目を覚ますと白い天井が見えた。薬品の匂いが鼻腔をくすぐったことから保健室なのだろうとわかる。寝転ぶ自分を支えてくれているのは以前にも頼ったベッドで、その景色も見覚えがあった。
なぜ自分は倒れているのだろうか。記憶が混濁している。保健室に運ばれたからにはきっと倒れてしまったのだろうがその理由がわからない。
体に痛みはない。だるさはあるものの動けないほどではないだろう。
起き上がろうとして、ベッドに手をついたその時だ。
閉められていたカーテンが開き、向こうから可憐な少女が顔を出した。
その顔に気付いて岸波白野はあっと声を漏らす。
「先輩……気が付いたんですね」
「桜? どうして。俺は、確か」
消えるはずだった。その言葉を呑みこむ。
戦いは終わったはずだった。彼の脳裏に残っている記憶は嘘ではない。聖杯を巡る戦争の終盤、相棒であるサーヴァントと共に戦いを勝ち抜き、聖杯まで辿り着いたその光景。しかし何かが奇妙だと気付く。記憶は確かに残っているが、そこに奇妙な相違があるように思える。
相棒、サーヴァントは一人のはず。なのになぜ記憶の中に四人も居るのか。
赤きドレスを纏った暴君。
赤い外套の皮肉屋な弓兵。
半人半獣の妖艶な呪術師。
黄金の輝きを放つ英雄王。
頼れる相棒として心を預けたサーヴァントが四人、霞むことなく明確な記憶として白野の中にある。だが一体なぜだろう。一人のはずなのに彼らのことをよく覚えている。或いは何らかの要因によって植え付けられた偽の記憶の可能性もあるが、偽物か、そうでないのか、それすらも自分ではわからない。体験は彼の中にしっかり根付いており、とても虚構だとは思えなかった。
困惑し、思考に埋没していく。
かつてと同じような感覚を味わっていた。記憶を失い、進むべき道がわからずに迷っていた頃。
救ってくれたのは仲間だった。支えてくれたのは相棒だった。今や不思議にも脳裏に四人存在しているサーヴァントだった。
動揺し、考える内に自分が揺らぐ感覚を覚える。
記憶と現実の相違。体験と事実の乖離。自分は誰で、何が真実なのか。
そして何より不思議だったのは、彼の記憶の中には岸波白野の最期が刻まれている。霊子虚構世界、
岸波白野は消えた。その記憶に間違いはない、と思う。
だからこそ不思議に思う。
消えた自分が前と変わらぬ月海原学園の保健室に寝ていて、間桐桜という少女に迎えられることが。普通に見えるからこそあり得るはずがないと自覚していた。
白野は現実を受け入れられず、額に手を置いて苦悩する。
そこへそっと桜が歩み寄り、ベッドの端に座って、彼の顔を覗き込んだ。
「先輩? まだ、お体の具合が悪いんですか」
「いや……俺は夢でも見てるのかな。ちょっと、訳が分からない」
「無理はしないでください。体調が悪いなら、そのままで」
「俺は、消えたはずじゃなかったのか」
ぽつりと呟かれる。核心を突く言葉だった。
再びベッドに寝そべって考える。
頭の中が整理できず、今度は考えようとしても無駄な徒労に終わったようだ。
溜息をつきつつ、白野が言葉を吐く。
「頭の中がぐるぐるしてるんだ。まるで夢でも見てるみたいで――」
彼が苦悩が伝わったのか。咄嗟に桜が動き出していた。
目を瞑る白野の顔に音もなく近寄り、言葉を遮るかのように唇を塞いだのだ。
ちゅっと音が鳴る。その時には驚きから白野が目を見開いていて、目を閉じていながら幸せそうな表情の桜を間近に見つけ、今、自分たちは間違いなくキスをしているのだと理解する。
大した動きはなくぐっと押し付けられる。
柔らかさが如実に伝わって、気付けば自分の中から悩みが吹き飛んでいた。しかし代わりに抑えきれない驚きが生まれて両手が意味もなく動き出す。
抵抗するのか、しないのか。戸惑っている内に彼女の顔が離れた。
至近距離から見つめ合った顔はとても美しく、可憐で、思わず息を呑む。
彼女は、こんな顔をしていただろうか。改めて見る桜の姿には驚きを隠せず、同時に、今まで見た事が無い表情だと思えて胸の鼓動が速まった。
白野を心配しながらも、薄く笑みを称えて。彼の左の頬にそっと手を添えた桜が口を開く。
「まだ目が覚めたばかりです。今は何も考えずに、一度落ち着きましょう」
「さ、さくら……?」
「私、先輩がここに居てくれて嬉しいです。それじゃだめですか?」
いつしか桜は態勢を変え、上履きを脱いでベッドへ上がっていた。
白野の上から覆いかぶさるように寝る。首筋へ顔を埋め、ぎゅっと抱きしめる形であった。近しい少女の唐突な行動に頬は赤面し、身動きできなくなるほど体が硬直する。
「先輩が居てくれるだけで嬉しいんです。もう、どこにも行かないでください……」
「あ……」
今にも泣きそうな声だ。耳元で囁かれて言葉を失う。
やさしい彼女はきっと心配してくれていた。どう足掻いても消える運命にあった自分を、一人の人間として、ずっとこの場所で想ってくれていたに違いない。
そのやさしさに胸が温かくなり、言い知れないほど感謝する。
まだ事態を呑み込めていない。自分は生きているのか、死んでいるのかすら希薄。しかし確かなことは、彼女は自分のことを想ってくれていた。居場所を失くさないように、岸波白野のことを覚えてくれていた。今はそれだけでいい。それがわかっただけでどうしようもなく嬉しかった。
白野は自らの意思で桜の背に腕を回す。抱きしめると少しだけ苦しそうな声を発したが、それすらも愛おしい。
頬ずりを始める彼女を受け止めながら、白野の声は穏やかだった。
「ありがとう、桜。俺の居場所を残しておいてくれて」
「はい。私、先輩が居ないと生きていけないんです」
「そうか。そこまで思われてるとは、思わなかったけど」
「どんな理由があって、何が起こっていたとしても関係ありません。私は――」
腕を突っ張って顔を上げ、桜が白野の顔を見下ろした。
今度はさっきよりも笑みが増して、心底嬉しそうに告げられる。
「私は、先輩が好きです」
はっきりと伝えられる。
驚きはしたがすぐに嬉しさがこ込み上げて笑みが抑えられなくなった。
白野は頷き、パッと更なる笑顔を咲かせた桜の様子を見た。
「ありがとう。桜のおかげで落ち着けたよ」
「先輩……はいっ」
再び桜が強く抱き着き、抱きしめ合う。
そのまま時が流れた。どちらも何も言わず、保健室全体が静かになる。
ただ触れ合っているだけなのに驚くほど落ち着く。どれほどそうしていただろうか。桜の体は柔らかく、不思議と甘い匂いがするようで、特別な何かもなくそうしているだけで気分が良くなる。沈黙も苦にはならずに黙っていても心地良さは変わらなかった。改めて理解するが、やはりそれだけ彼女に心を許しているということに違いない。
しばらく無言の時間が続いて、やがて桜が動き出す。
先程と同じように顔を覗き込んで恥じらった笑顔。
何か様子がおかしいと感じて見つめていると、鼻先を触れさせて、囁き声で言う。
「先輩。あの、起きたばかりで申し訳ないんですけど……」
「ああ。なんだ?」
「私、もう我慢できないんです」
じっと目を見つめられてドギマギする。
以前はこんなに積極的な女の子ではなかった。さっきの告白といい、キスといい、今といい、何かが違う気がする。或いは何かが変わったのだろうか。
こういった彼女を見るのも気分は悪くない。胸が高鳴るということは喜んでいることだろう。
自分でも不思議に思うが抵抗する気はなく、次の言葉を待っている気がする。
桜の顔から目が離せず、体が熱くなっている自覚があった。
「えっちな子だって思いますか? でも勘違いしないでくださいね。誰にでもこうなる訳じゃありません。先輩といっしょにいると、胸が苦しくなるんです。もっと触れたいって、もっと知りたいって思うんです。先輩のすべてが、欲しくなっちゃうんです」
「う、うん」
「はぁ、今も熱くて……体が、言うこと聞きません。先輩とキスしちゃって、抑えられなくて……私、一つになりたいです。先輩と、一つに」
ずいぶんな告白だと思う。しかし嫌がる自分はどこにも見当たらない。それどころか彼女の言葉一つ一つに喜びを覚えて、体が徐々に熱くなり、我慢できなくなってきたのは彼も同じだった。
甘い香りが強くなったように思う。
こんな感覚は知らない。体と自我が暴走して抑えが利かなくなっていた。
いつの間にかズボンの下でペニスが膨らんでおり、桜が緩やかに体を揺らしてくるせいで股間と触れ合い、それが微弱な刺激となって頭がかっと熱くなった。
視線は彼女に釘付け。桜も白野から目が離せない。
怪しく動く指が白野の頬をするりと撫で、さらに気分を高ぶらせる。
「だめ、ですか? なんか、んん、体が熱くて……」
「お、俺もだ。このままだと我慢できそうにない」
「じゃあ、我慢、やめましょう。はぁ、だめなんです。先輩の顔見ると、いつもこうなっちゃって。んん、先輩に触って欲しいんです。私のこと、好きにしてください」
「桜……」
体が熱くなって思考が蕩けていく。まるで頭が沸騰しているかのようだ。
訳も分からず、白野は桜の頬を掴んで引き寄せた。
荒々しく唇を塞ぎ、驚愕して目を見開く彼女の唇に強く吸い付く。すぐに桜も順応し、自ら目を閉じるとうっとりした表情。嫌がる素振りなど皆無でされるがままとなった。
静かに離れる。
呆けた顔で見つめ合い、どちらも感情は同じだった。
もっと触れたい。もっと気持ち良くなりたいと感覚が暴走している。
今や自分では止められず、本能に従い、両者は深くキスを始めた。
「んっ……ふっ」
もう我慢はしない。言葉にしないがすでに決めている。
二人は唇を同化させて、舌を絡め合い、顔の角度を変えてさらに深く繋がろうとする。
我ながら異様だと思った。まるで獣のような我武者羅さ、らしくないと知りながらも体を制御することができない。
唇を感じて、舌を感じて、熱くなった呼吸が肌に当たる。
彼女の柔らかさが心地よかった。体の熱がよく伝わり、やけに興奮した。
どうすればいいかなどわからないがとにかく手を動かす。経験がないせいでどうやって相手を気持ちよくすればいいかは知らない。だけどただ触れたいという欲求は有り余るほど持っている。戸惑いながら動いた手は恐る恐る、服の上から彼女の体へ触れた。
あっと小さな声。
胸を触られた桜は恥ずかしそうに顔を背ける。
嫌だったかもしれない。そう思って気遣おうとするのに、右手は柔らかい感触を揉み続けた。手の中に余る大きく柔らかな感触は他の何にも代え難い。離すのは惜しまれた。
それを知って、流し目で興奮した白野の顔を見た彼女が呟く。
「あの……服、脱ぎましょうか。その方が、その、しやすいですよね」
「あ、ああ。そうだな……」
耳まで真っ赤にしながらずいぶんなセリフを吐く。
恥じらう彼女なのに意外にも大胆で、まるでリードされている状況だ。けれどそんなことを気にしていられる状態ではなく、思考が蕩けた今は男のプライドがなんだと言っていられない。今にもペニスが暴発しそうで、我慢するのにやっとだった。
上体を起こし、腹の上に座った桜が服を脱ぎ始める。
一枚一枚、妙に艶めかしい様子。白衣が床へ落とされ、制服が肌を離れていき、最後には下着のみとなった肢体。恥ずかしがりながらで時間はかかったが自らの手でその姿となった。
興奮は抑え切れず、桜の肩を掴んだ白野は無理やりベッドへ押し倒し、上から覆いかぶさる。
きゃっと小さな悲鳴が聞こえるも、嫌がる素振りはない。所在なさげに胸の辺りに両手を置いたまま、顔はそっぽを向いて、そのまま続けて欲しいのだとわかった。
「桜、きれいだよ。俺、どうにかなっちゃいそうだ」
「……なっても、いいですよ。私も、あの、えっと……めちゃくちゃにして欲しい、です」
「さ、さくらっ」
襲い掛かるようにのしかかって首筋へ唇を触れる。
白い肌を舐めてじゅるりと音が鳴り、耳元から聞こえるそれが妙に興奮を煽る。桜は身を捩って喜んだ。唇をきゅっと結んで目を閉じ、行き場を失くした手はシーツを掴む。
些細な動作すべてが可愛らしく、両手が上機嫌に胸へ触れる。
大きくて重そうな乳房は触れるとマシュマロのように柔らかく形を変え、押せば指がわずかに埋まり、弾くように叩けばゆさりと揺れる。
桜は恥じらいでいるが白野は気にせず上機嫌な様子だ。
おもむろにブラジャーが上へずらされる。
ピンク色の乳首が露わになり、すでに勃起しているのが見て取れた。
「あぅ、せんぱい……!」
桜の声に反応せず乳首へむしゃぶりつく。もう片方は指先で摘まんで刺激した。
味がする訳ではないものの不思議と甘いような気がして、無性にやめられなくなる。
しばし離れられなくなった。
もう片方にもしゃぶりついて思い切り舐め回す。今の白野には何を言っても止められず、羞恥と快感で息を乱した桜が肩に手を置いても、気付きもしない。
一度火がついた興奮には抗えずに、たっぷり数分間は乳首をしゃぶった後。
ようやく冷静さを取り戻し、白野が顔を上げる。その時には桜は少しぐったりした様子で、その姿を見れば少しやり過ぎたかと反省してしまう。わずかに体を震わせている彼女は潤んだ瞳で白野を見上げ、唇を動かすと、どこか呆けた声を出した。
「せ、せんぱい……ずるいです。私だけ気持ちよくなっちゃったじゃないですか」
「あ、ご、ごめん。桜が可愛くて、つい」
「もう、そんなこと言って……他の女の子にも言ってるんですか?」
「そんなことない、と思うけど」
「それにしては色んな人から人気があるみたいですけどね」
いじわるするかのようにそう言って、慌て始めた白野を見ると桜が笑う。
くすくす肩を揺らして楽しそうな表情。やっと平静を取り戻してきたらしい。
表情は明るくなり、緊張は消えないものの、肩の力が抜ける。
白野の胸に手を置いて、やさしく囁かれた。
「私も、先輩にしてあげたいです。恥ずかしいですけど、いいですか?」
「いいのか? こういうこと聞くとあれだけど、経験とか」
「ありません。でも知識としては知ってます。先輩に気持ちよくなって欲しいから」
桜の手が胸を伝って降りて行き、そっと下腹部へと触れる。布越しだが感触は伝わった。痛いほど勃起したペニスが解放される時を今や遅しと待っている。
その微笑みは聖女のように見えて。
また頬を赤くしながら手でペニスを揉む桜は、淫靡な雰囲気を纏いながらも不思議と下品には見えず、白野へ顔を寄せて怪しく囁いた。
「ここ、もう我慢できませんよね。お口でしてあげましょうか?」
「うっ、桜……」
「やってみたいんです。ズボン、脱いでもらえますか。それから、私の顔、跨いでください」
やさしく擦られては拒否のしようもなく、白野は頷く。
両手は自らの下半身へ向かう。ベルトを外してズボンを下ろし、脚を抜いてそこらへ放り投げると、戸惑いはしたが意を決して下着も脱ぎ捨てる。
ビンとそそり立つペニス。先端が先走り汁で濡れていて、ひどく浅ましい姿だ。
それを目で確認した桜は少し驚き、だが目を逸らさない。
今度は両手でそれに触れた。
桜に弄られながらも白野は言われた通り、少し移動して彼女の顔を跨ぐようにベッドへ膝をつく。顔の前にペニスを置いて、桜の顔を見下ろすのはひどくいやらしい光景だった。
「じゃ、じゃあ、いいかな?」
「はい。下手かもしれませんけど、頑張りますね」
両手の指先で竿を握り、いけないことをしている雰囲気で桜が舌を伸ばした。
ぺろりと触れられる。途端に亀頭が震えて、喜んでいるのは明らかだった。
白野の表情が変わったことを知って桜は微笑み、さっきよりもう少し強く舌を這わせる。舌先でつつき、ぐっと押し付けるような仕草。与えられる感覚はわずかだが思わず表情をしかめてしまう。初心そうに見える可憐な少女が、自身のグロテスクなそれを見つめて、手で触れて、あまつさえ口に含もうとしているのである。見ているだけでも毒になって白野は顔を上げると目を閉じた。
視界がゼロになると余計に触れられ方が鮮明にわかる。
ちろちろと舌先で舐められ、亀頭の形をなぞるようにゆっくり、丁寧に唾液を塗られていた。
確かに気持ちいいが、物足りない感じもあって。もっと激しくして欲しいと望んでいる。
叶うのならば彼女の後頭部を掴んで喉の奥まで思い切り突っ込み、何も気にせず全力で腰を振りたい。彼女の喉の奥へ出してしまいたい。
目を閉じたせいかそんな妄想が脳内を支配し、興奮が高まる。
一方で亀頭へ与えられる快感はほんのわずかで。
耐え切れなくなった白野は桜の顔を見下ろすと焦った様子で言ってしまう。
「さ、桜。もっと……その、これじゃもどかしくてさ」
「あ、辛かったですか? ごめんなさい、痛くないのか気になっちゃって」
「痛くない。痛くないから、もうちょっと強く」
「わかりました。それじゃあ――」
白野が見ている前でぱくりと亀頭が銜えられる。今度こそ我慢できなくて彼の背筋が伸びた。口からはだらしない声が漏れ、してやったりと桜の頬が緩む。
舐められるのと銜えられるのでは感触が違う。
唾液を塗りたくられてじゅるじゅると、頭が振られて刺激が強くなった。
待ち望んでいたのはこういう物だ。それでもやさしく感じるものの、彼女の口の中に入っているのだと思えばそれだけでイってしまいそうになる。必死に耐えながらも本音はすでに出してしまいたいと思っていて、気を緩めれば今すぐにでも出てしまうだろう。
白野の吐息は熱くなり、荒くなって口から漏れ出る。
桜はそんな彼の様子を伺いながら丹念にペニスをしゃぶった。
「んっ、んっ、んっ――」
リズムよく亀頭が扱かれて唇に吸い付かれる。
同時に竿を持つ指先がにぎにぎと揉むように刺激を与えていて。
記憶喪失も手伝ったのかもしれないが、そんな感覚は初めて覚えた訳で、徐々に平静を失くしていく白野の口はだらしなく開かれ、端から唾液を垂らしてすらいた。
口から出る小さな嬌声も間抜けな物である。
感じていることを知ってさらに桜の機嫌は良くなった。
「あぁっ、うぅ、あっ――!」
「んふぅ。ちゅ、れろっ、ぷあっ」
前向きな姿勢のせいか、時間が経つごとに桜は上達していくかのよう。白野の反応が良い部分を探りつつ、快感の与え方に工夫をし始めていた。
亀頭を口に含んで強弱をつけて吸い付いたり。少しインターバルを置くように竿を舐め、玉を揉みほぐしたり。口を離せば少し余裕を取り戻せるようだった。だから敢えて根元の方を舐めてやって、落ち着いた頃に急に亀頭を口に含み、割れ目を舌先で強く撫でてやると面白いほどに腰が震える。今や完璧に彼女の手玉に取られていた。
ふふふと楽しげな声。桜はこの瞬間を楽しんでいた。
ガチガチのペニスをしゃぶりながら、楽しむ様は妖艶な雰囲気を称える。
「あっ、あっ、桜……!」
「ん、イキそうですか? それとももっと強くします?」
「はっ、ふっ、も、もうちょっとだけ、強くして。て、手で扱いて。そうしたらイケそうだから……」
「こうですか?」
「あっ、そ、それっ。それで、くぅっ」
右手で強く竿を握って上下に扱く。指先でやさしく握っていた時とは比べ物にならない。いやらしさが増したような気がしてそれだけでも興奮した。
一方で亀頭も口内へ迎えられて吸い付かれる。
いよいよ気分が高まって来た。
いつの間にか余裕を失くしていた白野は手で桜の頭へ触れ、手触りのいい髪に触れていた。
固定する様子ではないがそれにも等しい。
ぐっと顎を引き、感極まった声が出された。
「あっ、も、もう……イクッ!」
「んっ!?」
堪えきれずに白野が射精した。事前に伝えていなかったせいか桜が亀頭を銜えたままで、勢いよく精液が口内へと飛び込んでいった。
腰が震えてすぐには動き出せず。凄まじい快感が全身を支配する。
竿の律動が止まる頃には独特の倦怠感に包まれていて、ぼんやりした顔の白野はそこから動けなかった。しかし、真下に居る彼女の顔を見た時にさっと顔が青ざめる。慌てて飛び退き、口からペニスを抜いてやった後で心配した。
初めてだと言っていたのに口内射精などどうかしている。
桜の頬に手を添えて吐き出すよう言うが、妙に熱っぽい眼差しに魅入られた。
「ごめん、桜っ。吐き出していいから、えっと、ティッシュは――」
「んっ、へんはい……」
「え?」
なぜか桜は慌てておらず、横向きに寝ると口を開け、口内にある大量の精液を見せつけた。
白くどろどろした濃厚な体液。
舌を動かすとそれが絡みつき、淫らな色に思える。
再び口を閉じて表情が緩む。突然桜は喉を鳴らし始め、飲み始めたようだ。
白野が慌てるものの何かを言う前にもう一度口が開けられる。
口内にあったはずの精液はきれいさっぱり無くなっていて、今は彼女の体内にあった。
「えへ。飲んじゃいました、先輩の」
「だ、大丈夫なのか? ごめん、こんなことしちゃって」
「いいんです。私がしたくてしたんですから。それに、嬉しかったです」
「嬉しい?」
「先輩をもっと感じられた気がして……」
今になって恥じらいを思い出したか視線を外し、俯いてしまう。
多少過激な部分もあるがどこまで可愛らしいのか。白野の胸の内は温かくなった。つくづく彼女が初めての相手で良かったと思う。そしてこの先に進みたいとも思った。
「あの、私にもしてもらっていいですか? 気持ちよさそうにしてる先輩を見たら羨ましくなっちゃって。あ、でも嫌ならいいんですよ」
「嫌なはずないよ。でも、本当にいいのか?」
「は、はい。先輩になら、見られても……」
シーツの上に仰向けで寝転んで、脚を投げ出した。
白野は頷いて動き出す。
「脱がせてください……」
「ああ。わかった」
脚の方へ移動してからショーツへ手をかける。緊張で手が震えそうだった。みっともないところは見せられないため意を決し、するりと足から抜き取っていく。
そうして守られていた部分が見えた。
薄く陰毛が生えた股間。ぴたりと閉じた陰唇がいやらしく、期待するようにわずかに濡れている。それが目で確認できるということはよっぽど興奮していたのだろう。想像とは違っていて、白野は息を呑んだ。嫌なはずがない、むしろしゃぶりつきたくて堪らない。
やさしく太ももを掴んで脚を開かせ、間に入る。
顔を秘所の間近にまで持って行けば流石に桜が身じろぎしたが、拒否する言葉はない。
「ど、どうぞ。先輩の口で、気持ちよくしてください」
頷いてから口を寄せる。
初めて見る女性器。頭が熱くなって何も考えられない。
どこともわからず舌を伸ばして舐め始めた。とにかく触れてみたかったのだ。
「あっ……んっ」
艶っぽい小さな嬌声。耳に心地いい。
恐る恐るながらも試すように触れていく。外側の大陰唇から舐めて形を確かめ、思いのほか柔らかいのだと舌先に感じる弾力に気を良くし、徐々に内側へと進んでいく。流石にその辺りのことは知っていた。記憶喪失とはいえ年頃の青少年。映像や写真は見た事がある。
いやらしく濡れる膣の入り口と、すぐ近くには尻の穴。
隠されることなく見せられた彼女の恥ずかしい部分にペニスが一瞬で硬くなる。
今すぐ挿入して腰を振りたい衝動を持ちながら、彼女を大事にしたいという気持ちが冷静さを失わせない。尚も彼は丁寧に桜の股間を舐め回した。
「ふっ……んっ、んんっ。あ、せんぱ――」
「はぁ、ふぅ。すごいな。ずっと舐めていたくなる」
「んん、そんな、恥ずかしい……あぁっ」
着実に桜は興奮していた。紅潮した頬はそのまま、両手で顔を隠してしまう。
是非とも顔を見たいというのが本音だったが、あいにく口が離せない。
ぢゅるるっと卑猥な音を鳴らして唾液をたっぷり塗り込んだ。
舌で全体を舐めてほぐし、慣れさせようとしながら時には膣の入り口をつついて、垂れてくる愛液を舐め取り、勃起したクリトリスをこねくり回してやる。彼も桜同様、初めてだったはずなのに集中して触れていれば上達していく。躊躇いは一切なく、ついには尻の穴まで舐めだしていた。
ぐったりし始めた桜は喉を震わせながら呟く。
あまり刺激され続けるとおかしくなりそうだ。
それに白野の気持ちも理解しているつもりだったので、彼を見ながら濡れた目で伝える。
「せ、せんぱい……もう入れたいですよね。い、いいですよ。私、大丈夫ですから。ここに、来てください……」
「はぁ、ほ、本当に?」
「はい。私の初めて、せんぱいにもらって欲しいんです」
蕩けた声で告げられて、もう我慢できるはずがない。
返答は頷きのみ。
慌てた様子で白野が自身のペニスを掴み、亀頭を秘所へ触れさせた。ずるりと全体を撫でるような動きが一度。ぴくりと腰が反応した折、今度は膣へ挿入される。
奥まで入り込むとすぐに二人は抱きしめ合い、ベッドへ押し付けるように白野が上から覆いかぶさった。
「あぁっ! あっ、くふぅ……!」
「うはぁっ。桜、大丈夫か……?」
「だい、じょうぶです……はぁ。ちょっと、きもち、よすぎて……!」
「お、俺もだ。う、動くぞ。もう我慢しないからな」
「はいっ。きてください、おもいっきり……私をせんぱいの物に――!」
ぐんっと大きく腰がグラインドする。一気に子宮まで届いてしまい、桜はハッと息を呑んだ。
全身にびりびり走る電気のような感覚。それを快感だと認識するまで数秒かかる。
まだ理解しきれない内に白野が腰を引いて、また突き出した。
理解する暇も与えないほど素早いピストン。気持ちいいと思った瞬間には次の波に襲われていて、とめどなく襲ってくる快感に溺れそうになる。
だらしなく舌を伸ばし、桜の嬌声が保健室中に響いていた。
白野もすでに余裕はない。一心不乱に腰を振ってペニスを刺激することのみに集中し、他のことは考えられなかった。今となっては桜を気遣うこともできない。
水音が小さく、しかし徐々に大きくなる。
桜は軽くイっていたようだ。潮を吹くように愛液が小刻みに噴出されてシーツを汚していく。
そんなことにも気付かず、白野は全力でピストンを続けた。
「はぁっ、くっ、きもちいい……!」
「あぁ、せんぱい、せんぱいっ!」
ほとんど狂乱の域である。
名を呼びながら交わった二人は正常な思考さえ捨てている。
むっと暑くなった室内で汗を掻き、互いの体液ならば何をと気にせず舌に乗せ、舐め取っては飲んでまた次を求めた。
もはや思考に形はなく、ただ本能に従うだけ。
獣のような成功の末、常に淡い絶頂を味わっていた二人は、ある時真に達することができた。
深く舌を絡ませて呼吸を合わせ、その瞬間は全くの同時だ。
「イク、もうイクっ!」
「せんぱい、私も、イキますぅ!」
「うああっ桜ぁ!」
「せんぱぁいっ!」
びゅるるるっ、と威勢も良く精液が飛びだした。
膣内へ放たれるそれは狭い道を一気に満たしていき、奥へ奥へと進んで子宮にまで当たる。きっと中にまで注がれたことだろう。あまりの熱にだらしない表情を晒した桜は声すら出せず、ただ痙攣した。同じく白野もがくがく腰を揺らしていて一瞬呼吸が止まる。
激しい最後を迎えて数秒。一気に力が抜けて動けなくなる。
お互いを心配する声すらなくて、静寂が広がった。
しばらく相手を認識する術は抱き合う肌の感触だけだったものの、やがて回復して視界に相手の顔を見つける。どちらもひどく緩んだ顔だった。
さっきまでの乱れようがおかしくなってくすりと笑う。
余裕は取り戻せた。けれどだからこそ頭をもたげる興奮もある。
出したばかりで白野のペニスはまた大きくなり、膣内でそれを感じた桜はんっと声を漏らす。
「先輩……さっき出したのに、もう我慢できませんか?」
「う、いやぁ。桜が可愛いからつい」
「またそんなこと言って。ふふ、いいですよ。もういっかいしましょ」
首に腕を回されて捕らえられる。逃げるつもりもなかったが中断はなしのようだ。彼女にそうして誘われて逃げ出すだけの胆力などない。
腰を掴んでゆっくり動き出す。
射精したおかげで今度は自分を見失わずに済みそうだ。彼女の柔らかさを楽しむ余裕がある。
一突きごとに力を入れて、膣の中をほぐそうとする。だがその必要はないようだった。先程の激しい性交ですっかり蕩けて、淫らに絡みついて来る。感度は上がっているらしい。それだけでなく白野を責め立てる様相もさっきより凄まじい。
落ち着いたはずの呼吸はあっという間に弾んで、声が高くなった。
興奮しきる前、冷静な状態でなんとか速度を緩めることに成功した白野は桜を見つめる。真剣な表情で顔を近付けて、唐突にキスを始めた。当然彼女も受け入れる。
しばし繋がったまま動かずに舌を絡める。
次に離れた時には、好奇心から白野が提案した。
「あのさ。ちょっと、他の格好も試してみたいんだけど……後ろからとか」
「ふふふ、そんなことだろうって思ってました。いいですよ。だけど、こんなことするのも先輩にだけですからね」
一度抜いて桜が自ら体勢を変える。
四つん這いによって尻を向け、振り返りながら笑みを向けられる。
あどけなさを残す容姿とは裏腹な仕草に胸がときめいた。
丸々とした白い尻を掴み、再び挿入して、ゆっくり前へ進んでいく。体位が変わるだけで感触が変わったような気がした。心地よくて溜息が漏れる。
ずるずると肉の壁に擦り付けながら幸福感を感じた。
顔が見えないのも一味違って、興奮した面持ちでどちらも楽しんでいた。
「あっ、あっ、んっ、あっ――」
「はぁ、すごっ……」
ベッドが軋んでいる。そんな些細な物音さえいやらしい物に思えた。
言葉を交わさずに無言で、ただ相手の体だけを味わっている状況を異質と思う一方、何も言わずに嬌声だけが耳に残るのが良いのだろう。初めての状況にそう思い、目につくすべて、耳に残る情報すべてが興奮を高めて性交に良い物として受け止めていた。
しばらく無言で続けられる。
水音はさらに大きくなっていき、初めは落ち着いていた声色も時間が経てばだらしなくなる。
二人は再び、その時を近くしていた。
「さくらぁ……また、イキそうだ」
「あぁんっ、せんぱいっ、いつでも出していいですからね。私のなかに全部くださいっ」
甘く濡れた声で桜が告げる。普段の姿とは違ってひどくいやらしかった。
彼女の背に覆いかぶさった白野はゆさりと揺れる乳房を掴み、激しく揉みしだきながら腰の動きを速める。いよいよという瞬間を間近に全力で叩きつけられた。
さっきより強く膣内を抉られ、子宮にごつごつと強くぶつかられる。
首を逸らした桜は逃げようとするようにも見えて、あまりにも大きな快感に溺れかけていた。
気にせず、白野がラストスパートをかける。
「うぅっ、またイク……!」
「はぁぁっ、あぁぁぁんっ!」
膣内へ勢いよく精液をぶっかけられた。その拍子に桜の腰も激しく震え、気をやってしまった様子で高く鳴く。跳ねるように動いた尻はむしろ白野からさらに搾り取ろうとしているかのようにも見える。動きには効果もあったらしく、意識していなかったかもしれないが、緩やかに腰を振り続けた白野からさらに多くの精液を出させる。
頭が真っ白になるほどの衝撃を受けて数秒。
体から力が抜けた桜はうつ伏せで倒れてしまい、枕に顔を埋めて荒く呼吸を繰り返す。
もう動けなくなってしまっていた。疲労に包まれているが不思議と幸せである。枕の中に隠されてしまった表情は淫らに緩んでいたことだろう。
それを知らない白野はペニスを抜くと、彼女の姿を見下ろして黙り込む。
肉付きのいい裸体。女性らしい丸みを帯びていて、細過ぎもせず太過ぎもせず、シミ一つない白い肌は見るも美しいが触れれば手に吸い付くような安心する感触。そして今は、股間から彼の精液をこぼれさせていて、それが妙に脳内に刻み込まれた。
一瞬落ち着いたはずが、即座にペニスが勃起していく。
亀頭が膣に触れてぐっと押し込められた。
唐突な挿入に桜が震える。驚愕している間にピストンは速くなり、膣内を満たしていた精液が勢いよく外へ掻き出されていく。
平静を取り戻す暇もなくまた彼女は喘ぎだした。
「んやぁっ、あっ、せんぱいぃ……!」
「はっ、はっ、ごめん桜、我慢できなくて」
「んんっ、んいっ、いいんですよ、わたし、はっ……せんぱいの、ものですからぁ!」
ベッドはさらに軋んでいた。
一度火がついてしまった以上、もう自分で止めることはできない。自然に鎮火されるまでは。
それから二人は幾度も淫らな遊びを繰り返した。まるで盛りのついた獣のように、そもそも止めようという考えを持てず、何度でも楽しそうに続けられる。
保健室がねっとりした独特の空気に満たされるまで、否、満たされて尚。
二人の遊びが止められることはなかった。
*
「さぁ始まりました。のんきでおバカな校内のみなさーん、お元気ですかぁ? 突然強襲型バラエティ、BBチャンネルの時間ですよ~」
珍妙な映像が見えていた。
目を開けようが瞼を閉じようが見えてしまう奇妙な風景。保健室だろうか。映像の中心には見覚えのある人物が映っていて、やけに楽しそうな笑顔で話している。
白い肌をこれでもかと晒し、右腕で豊満なバストのトップだけを隠す色っぽい姿。
なぜか裸の上半身が映る美少女は、驚くほど桜に似ていて。しかし彼女とは違う声色と態度で映像を見る者たちへ語り掛けていた。
「え? ちょっぴりお色気要素が強過ぎないかって? うふふ、そうですね。女性を誘う勇気もない童貞くんたちには刺激が強過ぎましたかね。でもごめんなさい、たった今私の所用が終わったところなので、服を着る気力もないっていうか、体力の限界っていうか。とりあえず要点だけさっさと言いましょうか。私も色々忙しいんですよ」
もぞもぞと動く彼女はベッドの上に居るらしく、寝そべった後でカメラの位置が変わる。
白いシーツの上が映し出されて、笑顔の彼女がカメラを見ていた。
「じゃーんっ」
その隣、安堵した表情で眠りこける少年が居る。他の誰でもない、岸波白野だ。
なぜか彼は裸でシーツにくるまっていて、露わになった上半身は肌の色を見せるばかりか、至る所にキスマークを残している。状況から見て実行者は彼女だろう。
怪しく笑う少女はすでに胸を隠しておらず、白野に抱き着いて胸がふにゅりと潰れている。
体を隠しながらも彼へ強く抱き着くという所業。見る者が見れば激怒しそうな光景だ。
というよりそもそも、その景色自体がまずい。
裸の男女がシーツにくるまり、男は眠りこけて女は頬ずりする。明らかに情事の名残が確認できた。ベッドの隅に置かれた丸まったティッシュも然り、これ見よがしに映っている使用済みのコンドーム然り。何か、自身の所有物を自慢するための位置関係にしか見えない。
ちろりと伸ばした舌で白野の頬を舐めつつ、妙に色っぽい流し目がカメラを見た。
「うふふ、みなさんの大事な物ってなんでしたっけ? そうです、みんなのヒーロー岸波白野さんですよね。でも残念、あなたの心の彼氏はもうBBちゃんの隣で寝てますから!」
にやにやと見る者をからかうかのような笑顔で楽しそうに告げられる。してやったりという勝ち誇った表情。それだけでなく白野の体へ無遠慮に触れているのが怒りを煽る。
少女の弾む声は、白野の乳首を指で弄りながらという、なんとも間抜けな姿で繰り出されていた。
「こんな格好での放送になっちゃったのも、私の彼氏がぁ、だめだって言ってるのに何回も求めてきちゃったせいなんです。彼ったらすごく逞しくて、私の体が壊れちゃいそうになるまで離してくれないんですよ。もう、本当に困った人……でも、そんな男らしいところが好きなんですけどね。きゃっ♡ 言っちゃった♡」
非常に上機嫌な彼女は白野の首筋に首を埋めて、いやんいやんと首を振る。
そうされていてもなぜか彼は目覚めず、よっぽど疲れているのか身じろぎ一つしない。表情を変えることだって微塵もなかった。
「そんなわけで、もうあなたたちの存在は必要ありません。先輩には私がいますし、この体以外に興味ないらしいですから、赤いのも狐耳もホモ男も金ぴかもいらないんです。ぷふっ、だって、赤い奴とか正直パクリだしwww 狐耳は元カレ判明www 乙www 後の二人とか前シリーズの使い回しでしかないwww」
くすくす笑う彼女は口元に手を当ててわざとらしく見えるほど笑う。しかしそうしたのも数秒で、今度はまた勝ち誇った目でカメラ目線になった。
「なので先輩のことは私に任せて、みなさんは新しい人生、頑張ってくださいね。遠い場所から二人でイチャイチャしながら見守ってます。ふふん、悔しかったら取り戻しに来ればいいじゃないですか。まぁ、来られればの話ですけど……ぷふーっ!」
最後にはケラケラ笑って言いたいことはすべて言えたようだ。
カメラへ向かって手を振る少女はとてもいい顔をしていた。
「それじゃあみなさん、会えるようならまた会いましょー。あ、それと言い忘れてたけど白いのもそっちに居ましたっけ。ごめんなさーい、あんまり影が薄いんですっかり忘れちゃってました。まぁでも元々影が薄い子だったからしょうがないですよね。桜ちゃん残念、先輩の隣に居るのはBBちゃんでした! あなたがぐずぐずしてるから奪っちゃった、てへっ♡」
そう言った直後に少女は白野の唇を奪う。
ちゅっと鳴った瞬間、初めて動きを見せた白野の腕が伸びた。
触れ合うほど傍に居た少女の体を抱きしめ、甘えるように大ぶりの乳房へ顔を埋める。
「んっ……桜」
「きゃん♡ もう先輩ってばだいたーん。しょうがないですねぇ、えっと、次で十一回戦目でしたっけ。うふふ、また始めちゃいますぅ?」
嬉しそうに言う少女が白野の頭を抱えて、それからカメラが上の方へ向けられた。
天井を映す頃には少女の甘い声が聞こえる。何をしているのか想像させるかのようだ。
突然ブツンと映像が切れ、放送が終わる。
途端にふぅと息が吐かれた。
ずっとカメラを持っていた少女、桜によく似たメルトリリスは呆れた顔で白野へ抱き着く少女、BBを見ており、そこには少なからず嫉妬も含まれている様子だ。
「これでいい? まったく、どうして私がこんなこと――」
「いいじゃない。これで先輩は私たちの物だって主張できたんだから」
「あなたは今、自分の彼氏だって言ってたけどね」
「うふふ、細かい話じゃない。心配しなくてもみんなの先輩よ。私たち全員で愛する、たった一人の先輩……」
ベッドの上でBBが白野と深くキスをすれば、意識せずとも顔が赤くなってしまう。
キスに恥じらいを持っているという意味ではない。
これからは好きなだけ自分もそうしていいのだ。そう考えずにはいられずただ興奮してしまうのである。ずっと待ち望んでいた彼との時間、彼と一つになる瞬間。
目の前に餌を垂らされた状態で、今にも襲い掛かりたかった。
耐え切れなくなった様子でメルトリリスが太ももをすり合わせ、その隣に立つ少女、パッションリップは我を忘れた状態で呼吸を乱していた。
「はぁ、はぁ、せんぱい、わたしも……わたしもチュー、したいです。せんぱいと一つになりたいです……」
「やっと、この時が来たのね。やっと手に入れた」
夢遊病者のような危なげな足取りで歩き出した二人はベッドへ近寄り、今も眠りこける白野へと身を寄せる。その際、邪魔だったのかBBの体は投げ捨てられ、抜け駆けした怒りをぶつけるように彼女を床へ叩きつける。強かに尻を打った彼女は思わずそこを押さえた。
「痛~いっ。もう、相変わらず私を尊敬する気配がないんだから。まぁいいでしょう。今は先輩を手に入れたから気分が良いし、うふふ、これからはめくるめく愛の日常が――」
メルトリリスとパッションリップはすでに白野へ跨っている。くぐもった声から察するに目が覚めたのだろう。しかしメルトリリスの股間を口へ押し付けられた今、彼と会話することはできない。一方でパッションリップは萎えたペニスを美味しそうにしゃぶっていた。
幸せな風景。これからは毎日これが続く。
愛しい人と何者の邪魔もなく愛し合える日常。なんて嬉しい時間なのだろうか。
BBはとても美しい笑顔だった。
保健室の床に座り、期待する顔でベッドを眺めながら言った瞬間、不意に、奇妙にも扉がドンッと大きな音を立てた。BBがそちらを見ると、一度だけでなく何度でも鳴る。心霊体験の類でなければおそらく向こう側から思い切り叩かれているのだろう。
おかしいと感じたBBは首をかしげる。
「あれぇ? ひょっとしてもう来ちゃったんですか? おかしいなぁー、ちゃんとこの部屋だけ切り取って月の裏側に持ってきたのに。どうやって辿り着いたのかしら」
ドンッ、ドンッと扉が破られそうな勢いで殴られている。どれだけ攻撃しても破れないように細工していたはずなのに今にも吹き飛ばされそうなのはなぜなのか。
奇妙に思えるのにBBは一切慌てず、ようやく立ち上がると握り拳を作った。
「仕方ありませんね。来ちゃったんなら立ち向かうまで。私たちの先輩ラブラブハーレム生活は何人にも壊させませんよぉ!」
部屋の中を見回し、何やら慌ただしく動き始める。
そうしている間にも他の二人は白野の上で嬌声を発しており、上機嫌な笑みを浮かべていた。同じく押さえつけられた白野も楽しんでいる様子である。
BBはこの空間を守るため、色々と準備を始めていたようだ。
「さぁ、こっちはいつでもいけますよ。白野先輩争奪戦争の開幕ですね!」
そんな言葉が笑顔で吐かれた途端、完璧に閉じられていた扉が勢いよく破られた。
実は最初から桜じゃなくてBBでしたというオチ。
上手くできたかわかりませんが。