エロくないし暗い話なので、苦手な方はご注意を。
旅をしていたという意味では、私も同じだった。
鷹の団は強く、大きくなり、貴族に認められるほどになった。それがグリフィスの悲願だったとするならば目的を達成することができたのだろう。しかし私は、どこか物足りなさを覚えていた。
鷹の団はグリフィスが中心になっていて、グリフィスが作戦を決めるし、貴族や世間に広く認められるようになったのは、グリフィスというカリスマが居たおかげだ。彼が居なければ一傭兵団がここまで大きく、強くなることはなかっただろう。だがその一方、鷹の団が大きくなる度、私にはなぜか、グリフィスが遠ざかっていくような感覚を覚えていた。
グリフィスは特別だった。
皆がそう言っていたが私も認めている。
彼には私たちに見えない何かが見えていて、私たちにはわからない、何か大きな目的のために動いているに違いない。それだけは伝わるのだが、結局私にはその“何か”がわからなかった。
一緒に居れば居るほど、彼がわからないと思う瞬間が多くなった。
決定的だったきっかけが二つある。
一つは、ガッツが旅に出ると聞いたこと。私より先に入団していた屈強な男で、体が大きく、無愛想だがあれほど頼りになる男は居ない。切り込み隊長として数々の戦地で武功を立てた。鷹の団の出世は彼の存在なくしてはあり得ないことだった。
そのガッツが鷹の団を離れると聞いた時、私だけでなく鷹の団全体に凄まじい衝撃が走った。抜けた後で悲嘆に暮れる者も居たし、反対したり、怒ったりする者も居た。その中で私は、おそらくそれほど驚いていなかったのだと思う。
なんとなく、それがガッツらしいという気がしたのだ。
もう一つの理由は、そのガッツを見つめる、キャスカの気持ちに気付いたこと。
いつからだったか、そうではないかと思っていた。けれど当時の私はそれをはっきり認識することができなくて、多分、認めたくなかったんだろう。胸の中にあるもやもやしたものを振り払うことに必死で、なぜそうなるのかを考えようとはしなかった。
ガッツが旅に出る時だっただろうか。私はきっと、諦めたのだと思う。
ガッツの退団から数日も日を置かずに、私もまた鷹の団を抜けた。日を置かなかったことが原因なのだろうが、ガッツに触発されたのは事実で、それを色々言われたりもした。ただし私はガッツほど鷹の団に必要な人材ではなかったし、グリフィスは多分、ガッツが抜けたショックが大きくて口を利くこともできなくなっていた。
キャスカが悲しんでくれたのがほんの小さな救いだった。けれど彼女は、きっとガッツを選ぶことは間違いなくて、悲しげに潤んだ瞳を見ても、そこに残ろうとは思わなかった。
旅に出たいだなんて思っていなかった。
私はただ、キャスカの傍に居られないと信じ込んで、彼女から逃げようとしただけなのだ。
実際に旅に出てからすぐに困る。私はこれから何のために生きて、どこへ行けばいいのだろう。いきなり何もかもを見失って、どうすればいいかもわからずひたすら足を動かす。
鷹の団に所属する多くの兵士がグリフィスに心惹かれて、彼に従おうと入団していた。彼の命令ならどんな無茶でも信じて疑わなかったし、盲目的になってしまうくらい彼は才覚に溢れていて、その決定はいつも鷹の団を正しい道へ進めてくれる。彼の指示でどれほどの窮地を乗り越え、どれほどの勝利を手に入れてきたのか。それは所属している兵士たち、或いは所属していた私でさえわからない。
とにかくみんな、グリフィスが大好きで、尊敬して、憧れて、自分だけでは絶対に見られない景色を見せてくれる。指導者としてあまりに眩しい、類稀なるリーダーだった。
きっとそれはきちんと理解していて、認めてもいるのだが、しかし私は、グリフィスのために鷹の団に居たわけではない。離れたからこそより鮮明にわかる。
私はキャスカが好きだった。
彼女を抱きたかった。ただ抱きしめるだけでなく、体の隅々まで触れ、キスをして、黒い髪に指を絡ませて、褐色の肌に舌を這わせて、彼女の肢体を思う存分、満足するまで、夜を通して朝が来るまで、何度でも愛したかった。それくらい強い感情を持ちながら、彼女と同じ部屋で寝て、彼女と一緒に湯浴みをして、戦場では常に背中を守り続けた。
キャスカは私のものだ。そう信じてやまない時期もあったくらい、私は心底彼女に惚れていて、長らく抜け出せなくなっていたのである。
私にとって彼女は、確実に、グリフィス以上の存在だった。
グリフィスのことは認めているつもりだ。他者とは違う才覚があって実力がある。目で見てわかる結果を出し続けた結果、誰からも認められる指揮官になった。けれど同時に、私は彼をどこか恐ろしく思っていて、積極的に話しかけようとしたことはない。私は常にキャスカと居たから、キャスカの視線で彼を見ることが多くて、キャスカが心底惚れているグリフィスのことは、まるで仇のように思っていたことだろう。
ガッツのことは好きだった。私と彼は気が合って、雄弁に語る人間ではなかったが、他の男に比べてずいぶん色んな話をしたように思う。だからといって、キャスカへ向けて抱いている気持ちについて話そうとはしなかったけど、それとなくキャスカが好きだということは伝えたことがある。
何も言わなかった。そうかと言って、静かに酒を飲んだ。そんな時間が好きだった。
別に私がガッツをどうしようとか、彼に抱かれたいなんて気持ちはない。ただ、他人を遠ざけるように見えて、意外と人間らしい彼の優しさや温かさに気付くと、仲間としてこれほど安心する奴は居ない、そう思っただけで。
それも、あの日までのことだったんだけど。
キャスカがガッツを好きなのだと気付いて、グリフィスに向けていた感情とは違う、きっと自分自身でも理解できていない感情を隠しているのだと知った時、私は驚かなかった。
ガッツなら。そう思った時、私はきっと負けを認めていたのだろう。お前には無理だとか殺してやるとか、そんなことはちっとも考えずに、ああ、そうだろうな、なんて思っていた。
当たり前のことだ。女が男を好きになるなんて。
そして女が女を好きになって、抱きたいだなんて考えるのは、きっと異常なことなんだ。認めてくれる奴なんて、ガッツみたいな奴でもなければ居るはずがない。
旅をしている間、色々なことを考えた。
自分の未来について。過去について。もっと俗っぽいこともあって、男に抱かれるのではなく女を抱いてみたいとか、女が相手なら抱かれるのもいいなとか、そんなどうしようもないことを一日中ただ延々と考えていることもあった。とにかく私は暇だった。
剣の腕を磨きながらあちこちを見て回った。言いよってくる男は大抵脅すか剣で少しだけ斬ってやるかして遠ざけ、逆に女には自分から近付いた。その甲斐もあって、私は何人かの女を抱くことができたし、似たような趣味の女に抱いてもらうこともあった。最高だった。
それでも満たされない、どこか空虚な毎日を過ごしていたのはやはり、ふとした瞬間に脳裏によぎる彼女の存在があったからだろう。
結局私は断ち切れていない。ガッツなら、なんて考えながらやっぱり寂しかったし、本当は自分を選んでほしかった。自分の思い通りにならなくて、居辛くなって、適当な嘘をついて逃げ出しただけに過ぎないのだ。
帰ることはできない。私は旅を続けた。
鷹の団を離れてそれなりの期間が経つと妙な噂を聞く。
鷹の団壊滅の噂だ。
そんなわけがないと思ったし、私はちっとも信じようとはしなかった。思い返せば、その時に真実を確かめようと動いていれば何かが違ったのかもしれない。けれどそれも結局は、後になってから言える意見でしかないのだろう。
キャスカとの再会は、私が望んでいたものではなく、痛みを伴うものだった。
何があったのかを知ることはできない。彼女は、かつての自分を見失い、以前の記憶も人格も、心さえも失って、全てが壊れた状態だった。
まるで赤ん坊のように小さな声を出して、何をするでもなく、私を見て少し怯えた様子で洞窟の壁に背をつける姿は、私に恐怖と不安、胸が張り裂けそうな苦痛を与えた。
姿形はあの日とそう変わらないのに、佇まいも、仕草も、表情も、何もかもが違って。これは本当にキャスカなのか? そんなことを考えた時、私は衝動的に自分の頬を殴った。それを見てキャスカが怯えていたのだが仕方ない。私は、なんてことを考えたのだろう。
出会ったのは本当に偶然だった。
黒いマントに身を包み、鉄塊のような分厚い剣を背負って、獣のような鋭い目をした、かつてとは別人のようなガッツに、私は人知れず恐怖を抱いた。片腕と片目を失い、私が知らぬところで、呑気に生きていた間によっぽどのことがあったのだろう。彼は以前にも増して語ろうとはしない。
傭兵なんてやっていると、色々な事情を持つ人間を見る。
経験からして、あれは復讐を誓った男の目だった。
もはや人間であることさえ捨てた、ただ復讐のためだけに呼吸を続ける生物。剣と呼ぶにはあまりにも大きく分厚い鉄の塊を選んでいることからも、間違いないと思っている。
偶然の出会い。果たしてそれは、あってよかったものなのか。
私は、何も聞けなかった。様子が違っていたとしても、相手の顔も名前も知っているのに、鷹の団のこと、グリフィスのこと、何より、あれだけ恋い焦がれたキャスカのことを質問することができなかった。
ただ、ガッツは、キャスカのことだけ教えてくれた。
何があったかはわからない。彼女が生きていることと、その居場所。外に出すのは危険だから、夜には絶対に外に出るな。そう言って振り返りもせずに去ってしまう。
止めることはできなかった。何も知らず呑気に生きていた私に、そんなことはできない。
願わくば、生きてまた会いたい。声の一つもかけられずに、遠ざかる背中を見送った。
そうして私は、唯一安全だという洞窟の中でキャスカと再会した。
心が壊れて、どれだけ呼びかけても会話はできない。名前を教えても呼んでもらえない。試しに剣を握らせてみても、当時の女兵士なら誰もが憧れたあの身軽な動きと剣さばきは見る影も残っていない。本当に、別人のようになっていた。
なんとなく察している。ほとんど確信だと言っていい。
鷹の団はすでにないのだ。
彼らの身に何が起こって、どうしてガッツがキャスカを置いて出て行ってしまったのか。団を離れて姿を現すことさえなかった私になぜ任せたのか。わからないことはたくさんあるが、少なくとももう鷹の団が再結成されることなんてないし、大勢が死んだのだろう。
ガッツは最も辛い道を選んだ。キャスカを置いて、孤独になる道を選んだ。そうしなければ生きていることさえできなかったのだろう。壮絶な出来事だったに違いない。
グリフィスは、死んだのだろうか。私は彼に対して特別な感情はなかったし、なんなら少し苦手なくらいだ。けれどキャスカの現状を知る限り、グリフィスもおそらく生きてはいまい。キャスカが壊れた理由にグリフィスの死も関わっているのではないかと思っている。
今更ガッツを追うことはできない。
私はキャスカを守ると決めた。そうしたかったし、ガッツとももう一度会いたい。その時、キャスカまでこの世から居なくなっていたのでは、きっと彼も壊れてしまう。
いや、もしくは、もうすでに壊れてしまったのかもしれない。偶然出会ったあの時、ほんの一瞬かち合った視線は、すでに私の知るガッツではなかったから。
私とキャスカ、二人の生活が始まる。
時折エリカやリッケルトが様子を見に来てくれるが、基本的には二人だけ。
赤ん坊のようなキャスカは自分の面倒を看ることさえできない。催すと我慢することができずに用を足してしまうし、汚した服の洗濯や食事の用意、体を洗うこともできない。一緒に居た頃はできないことの方が少ないと思っていたのに、今では何もかもができなくなっていた。
別人と過ごしているような気分。でも顔や体はキャスカそのもので、表情こそ気が抜けて幼く見えるけれど、やはり彼女はキャスカなのだ。
私はだんだん、何も考えなくなっていく。
キャスカの世話はちっとも苦ではない。注意して見ていなければ、服を来たまま小便を洩らしてしまったり、器に入れた料理をこぼしてしまったりすることもあるが、彼女は私に好意的で、以前よりも真っすぐに私を見てくれる。
不謹慎だが、私は嬉しかった。
昼間は彼女が辛くならないように外へ出て遊び、日が落ちる前に安全な洞窟に戻る。そんな生活を続ける内、私は良からぬ思いを抱くようになっていた。
キャスカは今、私が居なければ生きていけない状態にあるのだ。
かつてのキャスカに恋い焦がれ、心が壊れたキャスカと一緒に居て、まさか、今の状態を良しとしているのではないか。キャスカの心が壊れたことを良かったと思っているのではないか。そんな恐ろしい考えに至って自責の念に駆られる。激しい嫌悪感を覚える。
その一方で、キャスカと二人きりで居られること、私を頼ってくれていること、言い方は問題があるに違いないが、キャスカが私のものになったこの状況に安堵している自分も居る。
キャスカの生活を支えて、生殺与奪を私が握って、最初こそ警戒していたものの、時間が経つにつれて私を信頼し、全てを委ねるようになったキャスカを見て、どうしようもない喜びを感じているのも確かなのだ。
なんておぞましい。彼女の身に起きた不幸を喜び、あまつさえチャンスと思い、まるで洗脳するように自分の価値を認めさせる。
私は、こんなに汚い人間だっただろうか。
それでも、一線を越えることはない。
そうしようと思ったわけではない。だが世話をしている内に気付いたのだ。
キャスカは何かを恐れている。時折蘇る、おそらくトラウマが彼女を苦しめていて、あまりにも体に触れ過ぎると強い抵抗を行うのだ。
魔が差したのは事実だった。ほんの少しだけ。これだけ世話をしているのだから、という薄汚い強烈な想いに衝き動かされて、水浴びをしている最中、彼女の肌をそっと撫でて、その感触と匂いを楽しもうとしてしまったことがあった。
信頼があってのことだと思うが、体に触れることは多い。当然だ、そうしなければ世話をすることができないのだから。だから、という甘えはあったのだろう。
水に濡れた彼女の肢体に手を這わせ、そっと股に指を埋め、少しだけ、ほんの少しだけと思いながら我慢できずに秘裂の中に少しだけ指先を埋めた時。キャスカは吠えた。
獣のような声を上げて暴れ出し、激しく怯えて、私の腕の中から逃げて外へ飛び出した。二人して裸だったのだが気にしてはいられない。私も服を着る暇を惜しんで追いかけ、身体能力自体は以前とそう変わらないことを再確認しながら、暗い森の中で抱きしめた。
その時に彼女の身に起きた異変、夜の間は洞窟を出てはならないという言葉の意味を知ることになったのだが、それよりも私にとっては彼女の激情の方が驚きだった。
キャスカの心が壊れた理由がわかった気がする。
それ以来、私は彼女に無理に触れようとするのをやめた。もちろんそれまでも無理をさせようだなんて思っていなかったが、あの時、あの瞬間、魔が差して少しだけと思ったのは事実だ。
キャスカが嫌がることを無理強いしたくない。それでも、世話をするために体を触れることは多いわけで、どうしたって触れることはあったし、だめだと思えば思うほど、彼女の全身を舐め回すように見つめて欲情してしまう自分が居る。
こんな汚らしい自分が嫌だった。けれど衝動を抑えるのは容易ではない。
キャスカが眠った後、彼女に悪い、ごめんなさいと思いながら、眠るキャスカを見つめながら何度となく自慰をした。浅ましい自分を嫌悪し、最低だと思いながらも、なぜか興奮してしまってどうしようもなく気持ちよかった。
ガッツは、帰ってくるのだろうか? また会うことはできるのだろうか。
少なくとも私はキャスカから離れることはないだろう。
以前の記憶や経験は全てゼロになって、一からやり直すような形になってしまったが、また新たに信頼関係を築いている。流石にもう無理やり体をまさぐろうなんてしないけど、私の傍なら安心してもらえるような状態にはなった。
ガッツがどこで何をしているのか、これからどうするのかはわからないが、キャスカが私の傍で生き続けていれば、きっと帰ってくるのだろう。キャスカが彼を想っていたように、ガッツも彼女を想っていたのだから。
私はそれまで、キャスカを守り続ける。それでいいのだと思っている。
あの日、私は諦めてしまった。きっとその選択もこの結果に辿り着く影響を与えている。
だからもう諦めない。キャスカのことも、ガッツのことも。
生きてさえいれば、きっとまた会える。今度こそもう迷うことはない。
*
どうしてこんなことに。
見上げた大きな影に目を見開いて、そんな言葉ばかりが繰り返された。
頭の中で何度繰り返そうとも、目の前の現実は変わらない。いっそのこと目を閉じてしまいたいと思っても、そうすることもできない。体は鉄のように硬くなってしまい、もはや自らの意思で動かすことができなくなってしまった。
大きな翼を広げていた。
胴体は長く、細く、腰が括れていて、大きくはないが確かに膨らみのある乳房があって、陶器のように真っ白な肌は暗闇の中で輝くようで、伸ばされた腕は長く、爪が長く伸びていて、笑う口元には牙が並んでいて、長い髪が無造作に垂らされていた。
足はない。腰より下は蛇のような尾が伸びている。
確かに笑っていた。嬉しそうな顔で、目を輝かせるように。
「うげぇ~!? なんだこいつ!? またこんなのが相手なのかよ!」
「ガッツ……」
「ん? え? 喋った! いやそうか、喋る奴は前も居たけど……名前を呼んだぞ!」
周囲を飛び回る妖精が騒いでいるが、ガッツは動けなかった。
硬直した体は異様な熱を持ち、呼吸が乱れ、全身に汗を掻く。反面、妙に体が冷たい気がした。
それは、腹を動かした。ぐちゃぐちゃと肉が掻き分けられる音がして、彼が何をしたわけでもないのに、自分の意志で腹の肉が掻き分けられていく。
その様子はまるで女性器のようであった。淫靡な様子を孕みながらも、なぜか不気味で、見てはいけない物を強制的に見せられている気分になる。
二枚貝が開かれるように、彼に対して見せつけられた。
そこに居たのは、裸で肉の間に挟まれ、穏やかに目を閉じる褐色の肌の女性。以前より髪は伸びたが怪我ひとつなく、安心した顔で小さな寝息を立てている。
体が震えた。ガッツは、体内から上がってくる物を抑えるため、口を手で押さえる。
それは、やはり笑っていたのだ。
「ちゃんと……守ったよ」
ぐちゃり。粘度の高い、女の股から洩れたような液体に塗れた女性が、それの手でそっと、優しく地面へ横たえられる。
それは、笑っていた。自らの体内に居た女性を見つめて。自身を見つけたガッツを見つめて。
ガッツは叫んだ。気付かぬはずもなかったのだ。以前の姿で、何度となく酒を酌み交わしながら見た笑顔を思い出して、叫び声を上げながら巨大な剣を振り上げた。
どうしてこんなことに。
彼女はきっと、守りたかっただけなのに。
すでに気付いているはずなのに、幸せそうに笑うその顔が、どうしようもなく悲しかった。