具の一つや二つ、あったりなかったりするのである。現在のようにマスターが困った状況となったのならば、その悩みを吹き飛ばすほどの武器を用意すればいい。
小さな体がぷるぷると震えている間、徐々にネコカオスの影が大きくなっていく。そして限界を迎えたその時、彼は高らかに叫ぶのだ。
「カモンッ、我がマブダチ――ネコカオス・ブラックG666よ!」
「ねーーこーー」
「な、なんかネコカオス型の巨大ロボが来たァッ!?」
対峙する三人を遮るように、その真ん中に突如として空から現れた巨大ネコ型ロボット。それはネコカオスにそっくりの外見で、ネコカオスの影が大きくなっているからそこから出ると見せかけて空から来るというフェイントと共にやってきた。
見上げるほどの体躯は二メートルを越えていて、さすがの三人も首を逸らさなければその顔を見れない。その時の彼女たちはすっかり集中力を散漫にしていて、先程まで存在したはずの戦闘の気配もすっかり霧散してしまっている。
どころか、商店街に訪れていた人々もすっかり驚愕に襲われ、ぴたりと足を止めてその異常な風貌に見入っていた。それも当たり前だ、そんな異常なテクノロジーがあり得るはずもないのだから。
驚いていないのはこの場でただ一人、否、一匹。呆然としたまま動けない誠義の傍にいる、それを呼びだした張本人のネコカオスだけである。
「な、なに、なんなのあれ!? 武器!? 兵器!? 生物!? っていうか僕も初めて見たんだけど!」
「落ち着け、マイフレンド。あれはネコカオス・ブラックG666。どこぞのアンバーが作りだした吾輩のライバルだったが、なんか殴り合ったり競争したり河原で夕日を眺めている内に仲良くなったので、助けに来てもらった次第。正直言うと吾輩も呼ぶのは今日が初めてだぜ」
腰に手を当てて落ち着いて話すネコカオスの背後には、地面にへたり込んで電信柱に抱きついている誠義がいる。その位置関係をしっかりと見据え、先に動きだそうとしていた女性が一人だけいた。
他の二人が突如現れたネコカオス・ブラックG666に気を取られている中、元の場所に旗を直した女性は腰を落として、獣のような体勢で誠義を狙っていたのである。
「にゃっにゃっにゃっ。吾輩が賞味期限切れの猫缶という名の毒でやられている今、我が相棒セイギを守るのはかつての敵で今日の友――頼むぞ、ネコカオス・ブラックG666」
「任せておけ、オリジナル。さぁ、どこからでもかかって――」
「隙ありィッ!」
位置的にネコカオス・ブラックG666の背面にいたサーヴァント、青髪の女性のランサーは最速のサーヴァントの名に恥じぬ速度で誠義へ接近し、瞬く間に彼の体を抱き上げて走り出す。他の二人が気付いた頃には、すでに二人は商店街を抜け出そうとしていた。
当然、セイバーとアーチャーは苛烈に怒ってランサーへ言葉を放つのだが、その眼前にはちょうどネコカオス・ブラックG666が仁王立ちしている。早々に追える状況ではなかった。
「ハッハッハ、セイギは頂いたァ! おまえらはそこで仲良く遊んでな、セイバーと赤いの!」
「た、助けてーッ!?」
「なっ、待ちなさいランサー! 騎士の勝負に背を向けるとはなんという――せめてセイギだけは置いて行きなさい!」
「おのれ野犬がァ、今すぐ打ち抜いて――!」
「おまえたちの相手はオレだーッ!」
ズズン、と地面が揺れたことにより、セイバーとアーチャーの足は完全に止められた。その間にも誠義をかっさらったランサーの背はどんどん遠くなっていく。
途端に目の色を本気のそれに変えた二人は武器を構えなおし、本気の殺意を全身から溢れさせながら、ネコカオス・ブラックG666を正面から見据える。しかしそれでも、ネコカオスを作るための最強兵器として生み出されたネコカオス・ブラックG666は微塵も怯まない。
「くっ、仕方ありません――通さないというのならば、あなたを斬り捨てて進むまで!」
「後悔するなよ、バケネコ――セイギの身の安全が懸った今、無限の剣製、その真髄を見せてやる」
「フッフッフ、そこまで通りたいのならかかってくるがいい――オレは本来666回倒さなければいけないという設定だが、今回は特別に一ラウンドで通してやろう」
何やら奇妙な存在が、天下の往来の中で大騒ぎを始めてしまうのだがそれは現在の冬木市の中ではわりと当たり前なことで、素早く順応した近隣住民たちも応援こそすれ批判することなどないようだった。
商店街の中央は、尚もより一層の盛り上がりを見せているようだった。
「うーむ、吾輩もここまでか。そろそろ毒がまわってきたようだ――いや、まわっているのは猫缶か? どちらにせよ、後のことは任せる。吾輩の亡骸は、できれば秘蔵のHDたちと共に海に流してくれ……おや? セイギがいないな。ふむ、そういえば今日はスーパーで特売だと言っていたな。ではもうすでにそちらの買い物に……しまった、煮干しを買うように言うのを忘れた」
そんな騒動の中で一足早く、賞味期限切れの猫缶を食ったためという全く勝負とは関係の無い理由で倒れていた一匹のサーヴァントは、事前にあったマスターの心配とは裏腹に全然大丈夫そうであったという。
◆
バゼット・フラガ・マクレミッツは回想していた。それはとある男と知り合った際、彼が拾ったという孤児に出会った時のことである。
すでに言峰の名をもらっていた少年と会った日、バゼットは、言峰綺礼に対して真っ先に告げた。
「息子さんをください、お父さん」
「なんか目が危ないからだめ」
彼女の戦いはいきなり出鼻をくじかれる形で始まった。しかし、まだ終わりではない。むしろそこからが始まりなのだ。
そこから、彼女の本当の戦いが始まったのだ。本業を行う一方で何度も冬木を訪れ、綺礼の息子に会い、自分の印象を良くしようと奔走し、年月を重ねてきた。
そして現在、彼女は聖杯戦争の勝者となり、聖杯を持ちかえるという任務を請け負い、彼女は公的な理由で堂々と冬木市へ訪れた。さらには、なぜか聖杯戦争自体が破綻してしまっている現在の状況も、バゼットは自身をこの場へ送り込んだ魔術協会へも報告していない。一瞬でも長くこの場へ残っているためだ。
今、バゼットが目的としているのは聖杯を手に入れることではなく、長年狙い続けていた男を自身の伴侶とすること。よって彼女の口からランサーへと下された指令も、聖杯を狙うことではなく一人の男を自身の元へ連れてくること。
つまりは、言峰誠義を夫とするためだけに聖杯戦争へ参加したのが、このバゼットという女性なのである。今日も彼女は自分が宿泊するホテルの一室で、きっちりとスーツを着ながらも悶々としたままその場を動かず、いつこの場へ誠義が来るのだろうとうずうずしている。
するとこの時、ついに彼女の部屋の扉がガチャリと外から開けられた。それはランサーが帰ってきたことを意味しており、同時に待ち望んでいた瞬間が来たということでもある。
即座に目の色を変えたバゼットは素早く出入り口の方へと目を向け、とことこと歩いてくる二人の姿を視認していた。
「よぉバゼット、なんか待たせてたみたいだな。悪ィ悪ィ、すっかり忘れてた。また俺だけで楽しんじまうところだった」
「ちょっとっ、ランサーさん、どこ触って――んんぅ」
バゼットの目に映ったのは、相棒である長身の女性ランサーと、彼女に抱きすくめられながら体をまさぐられる愛しい男、誠義だった。
Tシャツの胸元から右手が差しこまれ、薄い胸板や刺激を受けてピンと立つ乳首、頼りなさげな腹までをしっかり触れられ、一方ではズボン越しに尻を撫でられる。男と女の立場は完全に逆転しており、主導権は完全にランサーが握っていた。
男女の構図は逆だが、ひどく絵になっている姿でもある。身長差のせいでそう見えていることを理解したバゼットは、ただでさえ愛しい存在を好き勝手に弄られていることに加えてさらに腹を立て、人知れず拳を握っていた。
誠義の体を思う存分楽しめて上機嫌なランサーはまだ気付いていない。
「やっぱり誠義の抱き心地はいいよなぁ――特に初めての時なんか最高だった。学校とやらの中に逃げていって、行き場を失くして俺に犯されたんだったよな。あの時はよかった。体ではしっかり感じながら、途中から泣きじゃくっちまってよぉ。ホントに可愛いよな、誠義は」
「し、しょうがないじゃないですか。初めてなのに、あんな乱暴に……あんなの普通にレイプでしたよ。制服だってビリビリに破かれたし、やめてって言ったのにやめてくれなかったし――そ、それに、可愛くないですってば」
「いやいや、誠義は可愛い。俺が言うんだからそうなんだって」
「うひぃ……く、首はやめてくださいって……!」
ランサーの赤く長い舌が誠義の首筋を這って、ねっとりと上へ向かって進んでいく。それだけで彼は小さく体を震わせ、胸元に差しこまれた手をぎゅっと握って目を閉じた。
あまりにも残酷な光景である。確かに連れてこいとは言ったが、何も目の前でイチャイチャしろなんて言っていない。そう思うバゼットはいつものようにグローブをつけていないというのに拳を握り、構えを取る。
直後には彼女の拳は閃光の如く宙を駆け、ぶれることなく調子に乗ったランサーの頬を打ち抜いた。途端にランサーの体は誠義から離れ、蛙が潰れたかのような奇妙な鳴き声が上がる。
その瞬間に、バゼットは解放された誠義の体を抱きしめ、瞳を潤ませる彼の顔を自分の胸に押し付けた。すると誠義は恥ずかしそうに両手をわたわたと動かし、戸惑っている様子を見せる。しかし逃げようとはしない。
バゼットはそのままの状態でうっとりと目元を緩め、さらに抱きしめる力を強めた。
「あぁ、誠義くん……ずっとこうしたかった」
「ば、バゼットさん? あの、どうかしまし――」
「誠義くん、もう我慢できません――」
説明も何も始まらない内に、バゼットの唇がそっと、誠義の唇へと押しつけられた。その瞬間、バゼットは自ら目を閉じてその感触に集中していたが、この状況に驚きを隠せない誠義は目を見開いて全身を強張らせる。対極的な姿である。
そのままの状態で、誠義の体は近くにあったベッドの上へとやさしく横たえられ、触れるだけのキスは尚も続く。柔らかい感触に夢中になってしまったかのように、バゼットは何度も首の角度を変えて誠義の唇を貪った。
そうしていると、あっさりと復活したランサーがしかめっ面でそんな二人へと近付く。誠義を愛しているのは何もバゼットだけではなく、サーヴァントである彼女も同じなのだ。いかに己のマスターといえども、見過ごせるはずがなかった。
「こら、言っとくけど俺が連れてきたんだぞ、バゼット。さすがに一人占めは許せねぇなぁ」
「む――その件については礼を言います。しかし、彼を泣かせたなんて話、聞いてませんでしたよ。それに、誠義くんをレイプしたなどと……こんな状況でなければ、一発では済まないところです」
「悪いとは思ってるよ。でもあんたならわかるだろ? 我慢できなかったんだ――なんかわかんねぇけど、誠義を見てると勝手に体が動くんだよなぁ」
「まぁ、その気持ちは確かに理解できますが……二度目はありません。もう彼を泣かせてはいけませんよ、ランサー」
「へいへい、わかってるよ。だから俺も、な?」
「仕方ありませんね……」
ベッドの上で重なり合ったバゼットと誠義の元へ、ランサーもまた身を横たえる。これで誠義の体は左右から挟まれ、簡単には抜け出せないような状況となった。
そうなると彼は当然とばかりに慌て始め、交互に左右の顔を見比べながら狼狽する。この状況には普段にはない、少しの緊張感が生まれるのだ。
ランサーは自分の初めてを無理やり奪い、泣かされた相手。バゼットは昔から知っているやさしいお姉さんで、惚れなかったと言えばうそになる、憧れの人。そんな二人に押し倒されて興奮せずにいられるほど、彼はまだ大人ではないのである。
するりと伸びたランサーの手が下腹部へ到達した時、ズボンはすでに大きく押し上げられていた。
「あ、あの、バゼットさん、ランサーさん……こ、これって……」
「あなたは何も心配しなくていいんです、誠義くん。すべて私に任せて――お姉さんに任せなさい」
「そうそう。前みたいにじっとしてろよ誠義。すぐに泣きたくなるほど気持ちよくしてやるから」
ランサーの手が陰茎をぎゅっと掴み、舌が再び敏感な首筋へ這わされる頃、バゼットは彼の服を脱がしながら何度もキスを送っていた。愛情が深く、相手を気遣うやさしい動き。それはランサーとは対極なものである。
それぞれ違った特徴を持つ愛撫が、挟み込むように誠義へと与えられていた。力強く、少し乱暴にも思える野性的な愛撫はランサーのもので、それとは対照的にやさしく、誠義を大事に扱おうとする淡い感覚がバゼットから与えられる。そのどちらもが気持ちよく、彼の体の中で反発し合うため、誠義の心はすぐにその行為に取り込まれていった。
だらしなく口元を緩ませ、無防備に体の力を抜いた誠義の口内へ、バゼットの舌が侵入する。その頃になるとすでに誠義の体は裸で、バゼット自身も服を脱ごうと手と体を動かしていた。
すでに自身の服を脱ぎ去ったランサーは迷いもなく誠義の下半身に顔を近付け、いきり立つ肉棒を眼前に置く。すると野性味あふれる笑みを見せたかと思えば、一気にぱくりと口内へと銜えた。
「うっ、ふぅ……!」
「んんっ、ふむっ――あぁ、誠義くん、誠義くんっ……!」
高ぶりを隠せないバゼットの動きは徐々に乱暴さを見せ始めていた。ランサーにはやめるよう言った彼女だが、本来の資質の故か、どうやら我を忘れる誠義をもっと責め立てたいと感じているようである。
バゼットの手が誠義の肌の上を這いまわり、首筋や胸、乳首や脇の下にまで余すところなく力強く触れていく。最初こそやさしく見えた動きはだんだん荒さを見せ始め、甘い声で喘いでいた誠義の声は徐々に大きくなっていった。
その一端を握っているのは、彼の肉棒を口に銜え、手で玉を揉みほぐすランサーの動きである。どこか力強く、しかしどこか気遣いも感じられる絶妙な力加減。彼自身の精神を揺さぶるための動きが大胆さを増していく。
正反対に見え、どこかでは似ている、ひと組の主従関係。彼女たちの呼吸はぴったり合わさっており、巧みに協力して誠義を高みへと押し上げていくようだ。バゼットからそうされていることに混乱している誠義は、とめどなく押し寄せる快楽に呑みこまれていき、すでにとろんと目を蕩けさせている。
しかしある時、先に我慢できずに動きを変えたのはバゼットだった。押し寄せる興奮に逆らえなくなった彼女はスーツをすべて脱ぎ終え、下着もすべて放り捨てると、ランサーを押しのけて誠義の腰へ跨った。膨れ上がって赤々と光る亀頭と、濡れそぼった膣とが、ぴとりと触れあう。
楽しくなってきたところを邪魔されたランサーは不満足そうだったが、興奮で顔を真っ赤にしたバゼットは平静を失くした瞳を誠義へと向けており、ぼんやりと開く彼の目と視線がぶつけた。
「ハァ、ハァ、誠義くん……どれほどこの時を待っていたか……! もう、もう入れちゃいますからね……!」
「んん、はぁっ、ちょ、バゼットさん……そんな、どうして……」
「決まっているでしょう――あなたのことが、ずっと前から好きだったからですよ」
そう告げ終わった後、バゼットは腰を降ろして彼の肉棒を体内へと迎え入れた。勢いがあったせいで両者の体に凄まじい衝撃が走り抜ける。どちらも咄嗟に舌を伸ばして足をピンと伸ばし、数秒は息もできずに快感に打ちひしがれていたようだ。
誠義はすでに限界に近い様子で、対するバゼットはすでに激しい絶頂を感じている。背筋を逸らしてぶるぶると体を震わせ、天井を仰ぎ見ながら動きを止める程度には余裕がないらしい。
その間に誠義の上半身の傍へ移動したランサーは、自身の大ぶりの乳房を彼の顔の上に置いた。とても楽しそうな笑みを浮かべつつ、もっと気持ちよくしてやろうと掬いあげるように自身の乳房を掴み、何度も彼の顔へ押し付ける。強弱をつけた動きは、確実に誠義へ興奮を与えていた。
彼が更なる興奮を感じている間に、少しばかり正気を取り戻したバゼットはゆっくりと腰を動かし始め、誠義の腹に両手をついて上下に動く。ずるずると肉棒が出入りを繰り返し、彼女の膣を押し上げるように狭い内部を広げさせた。
「うんんっ、はぁぁっ、あぁぁっ……!」
「うっ、ふぅぅ、バゼット、さんん……!」
「クックック、いい声出すなぁセイギ。おら、もっと鳴けよ」
ぐちゅぐちゅと淫靡な音が室内に広がり、激しい腰遣いで誠義の体が責め立てられる。しかしバゼットも同じくらいには感じているため、荒い息遣いはさらに乱れていく。
一心不乱で、ほとんど狂乱の中にあるような動きだった。一方的に腰を動かして肉棒を刺激するバゼットも、胸と手の動きで遊ぶように誠義の心を揺さぶるランサーも、我を忘れたかのように誠義にばかり集中力を向けている。今の彼女たちは戦士と思える雰囲気を持つ普段とはかけ離れた、快楽で堕落したただの雌だ。
しばらくもすれば、あまりにも激しい動きによって二人も限界へと達してしまう。ランサーに唇を吸われ、話すこともできない誠義は何かを告げることもできないままに射精を開始し、バゼットの膣内へと精液を放つ。それを感じた彼女は一際高く鳴き、自らも絶頂を感じて背を逸らす。
大きな快感の波に襲われた後、ぐったりと脱力したバゼットは誠義の上に覆いかぶさるように倒れ、そのまま目を閉じてしまう。同じように誠義も脱力した状態で目を閉じ、荒く息を繰り返している。
ようやく室内が静かになってから、ランサーは誠義の上に寝るバゼットの体を別のベッドへ寝かせると、今度は自分が彼の体に抱きついた。ただし、いつかとは違って、今度は自分がベッドに寝そべるように位置を入れ替え、わざと誠義に押し倒されるような格好になった。
その状態で、ぐったりと胸の間に顔を埋めてくる誠義の頭を撫で、微笑んだランサーは小さく囁く。男っぽいために普段は感じられない、妙な色っぽさが込められた声で。
「ほら、誠義。前は俺から無理やりだったからな――今度は誠義からしてもいいぞ。好きなように動いてみろ」
「え……ほ、ほんとですか?」
「ああ。やり返したかったんだろ? ほら、今がそのチャンスだ。やってみろよ」
「は、はい……」
今度は誠義の方から腰の位置を正し、ゆっくりと前へ突き出していく。非常にゆっくり、ずぶずぶと膣の内壁を押し分けて肉棒が奥へ進んでいった。
自分より長身のランサーに抱きすくめられ、下から乱暴に口内を荒らされながら、誠義は徐々に腰の動きを速める。目は閉じられ、襲い掛かる快感に屈しないようにと尻の穴へきゅっと力を入れながらのことである。
しばらくは突かれるがままに体を揺すられていたランサーだが、少しもすれば自分も動きたくなって落ち着きがなくなる。確かに誠義の方からそうされているのも気持ちいいのだが、それ以上に彼を感じさせたいと思ってしまう。
感じさせられるままではなく、ついに自分からも動き始めたランサーは長い腕をすっと伸ばし、誠義の尻の間に指を這わせた。そして、彼が一足先にイカないようにと力を込めているそこへ、つぷりと指先を挿入させる。
途端に誠義の目は見開かれ、調子よく動いていた腰はぴたりと動きを止めてしまった。めずらしく自分から胸の間に顔を押しつける彼はどうやらそれだけで達しそうなようで、あっさりと余裕の無い、情けない姿へと変わる。
にやりと口の端を上げるランサーはそれが楽しいようで、機嫌良さそうに指を動かして誠義を責める。それに合わせて腰の動きはどんどん小さくなり、もはや耐えることに精一杯な様子だ。
「はぁ、セイギ、イキそうなんだろ? 我慢しないでもうイッちまえよ」
「うくっ、うぅ……!」
「ほらほら、腰が止まってるぞ。もっと速く動か――あっ」
楽しげに話している最中で、亀頭の先からどぷりと精液を放っていた。ランサーの膣内、奥深くに彼の子種が勢いよく吐き出されている。彼女本人も驚いてしまうようなタイミングだった。
唐突に始まった責めに耐えられなかったのだ。思いのほかあっさりと射精した誠義はその最中からぐったりと脱力して、胸の中に顔を埋めて静かになる。荒い息を整えようと必死に呼吸を繰り返しながらではあるが、少し恥ずかしそうにしているようにも見えた。
すると楽しげに微笑むランサーは彼の頭を撫でながら、やさしい声色で囁いた。柔らか声色とは裏腹に、発する言葉は少しイタズラなものである。
「なんだ、やっぱりもうイッたのか? 意外と早いんだな、誠義」
「うっ、はぁ……こ、こんなの、我慢できないですって……」
「クククッ、まぁいいさ。それより、俺はまだ満足してないんだから、もう一回――おっ?」
顔を上げて潤んだ瞳を向けてくる誠義にランサーが答えていると、その背後で動く影があった。先程まで失神して動かなかった彼女の相棒、ゆらりと立ち上がるバゼットである。
なぜか危うげな雰囲気を持ちながらベッドの傍へ立ったバゼットは奇妙な色を灯す目をぼんやりと開き、誠義の裸体、背中や尻を眺めている。その状態のまま、ぽつりと呟くのだ。
「ランサー……私と交代してください。もう一度、誠義くんとの繋がりを――」
「残念ながら、誠義はイッたが俺はまだイッてない。もうちょっと待ってくれよ、バゼット」
「ふ、そうですか……ならば私は、私のしたいことをするまで……」
ゆらり、ゆらりと体を揺らし、まるで幽鬼のような雰囲気を持って動く彼女はどこぞへと赴き、妙な薬を手に取った。
そしてその丸薬を呑むと、見る見るうちに彼女の肉体に変化が起こる。美しい筋肉美を誇る裸体がぶるぶると震えて数秒、己と誠義の体液で濡れていた膣の奥から、ずるりと男根が出てきたのだ。
女らしくなく、むしろ男らしい肉棒が現れ、その光景をまじまじと見つめていた二人は言葉も失くして呆然としていた。いくら魔術が存在する世の中とはいえ、そんなことはありえないと思っていたのだろう。
だが実際、今のバゼットの股間には男の象徴が生まれている。女の体でありながら男の陰茎も持つ、なんとも不思議な姿である。
「うぅ、ふぅ――ふふふ、どうですかこれ? 魔術協会の知り合いに頼んで内密に作ってもらっていたんです。いつかこの時が来ると信じて――」
「お、おいバゼット。それって何なん――いやいや、それで一体何をするつもりだ? ま、まさかとは思うが……」
「ふ、ふふふふふ、ええ、決まっているでしょう――私がこれで、誠義くんを抱くんです」
「……え? ええ? えええぇぇ?」
思いがけない発言に反応して、不安からか誠義は繋がり合ったままのランサーへと強く抱きつく。現在彼女の膣内にある陰茎は少しばかり小さくなって勢いを失くしており、精神的な反応は思いのほか大きいようである。
だが、当の誠義が怖がっていることにも気付かないバゼットは妙に据わった目で誠義の尻を見つめ、舐めまわすようにねっとりと視線を動かしている。艶めかしく、そして同時に恐ろしい、これまで彼女のことをやさしいお姉さんとして見ていた誠義にとってはトラウマにもなりかねない姿だ。
股間の肉棒をぶるりと揺らしながら、非常にゆっくりとベッドの上に乗ったバゼットは自身の男根に手を添え、もう片方の手でゆったりと誠義の尻を撫でた。
その後はランサーに抱きつく誠義の不安も他所に、バゼットはしっかりと狙いを定めてしまったのである。
「あぁ、ついにこの時が……! 初めて見た時から、この子犬のように可愛い男の子をめちゃくちゃにしたいと思っていたんです……! それが今、ここで――!」
「ちょ、ちょっとっ、待って下さいバゼットさんっ! お願いですからそれだけは――あっ、あぁっ、アァーーーっ!!?」
「セイギ……俺のせいとはいえ、なんて不憫な子……」
この一日の後、ランサーを怖がっていた誠義は以前のことなど忘れたかのように彼女へ懐き、代わりにバゼットに対しては顔を合わせただけでびくびくと震えてしまう体質となったらしい。
というわけで、ダメットさん――もとい、バゼットメインのお話でした。ネットを駆け廻っている時に色々な刺激を受けたため、こんな形となっております。最後まで事細かに描写しなかったのは、読む人への配慮のつもりです。
ふざけるつもり以外何もないシリーズですから、これに関してはまじめな期待を向けないでください。ただネコカオス・ブラックG666を出したかっただけなのです。