きっかけを掴むことさえできず、町は突如として崩壊した。
至る所から上がる火の手。人々の悲鳴が木霊し、道を塞ぐ車が放置されて、逃げ惑う人々はどこへ向かえばいいかもわからずに、ただ餌となるばかりだった。
被害は拡大。異変は拡散されていく。
もはや止めることなどできない。その日、ラクーンシティは完全に崩壊したのだ。
どこからともなく現れたゾンビたちが人々を襲い、町は混乱状態にあった。
初めての被害から数時間。
ゾンビに噛まれた者は同じくゾンビになってしまう。今や町はゾンビだらけになり、正常な人間など探す方が手間になるくらい見当たらなかった。
その中で唯一、この状況を冷静に見据えて、町から脱出しようと考える女性が居る。
ジル・バレンタインである。
彼女は以前経験した“洋館事件”においてゾンビ、或いはその原因となった組織に直面した。これほどの事態になるとは予想していなかったが驚きよりも正義感が勝る。原因を知っている。必ず生き延びて彼らを止めなければ。そういった強い意思があった。
故にジルは一人で路地を走る。
手には拳銃。頼りないがないよりはマシだ。
ゾンビとて不死ではない。動かなくすることはできる。
ここまでの道中、できる限り回避して、不可能な場合はゾンビを無力化してきた。暗闇に包まれた町の中でもジルの目は輝きを失っておらず、希望を持って町からの脱出を目指している。
右も左もゾンビだらけ。過酷な状況だ。しかし方法はあるはずだった。
アパートを出てからどれだけ経っただろうか。
覚悟はしていた。しかし町にあるのはゾンビだけではない。できるだけ人目につかない細い路地を通ってはいるが、至る所に人間の死体が目についた。
大抵はゾンビに襲われて死亡していた。肉が噛み千切られて一部だけがごっそり抉られ、中には食べられ過ぎて体がバラバラになり、肉片と化している死体もある。年齢を問わず、大人は当然として子供も死んでいる。それらを見つけ、通り過ぎる度に気が滅入った。
この町はすでに狂気に囚われていた。
ただ立っているだけでも感じる死臭や死の気配。ずっと居るだけで精神が崩壊してしまう。気を強く保たねばどうなってしまうかわからないだろう。
ジルは自分を奮い立たせて、必死に足を動かして前へ進む。
そうしているとやがて遠くの方から銃声が聞こえた。
ひょっとして生存者が居るのか。
ジルは銃声が聞こえた方角へ急ぐ。
幸いにも付近の路地裏にはゾンビが居なかった。おそらく大通りの方には大勢居るが彼らは思考を持たない“歩く死体”。何かを考えて動いている訳ではない。従って狙ってジルだけを追ってくるようなこともなかったのだ。
入り組んだ道を一方向へ進んでいると、やがて人の姿が見えた。
生きている人間、なのだろう。おそらく。確証はないもののそう思った。
ショットガンを肩に担いで、死体を引き摺っている。片手で襟首の辺りを持って歩いていた。どうやらすでにゾンビ化した人間らしい。
暗がりでよく見えなかったが人間だろうと思う。
ジルは警戒しつつ、恐る恐るその人物の方へと歩みを進めていった。
「あなた……人間なの?」
死体を引き摺っていたせいで歩みは遅かった。重そうにしながら無表情で運んでいる。
一瞬足を止めてジルの顔を確認した。
男はすぐに興味を失った様子で再び歩き出す。
「もう違う。この町に人間なんか居ねぇさ」
「どういう意味?」
「見ろ」
そう言って男は立ち止まった。
中年の男である。禿げあがっていて頭髪は薄く、でっぷりと太って腹が出ていた。肌が薄汚れているのは町がこんな状況だからか。服には返り血が見られ、戦いの名残が感じられた。
男は自分が引き摺っていた死体を見ろと言っていたようだ。
ゾンビになった変化が見られる。もう動いていない。彼がとどめを刺したのだろう。
「こいつが何に見える?」
「……人間ではないわね」
苦悩するジルは顔を歪めてそう言った。
戸惑いがない訳ではない。だがそう判断するしかなかった。
するとその男は平坦な声で淡々と告げた。
「ああ、俺もこいつと同じだ。こいつらを殺して回ってる。人間だったこいつらをだ。もう人間なんて呼べねぇ」
「あなたは正常よ。自分の身を守るのは必要だもの」
「それも違う。俺は自分を守りたいんじゃない」
男は視線を切って歩き出した。話を聞こうとはしていない。
「俺はもう死にたいんだ。その前に俺の仲間だった連中を楽にしてやりたい。それだけさ」
「待って……あなたは生きてるのよ。諦めちゃだめ。この町を脱出すれば――」
「俺には無理だ」
急に立ち止まって肩を落とす。ひどく寂しげな後ろ姿に見えた。
やはりこの町は狂気に囚われている。
死んだ人間を無理やり動かし、生き残った人間でさえおかしくしてしまう。
「もう、俺は生きられねぇ……今はただ早く楽になりたい」
掠れた小声で呟いた時、淡々としていた彼の弱みが見えた気がした。
再び歩き出した男の背を、ジルは止めることができなかった。
彼には生きる気力が残っていない。止めたところできっと彼は動かない。止めたい気持ちがあるだけでは、人を救うことなどできない。
辺りにゾンビの姿がなく、立ち止まる余裕があることも不幸だった。
ジルは去っていく背中を見送ることしかできずに、悔しさで険しい表情をする。
ぽつぽつと雨が降り始めていた。
生存者は居る。
さっきの男を見て確信した。数は多くないだろうが生き残っている人は居るのだ。
一人でできることには限界がある。ここに仲間が居れば別だったろうが今は自分しか居ない。このまま一人で行動するより、誰かと協力した方が生存率はずっと上がる。そう思ったジルは希望を見出して細い道を歩いていた。
雨脚が強まっていた。服が濡れて重くなり、雨粒が絶え間なく肌を打ってくる。
体が凍えてしまいそうだ。だが悪いことばかりでもなかった。雨で視界は悪くなっていた。
ただでさえ人間よりも感覚が鈍いゾンビはこの雨のせいで音を聞き取ることができず、視界が悪くて人の姿が見つけられない。ジルは何度かゾンビを回避したことでそう判断していた。
濡れた髪を掻きあげる。
着ているのは私服だ。肩を露出して、スカートも短く長い脚を出している。雨に濡れて体は着実に冷えていて、どこかへ入った方がいいかとすら思い始めていた。
先を急ぐ気持ちと理由はある。しかし焦ってはいけない。
確実な脱出こそが大事で、小さなミスの一つでさえ命取りだ。
歩みを止めなかったジルが表情を変えて足を止める。
大通りに差しかかっていた。路地の中とは違って無数のゾンビが歩いている。雨で視界が悪いとはいえ見つからずにやり過ごすというのは難しい。なにせ、ラクーンシティに居た人間のほとんどがゾンビになったのだ。漠然と影を見ただけでも道を塞がれそうなほど多い。
やり過ごすための方法を考えなければならない。
足を止め、建物の陰へ隠れたジルは考える。
持ち主を失った車が至る所に放置されている。隠れながらならば進めるだろうか。
大通りの様子を窺いながらルートを考えていた時、背後でパシャっと音がした。誰かが水溜りを踏んだだろう物音だ。
ジルは咄嗟に振り返って考える間もなく拳銃を構える。
素早い動きで迷いがない。相手が誰だろうとすぐに引き金を引ける体勢だ。
振り向いて視界に納めたのは、両手を上げた人間だった。
降参の意思を示しているらしい。ゾンビではないようでジルは眉を動かす。
立っていたのは若い青年。服装は汚れているがゾンビ化していない人間のようだ。
「待ってくれ。落ち着いてくれ……僕はゾンビじゃない」
銃口を突きつけられた状態で冷静に話していた。この状況を理解して受け止めているのだろう。自分の身の心配よりまずジルの誤解を解こうと必死だった。
人間ではある。だが危険でないと決まった訳ではない。
ジルは銃を突きつけたまま応対した。
「そのようね……だけど、安心していいのかしら?」
「落ち着いて聞いてくれ。僕は町を回って生存者を捜してる。安全な場所があるんだ。そこに無事だった者たちが集まってる」
話す口調や態度、目付きを見て危険は無さそうだと判断したのか。拳銃を持ってはいるが腰にあるホルスターへ仕舞ったまま。おそらく敵対する気はないらしい。
ようやくジルが銃を下ろす。
落ち着いて話せると思って青年も両手を下ろした。
「何が起きたかは知らないがこの状況だ。協力しないと生き残れない。違うか?」
「生存者の数は?」
「僕を含めて十二人。君が居れば十三人になる」
数を聞いてジルは驚く。
この状況下でずいぶんな人数。拳銃を持ってはいても警官や軍人には見えない。それなら彼は素人なのだろうか。それにしては行動力がある。
「あなたは?」
「僕はウォード。学生……だったよ。少し前まで」
「そう。疑ってごめんなさい」
端整な容姿を持ち、柔らかい物腰で丁寧な口調。町へ出て人を探すなど勇敢である一方、気弱とは言わないが強さを感じさせない態度であった。
この状況下だ。人と会えたことは素直に嬉しい。
ジルは先程の態度を謝罪し、彼を信じることにする。
「安全な場所って?」
「近くのビルだ。バリケードを作って物資を集めた。そこなら心配ない」
その程度では安全とは言えない。問題を解決したことにはならないのだ。
そう思ったジルだが助けであることは間違いない。
現状、味方もおらず辛い状況にある。協力できるならばそれに越したことはない。
「そう……わかった。案内してくれる?」
「こっちだ。ついてきてくれ」
彼女はそこへ向かうことに決めた。
体が冷えている。少し休むことも必要かもしれない。
ウォードと名乗った青年に連れられ、彼女は再び路地の中を歩きだした。
歩いている最中、二人の間に会話はなかった。
疲労感が無視できず、事件発生後に休む暇がなかったジルは溜息をつく。そこへきてこの雨だ。余計に体力が奪われて顔色が変化しつつあった。
少しでも休むことができれば、もう少し頭も働くかもしれない。
今は何も考えたくない。歩いている時も周囲への警戒を怠ることなく、彼女の目は鋭さを増す。
無言のまま歩き続けて目的地が見えた。
乱立するビルの一つ。そこへウォードが向かっていく。確かにバリケードらしき物は作られていたが、あくまで気休め程度の物で安全とは言い難い。路地を通って到着したのは裏口だ。見え辛い位置にあるから気付かれにくいというのはわかる。しかし心配不要という訳ではないだろう。
思わず不安を抱いたジルを気にすることもなくウォードがバリケードをくぐって扉を開ける。
そこでジルを待ち、自信に満ちた顔で彼女に振り返った。
「さあ入って。ここなら大丈夫」
「ねぇ、ちょっといい? これじゃ安全とは言えないわ。一人や二人ならまだしも、人数が増えれば間違いなく破られる」
「心配いらないよ。ついてきて。ここには僕の仲間も居る」
なぜそれほど自信があるのだろうか。よっぽど頼りになる仲間でも居るのか。
疑問を解消できないまま、仕方なくジルもバリケードをくぐって扉まで移動する。
ビルの内部へ入った。
照明はついておらず薄暗い。だが少なくとも雨に濡れる心配は無くなってほっとした。
見た限り内部は荒れているが、物が散乱している程度で、死体があったりゾンビが居る様子は無さそうだ。そうでなければ彼らも拠点に決めないだろう。
ウォードの案内に従って階段を上り、二階へ上がる。
目指していたのは廊下の突き当たりだ。
どうやらそこが一番大きい部屋のようで、扉の前に立つとウォードは彼女に先を促す。
「どうぞ」
促され、怪訝な顔にはなってしまったがジルが扉の前に立つ。
中から声が聞こえた。それも大きな声で何か違和感がある。
本当に安全なのだろうか。
不安が頭をよぎったがここまで来たら仕方ない。意を決して扉を開ける。
まず最初にねっとりした空気を浴びた。
甘い香りが広がり、久しく死臭しか嗅いでいなかったジルは思わず頬を緩める。しかしその直後に再び表情は強張った。
女の大声が聞こえてくる。それは楽しそうに、幸せそうに弾んでいた。
男の声が聞こえる。楽しそうなもの、くぐもったもの、叫ぶようなものもある。
部屋の中には裸の男女が居た。
ウォードが言った、ウォードを除いた十一人。全員が裸になって絡み合っている。
歓喜に震える女の嬌声が鼓膜を震わす。小さく声を震わせた男が腰を振る。地面に敷かれた赤い絨毯は彼らの体液で汚れていて、所々に大きなシミがあった。
男が七人。女が四人。
数は合わない。そのため一人の女に三人の男が群がっていて、逆に一人の男に二人の女が絡みついている姿もはっきり見えて、奥には休んでいる男も見える。
彼女はようやく我に返った。
この町はもう狂っている。生き残った人間が正常であるはずがない。
やっと理解した時、ジルは一心不乱に快楽に耽る人間の姿をまざまざと見て、吐き気を覚えた。
「これは……」
立ち尽くしたまま動けない。目の前の状況を受け入れられない。
ジルは顔色を青くして、肌に纏わりつく粘ついた空気に嫌悪感を覚えていた。
彼女の背後でがちゃんと音がした。扉を閉めて鍵までかけられたようだ。
振り返るとウォードしか居ない。彼が扉を閉めた。
つまり、初めからこれが目的だったのだ。彼女をこの場所へ連れ込み、仲間にする。ただそれだけのために学生であるウォードが外へ出て仲間を探していた。この狂った世界へ誘うために。
警戒したジルが身構える前で、ウォードは背を向けたまま上半身の服を脱ぐ。
シャツを脱ぎ捨て、細く白い裸体を露わにして、薄く微笑む彼がジルに振り返った。その時の彼は出会った時とは別人。明らかに顔つきが違っていた。
「さあ、ジルさんもどうぞ」
「何を言ってるの……? これは何? 今の状況がわかってるの?」
「幸せになる方法です。僕らは守られている。僕らは救われる。身も心も解放するんです」
「近寄らないで!」
ジルの声がキンっと響いた。室内は一気に静かになる。
振り向かずとも全員の目が自分を見ていることは理解できた。気配を感じる。異様な空気に包まれていて、聞こえていた甘い声が消えたことで恐ろしいほどの沈黙が広がる。
そんな中で一人の男が立ち上がった。二人の女を相手にしていた中年の男だ。腹が出っ張って体格も良く、スキンヘッドにしていることもあって厳めしい外見に見える。
新たにやってきたジルを見て彼は優しく微笑んでいた。
きっと不安に思っているのだろう。ジルの状態を見てそう判断し、優しく声をかける。
「どうされましたか? そんなに大声を出して」
「あなたたち、今町がどうなっているかわかっているの?」
「わかっていますとも」
「それならなぜ、こんなことをしているの。この町から出ないと。ここに居たって何の解決にもならない。そんなことをしていても解決には――」
「なりますよ」
振り向いたジルは顔だけを彼に向けていた。
その男は、目を爛々と輝かせていて、もはや正気とは思えなかった。
「我々は救われる。我々には愛がある。愛を信じ、愛を感じ、愛に包まれて生きるのです。そうすれば救済は必ず来たる。我々を認めて。我々を信じて。我々に報いる」
「何を、言って……それが、あなたたちのしていることと何の関係があるの?」
「我々は家族です。共に喜び、共に悲しみ、共に怒り、健やかなる時も病める時も共に過ごし、乗り越える。すなわち、そう――」
男は両手を広げて、不気味にも見える恍惚とした顔で言った。
「我々は一つになるのです」
「おかしい……狂ってるっ。あなたたちは、今を見ようとなんてしていない。ただ現実逃避をしているだけよ」
男が手を下ろした。
それとほぼ同時にジルの視界がわずかに揺れる。体から力が抜け、危うく転びかけて慌てて足に力を入れた。突然妙な脱力感に襲われたのだ。
原因は何だ。焦った彼女は室内に目を走らせる。
さっきから今でもずっと感じている甘い匂い。理由はこれしか考えられなかった。
(薬……? 一体、何の……)
部屋の中央にガスコンロを置いていた。そこに鍋をかけ、中にある液体が水蒸気になって室内を満たしているらしい。
ただの水であるはずがない。薬か何かが混入されていたはずだ。
だんだん力が抜けてくる。ついにジルは地面に膝をついてしまい、動けなくなった。
ウォードがズボンと下着を脱ぎ捨ててジルの前に立った。
徐々に体の自由が奪われていくのを感じながら、ジルは彼を見上げる。
勃起してカウパーを垂らすペニスが目の前にあった。
彼女とて経験はある。見たことだってある。だがこの状況で見るそれは、以前とは違い恐怖心しか与えられない。危険だと感じているが逃げることすらできなかった。
「彼女をこちらへ。家族になるための洗礼を済ませなければ」
スキンヘッドの男が呟いた。
反応したのはウォードで、ジルの体を抱え上げると部屋の中央まで運ぶ。
どこかから持ってきたであろうマットの上に寝かせられて、ジルは重くなる瞼を必死にこじ開けながら周囲を眺めようとしていた。
これから何をされるか、予想できないほど馬鹿ではない。
目を閉じて逃げるつもりはなかった。この状況すらも乗り切り、この町を脱出してみせる。彼女の決心はむしろ強くなっていたようだ。
「あなたたち……ただじゃ済まないわ。覚えてなさい……」
力が入らない。瞼が重い。それなのに意識は鮮明で誰がどこに居るかよくわかる。
全身が熱くなっていた。おそらく薬を盛られた影響だろう。腕も足も動かせないのに、股を開くだけの余力はあって、下着が意味を為さないほど股が濡れていた。
ウォードと男の一人が服に手をかける。
動けないジルから服をはぎ取り、あっという間に裸にしてしまった。
大きな乳房がぶるりと揺れ、引き締まった腹筋、大きく丸い尻が露わになる。
男たちによって足を押さえられて、薄く陰毛が生えた股間にその場に居た者の視線が集まった。
男を知らない訳ではない。かといってそれほど使いこまれた訳でもない。わずかに開いた二枚貝は触れる前から濡れていて、今も愛液を外に垂らしている。
笑みを浮かべたスキンヘッドの男は満足そうだった。
床に膝をついてジルの脚の間に入る。
勃起しているペニスを自分の手で擦る。ついさっきまで別の女に入っていた。しかしいまだ衰えを知らずにビクンビクンと震えていた。
ジルの目はその姿を確認する。
怒りを抱く心とは裏腹に、体の奥がきゅんとした。
「さあ、あなたも一つになりましょう。何も心配はいりません。我々は救われる」
亀頭が膣口に触れた。
ジルは一瞬抵抗しようとするも、両手両足を掴まれていて動けない。
「やめっ……!」
ずるり。一瞬で入ってくる。
あまりにもサイズが大きいそれは彼女の子宮口を強く叩き、その瞬間、全身に電流が走った。
びゅっと愛液を噴き出して背中を逸らす。全身ががくがく揺れる。しかし男たちに押さえられていてその場を動くことはない。激しく暴れても位置は変わらなかった。
「かっ……はぁ……!? んっ、なんっ……!」
「ほほう。これは具合が良い」
一瞬にして呼吸が荒れる。視界では星が散っていて、思考は形を為さなくなった。
全てわかっている。これは薬のせいだ。自らの意思でこうなっている訳ではなく無理やり体を弄られているに過ぎないと。しかしわかっていても抵抗できないこともある。
腰を掴んで、スキンヘッドの男が腰を振った。
一度ピストンしただけで顔は惚け、目は細められて舌が伸びる。
想像以上の衝撃に言葉が出なくなる。
抵抗する力は今や皆無だった。
「ひっ、ぎぃ……!」
「はは。どうやら相当の好き者だったようだ。話が早くて助かりますね」
スキンヘッドの男が彼女の腰を掴んでピストン運動を開始した。膣にペニスを挿して抜いて、激しい動きで彼女を責め立てていく。
何よりも薬の効果である。
一突きされるだけで視界にバチッと星が散り、潮を噴き、今まで感じたことのないオーガズムを味わう。無理やりにでも味わわされる。いつの間にか自ら股を開いてさえいた。
仕事が多忙だった彼女はあまりセックスに対する関心がなかった。
経験も多い方ではないし、彼氏が居ればすることもあるが、自分から求めたこともない。そういう意味ではある程度のプラトニックな関係を望んでいた節もある。
しかし、これはまずい。
挿入された瞬間から感覚が違った。
気付けば彼女は、もっと突いてくれと言わんばかりに自ら腰を振っている。
どうやらこれまでの経験が浅かったことが裏目に出たのだろう。今まで到達したことがない快楽を教えられた時、その心は激しく揺れる。
薬による影響が大きかったにせよ、彼女の感じ方はあまりにも凄かった。見ていた男女が股間を熱くして、黙って見ていることができずに初めてしまうくらいだ。
「あっ! あんっ! あっ、あっ、あぅ、うああぁっ……!」
「さあさあ、あとが詰まってますからね。あなたにはここに居る人全員の相手をしてもらわなくてはいけないんです。少し急がせて頂きますよ」
「んああっ!? はぁあああああっ!!」
「いや実を言うと私もあまり余裕がありませんでな。あなたの体が良過ぎてすぐに出てしまいそうなんですよ」
スキンヘッドの男が楽しげに腰を振っている。抵抗する気力も失くして、何度も絶頂を感じながらジルはひたすら喘いでいた。
その様子を見ていた、ジルを押さえた者以外の男女がセックスを始める。
再び乱交が始まっていた。嫌悪感を抱いたジルも今やその一部となっている。
全身が掻き乱される。体も、心も、見知らぬ男に犯されていた。
救済などない。彼らは狂ってしまっただけだ。楽な道に逃げて心を捨て、ただ快楽を貪るだけの生物に成り果てている。そんなものゾンビと変わらない。
激しくペニスを突き続ける最中、男はジルの目に気付いた。
自分を犯す男を睨みつける目。快楽に負けながらも抵抗しようとする、強い目だった。
「はっはっは、そうですか。私が気に入りませんか」
「ふーっ、ふーっ……!」
「しかし今のあなたはほれこの通り」
「んあああっ!?」
「私のチンポを嬉しそうに銜え込んでいる。認めなさい。あなたも私の家族なのです」
ぐっ、ぐっと力を入れて奥までほぐされる。
膣の中にあるペニスは至る所を引っ掻いてジルの心を乱していた。彼が動く度に腰が跳ねて自ら快感を欲している。そんな浅ましい自分が許せない。
「一つになれば怖い物など何もない。大丈夫です。私を信じなさい」
「うぅっ、はぁんっ……あぁっ! あっ! ああんっ!」
「ほら、もう出ますよ。洗礼の証です。きちんと子宮で受け止めてください」
一際腰の動きが速く、強くなった。
ぎゅっと目を瞑ったジルは必死に耐えようとする。しかしペニスの動きに合わせてどうしても声が出てしまい、抑えようとしても息が大きく吐き出される。
やがてスキンヘッドの男が射精した。
膣内に感じた精液にビクッと反応して、彼女は全身を震わせた後に四肢を投げ出す。
「ふぅ……流石に量は出ないか。まぁ仕方ない。それじゃ、交代だ」
スキンヘッドの男はあっという間に膣からペニスを抜いた。
その直後、スキンヘッドの男が退いた場所にすかさず別の男がやってきて、愛撫を施すこともなくペニスを膣に挿入する。新たな感触にジルの声は跳ねた。
腰を掴んで最初から激しく突かれる。
さっきとは違う。だが快感の大きさはそう変わらない。
彼女が知るセックスとは何もかもが違っていた。
またしてもびゅっと潮を噴いて、それを気にすることもなく男はジルの膣を突く。
「うぅんっ、ふんっ、んんんっ……!」
「声を我慢する必要はありませんよ。あなたを否定したりはしない。あなたの全てを認めることができます。我々は家族になるのですから」
「んんんっ、くっ……ふはぁ、あぁっ」
ジルの辛そうな声と、別の女の楽しげな嬌声が入り混じっていた。
雨とは違う。いつの間にか汗を掻いて、自分の愛液が飛び散っていて、彼女の体は濡れていた。
一人の男が機械的に淡々とジルの膣にペニスを突き込んで腰を振っている。また別の男が腕を押さえながら彼女の胸を揉んでおり、感触を確かめるかの如く円を描くように触っていた。それとはまた別の男が足を掴みながらもう片方の手で彼女のクリトリスを指で転がしていた。
四方八方から全身を刺激される。
こんな経験は、もちろんない。初めての状況に彼女の理解も追いつかなかった。
二人目の男が射精して、またもジルの子宮に子種が注ぎ込まれた。
体内にある熱を意識せずにはいられず、彼女はぐっと唇を噛む。
そんな態度とは裏腹に体はオーガズムを感じていて、全身の震えが止まると脱力して、今度こそ抵抗の力は完全に無くなった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「二人目も済みましたね。それでは次です。あと六人ですよ」
次の男が脚の間にやってくる。
霞む視界で顔を確認すれば、そこに居たのはウォードだ。整った顔に純粋そうな笑みを浮かべて嬉しそうにジルを見つめている。
手でペニスを支えて、亀頭が膣口にぴとりと合わさった。
ジルは感じていたはずの憤りを思い出し、彼を睨みつける。
「ジルさん、あなたを見つけた時思ったんです。あなたは僕の妻になるべき人だ」
「ふざ、け……ないで」
「僕らの家族になってください。そしてその後は、僕らは夫婦になりましょう」
ずるっとペニスが挿入される。
ジルは甘い声を洩らし、背をのけ反らせた。
「あぁっ、はぁっ……!」
「あなたは美しい。あなたが僕にとっての救済なのかもしれない」
「うんんっ、ああぁっ!?」
ウォードはこの中で最も若い。それもあって腰の動きが凄まじく速かった。
パンパンと一定のリズムで肉がぶつかり、ペニスはこれまでで最も凶暴な動きを見せる。
三人目であってもオーガズムは途絶えない。これで何度目かわからないほど彼女はイキ続けて、暇さえあれば潮を噴いて辺りを濡らした。
楽しそうなウォードは片時も休まず彼女を責め立てた。
笑顔で腰を振ってジルの表情をじっと観察する。
「くぅっ、ふぅっ、うあああっ!?」
「好きですよ、ジルさん。結婚してください。あ、愛してますぅ!」
子宮口に亀頭を叩きつけて、両足を掴んでぐっと持ち上げ、ウォードが絶叫しながら射精した。勢いよく飛び出す精液は彼女の中へ全て注ぎ込まれていく。
彼女を妊娠させようという意図のある行動だろう。
優しげな顔で眺めていたスキンヘッドの男は満足そうに頷いている。
ぬぽっとペニスが抜かれてウォードが移動した。
すぐさま次の男がジルの膣にペニスを入れる。
足を抱えて腰を振りながら彼はウォードの方を見ていた。
笑顔で、かけた声は親しげだ。
そこに敵対意思など微塵もなく、彼らの様子は仲が良いと評するに値するものだった。
「よかったなウォード。おめでとう。君たちの結婚を祝福するよ」
「はは、ありがとうございます。初めて見た時に運命だと感じたんです。きっと僕にはこの人しか居ないって」
「それじゃ洗礼はさっさと済ませないとな。お前ももっと彼女としたいだろう」
「はい! お願いしますよ。僕まだ今日はこれが一発目なんですから」
男はそう言ってジルに挿入して腰を振り続ける。抜こうという気配は一切ない。
ウォード自身もそれを当然と考えていて、大した反応はなかった。
彼は嬌声を上げるジルの顔の横へ移動すると、射精直後ながら即座に勃起したペニスで彼女の顔を撫でて、無理やり口を開けさせるとその中へ突っ込んだ。
「頑張ってくださいねジルさん。あと五人です。それが済んだらもう一度僕の番ですからね」
「むぐっ、おがっ……ゲホッ!? エホッ!?」
顔を跨いでのしかかるように、ペニスを深くまで差し込んでくる。喉まで届いて苦しい。金玉が顔の上に置かれていた。これ以上ない屈辱だ。
ジルはあらゆる快感、恥辱に耐えながら決心する。
絶対に彼らになど屈しない。
必ずこの狂った世界から抜け出て、原因たるアンブレラを見つけてみせる。そう思いながら再びオーガズムを感じて腰をビクンッと跳ねさせた。
(こいつらは許さない……絶対にっ! チャンスを見つけてここから出る、必ず!)
決心しながらも潮を噴いた。
またも膣内に射精されて、その熱が彼女をまたイカせて、ジルは白目を剥いて嬌声を上げた。