一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 作:チャンドラ=グプタ
服を入手した俺は薫さん達のいる部屋の扉の前へと戻った。
少し扉を開け、
「ここに服、置いておくので着終わったら呼んでください」
そう言い残し、扉の近くに服を置いておいた。
「了解! ありがとう」
薫さんの声が耳に届く。待つこと、およそ三分。
「入ってもいいわよ」
薫さんの声を聞き、ゆっくりと部屋の中へと入った。
薫さんが着ているのは緑色のオーバーコート、そして赤いマント。
下は茶色いダボっとしたズボンを着ている。
綾女は黄色いチュニックのような服、青いズボンを履いている。
「すみません。服、男物しか見つからなくて」
「別にいいわよ。後で買いましょう。それより、スライム全部倒したからペトムさんに報告しましょう」
「待ってください。実は……」
俺はペトムの悪行を赤裸々に話した。
元々、女性の冒険者を覗くための依頼であること。
そのためにスライムが生まれる魔風石を購入し、この部屋に飾っていること。
最初は「フムフムと」頷きながら真面目に話を聞いていた薫さんだったが徐々に顔を真っ赤にさせ、肩を震わせた。
「あんの変態糞親父! この私の身体を見てたのね! この……『エクスプ』」
「ここで打たないでください!」
この場で爆裂魔法……じゃなかった、スキルを発動させようとする薫さんを俺は諌めた。
「だって、悔しいじゃない!」
「そうだよ、優馬くん! 私もこのままじゃ納得できない! あいつ、ゲームのキャラクターでしょ? 倒そう!」
綾女も薫さんの意見に賛成のようだが、このゲームのクオリティが高すぎて、すっかりあいつがゲームのキャラクターということを忘れていた。
「た、確かに……」
一理あると思ったが、NPCとはいえ、さすがに倒すと言うのは気がひける。
「私も力を貸すよ!」
留衣さんもペトムを倒すという案に乗ろうとしてきた。
このクエストはスライムではなく、依頼主を討伐して完了するものだったのか。
「しょうがない……やりますか! けど、倒すのはなしですよ! ちょっと諌めるくらいにしてやってくださいね」
「オーケーオーケー! 任せておいて!」
薫さんはグッとサムズアップをした。
俺たちは部屋を出ると、ペトムを探しに屋敷の中を徘徊した。
先ほどペトムのいた部屋に入ったものの、もぬけの殻であった。
他の部屋も探索したが、一向にペトムの姿が見つからない。
「おかしいわね。どうしていないのかしら……」
薫さんが訝しんだ表情で呟いた。声質には苛立ちがこもっているのが分かる。
「あの部屋の中を覗く鏡。もしかしたらこっちの話し声も筒抜けだったのかもしれないですね」
俺がそんな推測を述べると、留衣さんが驚愕の表情でこっちを見つめてきた。
「それって、クーデターを起こしたことがバレたってこと?」
「おそらくは」
ペト厶達からしたらAVを見るような感覚で薫さん達を覗いていたのだ。
AVを無音で見る男の人などいるだろうか。
否――いない。(俺はAVを視聴したことはないが。)
すると、俺たちのいるところから反対側の廊下側に何者かが走ってくるのに気が付いた。
「みなさん、何か来ます!」
俺がみんなに告げる前に綾女が叫んだ。近づいてきたのは甲冑を着ている何者かであった。
こちらに来るや否や奴は問答無用で俺に殴りかかってきた。
「うお!」
間一髪、パンチを避けて距離を取る。
「スキル発動、『フレイムランス』!」
留衣さんがスキルを使い、炎を纏った槍(ランス)で奴に攻撃を仕掛けた。
しかし、奴は片手でそれを軽々と受け止めた。
「う、嘘!」
留衣さんが力を込めるがビクとも動かず、甲冑野郎は槍を掴んだまま、腕を振り上げた。
「ひゃ!」
槍を持っている留衣さんの身体がぐわっと上に上がり、『ブン』と甲冑野郎は槍を投げた。
槍とともに身体を投げられた留衣さんは激しく地面に身体を打ちつけた。
「いたた……あれ、痛くない」
ゲームだからであろう。しかし、留衣さんの体力ゲージは五分の一ほど減った。
この甲冑野郎、かなりの手練れである。
俺は奴のステータスを確認した。
――NAME:ラリア LEVEL:20 MP:600 JOB:執事
「あんた、ラリアさんか」
「……左様でございます」
甲冑に身を纏ったラリアが言葉を発した。最初にあった時のような穏やかな口調とはかけ離れた重々しい渋い感じの声だった。
「全く! 優馬くんから全部聞いたわ! あんた達、私たちのこと覗き見してたんですってね! あー、汚らわしい汚らわしい!」
「……」
薫さんの罵倒を聞き、ラリアは黙りこくった。マスクによって表情は全く確認できない。
「否定はしない。だが、お前達は知りすぎた。ご主人様の更なる飛躍のために、ここで消えてもらう」
ラリアはボクシングのような構えを取った。
武器を全く持たないラリアであるが、こうして対峙するとどう攻めていいか分からない。
というか、レベル差がやばい。ヴィネの時といい、どうしてこうレベル差のあるやつと戦うことになるのだろうか。
もうちょっと、少しずつレベルアップしていきたいものである。
「スキル発動、『高速移動』!」
正面から素早い動きで、ラリアに接近する綾女。
だが、向かっていったはずの綾女は反対方向に吹っ飛んでいった。
ラリアは右腕を前に伸ばしていた。
「パンチしたのか……全く見えなかった」
どうやって倒せば良いのだろうか。俺は既に敗戦処理の方法について検討し始めていた。
綾女の体力を確認すると、一気に半分にまで減っていった。
「綾女、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
綾女はゆっくりと立ち上がる。それにしても綾女のあの動きにあっさりと見切るとは、ヴィネよりレベルが高いのも頷ける。
「悪いがお前達はここで『ゲームオーバー』だ」
一歩、そしてまた一歩と死の誘いを行う死神のようにラリアが近づいて来る。いまにも処刑用BGMが流れてきそうな雰囲気だ。
さらに耳にこびりつけそうになるようなその足音はゲームと分かっていながらもドクンドクンと恐怖心を煽ってくる。
――終わった。
そう思った時、戦闘画面の『スキル』という文字の色がいつもと違うことに気づいた。
いつもは青色なのだが、今は赤色に点滅されている。
スキル画面を開くと、知らないスキルが追加されていた。
スキルの名は――追い剥ぎ。
なんだ、そのスキルは。
まぁ、ダメ元で使ってみるか。
俺はスキル、『追い剥ぎ』をタッチした。
――対象者、ラリアでよろしいですか? 『はい』『いいえ』
俺は『はい』を選択すると、
「ひゃ!」「え!」「うわ!」
薫さん達がそれぞれ声を上げた。
「な、なんだこれは!」
ラリアさんは老体とは思えないほど素晴らしい筋肉がついている裸体を俺たちの前にさらけ出していた。
というかち○こがでかくて羨ましい。
ラリアさんの甲冑はどういうわけか俺の横に置いてあった。
そこで俺はハッと気が付いた。
「薫さん! スキルを使ってください! みんなは伏せて!」
「わ、分かったわ! 『エクスポローーーーーーーーーーーーーージョン』!」
おそらく、いつものラリアであれば避けることは容易かったことだろう。
しかし、全裸になったことは思いの外心理的に大きく揺さぶられたようで、避けるという判断を大きく鈍らせた。
「ぐわわぁあああああああ!」
ラリアさんの真上に赤い複数の魔方陣が発生し、そこから爆炎が降り注ぐ。
その強大な爆炎はラリアさんを飲み込んだ。
爆風もかなりのもので、体勢を低くしたものの、数メートルほど俺は後方に吹き飛ばされた。
煙が巻き上がり、徐々に薄れていくとうつ伏せでラリアが寝っ転がっていた。
体力は残りわずかである。いくら、ラリアでも文字通り生身であれを受けきることは難しかったようである。
「む、無念……」
ラリアはそう言い残し、気を失った。敵ながらあっぱれであった。
お前のことは忘れない。トドメは刺さないけど。
「それじゃ、ペト厶を探してとっちめましょう!」
薫さんは高らかに杖を上げ、そう宣言した。このやる気を見る限り、ボコボコにする気満々である。
「そうですね」
しかし、いくら探してもペト厶が見つからないため、俺たちは宝石など金目の物を持っていき、屋敷を後にした。
金目の物を盗むというのは盗賊のようだが、報酬は貰えないし、むこうも覗きをしたし、そもそもゲームなので罪悪感は全く感じない。
「あーもう! ペト厶の野郎、どこに行ったのよ! むかつくわぁ!」
薫さんはペト厶に報復することができないことに対し、苛立ちを覚えた。
「しょうがないですよ。屋敷の外に逃げた以上、もうどうしようもありません」
諭すように俺は言うと、薫さんは「フゥ……」と息を吐いた。
「まぁね。けど、このままじゃ納得いかないからこうするわ! 『エクスポローーーーーーーーージョン』!」
スキル名を薫さんが唱えると、強大な爆炎を生み出し、屋敷にそれをぶつけたが、炎は一瞬にして消されてしまった。
「ええ!? 何で?」
「何か魔法対策に特殊な造りを施しているのかもしれないですね。あの屋敷」
「う〜〜〜〜! 本当に腹立たしいわ!」
その後、俺たちは宝石を買い取ってくれるお店をマップで探し、そこに向かった。
「ではこちらが四百万ゴールドになります。ご納めください」
店員から計四百万ゴールドを受け取った。プラチナ色の金貨が計四百枚。
見た目的には金貨というよりかは銀貨という印象を受けた。
「みんな、一人百枚づつで問題ないかしら?」
「俺はそれで構いません」
薫さんの問いに俺が答えると、留衣さんと薫さんも続くように頷いた。
「しかし、これ鞄とかにしまいたいわね」
薫さんがポツリ呟く。俺たちは鞄や何かを入れる袋を持っていない。金貨四百枚は革で出来た大きな袋に入れられ、渡された。
袋を持ち、移動するといざ戦闘をする際に邪魔になりそうである。
俺は操作画面を確認すると、『アイテムボックス』という項目をタッチし、『収納する』と『使用する』という選択肢があることに気が付いた。
「薫さん、一枚金貨貸してください」
「え? いいけど。はい」
薫さんから一枚の金貨を受け取り、『収納する』を選択した。
すると、手に乗せた金貨が一瞬にしてまるでマジックのように消えた。
『使用する』を選択すると、今度は『アイテム』と『金貨』という項目が出てきた。
さらに、『金貨』を選択する。
――所持金10,000ゴールド。いくら使用するか入力してください。
俺は100と入力した。
すると、百枚の金貨が俺の目の前に降り注いだ。
他の三人はびっくりした様子で俺のことを見つめている。
それは金色に輝いており、まさに金貨という感じである。
さきほど、店員から貰った金貨とは明らかに違うようである。
どうやら両替することもできるようだ。
「みなさん、この金貨、アイテムボックスに収納できるようですよ」
俺はみんなに収納の方法を伝えた。操作自体はとても簡単である。みんなはそれぞれアイテムボックスに金貨を収納した。
「いやぁ、便利ね。このアイテムボックス」
ごもっともな意見を薫さんは呟いた。確かに便利な機能である。
「そうですね。ただ、上限がどこまでなのか気になりますけどね」
「まぁね。それはおいおい分かってくることでしょう。まだ始めたばかりだし大丈夫よ。それよりも私、ちょっと服を買いたいんだけど」
「私も買いたいです!」
薫さんと綾女は新しい服を買いたいと申し出た。
今、二人が着ているのはペトラの屋敷にあったもので、サイズがまるで合っていない。
「そうですね。それじゃ買いにいきますか」
そういうと、薫さんはなぜかガシッと俺の腕を掴んできた。ん? 何か柔らかいものが……
「それじゃ、行きましょうか。優馬くん」
「ええ!?」
みんなで行くんじゃないのか。そんな俺の考えを無視するかのようにどこかに連れて行く薫さんだった。
「ちょ、ちょっと薫さん!?」「優馬くんと二人でどこに行くんですか!?」
留衣さんと綾女さんは慌てて呼びかけたが、
「それじゃ二時間後、またこの場所に集合ね!」
そう言い残し、どこかに俺を引き連れ移動した。
「薫さん、せっかくだし、みんなで行きましょうよ」
「ダメ! ちょっと優馬くんに付いてきてほしいところがあるのよ!」
付いてきて欲しいところ? どこだろうか。
たくさんの建物が立ち並ぶ商店街へと入り、人気の少ない裏通りに行くと、薫さんが立ち止まった。
俺の目の前にあるその建物はレンガでできているのだが、ピンク色でどうにも奇怪な印象を受けた。率直に言って、なんかエロそうである。
「ここよ、優馬くん」
「ここは……」
マップで確認してみた。
――ラブホテル:盛りのキャット 評価:4つ星
「そ! ラブホよ!」
「な、なななな……なんでこんなところに!?」
「決まってるでしょ! 良いことするためよ! ほら、入りましょう!」
「あ、ちょっと!」
半ば強引に俺はラブホの中に入れられた。
「いらっしゃいませ」
ヒゲを生やしたアラサーくらいの歳に思えるハンサムな男性がフロントに立っていた。
「大人二名、お願いします!」
「かしこまりました。それでは部屋にご案内いたします」
薫さん。俺、未成年なんですが。
案内された部屋にはシャンデリアが吊るされており、さらにピンク色の絨毯が敷かれ、枕が二つ置いてある大きい高級そうなベッドが置いてある。
そして、磨りガラスで仕切られているお風呂もある。
「うふふふ。なんか、ドキドキするわね。優馬くん」
薫さんはベッドに座り、妖美な笑みを浮かべた。これからしようとすることを嫌でも想像してしまい、心臓の鼓動が否応にも高まってくる。
「あ、あの。これってゲームの世界ですよね。気持ち良くならないんじゃ……」
少なくとも戦闘では痛みは全く感じなかった。
まぁ、ムラムラはしそうだが。というか絶対にする。いや、現在進行形でしている。
すると、薫さんが立ち上がり、俺に近づき、股間に乗っている葉っぱを剥がした。
忘れているかもしれないが、職業である変質者の俺の服装は股間部分が葉っぱで隠しているだけであとは全裸である。
俺が完全なる裸になると、いやらしい手つきで股間を弄ってくる薫さんだった。
「あぁ……!」
気持ちよすぎてあっという間にイキそうになった。一瞬にして込み上げてくる射精感。
これは仮想空間の出来事とは思えない。
薫さんは目をトロンとさせ、俺の股間を弄るのを止めた。
「ふふ……プレイする前に調べたのよ。このゲームは現実と同じように気持ち良さを感じることができるってことをね。さぁ、優馬くん。たくさんしましょう。仮装世界だから、思いっきり私の身体を堪能していいからね……」
薫さんは服を脱いだ。
柔らかい大きな膨らみを持った果実を携えている薫さんの全裸は一瞬にして俺の理性をかき消してしまう。
昨日、現実世界で見た時と何一つ変わらない魅力的な身体(ボディ)をしている。
「薫さん……」「優馬くん……」
キスをすると、昨日薫さんとキスをした時と同じように唇から薫さんの温もりが伝わってくる。
ああ――温かい、とても温かい。