一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 作:チャンドラ=グプタ
非常に手強かったシンヤとアオイを退けた後、俺たちは洞窟を潜り、魔王の城へと向かった。
綾女は残念ながらゲームオーバーになってしまったが、復活できる場所はシベラにある教会なので、綾女を残し俺たち四人で進むことにした。
シンヤとアオイとの戦いの後、全員セーブをし、ログアウトした後、話し合ったのだが、綾女は「私に構わず、魔王の城に進んでください」と主張したため、そうすることにしたのである。
ちなみに綾女は現在、俺に部屋にあるテレビで『カ』から某ギャンブル漫画が原作のDVDを視聴している。
ゲームをクリアするまで、綾女にはここでゆっくりしてもらうとしよう。
「着いたわね……」
ポツリと薫さんが呟いた。
俺たちの前にそびえ立つ魔王の城。
大きく黒い禍々しいお城はなんとも言えぬ圧力と存在感を感じさせた。
「みなさん、行きましょう」
留衣さんが先陣を切って、前へと進んだ。中に入ると、薄暗い照明が蝋燭の炎によって灯されている。
「結構、怖いわね……」
ポツリと瑠夏さんが呟く。確かに怖い。中は恐ろしく静かで、突然何かが現れそうである。
進んでいるうちに一つの扉を発見した。
「扉だね。どうする、お姉ちゃん?」
「進むしかないと思う。薫さんもそれでいいですか?」
「ええ、構わないわ」
留衣さんはゆっくりと扉を開けた。
部屋の中は先程とは打って変わり、明るい照明であった。
机の上に水晶玉が置かれてあり、椅子に女性が座っている。
さらにその後ろには扉がある。
「ようこそ、私の部屋へ!」
女性が立ち上がると、警戒心を解きそうになるほどの愛想の良い笑みを俺たちに差し向けた。
その女性の年齢は二十歳前後くらいの女性。
黒を基調とした魔女っぽい服を着ていた。
「誰? あなた」
瑠夏さんはズカズカとその女性に近づき、女性の正体を訊いた。
俺は真っ先にその女性のステータスを確認する。
――NAME:スズカ JOB:占い師 武器:水晶 SKILL:ルーム LEVEL:45
「私の名はスズカ。偉大なる魔王様の従順なる手先。どうぞゆっくりしていって」
ご丁寧に挨拶するスズカであったが、瑠夏さんは不機嫌そうに顔をしながら、スズカの横を通り過ぎた。
「悪いけど、あなたに構っている暇はないわ。ここから一刻も早く出してもらうんだから!」
ドアの取手に手をかけるが、ドアは『ガチャガチャ』と音を立てるばかりで一向に開く気配はない。
「無駄よ。その扉は私が許可するか、私を倒さない限り開くことはないわ」
意地悪っぽく言い放つスズカに対し、瑠夏さんは問答無用でスキルを放った。
「スキル発動、『フレイムランス』」
炎を纏った槍をスズカの身体めがけて突き刺しにいくが、彼女の周囲に青白いバリアが突如出現し、瑠夏さんの攻撃を防いだ。
「うわ!」
バリアに弾き飛ばされた瑠夏さんは尻餅をついた。
「無駄よ。この部屋では暴力行為はできない。あと、ここで行う勝負は私が提案するものよ」
「て、提案するもの……何よそれ!?」
瑠夏さんが槍を向けて訊くと、スズカはゆっくりと立ち上がった。
「ずばり……野球拳よ!」
「「「「は?」」」」
俺たち四人の声が重なった。野球拳ってあれだろうか?
やーきゅーうーすーるーならー♪
こーゆーぐあいにしやしゃんせ♪
「聞こえなかった? 野球拳よ。じゃんけんで負けたら服を脱いでいく素晴らしい競技。この部屋ではじゃんけんで負ければ服が自動的に脱がされるシステムなのよ。すごいでしょ! 対戦形式は私との一対一形式を繰り返して全滅したらあなたたちの負け。一人でも勝てれば通してあげるわ。どう考えてもあなたたちの方が有利だと思わない?」
確かにそうだ。こちらには四人いる。人数的に全滅するとは考え難い。
しかし……。
「ちなみにお前と野球拳して、服が全部なくなったらどうなる?」
「その場合はゲームオーバー! シベラの教会から復活することになるわね!」
俺が質問すると赤裸々にスズカは答えた。さらに俺は質問を投げかける。
「一対一が終わるごとにお前から剥ぎ取った衣服はお前の元に戻るのか?」
「ええ、そうね。例えば私がパンツ一丁の状態で勝って、次の対戦相手が控えていても次の一対一が始まった時点で私は服を着た状態で対戦することになるわ。けど、それでもあなたたちの方が有利よ。違う?」
「まぁ、そうだな」
確かにこちらが有利なのは間違いない。それは確かなのだが……。
「さ! 分かったら始めましょう! 最初は誰から来る?」
有無を言わせず、野球拳を始めようとするスズカ。
すると、留衣さんが挙手をした。
「私が行きます!」
「ちょっと、留衣さん! 大丈夫なんですか?」
俺が訊くと、留衣さんが振り向いた。
「うん! こう見えてもじゃんけん強いし、それに私が一番、服を着込んでるしね!」
確かにそうだ。留衣さんは鎧を纏っている。着ている数ならこの中では一番多いだろう。
「いいわ。決まりみたいね!」
ゆっくりと留衣さんはスズカの元へと歩み寄る。
「留衣、気をつけてね!」
「頑張れ! お姉ちゃん!」
薫さんと瑠夏さんは留衣さんにエールを送った。
「それじゃ……覚悟は良いかしら?」
「勿論」
留衣さんが頷いた。いよいよ始まる野球拳。
すると、部屋の中から軽快な音楽が流れるとスズカは謎のダンスを披露した。
「やーきゅーうーすーるーならーこーゆーぐあいにしやしゃんせ♪」
「「「「……」」」」
全員がドン引きした様子でスズカを見つめるも当の本人は気にせずダンスを続けた。
「アウト! セーフ! よよいのよい!」
スズカはグーを出した。
留衣さんが出して手は……チョキであった。
「はい! あなたの負けね!」
「へ?」
すると、シュンと留衣さんが着ていた鎧がたちまち消え、鎧はいつの間にかスズカの足元に置いてあった。
「さぁ、二回戦よ。続けましょう」
「く……今度こそ!」
しかし、その後も二回連続で負けてしまった留衣さんは下着姿になってしまった。
美しい金色の髪、そして、留衣さんの色白い肌から形成される見事なボディラインの下着姿は大変魅力的であると感じた。
すると、突如頭に軽い衝撃が走った。薫さんが俺の頭を叩いたということに気づくまで少し時間がかかった。
「なーに、魅入ってるのかしら? 優馬くんったら?」
俺がジロジロと留衣さんの下着姿を見ていたことを薫さんに咎められた。
「す、すみません……」
「もう……優馬君は本当にエッチね。それにしてもあのスズカって子、かなりじゃんけん強いわね」
悔しそうに薫さんがそんな感想を漏らすと、スズカは俺たちに柔和な笑みを見せた。
「そりゃそうよ。私にはあなたたちがどんな手を出すか分かるんですもの」
「はぁ? そんなわけあるわけないでしょ!」
不服そうな表情で留衣さんの主張を否定する留衣さんであったが、スズカは決して余裕そう態度を崩そうとしなかった。
「それが本当にわかっちゃうのよ。あなたの視線の動き、姿勢、息遣い……並外れた観察眼によってあなたの出す手を予測することができるわ!」
そこは「私の占いによって予知できるわ!」って宣言するんじゃないのか。
職業占い師だろ、お前。
しかし、本当だとすると厄介である。
要約すると、イカサマしないEカードの利○川先生である。いや、ちょっと違うか。
「それにしても、女性が脱いだ服って本当良い匂いだわ……」
スズカは留衣さんから手に入れた服を悦に浸ったような表情でくんくんと嗅いでいた。
こいつも漏れなく変態だったか……。
すると、突如俺に脳内に圧倒的閃きが思いついた。
「そんなの、どうやって勝てば良いのよ……」
スズカの強さに嘆いた薫さんは頭を抱え出した。
そんな薫さんを他所に俺は手を挙げた。
「すまん、ちょっと良いか?」
「何かしら?」
「勝負を一回で決着が着くようにしたいんだが」
「というと?」
他の四人の視線が一斉に俺に集まる。
背中に冷や汗を掻きながらもゆっくりと言葉を発した。
「次のじゃんけん、留衣さんが勝てばスズカの服を全て没収。その代わり、負けたらここにいる全員の服をお前に渡す。これでどうだ?」
俺の提案に薫さんと瑠夏さんが過剰に反応した。
「ちょ、ちょっと何言ってるの!?」「お姉ちゃん、まだ一回も勝ててないんだよ!? 絶対、危ないって!」
「ふーん、大した自身ね。まぁ、こっちは構わないわ」
相手からの許可は貰うことはできた。ならば、今度は身内の許可が必要だ。
「留衣さん、ちょっとこっちに来てもらえますか?」
「へ? う、うん……」
三人に告げるとある作戦。最初こそ、半信半疑で聞いていたが、やがて三人は納得してくれた。
「分かった。優馬くんの作戦を信じる」
「ありがとうございます。必ず成功させてみせます」
この作戦で必要となってくるのは『タイミング』である。
「さぁ、私たちも準備は出来たわよ。勝負を再開しましょうか」
「グッド!」
まるでダー○ーのような決めセリフを吐いたスズカ。
すると、またもや軽快な音楽が流れた。陽気にスズカがダンスを踊り出す。
もう勝ったと慢心しているようである。その油断が命取りであると福本伸行作品の愛読者なら気がつくだろう。現に俺は気が付いた。
「アウト! セーフ! よよいのよ……」
ここだ――俺はアオイの時に使用したアイテム、『入れカエル』を取り出した。
このカエルのおもちゃのようなアイテムは頭についているボタンを一回押すと選んだ対象者と自分の位置、もう一回押すと対象者と体力、さらにもう一回押すと対象者とすごいものを入れ替えることができるらしい。
アオイのときに二回までボタンを押したのだが、実は対戦後、すぐに興味本位でもう一回押してみたのである。
するとこういうメッセージが出て来たのである。
――誰と身体を入れ替えますか?
この入れカエルは三回ボタンを押すと他人と身体を入れ替えることができる。
まぁ、案の定作った理由はエロ目的なんだろうが、今の状況(シチュエーション)、使うのにはとても適している。
俺は迷うことなく対象者に留衣さんを選んだ。
「へ?」
俺の身体に入れ替わった留衣さんの声が耳に届いた。俺の視界には今まさに何かしらの手を出そうとしているスズカの姿が。
ちなみに留衣さんに指示した作戦はこう。
「チョキを出してください」
四人で作戦会議した時、俺は留衣さんにそう指示した。
「パーを出すと言う根拠があるの?」
薫さんの質問に対し、俺は頷いた。
「はい。奴は留衣さんの傾向を見切って『ある法則』にしたがって出す手を変えています。十中八九、次出す手は『パー』です」
ちなみにこれは真っ赤な嘘である。要は留衣さんが次出す手を俺が知ることが出来ればそれで良かった。
スズカは相手の行動を見て、出す手を決める。
今この瞬間、奴は留衣さんがチョキを出すと思っている。
「これが大人のグーよ!」「ふははは! 掛かったな!」
自信満々に言い放つスズカに対し、俺はパーを出してやった。
一応言っておくが、後出しではない。
「な……」
スズカの表情が強張った。某漫画であれば『ぐにゃ〜』という音が聞こえてきそうだ。
「ど、どうして……確かにチョキを出すつもりだったのに……」
「そう、確かに留衣さんはチョキを出すつもりだった。だが、今の俺は留衣さんではない」
「な、なんですって……」
スズカが膝を崩し、座り込むと戦慄した様子で俺のことを見上げた。
「留衣さんの身体と入れ替わり、咄嗟に出す手をチョキからパーに変えた。出す手は留衣さんから聞いてあったからな。ちなみに今の俺は留衣さんではなく、優馬だ」
プルプルとスズカは体を震わせた。
「い、イカサマよ! そんなの! 身も体も対戦者である彼女がジャンケンしないといけないでしょ! ノーカウントよ! ノーカン! ノーカン!」
高らかに腕を上げ、某班チョーのようにノーカン節を奏でるスズカであったが、着ている服が瞬く間に無くなり、綺麗な全裸姿へと変貌した。
Dカップくらいの大きさの綺麗な形をした胸は茶色い乳首が乗っかっており、割れ目には黒い芝生がたくさん茂っていた。
ふむ、中々良い身体だな……。
「いやああああ! 見ないでー!」
キラキラと光の粒子を発しながらスズカは消滅していった。
どうやらゲームオーバーとなったようだ。
すると、ガチャっと硬く閉ざされていた扉が開いた。
やがて、俺と留衣さんの入れ替わっていた意識が元に戻った。
「もーう! 優馬くん、急に私の体と入れ替えるなんてびっくりしたよ!」
留衣さんは頬を膨らましながら俺に軽くデコピンしてきた。
「す、すみません」
「でも、勝てたし良いや! それじゃ、先に進もうか!」
「はい!」
果たして次はどんな敵が待ち受けているのか。
一抹の不安を感じつつも、俺たちはさらに奥へと進む。