※この作品はR-18です。

蛇獣書房   作:ヘビとマングース

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古見さんは、興味津々です。(古見さんは、コミュ症です。)

 初体験というものは、どんなものであれ緊張するものだ。

 色々と想像を膨らませて期待を持ち、上手くできるかという不安もあって、やりたい気持ちとやめた方がいいかという気持ちが混ざり合って混乱することが多々ある。従ってどんな種類のものであれ、初体験というものはひどく緊張するものだ。

 

 おまけに彼は比較的小心者であった。

 何をするにも至って普通。至って平均的。

 自分にあまり自信がないせいか、そんなに目立たなくてもいいとすら思っている。

 

 そんな彼がしかし、今日迎える初体験はあまりにもハードルが高過ぎないだろうか。

 何の変哲もない少年はがくがく震えながら夜の公園に立っていた。

 

 季節は夏の頃。

 夜になっても少し蒸し暑く、とはいえ昼間に比べればずっと過ごしやすい時間帯。

 学校はすでに夏休みに入った。

 今の時間は深夜。本来ならば高校生である彼らが外を出歩いていい時間ではないのだが、今日はこの時間でなければならなかった。

 

 できるだけ人が通りませんように。

 そう思いながら彼は大きな公園、公衆トイレの前に立っていた。次から次に流れてくる汗が暑さのせいか緊張のせいかわかったものではない。

 

 彼は誰かを待っている様子だった。

 しばらくすると公衆トイレの中から女性が出てきて、少年が振り返った。

 

 息を呑むような美少女である。

 長い黒髪に白い肌。熱帯夜には心地いい涼しさを感じる目元は猫に似ている気がする。手足がすらりと長くて、無表情ながら今は頬を赤らめていた。

 少年は息を呑む。その人こそ彼が待っていた相手。

 いつになっても見惚れてしまい、少年の顔も真っ赤に染まっていた。

 

 少女が音もなくそっと歩み寄って、少年の手を掴む。

 掌を上に向けて自分の指を使い、そこに文字を書き始めたのだ。

 

 『待ちました?』

 「う、ううん! 全然! もっと待っても大丈夫でしたよ!」

 

 少年は気が動転した様子で返答する。すると少女は恥ずかしそうにしながら微笑んだ。

 続けて少女が彼の掌に文字を書く。

 

 『行きましょうか』

 「は、はい……で、でも、本当にやるんですか?」

 

 少女の顔の赤みはさらに増していた。

 そんなに恥ずかしいなら別にしなくてもいいのに。とは思うものの、同じく興味があるらしい少年は強くは主張しない。

 考え、悩み込んでいた様子だったが少女は顔を上げて頷く。

 

 「そ、そうですか。そうですよね。ここまで来たんだし、僕は嫌じゃありませんけど……」

 

 言いかけてぴたりと止まった。

 確かに興味はあるが不安がない訳ではない。彼とて先程からずっと悩んでいるのだ。

 彼女が可愛過ぎてつい乗り気になってしまったが、その直後にこれからしようとしていることを冷静に思い返し、どんどん顔が青ざめてくる。

 その様子を間近で見ていた少女はきゅっと手を握り締めた。

 

 『大丈夫ですか?』

 「いやいや、ははは、大丈夫だけど……もし見られたりしたら大変ですよ? その、バレたら一生ものというか、噂が立っちゃうかもしれないし」

 

 恐る恐る少年が尋ねる。

 彼の様子を見て少女は真剣に考える一方、やはり意見を変えるつもりはないらしく、決行だと伝えんばかりにフンスと鼻息荒く拳を握った。

 

 「そ、そうですよね。じゃあ、えっと、その……」

 

 彼女の気持ちを察した少年が頭を掻いて辺りを見回した。

 当然夜なのだから辺りは暗い。しかし公衆トイレ付近は街灯があって幾分明るさがある。

 改めてそれを確認した少年は不安そうに街灯がない方向を指差した。

 

 「もうちょっと暗いところへ……」

 

 恥ずかしそうに少女が俯く。それを見て少年の心臓の鼓動がさらに速くなった。

 こうなればもう待ち切れない。彼女の手を握って歩き出す。

 

 暗がりへ。光の届かない場所へ。

 手を繋ぐだけで恥ずかしそうにしている二人は、ぎこちない足取りで歩く。不安に苛まれて振り切れないのに少し急いで。敢えて人目につかない場所に入った。

 

 植木を越えて、木々が生い茂る一角へと入り、木の陰に隠れるようにして足を止めた。ここなら周囲には背の高い草もあって、尚且つ木が多いため人目につかない。わざわざ探しにでも来なければ見つかることはまずあり得ないだろう。

 入念に確認してようやくほんの少しだけ安堵する。

 周りを確認し終えた少年は少女に振り返った。

 

 その時、すでに彼女は自分が着ているコートに手をかけていた。

 思わず息を呑む。

 何度見たって落ち着かない。落ち着けるはずがない。しかも今日はいつもと状況が違っていた。

 袖を通したままコートの前を開けた時、その下には少女の裸体があったのだ。

 

 均整の取れた肉体。胸は大きく膨らんで、腰は括れ、脚は長く、黒々とした陰毛、或いはそこに隠された秘部も、隠す物は何もない。コートを除けば布の一片すら身に纏わず、靴下まで脱いでサンダルを履いていて、ほとんど裸と言っていい姿だ。

 少年は股間を熱くし、緊張から背筋をピンと伸ばして立っていた。

 当然見ないはずはない。穴が開くほど彼女の裸を凝視している。所在なさげに動く両手は彼女の体か、そうでなければ自分の股間を触りたくて仕方がなさそうだ。

 

 「ここ、古見さんっ、もう脱いじゃうんですか……!?」

 

 期待と不安、その両方が入り混じって。

 少年の呟きに答えるべく少女は頷く。

 のそのそと動きは遅く、決して躊躇いがない訳ではなかったものの、彼女は自らの意思でコートを脱いで地面に落とす。そうすればサンダルを履いている以外は完全に裸だ。

 

 深夜の野外で、絶世の美少女が素っ裸で立っている。

 漫画のように鼻血を噴き出してもおかしくない状況下で、少年は高ぶっていた。

 こうなればもはや不安など関係ない。今は彼女と共にこの一時を楽しむことに全力である。

 

 少女が一歩前へ進み出て、少年に近付いて手を取った。

 先程のように掌に文字を書いて意思を伝える。

 

 『只野くんも脱いでください』

 「は、はい! って、あんまり大きい声出すと……!?」

 

 慌てて口を閉じて、恐る恐るではあるが少年もその場で服を脱ぎ始めた。

 シャツを脱いで、ズボンを脱ぎ、下着を脱いで裸になった。彼も同じくサンダルを履いていて、それ以外は完全に裸になった。

 勃起したペニスがぶるんと揺れる。

 少女はそれを興味津々に見つめていて、思わず少年は恥ずかしそうに顔を伏せる。

 

 「えっ……と」

 

 言葉に詰まってしまう。

 これから何を始めるのか、答えは一つしかない。

 先に動いてきっかけを作ったのは少女の方だった。

 

 おずおずと体を寄せて、顔を寄せ、唇をほんの少しだけ尖らせて目を閉じる。

 少年はごくりと喉を鳴らし、それから意を決して唇を突き出す。

 

 何度やっても緊張するものだ。いつになっても慣れることはない。

 今でも、なぜこれほどの美人と僕が、と思ってしまう。しかしこれを望んでいるのは他ならぬ彼女の方なのだ。応えないという選択肢はない。

 少年は少女にキスをして、そっと彼女の体を抱きしめた。

 

 

 

 

 古見さんは、コミュ症です。

 人と話すのが苦手で、接し方がわからなくて、だけど人と関わりたくない訳じゃない。古見さんはコミュ症なんです。

 僕は至って普通の人間だけど、ひょんなことから彼女の友達第一号になった。

 少しでも古見さんに友達が増えてほしい。その一心で古見さんの近くをうろちょろしてた。

 

 いつからだろうか。僕らの関係が変わったのは。

 きっかけは……そう、やっぱり古見さんだったと思う。

 

 あくまでも普通の友達として日々を過ごしていた僕と古見さん。だんだんと友達も増えてきて、少し変わった生徒も多いクラスだけど、賑やかで楽しい生活を送ってた。

 僕はそのクラスの学級委員で(なりたかった訳じゃない)色々と仕事を任されることも多い。

 古見さんは僕の手伝いをしてくれることが多くて、今ではそれが当然になっていたくらいだ。

 

 きっかけは、あの日。突然の出来事だった。

 何をしていたかはすっかり忘れてしまったけど、その日も僕は学級委員として仕事を任されて、放課後に教室に残って作業をしていた。手伝ってくれる古見さんも一緒だ。教室には僕ら以外誰も残っていなくて、近くの教室にも人の気配がなかったのを覚えてる。

 そこまでは至って普通のこと。今では当たり前になった出来事。

 

 その日だけ違ったのは、何かの拍子に古見さんがバランスを崩して転びそうになったこと。

 咄嗟に僕は古見さんを助けようと手を伸ばしていて、そして気付けば一緒に転んでた。

 それだけでも情けないのに、問題はそれだけじゃなかった。

 

 今でもはっきり覚えてる。その日の作業のことは忘れてもあの光景は忘れない。

 何がどうなったのか、僕の上に古見さんが居たんだ。

 最初は夢か何かかと思ったけど違った。ちゃんと現実だった。流石にあのコンマ数秒で寝る訳がないし、何より古見さんの息遣いを近くに感じた。あの瞬間を忘れたりしない。

 

 その時、古見さんが、顔を真っ赤にして僕から目を離さなかった。

 多分、僕も顔が赤かったと思う。とにかく熱かったから。

 何か変だな、と思いながら緊張してたら、突然古見さんの顔が近付いてきて、驚いてると避ける暇もなく唇を塞がれた。

 僕らはその時、初めてキスをしたんだ。

 

 あの時は訳が分からなくて何も考えられなかったけど、とにかく熱烈なキスだった。

 両手で顔を押さえられて、全身で押さえられるみたいな。初めてとは思えないくらい力強いキスだったのを覚えてる。というより、忘れられない。あれがお互いのファーストキスで、普通ならあり得ないようなファーストキスだ。

 

 多分古見さんも色々テンパってたんだろう。

 あのキスだって突発的に思わずしちゃったってものだった。本人も後で釈明してたし。

 

 それで、そのキスが済んだ後。

 古見さんは溜息をついて、僕の上に乗ったまま体を倒して僕に抱きついてきた。

 耳元で呟かれた言葉が、関係が変わるきっかけ。

 

 「好き……です」

 

 なんていうか、その、思わず言っちゃったって感じの。突然の一言だった。

 あの後古見さんはハッとした顔で激しく取り乱して、肯定も否定もできなくて、とにかく慌てていたことだけは事実で。でも、結局はその後告白されたんだ。

 

 僕と古見さんは、一応、恋人って関係になったんだと思う。

 今でも僕でいいのかな? なんて思ったりするけど、古見さんがそれを認めてくれたから。

 

 その日を境に僕らの関係、はもちろん、特に古見さんが変わったんだと思う。

 人目がある時はいつも通り。今までと何も変わらない。だから僕らの関係に気付いた人は多分誰も居ないと思う。問題なのは二人きりになった時。

 

 まず何が違うって、古見さんがキス魔になっちゃったことだ。もうとにかく暇があればキスをされるわけだ。もちろん嫌じゃないんだけど、いつも古見さんが僕の隙をついて唇を奪って、一度したら中々離れない。

 最初はその程度だったけど、まぁいわゆるその……一線を越えてからはもっと凄い。

 まぁ、だから、エッチをしたわけだけど。それ以来二人きりになったら古見さんが僕にキスをしてきて、そのままの流れで始まってしまうのである。

 

 どうやら古見さんは、そういうことに興味津々だったらしい。

 エッチを覚えてからというもの、あらゆることを試したがった。

 キスの仕方を変えたり、口でしたり、お互いに舐め合ったり、色んな体位を試したり、一緒にアダルトビデオを鑑賞したり、その流れで見ながら映像の真似をしたり、道具を使ったり、水着とか体操服とか衣装を変えてみたり……。

 時間と場所は限られてたけど、それだけに、試せることは全部試した。

 ほとんど、っていうか多分全部が古見さんの提案で、僕はされるがまま。でもまぁ、したいのは本心だし十分楽しんでたんだけど。

 

 そんなこんなで、近頃僕と古見さんの日常は非常に爛れている。

 色々やり過ぎて歯止めが利かなくなってるくらいだ。

 古見さんはどんどんエッチになっていくし、僕もそれに応えたくてどんどん前向きになってる。

 

 それが最初のきっかけとして。

 つい最近、古見さんが新しいものに興味を持って試したいと言ってきた。

 

 なんでも、野外露出に興味があるらしいんだけど……マジで?

 

 

 

 

 ぴちゃぴちゃ水音が鳴って、会話が無くなると辺りは急に静まり返る。

 会話と言っても古見さんはほとんど喋らない。話すのはもっぱら只野くんな訳だが、その只野くんの唇が塞がれた今、全ての主導権は古見さんが握っていると言っていい。

 

 二人の間に上下関係はない。主従関係でもない。しかしいつからか、不思議とリードをするのは古見さんと決まっていたようだ。

 大抵セックスのきっかけは古見さんであり、急に只野くんを襲うのが影響しているのだろう。

 大体は只野くんが彼女の性欲に付き合うような関係で、リードを奪われるのも無理はなかった。

 

 キスをしながら、古見さんの手が只野くんのペニスを撫でる。

 指先だけで下から掬うようにそっと。

 少し触れただけで彼の体はビクッと震えて、それが愛おしくて頬を緩めた。

 

 舌を絡め合う。強く吸いつく。少しだけ目を開けて彼の顔を見る。

 右手ではさわさわと亀頭を撫でていて、左手は自然な動作で乳首を転がしていた。明らかに慣れを感じさせる動作に只野くんは目を閉じて、されるがままで小さく声を洩らしている。

 一方的に触っているだけなのに、古見さんの体は熱くなる一方だった。

 はぁと溜息が洩れ、彼の唇をぺろりと舐めてから一旦口を離す。

 

 くちゅ、と湿っぽい感触。

 自分の股に触れてみた。どうやらもう濡れているらしい。

 

 いや、そんなことは初めからわかっている。トイレで服を脱いで裸にコートという姿になり、外へ出た時から。ひょっとしたらその前、深夜に只野くんと会った時から濡れていたかもしれない。

 彼を見ているだけで体が疼いてくる。

 何度してもキスがやめられない。もっとしたくなる。

 何度エッチしても止められない。もう一度したくなってしまう。

 何度だって彼に触れたい。触れられたい。一緒に居たい。キスがしたい。エッチしたい。片時も傍を離れないでほしい。

 

 彼と居るとどんどん強欲になってくる。そんな自分が少し嫌になった。

 それでもやっぱり彼と離れるのは嫌なので、古見さんは彼に抱きつくと首筋に顔を埋めて、強く吸いついて痕をつけようとする。只野くんは小さく喘いで脚を震わせていた。

 

 彼の肌に吸いついたまま、首筋から下へ向かって移動を始める。

 鎖骨を通って、乳首を舌で転がして、おへその辺りを舐め回して、さらにその下へ向かう。

 辿り着いたのはビクビク震えているペニスだ。

 下品にも脚を開いてしゃがみ、それを前にして、古見さんは只野くんの顔を見上げた。

 

 フェラチオの経験はある。それをする時、只野くんが期待した顔になって、している間もずっと嬉しそうにしているのだ。

 古見さんはフェラチオが好きだった。

 只野くんが喜ぶことなら何でも好きになれる。そんな理由でフェラチオが好きなのだ。

 今日も見るからに期待していて呼吸が荒い。只野くんのアホ面を見て古見さんは微笑んだ。

 

 「こ、古見さん……だめですよ、そんな……」

 

 どうやら只野くんはマゾの気があるようだ。

 SMもののアダルトビデオを見た際、試しに古見さんがマゾの役で、只野くんがサドになって色々試してみた結果、それはそれで楽しかった。じゃあ逆になってみようと試した時、心なしか只野くんがさっきよりも嬉しそうなことに古見さんは気付いていたのである。

 只野くんにそんなつもりはない。むしろ彼はリードしたがっている。

 ただ、古見さんの目に狂いはなくて、事実嬉しそうなのだから仕方ない。

 

 彼の言葉を敢えて無視して、口から舌先を覗かせる。

 ほんの些細な行動なのだが只野くんはわかりやすく喉を鳴らしていた。

 勃起した状態のペニスなど何を待っているのか揺れてすらいて、彼の期待値を表している。

 

 古見さんが口を近付けた。

 舌先からペニスの亀頭に触れて、その瞬間に只野くんが変な声を出す。

 

 「ふおぉっ……!」

 

 辛そうなのではない。嬉しそうな声だ。

 以前本人に確認したことがあるため、安心して古見さんは亀頭を舐める。

 

 唾液をたっぷり擦りつけて、舌の全体でペニスを撫でていった。彼のそれは硬く、特別大きい訳でもないが小さ過ぎる訳でもない。至って普通。硬さも太さも長さも普通。ビバ平均なのである。

 古見さんは只野くんのそれが大好きだった。

 他の人のは受け付けない。興味がないし見たくもない。只野くんだから好きなのである。

 

 ちゅぷちゅぷと唾液を塗りつけて、丁寧に、徐々にペースを変えてみる。

 只野くんは焦らされるのが好みらしい。何度となくエッチをしているわけであって、その度に新しいことを試すのも珍しくなくて、色々と研究した成果がそれだ。

 一方的に責められるのが好きな彼は焦らされるのが堪らないらしかった。それを知っている古見さんは、力を入れて舐めた先程とは一転して、触れるか触れないかで舐める。

 

 只野くんが変な声で鳴いている。

 他人が聞けば変というその声も古見さんの耳には可愛く聞こえる。

 反応が嬉しく、古見さんは目を細めて只野くんの顔を見上げた。

 

 「へぁっ、うぅ、古見さん……」

 

 ちょうど彼女を見下ろした彼と目が合った。

 それよりも凄いことをしているはずだが、それだけで恥ずかしくなって俯いてしまう。それでもペニスから口は離さない。ずずっと音を立てて吸い、深く口に入れようとしていた。

 

 苦しげな顔で、しかし押し寄せる快感に耐える只野くんが、古見さんの頭に手を置いた。

 たったそれだけのことでもびっくりする。口に入れたペニスを吸いながらその手を確認した。

 

 彼に触れることが、彼に触れられることが、こんなにも嬉しいだなんて。

 きっと少し前なら気付けなかった。彼に出会うことがなければずっと知らないままだった。

 彼女は確かに、幸せを噛みしめていた。

 ペニスから口を離し、代わりに右手で竿を握って、微笑んだ顔で只野くんを見つめる。

 

 右手を上下に動かしてペニスを擦り始める。

 さっきとは異なる刺激に只野くんは腰が引けており、全然余裕が無さそうだ。彼も童貞だった頃よりは成長しているとはいえ、如何せんいつも古見さんの掌の上で踊らされるばかりなので、一方的に責められれば途端に弱くなってしまう。そうでなくても弱いのだが。

 古見さんは甘える素振りで亀頭に頬ずりし始め、只野くんは頭を撫でるので精一杯だった。

 

 頭を撫でられたことで古見さんの機嫌はさらに良くなる一方。下がることはない。只野くんがすることなら大半が彼女を喜ばせるのだ。

 しなやかな指が竿の部分から移動し、亀頭をそっと摘む。

 円を描くようにこねくり回して、彼が途切れ途切れに出す声を嬉しそうに聞いていた。

 

 そうして奉仕をするのが彼女は好きだった。

 どちらが上で、どちらが下か。そんなことはどうでもいい。

 只野くんが喜んでいる。それだけで古見さんは満足だったのだ。

 

 従って彼のペニスを弄りながら、自分の秘部は自分で慰めることになっても不満はない。

 できれば彼の指で触って、彼の舌で舐めて、彼のペニスを突っ込んでほしいが今でも満足だ。

 

 ちょうどそんなことを想い始めた時、只野くんの手がぐっと古見さんの頭を押さえる。

 視線を上げてみれば余裕が無さそうな彼の顔。

 黙ったままでその表情にきゅんきゅんしていると、ちょうど古見さんが求めていた通り、只野くんが自分のペニスを握って彼女に要求した。

 

 「こ、古見さん……そこの木に、手ついてくれるかな」

 

 古見さんは迷う素振りを見せずに頷く。

 彼が求めるならば何でも。

 すぐに立ち上がって木の前へ移動し、幹に手をついて尻を突き出す。只野くんには自分の恥ずかしいところを全て見られている格好だが、これが恥ずかしくもあり、同時に嬉しくもある。どうやら古見さんも真正のサドという訳ではなくマゾの気が強いらしい。

 

 只野くんが古見さんの背後に立った。

 突き出された尻を見つめて、興奮した面持ちは我慢を忘れている。

 あまり余裕が無さそうな顔だが、彼は尻たぶをぎゅっと掴み、外側へ開いて観察を始めた。

 

 自分の愛液でとろとろになっているアソコが見える。

 鼻息は荒く、ペニスは待ち切れないと主張するかのようにビクビクしていた。

 

 もう一度ペニスを手で握った時、只野くんはハッとする。

 コンドームをつけていない。古見さんが脱いだ服を詰めたバッグ、あの中に入っているはずだ。探してみると近くの木の下に置いてあった。

 取りに行こうか。でも我慢できない。只野くんは逡巡する。

 

 「あっ……古見さん。ゴム、つけてなかった。ちゃんと、着けないとね……」

 

 胸がドキドキする。カウパーがだらだら溢れていた。

 只野くんの呟きを聞いて、離れてしまう、と感じた古見さんは咄嗟に彼の腕を掴んでいた。両手で尻を掴んだ状態で、彼はこっちを見ない古見さんの声を聞くことになる。

 

 「そ、の……まま」

 「え?」

 

 今は筆談ができない。掌に文字を書くこともできない。

 古見さんは顔を真っ赤にして、恐る恐る振り向いて只野くんの目を見た。

 

 「今日、は……顔に、かけてほしい、から」

 

 すでに我慢の限界など越えていた。しかし只野くんは必死に待つ。

 鼻血が出そうだ。チンチンが爆発するかもしれない。

 そんなことを考えながらも古見さんの言葉を聞き逃さないように集中する。普段はあまり聞けない古見さんの羞恥心いっぱいの声を全身全霊で耳にした。

 

 「外に、出すなら……そのままでも、いいよ」

 「古見さんっ!」

 

 只野くんは勢いをつけてペニスを膣へ挿入する。

 ズパンっと腰がぶつかってきて、驚いた古見さんは木に抱きつくようにして必死に耐えた。

 

 「んっ……んぅ……!」

 「おぉっ、すげっ……!」

 

 古見さんの腰を掴んで、ペニスが包まれる感触に恍惚としながら只野くんが呟く。

 つい声が大きくなってしまった。誰かに聞かれなかっただろうか。忘れかけていたスリルを如実に感じるものの、もはや止められない。

 

 只野くんは激しく腰を振り始めた。

 古見さんは唇をきゅっと結び、必死に声を押さえながらそれを受け止める。

 

 「んん……んぅ……!」

 「はぁ、古見さん、声出しちゃだめですよ……バレちゃうかもしれませんから」

 

 荒い息遣いになって必死に腰を振る。

 野外セックス。まさかこんなに気持ちいいなんて。

 快楽を求めているのに、声を出すことは許されない。気持ちよさともどかしさが入り混じり、二人は今までにない新感覚を味わっていた。

 

 心なしか古見さんもいつもより締めつけてくる気がする。

 夏の暑さと夜の静けさ。外でしか味わえない空気は格別だった。セックス中なら尚更である。

 古見さんの背中にのしかかった只野くんは、ぶるぶる揺れる乳房をぎゅっと掴んだ。

 

 言葉も交わさず、夜とはいえ外で、失礼なほどの激しさでお互いを貪る。獣のセックス。二人の興奮は留まるところを知らなかった。

 今までだって悪くなかった。今までだって最高だ。ただ趣が違う。種類が違う。

 お互いの家で、学校で、図書館で、プールで、公衆トイレで。そして野外で。全部違ってみんな良い。それが彼らの体感してみた感想だ。

 

 一心不乱に腰を前後に振り続けて、只野くんは息を切らすと一旦腰を止める。

 彼女の乳房を、乳首を弄って、休憩しながら胸を触ることに集中し始める。只野くんにとっては休憩になったろうが刺激を受け続ける古見さんにとっては休みではなかった。

 

 古見さんはスタイルが良い。誰が見ても絶世の美女。容姿から体型まで全てパーフェクト。

 ただ一つ、他人とコミュニケーションを取ることだけが苦手。

 それすらも克服した時、今このように、かつてない征服感と高揚感が得られる。

 胸を触っているだけでも只野くんのペニスはビクビク震え、今にも射精しそうだった。

 

 「古見さん……好き。好きだよ。古見さんのことが大好きだ」

 

 思わず呟いた言葉に反応して、膣がきゅううっと締まった。

 只野くんは我慢できずに再び腰を打ちつけ始める。

 

 「ううぅっ、古見さんっ。気持ちいいよ、古見さんっ」

 「んっ、ふっ、うっ、うっ――!」

 

 洩れそうになる声を必死に堪えているのがわかった。

 奥にズンと突き刺さる度、古見さんの尻が跳ねている。気持ちいいのだ。至って普通の自分でも満足させられるのだ。

 さらに熱くなってきた只野くんはぐいっと彼女を抱きしめ、背筋を伸ばして膣を穿った。

 

 「うぅ、古見さん、古見さん……!」

 「はぁっ、あっ、あぁっ……!」

 

 汗だくになり、長い髪を振り乱して古見さんが悶えている。

 ふつふつと沸き上がる何かが堪えられなくなってきた。

 考える余裕も無くなって、只野くんは突然声を小さくしたまま叫んだ。

 

 「あうぅ、うあぁ……し、硝子(しょうこ)ッ!」

 「ッ!?」

 

 突然下の名前で呼ばれて古見さんが目を見開いた。

 ほぼ同時にズンッとペニスが子宮口まで突き刺さり、彼女の目は再び蕩ける。

 

 「はぁっ、好きだっ。愛してるよ、硝子っ!」

 「ふっ、んっ、んんっ……! 好き、好きです……仁人(ひとひと)さんっ……!」

 

 自らも彼の下の名前を呼んだ時、意図せずオーガズムを感じていた。

 膣がぎゅううっと締まって、急に脚から力が抜けた。

 その瞬間に只野くんは必死に彼女を支えるのだが、膣の締まりが強まったことで一気に我慢できなくなってしまい、あっと驚いた顔になる。

 びゅっと少し出てしまったのである。

 なんとか古見さんをしゃがませることに成功して、慌ててペニスを引き抜いた。

 

 「うぅ~、古見さんっ、顔にぃ」

 

 抜いた瞬間に右手で激しく扱いて、改めて射精した。

 飛び出した精子が古見さんのきれいな顔を白く汚していき、べっとり張り付く。

 思ったより大量に出た。古見さんの額に、眉間に、鼻筋に、唇に、顎にまで彼の濃厚な精子が付着している。それを見ると征服感に包まれて幸福感に包まれた。

 イッた直後で呆然としている古見さんは、只野くんの顔から目を離さない。

 

 木に手をつき、支えにしたことで辛うじて地面の上に座りこむことはなかったようだ。白くて丸いきれいな尻はきれいなままである。

 そんなことを漠然と考えていると、古見さんが自ら只野くんのペニスに頬ずりした。

 垂れていた精子の残りを顔に擦りつけ、口を開けて亀頭を銜える。そのままじゅぽじゅぽと吸いつきながら頭を振って尿道に残っていた精子を呑み込んだ。

 一連の行動でされるがままだった只野くんは尻を震わせる。

 こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。そう思ってしまうくらい幸せだ。

 

 再び口を離して、ぐったりした様子の古見さんは呼吸を整えようとしていた。

 体に力が入らない。しかし木に縋りついて無理やり立ち上がる。

 心配した只野くんが手を貸そうとすると、彼の方を向き、下半身に手をやった。

 

 両手の指で秘所を開く。とろとろのアソコを彼に見せつけた。

 イッたばかりでも喉を鳴らすのは仕方のないこと。

 古見さんは薄く微笑んで、赤らんだ顔で、興奮しきった表情で、がくがく震える余裕がない脚を隠すこともできないまま、もう一度と只野くんを誘った。

 

 「次は、中に……欲しいです。只野くんの、ザーメン……」

 

 どうやら、アダルトビデオでしっかり勉強したことを忘れていないらしい。そんなことを言われて耐えられるはずがあろうか。

 らしくもなく凶暴な顔つきになった只野くんは古見さんへ跳びかかる。

 即座に膣へペニスを挿入して、それでも彼女の負担を考え、両手で彼女を抱え上げる。いわゆる駅弁スタイルで下から彼女のことを突き上げ始めたのだ。

 

 「うおおっ! 古見さーん!」

 「あんっ♡ うんっ、はぁっ……!」

 

 抱えられた古見さんは抵抗しようとはせず只野くんに抱きつき、全てを彼に委ねた。

 たまにはこうして羽目を外すことも必要かもしれない。

 二人はその後も満足いくまで野外セックスを楽しみ、何度かして少し落ち着くと、深夜の公園で手を繋ぎながら、全裸デートを楽しんだ。

 

 

 

 

 古見さんは、興味津々です。

 エッチなことが気になって仕方ないらしく、ありとあらゆるものを試してみたがります。

 フェラもしたし、クンニもした。シックスナインもやってみた。

 正常位をした。バックをした。騎乗位もしたし、逆正常位なんてのもやってみたことがある。

 コスプレエッチもしたことあるし、大人の玩具を通販で買って使ってみたし、お互いのオナニーを見せ合ったことだってある。

 そして、野外エッチもしたことある。

 深夜の野外全裸デートは、スリルがあったけど意外と楽しかった。

 

 古見さんは、エッチなことに興味津々です。

 でも誰でもいいわけじゃないそうです。只野くんだけ、とあの美しい声で聞きました。

 古見さんはコミュ症だけど、徐々に変わろうとしているんです。

 

 古見さんは、コミュ症です。

 そして、僕の大事な恋人なんです。

 

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