一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 作:チャンドラ=グプタ
「それじゃ、早速みんな冒険に行きましょう!」
薫さんが高らかに手を挙げると、
「「「おおー!」」」
と、みんなも釣られるように手を挙げた。
周りは木ばかりで、どこかの森であることは確かだが、どこを向かって歩いていけば森を抜けるのか全く分からない。
「ここ、どこなんですかね?」
「ちょっと、待っててね」
薫さんがそう言うと、画面を操作した。薫さんの顔の前に映し出されたのはマップのような画面。
「どうやら『始まりの森』ってところらしいわ。あっちの方向に街があるらしいわ。とりあえずはそこに向かいましょう。それと、操作でマップを出せるから出しておいた方がいいわね」
「へぇー便利ですね」
留衣さんは感心したように呟くと、マップを開いた。俺と綾女もマップを開く。
マップを頼りに俺たちは街を目指し、森の中を歩いた。
森に生えている木のグラフィックはとてもリアルでどこからどう見ても本物にしか見えない。
森だから当然だが、木が多い。モンスターとか飛び出してきたらどうしよう。
四人もいるから、何とかなるとは思うが。
そんな悪い予感が敵中したかのように木の陰からモンスターが現れた。
そのモンスターは狼のような生き物で、白く荒々しい毛並みをしており、「ぐるる……」と犬歯をむき出しにして、睨んでいた。
「うわ! なんか出た!」
綾女が驚いたように声を上げた。
モンスターを見つめると、モンスターのステータスが表示された。
――シルバーウルフ LEVEL1 HP50
シルバーウルフか。HP50という数字の横には体力ゲージのようなものも表示されており、満タンとなっていた。
「みんな、早速戦闘よ!」
薫さんは目を爛々とさせながら、杖を取り出した。
「え、ええっと。どうすれば……」
急な戦闘に綾女はアタフタとしていた。俺もどうしていいか全く分からない。
普段、あまりゲームとかしないため、こういったゲームにあまり心得がないのである。
そんな中、留衣さんはテキパキと操作画面を操作していた。
「えーっと、これが戦闘画面で、これがスキルね!」
操作画面を留衣さんがタッチすると、留衣さんの右手に持っていた槍(ランス)が炎を纏始めた。
「喰らえ、『フレイムランス』!」
ノリノリでスキル名を叫びながらシルバーウルフに攻撃を仕掛ける留衣さんだが、あっさりと躱されてしまった。
攻撃を空振り、無防備になった留衣さんに引っ掻き攻撃をシルバーウルフが仕掛けると、留衣さんに表示されている体力ゲージが四分の一ほど減少した。
「いて! あれ、痛くないや……」
リアルに痛みを伴うゲームなんて、怖過ぎてそうそうやるものはいないだろう。
さすがにゲームでダメージを喰らっても本当に痛みが走るなんてことはないようである。
「留衣! 一度、下がって!」
「分かりました!」
薫さんの指示に従い、留衣さんはシルバーウルフとの距離を置いた。
「綾女ちゃん! 優馬くん! スキルを使って、あいつを攻撃して!」
「わ、分かりました! えーと、戦闘、す、スキルと……」
綾女は薫さんの指示に従い、戸惑いながらもスキルを使用すべく、画面を操作し、スキルを選択した。
「スキル発動! 『高速移動』!」
綾女はものすごい速度で移動し、一瞬にしてシルバーウルフの後ろに回り込み、
「やぁ!」
と叫ぶ、クナイを奴に投げ出した。
見事にクナイはシルバーウルフに命中し、奴の体力ゲージは三分の一ほど減少した。
「いいわよ! 綾女ちゃん! 優馬くんも攻撃頼むわ!」
「分かりました! スキル発動! 『痴漢』!」
戦闘画面からスキルを選択する。
シルバーウルフに手を差し向け、スキル名を発動した。
だが何も起こらない。
よく考えれば、モンスターに痴漢って何だろうか。獣姦だろうか。
ケモナーにしか喜ばれんな。
何もできない俺に見かねた薫さんが杖をシルバーウルフに向け、スキルを発動させた。
「喰らいなさい! 『エクスプローーーーーーージョン』!」
シルバーウルフの真上に大きな炎の塊が降り注ぎ、ものすごい轟音を立てて爆発した。
ものすごい威力だった。
しかし、それと引き換えに薫さんの体力ゲージに下に表示されているHPポイントが一気にゼロになった。
「凄いです! 薫さん! あんな凄いスキルを使えるなんて!」
留衣さんは先ほどの攻撃に感銘を受けたようだった。
「そんなことないわ。留衣のフレイムスピアだって当たれば強力そうだし、綾女ちゃんの高速移動も見事だったわ」
俺のスキルにはあえて何も触れない薫さん。
ぶっちゃけ、俺のスキルは何の役に立つのだろうか。
「あ! 見て見て! レベル上がったわ!」
薫さんのステータスを確認すると、確かにレベル2になっていた。
留衣さんと綾女さんも同様にレベル2となっている。
自分のステータスを確認すると、俺のレベルも上がっていた。
「よーし、この調子で行きましょう!」
その後も森を歩くと様々なモンスターに出くわした。
――隈ベアー LEVEL2 HP70
隈ベアーは文字通り、目の下に隈がついている茶色い剛々しい毛並みをした大きな熊(ベアー)である。
隈に熊……ダジャレか。くだらんなぁ。
「ここは私に任せてください! 『フレイムランス』!」
留衣さんは炎の槍(ランス)で隈ベアーの身体を突きにいった。
「クマーン!」
隈ベアーはブンブンと腕を振り回すと、パンチを打ちにいった。
隈ベアーのステータスによると、『ベアーパンチ』という技らしい。
なんとも捻りのないことか。
槍を持っている分、リーチの長い留衣さんの攻撃の方が先に命中し、隈ベアーの体力が一気にゼロとなった。
「クマーン……」
隈ベアーはバタンと倒れた。なんか、ちょっと可哀想だな。
すると、隈ベアーの屍がキラキラと消滅していくと、小さな黄色い宝石のようなものが残った。
「何か残りましたね」
俺は黄色い宝石のようなものを拾い上げた。薫さんはそれをまじまじと見つめた。
「そうね、一応持って行きましょうか」
そろそろ森を抜けようとした時には、俺たちのレベルは5になっていた。
ちなみに俺はほとんど何もやっていない。
スキルはなぜか発動しないし、一応素手で何度かモンスターに攻撃してみたものの、雀の涙程度のダメージを入れることができたくらいである。
なのにみんなと同じように着々とレベルを上げている。
まさに寄生プレイ。
「もう少しで森を抜けるわね」
「そうですね。早く街に着きたいです」
薫さんと留衣さんが話している中、俺は向こうの大きな生え木のてっぺんに人影がいるのを見つけた。
「なぁ、綾女。あそこに誰かいるの見えるか?」
俺は人影のいる場所を指差した。
「え? うーんっと……ほ、本当だ。誰かいる……」
すると、人影はタンと木から降り立ち、ものすごい速さで俺たちの方へとやってきた。
「だ、誰か来ます!」
「「え?」」
俺が叫ぶと、薫さんと留衣さんが前を見つめた。
やって来たのは、褐色肌で可愛らしい顔立ちをした女性。
見た目、俺と同じくらいの年齢に思える。
黒いツノ、尻尾を生やし、露出の多い黒いドレスを着用していた。さらに網タイツを履いており、とてもセクシーな格好であった。
「ふははは! こんなところに我と出くわすとは不運であったな!」
女性は腕を組み、大きく身体を逸らして笑い焦げた。
身体を逸らした際、主張の激しい胸に目がいった。
うん、結構でかい。Dよりはあるか……? 薫さんと同じくらいか、少し小さいくらいだろうか。
胸を観察してると、女性のステータスが表示された。
――ヴィネ LEVEL15 体力500 魔力100
「レベル15!?」
レベル15という高レベルを見て、思わず驚いた。さすがにこれは勝つのは厳しそうだ。
「ん? 何のことだ? 我の名はヴィネ。魔王に仕えしもの。貴様ら冒険者を抹殺するのが我の使命! 貴様らまとめてあの世に送ってくれるわ!」
ヴィネはビシッと俺たちのことを指差した。
「ふん……やるしかないようね!」
薫さんは闘志を剥き出しにしていた。やる気満々である。
「薫さん! レベル15ですよ! 幾ら何でも倒すなんて」
「フフ、レベルの違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやるわ!」
シャ○みたいなことを言い出したぞ。
薫さんは早速、杖をヴィネに向けた。
「スキル発動! 『エクスプ……』」
俺は慌てて薫さんの身体を抑え、スキルを使うのを止めた。
「ちょっと、何するの! 優馬くん! ちょ、おっぱい触ってるんだけど!」
「待ってください! え? あ、すみません! けど、薫さんのスキルはMPの消費が激しいんですからまだ打たないでください!」
「わ、分かったわよ! けど、どうするの?」
「留衣さん、綾女! 三人で隙を作りましょう! 薫さんはいつでもスキルを発動できるようにしておいてください」
「分かったわ。みんな、頼んだわよ」
薫さんは俺の作戦にひとまず納得してくれた。
「よし、それじゃまずは私から攻めるわね!」
留衣さんが槍を片手に単独でヴィネに向かって特攻していった。
「えい! えいえい!」
必死に槍を使って突きにいく留衣さんだが、ヴィネはそれを嘲笑うかのようにひょいひょいと避けた。
「あはははは! そんなノッロイ攻撃、当たるわけないかろう! よしんば、当たってとしても大して痛くもないけどな!」
さすがに留衣さん一人でヴィネから隙を作り出すのは厳しいだろう。
「しょうがない……役に立たないかもしれないが俺も行くか」
俺は意を決し、突撃しようと考えた。しかし、綾女が俺の肩に触れてきた。
「優馬くん、ここは私が行くわ。スキル発動、『高速移動』!」
綾女はスキルを発動し、ヴィネに向かっていった。
かなりの速さでヴィネの背後に回り込む。
綾女はヴィネの首元めがけて躊躇なくクナイで刺そうと心みた。
「へぇ……結構速いんだね」
ヴィネは後ろの向いたまま、綾女がクナイを握っている右手首を掴んだ。
「く……! は、離して!」
だんだんと綾女の体力ゲージが減っているのが確認できた。
触れると体力を吸い取る力を持っているのか、握力でダメージを与えているのかは分からない。いずれにせよ、かなり力に差があるのは確かだ。
「なら、お望み通り」
ヴィネは片手でポイと空高く放り投げた。
「綾女ちゃん!」
薫さんは駆け出し、宙に放り出された綾女の身体をお姫様抱っこでキャッチした。
「あ、ありがとうございます。薫さん……」
「ううん、気にしないで! 無事で何よりだわ!」
おお、百合百合しいな。見ていて少しドキドキする。
「あーあ。みんな弱っちくてがっかりだ。もっと我を楽しませる者はおらぬのか?」
ヴィネは退屈そうにあくびをし始めた。そんなヴィネの態度を見て、薫さんはイライラした様子で歯切しりをしていた。
「もう我慢できない! 優馬くん、悪いけど、撃たせてもらうわ!」
「え……ちょっと、薫さん!」
「『エクスプローーーーージョン』ッッ!!!」
止める間も無く薫さんがスキルを発動させる。
ヴィネの真上に強大な炎の塊が降り注ぎ、轟音が鳴り響いた。
レベルが上がったことだけあって、最初に見た時よりも威力が増している。
これは……やったか?
爆風によって巻き起こった煙が徐々に消えていくと、ゆっくりと人影が見え始めた。
ヴィネはあれほどの攻撃を喰らっても平然とした様子で立っていた。
「今のはなかなか良かったぞ。褒めてつかわそう。それでも我を倒すにはまだまだであったがな」
ヴィネのステータスを確認すると、彼女の体力ゲージが五分の一ほど減少していた。一応効いてはいる。効いてはいるが、今の俺たちでは倒せないだろう。
「はぁ……仕方ないわね。留衣。ここは私が引き止めるからみんなを連れて街へ行きなさい」
「な、何を言ってるんですか! そんなことできません! みんなで街まで逃げましょう!」
留衣さんは薫さんの言うことに反対のようだった。だが、薫さんの言う通り、このままでは全滅、パーティは崩壊する。
全員で逃げたところですぐにヴィネに追いつくだろう。
誰かが時間を稼ぐ必要があるように思えた。
「ここで私が死んでもまたレベル1からやり直すだけよ。すぐにまたレベル上げるからさ」
「いや、でも……」
「でもじゃないの! お願いだから言うことを聞いて!」
二人が口論しているのをヴィネは退屈そうに黙って見ていた。
ヴィネは攻撃してこないのか?
いつかバチか、不意打ちでも仕掛けてみるか。
俺は戦闘画面を開き、スキルを選択した。
どうせまた発動しないだろうが、ものを試しと使ってみることにした。
「スキル発動、『痴漢』!」
すると、突如選択画面が現れた。
――対象者、ヴィネ 次の中から陵辱する部位を選んでください。『胸』『尻』
なんだ、これは……!?
謎の選択股に戦慄しながらも、俺は胸を選択した。
――胸でよろしいですか? 『はい』『いいえ』
『はい』を選択すると、さらに文章が出てきた。
――了解しました。存分にお楽しみください。
画面が閉じられると、目の前に等身大のヴィネの立体映像のようなものが現れた。
本物と思わず見間違えそうになるくらいのクオリティである。
頭や腕に触れてみようとすると擦り抜けた。
脚や尻部分も同様であった
そして、胸におそろおそる手を伸ばすと、『ムニュ』とした柔らかい感覚が伝わった。
「はうぅ……!」
リアルの方のヴィネが雌のような声を上げた。
柔らかい……
こ、これは……立体映像のヴィネの胸を揉むと、リアルのヴィネにも俺に触られている感覚を共有するのか!
俺は強く立体映像のヴィネの胸を揉んだ。なかなか大きめなサイズのヴィネのおっぱいは弾力が強く揉み応えがある。
「な、なんだ……これは……突然、身体が熱く……ああああ!」
ヴィネは身体を真っ赤にさせ、地面に突っ伏した。
「え? 何、急に? ってか、優馬くん。何でこんな何もないところでイヤらしい手つきをしているの!?」
『こんな何もないところ』と、薫さんが言っているのを察するに、この立体映像は俺以外に見えていないのだろうか?
留衣さんも綾女さんも不思議そうに俺を見ていた。
「今、スキルを使ってます! 攻撃するなら今です!」
服越しからコリコリとした感触の乳首の位置を触って確認し、そこを重点的に攻めた。
「はあぁあうん……♡ な、なんだこの感じは……の、飲み込まれそうだ。このままではやられちゃうぅ……ここはみ、見逃してやる……」
ヴィネはガクガクと身体を震わし、だらしなく涎を垂らしており、快楽に溺れているような顔をしていた。
「うわ! なんか、すごいことになってる……」
ちょっと薫さんが引いていた。
「て、『テレポート』」
ヴィネが突っ伏している場所に黒い魔方陣が生まれると、シュンとどこかに消えていった。
「はぁ……なんとか追っ払うことができたわね! あいつを倒せなかったのは悔しいけど。それにしても、どうして急にスキルが使えるようになったのかしら?」
薫さんが訝しんだ様子で俺を見つめ、訊いた。
「多分、相手が女性だからかと……」
俺のスキル、『痴漢』は女性が相手の時に発動するスキルなのだろう。
先ほどのヴィネのように格上にも効果は抜群のようである。
「ふーん、ある意味で最強のスキルね。優馬くんにぴったり」
薫さんがそう言うと、
「うんうん」
と留衣さんも納得したように頷いた。
そんなにぴったりのスキルだろうか……
ちなみにこの戦闘により、俺たちのレベルは7に上がったのだった。