※この作品はR-18です。

蛇獣書房   作:ヘビとマングース

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※凌辱描写があります。程度はわかりませんが、ご注意を。


Wonderland(対魔忍アサギ)

 暗く、広い一室で、淡々とした音が響いていた。

 パンパンと連続して広がる肉同士がぶつかる音。それは明らかに部屋の中央、裸の女とそれを取り囲む異形の男たちによって生み出されている。

 悲鳴すら出せずに犯されているのは、長い髪を揺らす美しい女だ。全身を白濁した体液に汚され、長時間に渡る凌辱のおかげで心身ともに疲労はピークに達し、もはや抵抗の欠片も見られぬ状態で膣を、尻を、口や喉を数多の男根によって犯されている。

 女は対魔忍と呼ばれる存在の一人、中でも筆頭とも言うべき実力者であった。本来ならば鍛え抜かれた肉体で、卓越した技術で、刀の一本でもあれば自身を取り囲む豚のような男どもにいいようにされるはずもない。

 しかし不幸なことに、彼女は罠にはめられた。思うように力が出せず、ひたすら乱暴の限りを尽くされる。人権を無視され、自尊心を砕かれ、体も心も無残なまでに犯しつくされた。

 今となっては、ただくぐもった声をかすかに洩らすばかりの肉人形でしかない。性欲に限りのない獣たちに扱われるだけの、生きた性処理道具。朝起きてから数時間、休む間もなく犯され続けている彼女にはそんな言葉がお似合いなのだ。

 彼女はただ一人、与えられる快感に狂わされながらもひたすら耐え続け、抵抗もできないため逃げられず、体内を突かれるままに嬌声を上げていた。

 そんな時間が永遠に続くかと思われた、そんな時である。

 部屋の入り口に誰かが立ち、妙に冷たい空気を醸し出すその人物は、片手に刀を提げながら歩きだしていた。

 

 「ご苦労さま。みんなよくやってくれたよ」

 

 ひどく若々しい声である。オークと呼称される豚と人とが入り混じったような異形、女を淡々と犯していた集団が振り返ると、彼らの下に一人の男が近付いていた。

 平凡な容姿をした、別段特別性も感じない青年である。髪は黒色で人相も良く、外見だけで判断するならば他人を疑うことを知らなそうな、そんな風貌に見て取れた。

 ただし服装は変わっていると言わざるを得ない。なにせ彼が身に纏っているのは、肌にぴったりと吸いつく素材のボディスーツ。細く頼りなさげな肉体は線がはっきりと見える服一枚に覆われ、手には不似合いな刀。馬子にも衣装、そんな言葉が当てはまる。

 柔和な笑みを浮かべ、すたすたと警戒心もなく歩いてくる彼はオークたちの目には異常に映り、しかし警戒して体勢を変えるようなことはなかった。

 彼らは顔見知りである。否、正確に言うのならば上司と部下の関係。

 女を休ませずに犯すよう命じたのはその男だったのだから。

 

 「とりあえず、仕事は終わりだ。君たちの任は解かれた。と言うと聞こえはいいけど、つまり……君たちはもう用済みなんだよね」

 

 ブオンッ、と風が通り過ぎる音が聞こえた。直後には青年の傍にいたオークの一体が首を飛ばし、気味の悪い色の血を撒き散らしながら、どすんと床に首が転がる。

 この瞬間、誰もが驚愕に包まれて行動できなかった。味方であるはずの青年が、なぜ自分の仲間を殺すのか。まるでわけがわからないオークたちは頭の中をまっ白にして、女を犯す動きすら止め、言葉もなく青年を見つめる。

 おそらく驚いていなかったのは気をやっていた女だけだっただろう。

 一瞬にして室内は恐ろしい殺気で満たされ、柔和な笑みを浮かべる青年が原因だと理解した彼らは、悲鳴を上げるよりもまず逃げ出そうと足を伸ばしていた。

 

 「言われた通りにやってくれて、ありがとう。でもやっぱり許せるわけがないんだよね――自分の大好きな人を犯されるのは、さ」

 

 それから、虐殺はいとも簡単に終わった。

 所要時間は約二分ほど。逃げまどうオークを一方的に斬り、分断し、両断し、簡単に死なぬよう考えながら殺しつくした青年は部下だった彼らの死体をゴミだと断ずるように冷たく見据え、すぐに興味を失くしたように視線を外した。

 興味があるのはただ一つ。部屋の中央、オークたちの汚らわしい精液で骨の髄まで汚された、恥辱に染められた美しい女だけ。

 今日までの数日間、彼は徹底的に女を凌辱し、その尊厳を一つ残らず汚してきた。

 自らの体で休ませることなく抱き続けた。薬を使って肉体の感度を極限まで改造した。彼が運営する地下のアリーナに対魔忍として出場させ、対戦相手に負けたことを理由に観客の前で凌辱した。アリーナを運営する資金源、つまりはスポンサーの富豪たちに商品として提供し、好き勝手に犯させることもあった。

 彼女の存在すべてを否定し、これまで築き上げたものをすべて破壊する一連の行動。これらはすべて、彼が彼女を愛しているかと言って過言ではない。

 新しい物を生み出すためには、一度既存の物をすべて壊す必要がある。青年の持論だ。

 そのため彼は心から愛した女を自分のものにするため、数多の男に抱かせ、オークをはじめとした魑魅魍魎に犯させ、衆人環視の下で嬲り者にし、女を崖っぷちまで追い詰めた。

 しかしそれも、今日で終わり。ついに準備は整ったと言っていい。

 

 「さぁ、行きましょうかアサギさん。これからが本番ですよ。僕が心行くまで、抱いてあげます。あなたの心も体も、すべて――」

 

 精液溜まりの下で倒れる、アサギは、今は男の手の中。

 ぼんやりと開かれる光沢の無い瞳の中にいるのはかつて愛した恋人ではなく、自身のすべてを汚しきった青年の姿があった。

 

 

 ◆

 

 

 目を覚ましたその時、ベッドの上からでも見える壁一面のスクリーンはいくつかの画面に分けられ、こことは違う場所を映しだしていた。

 まず最初に気付いたのは、一番右側のスクリーンに自身の妹が映っていること。

 井河さくら。金色の短い髪が特徴で、成熟した体とは裏腹に子供っぽい明るさが抜けきらない少女然とした妹。いつも元気で、人懐っこく、危なっかしいところもありながら対魔忍として頼りになるほど成長した逸材。

 そんな彼女は今、スクリーンの向こう側、こことは違う一室で、大勢の男たちに犯されていた。

 

 「ンンッ、んふぅ、うぅぅっ」

 「いやはや、相変わらずさくらちゃんのおまんこはキツキツですなぁ。たくさんチンポを突っ込まれたヤリマンビッチなのにガバマンにならないとは、素晴らしい女性だ。これも、例の肉体改造とやらのおかげかな?」

 「はっはっは、確かに。普通の女ならすぐ緩くなってつまらなくなってしまうのに、さくらちゃんはどれほど突っ込んでも飽きさせない。まぁもう少しお口の方も上手になってほしいというのが正直なところですが」

 「ははは、それもそうですな。今までイラマチオばかりさせてしまいましたからな、そろそろ本格的に仕込んだ方がいいのかもしれません。ま、どうせ最後は喉の奥まで無理やり突っ込むんでしょうがね」

 

 でっぷりと太った裸の男たちが卑猥な言葉を投げかけながら、同じく裸で腰と首と両腕、うつ伏せの状態で小さな台へと拘束されたさくらに近寄り、体を触れ合わせている。しかもその様子が異常なのだ。

 頭の方から一人が、屹立した肉棒をさくらの口へ突っ込んで腰を振り、尻の後ろにいる男が、さくらの膣へ肉棒を突っ込んで腰を振っている。彼女を犯しているのはその二人の中年男性だけなのだが、その二人の後ろ、異常な数の男たちが全裸で列を成しているのだ。

 誰もが陰茎を勃起させ、自分の順番が回るのを今か今かと待ちわびるかのよう。中にはさくらを犯すことを想像して、自分の手で竿を扱いている者もいる。

 異常性に満ちた、もはやこの世の物とも思えぬ地獄絵図。我が妹が、列に並ぶ男たちに犯され続けるのだろうと、その光景や時間を想像すると怒りと憎悪で全身がカッと熱くなる。

 

 「おおっ、出る出る、さくらちゃん出すよ、中出しするよっ。わしの精子、子宮で受け止めてくれっ」

 「よし、じゃあそろそろ私も出すぞ。さくらちゃんが飲みやすいように喉の奥で出すからねぇ」

 「うううっ、おおおぉ」

 

 スピーカーから聞こえる声が、気持ちの悪いその言葉が、より一層怒りを駆り立てる。

 しかし現実は残酷で、顔を真っ赤にして声を洩らすさくらの体内へ、誰とも知らぬ男二人の精液が注ぎこまれたのは確実だった。

 

 「ふぅ。いやぁ気持ちよかった。それじゃあ次は、さくらちゃんの口側に並ぼうかな。喉の奥をガッツンガッツン犯したいしねぇ」

 「ううむ、さくらちゃんとの遊びは非常に満足できるが、困るのはやめどきがわからないことだな。マンコを犯せば喉を使いたくなるし、その後はどうしてもまたマンコを味わってしまいたくなる。こればっかりは抗いがたいものですし」

 「それにそこへ加えてさくらちゃんのアナルまで使えると言うのだから、選択肢が多いというのも、困りものですなぁ」

 「はっはっは、尻の穴まで徹底的にとは、相変わらずいい趣味をしてらっしゃる。そうだなぁ、そろそろ私もアナルを体験してみるべきか。いや、いつもそう思うのだが、やはり目の前にマンコがあるとどうしてもそちらに目が行ってしまって」

 「ぜひ試してみるべきですよ。さくらちゃんのアナルは締まりがいいし、緩むこともないですからねぇ。あのおまんことは違う味わい、知らないのは損というものです」

 「そうですか。そこまでおっしゃるのでしたら、今度こそアナルへ突っ込んでみましょう。ま、あの子が相手なら損をすることはまずないわけですしね」

 

 射精した男たち二人が離れた後で、先頭に立っていた男が一歩を進みだし、またそれぞれがさくらの中へと肉棒を沈める。

 口の中と、膣の中。そうするのが当たり前のように突っ込んで、彼女を気遣うこともなく自分勝手に腰を振る。今度は先程の男たちよりずいぶんと若く、頭を掴んで腰を振るのは三十代半ばの男、膣に肉棒を突っ込むのは二十代前半、或いは十代の後半といったところだろう。

 それぞれが違う動きで、どちらも同じように自分の性欲をぶつけるよう、さくらを使って快感を得ている。これがあと何回続くというのか、列はまだまだ長かった。

 腹立たしい光景をまざまざと見せつけられるアサギは、大きなベッドの上で寝転んだまま、思わず強く歯を噛みしめた。こんな状況を生み出した人物を、絶対に許せるわけがない。

 そんな時に、彼女はびくんと体を震わせた。先程から全身に沁み渡っていた淡い快感が一気に強くなったのだ。

 膣の中、何かが挿入されている。

 気付いたアサギは顔を起こし、自分の下半身へと目を向けた。

 相変わらず自分は裸のままだったが、先程絡みついていた精液はきれいに落とされ、全身が清潔な状態になっている。しかし一方、股間に顔を埋める男の姿があるせいで、決して正常とは言えなかった。

 その男、オークに凌辱されていたアサギを救出した、ボディスーツ姿の青年である。

 

 「あ、あなたは……」

 「やっぱり人気ですね、さくらちゃんは。こっちがずいぶん値段を跳ねあげて交渉しているのに、言い値で参加してくれるんだから、腰を振ることしか能がないバカどもは扱いやすくて仕方ない……それとも、それだけあなたの妹が魅力的だってことですかね、アサギさん」

 「どうしてあなたが、こんなことを……だってあなたはっ」

 「朧に操られているだけ、ですか? アサギさん、言っておきますが、あなたは俺を下に見過ぎてる。自分が優秀だからって他人を認めないのは愚か者のすることですよ? 何事も正当な評価をしないと」

 「え……?」

 「確かに、初めは僕も朧に利用されていましたよ。でもねアサギさん、僕は変わったんです。あなたのおまんこで、自分の童貞を捨てたその時に」

 

 青年は笑みを浮かべていた。体に力が入らず、ベッドの上に寝そべったまま動けないアサギを見下ろし、自らの手でボディスーツを脱ぎ捨てる。

 若々しい、ひどく猛々しい様子で勃起するペニスが晒され、ぶるりと揺れる。青年はそれを誇るかのように根元の部分を手で軽く扱いた後、身をかがめて、アサギの胸を強く鷲掴みにした。

 張りのある乳房に指が沈みこみ、ぎゅっと力が込められる。痛みを感じてアサギは表情をしかめるが、同時に自分の秘所から熱い体液が垂れ流れることも、嫌々ながら自覚していた。

 青年の笑みが、さらに深まる。

 

 「あなたを抱いたのは、朧の命令があったからでした。それまでずっと彼女のフェラチオや手コキ、素股なんかで解消させられてましたからね。女体の味を知りたいがために、その命令に逆らおうとは思わなかった。でも、あなたのおまんこを味わった瞬間、僕は自分を可愛がってくれた朧のことをあっさり忘れた――あなたのおまんこはとてもいやらしくて、強く吸いついてきて、僕を離そうとしなかった。なんて気持ちいいんだと思いましたよ。これまで感じた快感が児戯だったのかと錯覚するほど、僕はあなたのおまんこの虜になった」

 「な、何を……」

 「だからね、アサギさん。僕はあなたを独占したくなった。あなたの体を、心を、すべてを僕のものにしたくなった。それがこの状況の原因ですよ」

 「まさか、朧を、裏切ったと言うの? そんな、そんなことで――」

 「僕にとっては重要なことです。確かに朧のおっぱいやフェラも好きだった。何度せがんでも本番はさせてくれなかったけど、クンニは許してくれたし、頼めばいつでもどこでもチンポ擦ってフェラもしてくれた。そんな彼女を、今でも愛してる。……でもね、やっぱり疼くんです。僕のチンポが、アサギさんのおまんこを犯したいって」

 

 青年が乳房の頂点、勃起した乳首へむしゃぶりつきながら腰を落として、ペニスの先端をアサギの秘所へと当てる。

 瞬間的に言いようのない痺れが全身を走って、アサギは思わず強く目を閉じた。

 

 「ふふ、ここ最近はレイプされるばっかりでやさしく抱かれることもなかったでしょう? アサギさん、僕のものになってください。そうしたら色んな連中に汚されまくったあなたのすべてを、僕が心から愛します。おまんこの形も僕のチンポ専用になるくらい、愛情込めて犯してあげますよ」

 「ふっ、ぐっ……誰が、あなたなんかに――」

 「それは本心ですか? それとも、照れ隠し? ねぇアサギさん、僕は脅迫なんてしたくないんだ。正直な気持ちを教えてください」

 

 腰がひどく緩慢な様子で前へと進み、アサギの膣内へ、青年のペニスがずぶずぶと侵入してくる。

 彼女はおそらく、まだ気付いていない。怒りに囚われ、胸中で憎悪を燃やす自分の顔が、喜色から来る間抜けな笑みを浮かべていることなど。

 

 「ほら、見てください。もし僕の提案を断れば、あなたはまたあっち側へ逆戻りだ。ただ乱暴に嬲られ、犯され、自分を失くすことすらできずに快楽の渦で生き続ける。そんな生活、これ以上耐えることができますか?」

 

 乳を揉んでいた右手が移動し、アサギの顎に手を添えると無理やり壁の方を向かせ、そこにあるスクリーンを見せつける。その間、すでに青年はゆるりと腰を動かしており、アサギは大きな快感を感じると共に決して小さくはない喘ぎ声を発していた。

 一番右側、妹のさくらはまだ長い列を消化しきれておらず、二人の男に前後から犯されている。

 映っているのはそれだけではない。

 その隣にあるスクリーンには、こちらもまた可憐な少女、薄い茶の長い髪を持つ甲河アスカの姿がある。

 両腕と両足を義手、義足にしている彼女。今はなぜかそれらが肉体に繋がっておらず、腕と足の無い体と頭だけの格好となって、薄っぺらいマットの上に寝転がされていた。

 下半身裸で胡坐を掻く男の片膝に頭を乗せ、その男のペニスが頬をつつく一方、客らしき男がアスカの膣へ肉棒を突きいれ、必死になって腰を振っている。

 こちらもまたすごい行列だ。一人ずつ一般の男を相手にする彼女はそこらの娼婦よりもよっぽどひどい扱いをされて、それでも多大な快感を感じて何度も絶頂を感じていた。

 

 「うぅぅ、いくぞ淫乱女っ。中に出すぞ、俺の子供孕めよっ、だるま便器っ!」

 「いはぁぁぁっ! イクぅぅぅぅっ!!」

 「はぁいお疲れぇ。アスカぁ、イッたばっかで悪いけどまだ落ちんなよ。はい、あと五百六十三人、頑張って」

 「ふぁぁい……あンッ、んんっ、んっ、んぅ――!」

 

 管理者らしい男が胸を揉みながらそう言うと、アスカの股へペニスを寄せる男が交代し、金の譲渡を終えてから挿入が始まる。

 途端にアスカは目をとろんと緩ませ、腰を動かし、甲高い嬌声と共に男を迎え入れて感じ始めた。

 この行為もどれほど続いているのか。アスカを膝枕し、胸を揉む男の傍らには大量の金が入ったスーツケースがいくつも並び、長い時間の経過が感じ取れる。

 幸いなのは、今のアスカが時間の経過や欲望に満ちた男たちを相手にすることを恐れていないことだろうか。

 

 さらに隣のスクリーンへ目を向ければ、そちらでもまた目を見張る光景が繰り広げられていた。

 スクリーンにでかでかと映っているのは、褐色の肌の裸の女性、そしてそれを襲う幾本もの触手である。

 両腕、両足をぬめりと光る脚で拘束し、動けない女、イングリッドを執拗なまでに責めている。

 大きな乳房を下からぎゅうと締めつけ、触手の先が両方の乳首をやさしく擦り、それでいて下半身の膣と尻穴には極太の触手が入り込んで、やさしさの欠片もなく縦横無尽に暴れているのだ。

 気が狂いそうなほど長く、強烈な快楽漬けは以前のイングリッドの姿を欠片も残さず消していて、今の彼女は、快楽に囚われたただの雌豚。無慈悲に犯されることを良しとする、誇りや人間性も何もかもを投げ打った姿だ。

 

 「ンひぃぃぃっ!? もっとぉ、もっとちょうだぁいっ! 強く、もっと強く、おまんこずぼずぼきもちよくしてぇぇっ!」

 

 様々な体液が混じり合って、全身が濡れた状態。絶頂を感じて潮を吹きながらイングリッドは、笑っていた。

 触手に犯され、ひどく乱れた姿を晒す彼女は自ら小刻みに腰を揺らし、更なる快感を求めている。

 

 そして一番端、そこにあるスクリーンが一番静かだった。スピーカーから聞こえてくる音もなく、唯一沈黙を保っている。

 そこにあるのは他とは違い、たった一人の女の姿。裸であることは他と変わりないが、大きく股を開いた状態で両手両足を拘束され、身動きができず、目隠しをされて視界すら封じられた一人の女。

 赤い髪に美しい肢体、かつての威光とは程遠い姿でぽつんとある、朧。彼女は以前までアサギたちを苦しめていた張本人だった。

 それが今、彼女たちと同じように拘束され、肉体を改造され、凄まじい快感に耐えようとしているのだが、彼女のまわりには、誰もいない。

 この場は朧の腹心だった青年が用意したものだが、ある種の恋慕があったための処置とも言える。これまで与えられた快感に恩を、感動を覚えている青年はひどく朧へ執着していて、アサギが気になっている今でも他人に渡したくはないと思っている。本当のところは他の女たちも独占したいと考えているのだが、特に比率が高いのがこの二人なのだ。

 そこで青年は薄汚いオークや頭の悪い人間に彼女を汚させないよう、感度を高めた状態で狭い部屋の中に孤立させることにした。

 おかげで拷問にも等しい放置プレイの完成である。朧は現在、声も出さずに強く歯を食いしばり、悔しさを火種にして必ず這い上がることを決意し、来るべき時を待っている。

 だが彼女自身、無意識に腰が小刻みに揺れていることに、もっと強い快感を欲しがっていることを自覚できているかどうか、定かではない。

 

 アサギは青年に促されるがまま、膣内をペニスが動く感触で舌を伸ばしながらも、すべて確認し終えた。

 それからようやく青年は彼女の顎から手を離し、代わりに淫らに開かれる口へキスを送り、だらりと伸びた舌へ自分のそれを絡め始める。

 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が鳴り、股から広がる快感がじんわりと全身へ広がる。犯される期間はずいぶん長かったのに、キスはずいぶんとひさしぶりで、思わずアサギの表情はさらに緩む。

 長きに渡る調教が彼女を変えていたが、犯されるのとは違う快感が伝わってきた。まるで恋人同士のようなやさしいそれは、今までの調教に含まれていない。

 少しもしない内に、アサギの気分がどんどん高ぶってしまう。もうすっかり忘れていた恋人との一時が、今のこの快感を何倍も強くしていた。

 

 「エドウィン・ブラックは逃げました。今のここは、僕の城、僕の国です」

 「……え?」

 「後ろからざっくりとね、心臓を一突きにしてやったんですよ。その後全身を滅多切りにしてやったんですけど、不死とか言ってるだけあってしぶとくてね。あと一歩のところで逃げられちゃいました。それでも、僕が勝ったことに変わりはない」

 「あ、あなた、そんなことまで」

 「ええ。ですからアサギさん、心配することなんてありません。僕にすべてを任せていいんですよ」

 

 言葉と共に青年のペニスがアサギの子宮口をこつんと叩き、青年の右手が頬を撫で、髪へ触れ、頭を撫でる。

 何度かキスが顔へ落ち、柔らかな唇の感触がやさしく、ずるずると引き抜かれていくペニスが心地よい。

 ぶわりと、アサギを襲う快感があった。肉体だけでなく心の内側から、遠い記憶から湧き出てくる何かがあるのだ。

 

 「こうして髪へ触れられるのはいつぶりですか? 頬を撫でられるのは、キスを交わすのは、やさしく抱かれるのはいつ以来でしょう? 今こうしてあなたの傍にいられるのは僕だけです。もういい加減昔のことは忘れて、僕だけのものになってください」

 「う、うぅ、そんな、そんなの――」

 「体みたいに、心も正直になってくださいよ。ほら、もうアサギさんのおまんこは僕のこと受け入れてくれてる。あとはあなたが、イエスと言うだけ」

 「はぁんっ、あぁぁっ――」

 「うんって言ってよ。これからはずっと、死ぬまで僕が守るから」

 

 耳元でささやかれ、一際強く子宮の入り口が叩かれる。

 瞬間、アサギの中で何かがぷつりと切れてしまった。

 ぐいと背を逸らし、だらしなく舌を伸ばしたアサギは自らの意思で青年の背に手を回し、強く力を込めて抱き締めた。

 それをきっかけに両者は腰を跳ねさせるように前後させ、さっきよりもより一層深く、激しく、快感を貪り始める。

 

 「あぁっ、あっ、あっ、あっ、すごい、これすごいぃっ――!」

 「アサギさん、好きです、いいや、愛してますっ。もう二度と辛い目には遭わせません、僕が最強の対魔忍軍を作って、一生アサギさんを守りますっ」

 「あぁぁっ、だめぇ、ばかになるぅ……おまんこぐずぐずでそんなこと言われたら、おかしくなるぅっ!」

 「うっ、くぅ、急に締め付けが……! やっと僕のことを受け入れてくれたんですね、アサギさん!」

 

 パンパンと肉を打つ音が激しくなり、二人はどちらからともなく一心不乱に腰を振って快感を貪った。

 スピーカーからは別室の嬌声や卑猥な会話が聞こえる中、単調ながらも速い速度で腰がぶつかり、気分はますます最高潮へと到達する。

 そうしていくばくもせず、青年が絶頂を感じて射精すると、その前に何度もイキまくっていたアサギもさらに声を高くして膣内を震わせた。

 両足が指の先までピンと伸ばされ、背に回された指に力が入ると爪が皮膚に食い込んで跡を残し、二人は重なったままベッドの上で脱力する。

 荒い呼吸が続き、最中に再び唇が合わさる。

 今度はアサギも落ちついた様子でそれを受け入れ、まずは唇同士が触れあい、顔の角度を変えながら強く押しつけ合って、やがて青年が舌を伸ばした。閉じられた赤いそこをちろちろと舐め、少し隙間が開くとすぐさまその中へ飛び込み、待ちかまえていた舌と絡まり合う。

 数時間前の出来事が嘘のような、甘く、落ち着いた振る舞いである。この時間、この瞬間に心地よさを感じているアサギはすでに自らの変化を自覚し、受け入れていた。

 耐えるしかなかった絶望、この世の地獄。そこから救い出してくれたのは紛れもなくその青年。彼女本人はそう思い、まだスクリーンの向こう側で女たちが乱れていることすら頭に入らず、忘れていた微笑みすら取り戻している。

 青年が唇を離し、二人は視線を合わせて微笑みあう。

 

 「アサギさん、僕の子供、産んでくださいね。アサギさんも僕らの子供も、ちゃんと僕が生涯をかけて守りますから」

 「はぁ、ん……そんな、私は……」

 

 それから彼はアサギの傍を離れ、ちらりと部屋の入り口へと目を向けた。すかさず、出入り口の扉が開いて誰かが入ってくる。

 一人の裸の女である。完璧なプロポーション、頭の後ろで一つに纏めた青い長髪。その人物が八津紫であることは、アサギの目にもすぐわかった。

 ただし、アサギが知る人物とは明らかな違いが一つある。

 それは彼女の股間部分、本来なら女性器しかないはずの下腹部には見るも雄大な男根が存在しており、すでにカウパー液を垂れ流して勃起していることだった。

 

 「なっ――」

 「アサギさん、知ってるでしょうけど一応紹介しておきます。僕の相棒の、紫です」

 「あ、相棒……それって一体、どういう……?」

 「実は、彼女がアサギさんを愛していることは前々から知っていました。つまり僕にしてみれば、同じ目的を持つ同志。あなたを守って、あなたを独占したいという共通の目的があったんです。なので僕は、彼女が捕えられたその瞬間に専属の調教係となって、いつの日か僕といっしょにアサギさんを愛せるよう、徹底的な調教を繰り返しました」

 

 ベッドから降り、青年は裸の体を隠そうともせず歩いて、もじもじと恥ずかしそうに体を揺らす紫へと近付く。

 そして彼女の背後に立つと、後ろからその大きな乳房を持ち上げるように揉み、同時に右手では股間でいきり立つペニスを掴んだ。

 慣れ親しんだ様子で青年の勃起したペニスは紫の膣の中へ迎え入れられ、彼女は嬉しそうに熱い息を吐く。腰を動かすのと合わせて右手も上下に動き、異常な興奮からガチガチに固くなった肉棒が扱かれる。

 二人は立ったまま、見せつけるようにアサギの前で行為を始め、異常なほど股を濡らしていた紫のそこからはしぶきのように愛液が飛び散った。

 

 「見てくださいアサギさん、紫のチンポは、僕のと全く同じ形とサイズなんです。いつか二人同時にアサギさんを満足させるためにって、僕のをそのままコピーして取りつけさせたんです。ふふ、しかも、改造のおかげでこのチンポは女性のおまんこの中じゃなきゃ射精できないようになってて、実は紫、まだ射精したことがなくて、童貞なんです」

 「は、はいぃ……あ、アサギ様のおまんこに童貞奪って欲しくて、今日までずっと、が、我慢してましたぁぁ……」

 「ふふ、おまんこの方はわりと簡単にイクんですけどね。出会ってから今日まで僕専用で使ってきましたから、すっかり僕のチンポの形になってますよ――それでね」

 

 青年が歩を進めると、自然に紫も前へ進み出る形になってベッドへ近付く。

 いまだ状況が読み込めず、黙ったままぽかんとしているアサギの眼前へ、二人が立った。

 

 「アサギさんのおまんこも、僕のチンポの形にしたいんですよ。僕以外の人が入れられないように。僕と紫、全く同じチンポでたくさん犯して、僕らじゃなきゃ満足できないようにしてあげますね」

 「え、あ、なっ――」

 「あ、アサギ様、アサギ様のおまんこ、ようやく、ここに……!」

 「ふふふ、ずっと我慢してたんだもんね。いいよ、紫。今日は思う存分、ゆっくり、アサギさんを味わってみて」

 

 そう言って青年が後ろへ下がると同時、彼のペニスが紫の膣から抜け、まるで同じタイミングで紫はベッドへ向けて飛び込むように床を蹴っていた。

 当然、そこにいるアサギは押し倒される形で紫の下敷きになり、抵抗する間もなく組み敷かれる。

 

 「ちょ、ちょっと待って! こんなの、聞いてな――!」

 「ハァ、ハァ、ハァッ――!」

 

 まるで理性をなくした獣、オークのような様相でアサギに襲い掛かり、紫のペニスが膣へと触れる。

 青年と愛のある性交をして、普段以上に濡れていたことも幸いし、彼女のそれは瞬く間に奥までずるりと入り込んだ。その瞬間に、紫は目を剥いて舌を伸ばし、子宮口に亀頭が当たると同時に初めての射精を始めていた。

 ドクドクと大量の精液が注ぎこまれ、熱いそれは先程の青年の物とも酷似していて、体が熱くなるのを抑えきれない。

 アサギもまた目を剥いて舌を伸ばし、だらしないアヘ顔を晒して絶頂へ辿り着くと、ビクビクと腰を跳ねさせて浅ましく悦びを表した。

 

 「あぁぁっ、しゅごいぃぃっ! アサギ様のなかっ、アサギ様のおまんこっ!」

 「ひぐぅ、は、はげしっ――だめ、だめっ、だめぇっ! イッてる、まだイッてるからぁ!? 動いちゃだめぇっ!」

 

 狂乱の仕草を隠そうともせず、二人は乱れに乱れて激しく絡まり合った。

 上からのしかかる紫の責めは執拗で激しく、アサギは我も忘れさせられ、高く鳴いて腰を跳ねさせる。二人の膣からはぶしゅっと潮が何度も噴き出し、シーツを大きく濡らして、様々な音を響かせた。

 微笑む青年もそこへ近付き、我が物顔でベッドへ上がると、舌を伸ばして悦ぶ紫の肩を叩く。すると彼女はすぐに少しばかりの正気を取り戻し、一心不乱に振っていた腰を止めて、アサギの尻に手を添えてその裸体を抱え上げる。

 青年はアサギの尻の後ろに回り込み、勃起したペニスを尻の穴へ添え、驚く本人の感情を知りながらも無視してぐっと腰を押し進めた。

 

 「はうっ!? あっ、あっ――」

 「はぁぁっ、アサギ様のおまんこ、またぎゅうって……!」

 「ふふ、アナルもいい味してますね、アサギさん。ほんと、痛いくらいに締めつけてきて……そんなに僕のチンポ気に入ってくれるなんて、嬉しいです」

 

 前と後ろを同時に塞ぎ、今度はゆっくりずぷずぷと腰を前後させる。アサギは、両方から与えられる大きな、それでいて先程までの力がない快感に悩まされ、知らぬ内に自分で腰を前後させていた。

 それでも、動きが小さすぎてまだまだ足りない。しかし紫に抱えられている状態ではこれ以上動きを大きくすることができない。

 口の端から唾液を垂らしたまま、みっともなく笑う紫とは裏腹、どうしようもない物足りなさが原因でアサギの目にはいつの間にか涙すら浮かぼうとしている。

 

 「紫のチンポならね、僕と同じ形だから、紫に犯され続けるだけでアサギさんのおまんこは僕専用になるんですよ。他のチンポを入れさせるつもりなんてありませんけど、もし万が一のことがあったとして、僕のチンポじゃなきゃイケないように教え込むんです。ふふ、紫はそのために僕の相棒になったんです」

 「あっ、あんっ、んっ、んっ――」

 「それにこうすればアサギさんのことが大好きな、生来から女だった紫でもあなたと一つになれる――って、聞こえてないですよね、やっぱり」

 

 亀頭が肉を割って進み、壁一枚を隔てるかのよう、アサギの体内では紫の肉棒と青年のそれが、お互いの存在を確かに感じていた。

 それぞれが自分のペースで動き、たまにシンクロするようなこともあって、アサギの声はどんどん高くなるばかり。しかし、やはりまだ少しだけ足りなかった。

 あともう一歩、もっと強い快感が欲しい。そう願いながら腰を小刻みに振るのだが、軽くイキ続けるだけで欲しい絶頂がやってこない。

 いよいよアサギは涙で頬を濡らし、歯をぐっと食いしばりながらも声を洩らして、ちらりと背後の青年を見た。

 瞬間、青年がにやりと微笑む。今のアサギの目にはすでに抵抗する意思などなく、懇願するような光だけが強く見えていたのだ。

 

 「紫、もういいよ。そろそろ、みんなでいっしょにイクよ」

 「はいぃぃ!」

 

 青年がそう言い、紫の腰がぐんと引いた後、驚くほど力強く前へ動いて肉棒を沈める。ずるりと膣の奥へ入り込む亀頭がごつんと子宮口へ当たって、アサギは思わず白目を剥いた。

 

 「あっ……かっ、はっ……」

 「ふふ、それじゃあ、ラストスパートだ」

 

 同時に青年も動きを大きく、激しいものに変化させ、ぴたりと紫との呼吸を合わせてアサギを責め立てた。

 とめどない快感が大津波のように押し寄せ、もはやアサギに、耐えられるだけの精神力も体力もない。心はぽっきりと折られ、徐々にではあるがその快感を享受し、求めようとする傾向さえあった。

 室内に響く肉の音がさらに大きくなり、男根を持つ二人はアサギが一際高く鳴いたのと全く同じ瞬間、彼女と一つになったまま射精した。

 膣の奥と尻の穴の中、どくどくと吐き出される精液は逆流するのを止められず、接合部から大量にぼたぼたと垂れる。

 三人は独特の倦怠感を感じながら、アサギを中心に顔を寄せ、舌を伸ばして三人でキスを交わした。ねっとりと交わるような、濃厚なものだ。

 

 「ふぅ……最高のアヘ顔でしたよ、アサギさん。やっぱり、セックス大好きな雌豚なんですね。あなたの声もおまんこもアナルも、全部最高でした」

 「あぁっ、うぅ、はぁぁ……」

 「さて、と。とりあえず楽しむのはこれくらいにして、そろそろ仕事へ行かないと。紫、後は任せるよ」

 「は、はい、もちろんっ」

 

 青年は尻の穴からペニスを引きぬき、アサギの体から離れる。その直後、紫はまだ挿入したまま彼女をベッドへ押し倒し、陰茎を大きくして、また腰を振り始めた。

 今のはまだ準備運動程度でしかない。肉体を改造されてから今日まで、ずっと射精を我慢し続けてきた彼女にとって、頭が真っ白になると同時に相手を征服した気になる射精という行為は、一度でハマるほど素晴らしいものだった。

 まだまだアサギに注ぎ足りない。そう思い、紫は嬉々とした笑みと共に彼女を犯し始めるのである。

 

 「あっ!? ま、待って、まだイッたばかりで――んんんぅ!?」

 「あぁぁっ、アサギ様のおまんこ、ぐちゅぐちゅ淫乱おまんこ気持ちいいっ!」

 「紫、僕がいない間、ちゃんとアサギさんを愛してあげるんだよ。もちろん、君ならアサギさんを孕ませてもいい。他の人間が孕ませたのなら処刑ものだけど、僕の相棒になった君だけは許してあげる。たくさん注いで、アサギさんを孕ませて」

 「はいぃっ、必ず、必ずアサギ様を孕ませますっ! 改造チンポたくさんずぼずぼして、絶対に孕ませてみせますから!」

 「うん、それでいい」

 

 そう言うと青年は自身の精液で濡れたペニスを紫の顔へ突きつけ、口へ含ませると、数度腰を振ってきれいになるまで舐めさせた。

 それから彼は体を離し、アサギを犯す紫から離れて、自身のボディスーツを身につける。パンパンという音と、アサギの嬌声を聞きつつ、支度はすぐに終わる。

 青年は淫らに絡まり合う二人へ目を向け、にこりと頬をあげた後、もう一度ベッドへ上がって彼女たちに近寄った。

 一心不乱に腰を振る紫を背後から抱き締め、凄まじい快感によがるアサギにも目をつけつつ、紫へキスを与える。

 

 「僕が帰ってきたら、二人で愛してあげますよ、アサギさん。でもしばらくは紫と楽しんでてください。すぐに抜け出せなくなるはずですから、安心して」

 「んんんっ、いぃぃっ……あぁぁっ!」

 「また後でね」

 

 青年はベッドを降りて部屋の出入り口へ向かい、自動で開く扉をくぐりぬけて廊下へ出た。扉が閉まると同時、アサギと紫の狂ったような嬌声や、スピーカーから流れる別室の声は途絶える。

 最低限の照明しかない暗い廊下を、一人歩く。その際、呟かれる言葉が暗闇に広がり、彼の顔には相変わらず笑みがあった。

 

 「いつまでそこでそうしてるつもり? もういい加減、わかってるんでしょ。勝負はついた、君の負けだよ」

 

 コツコツと渇いた音が響く。薄暗いそこには彼の姿だけ。

 それでも青年は口を閉じようとはしなかった。

 

 「僕と君の違い、理解できたよね? 僕は彼女を手に入れたいから、一から計画を練って行動を起こした。その結果として今がある。じゃあ君は? 何も知らずに、何もせずに、ただ待っていただけ。彼女を信じてるなんて軽い言葉を吐いて、現実を見ようともしなかった臆病者だ。力がないならないなりに、頭を使って行動できるはずなのに」

 

 ぴたりと、青年の足が止まる。そしてゆっくりと後ろを振り返り、暗闇の中へ向けて決別の言葉を告げた。

 

 「君が特別視されたのは、沢木恭介の弟だったからだ。それ以上でも、それ以下でもない。でもそれも終わりだ――つかの間の恋人ごっこは楽しめたかな? こっちの世界は、君が想ってる百倍は辛いものだよ。言いたいことがあるなら、まずは一人でも自分以外の人間を守れるようになってからにしてよね」

 

 それだけを言い終え、青年はもう後ろを気にしようとはせずに歩き去った。

 暗闇の中にあった気配は、扉一枚を隔てて目標を眼前にしているというのに、青年の言葉を聞いた後ではぴくりとも動こうとはしない。結局はそこが限界、そもそも対魔忍になるほどの器ではなかったのだと、青年が見限ったのも無理はないだろう。

 彼は自分のすぐ傍に侵入者があったことを知っていながら、何の対処もしようとはしなかった。それは対処する必要も、資格すらないという判断である。軽く蹴ってしまえば遠くへ飛んでいってしまう道端の小石のよう、目にしたところで蹴ろうとも思えなかった。

 すでに勝負は決している、と伝えるかのようでもある。そこにある影は呆然と立ち尽くし、向けられた言葉が、気付きながらも素通りする態度が、刃のように突き刺さって心を深く抉られる。もはや影は抜け殻にも似て、すぐそこにある扉を抜けられそうにもない状態となってしまったようだ。

 

 「さて、僕の国を繁栄させるためには、まず最初に邪魔になるのはおまえだよね、エドウィン・ブラック。とりあえずおまえを殺して、あの薄汚い老害どもはその後だ。僕が欲しいのは僕が作る最強の対魔忍軍であって、おまえのお古なんていらないんだよ」

 

 憎々しく告げながらも笑い、青年は頬を釣り上げ、まだ見ぬ敵を嘲笑うかのように手元の刀をくるりと回した。

 

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