一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 作:チャンドラ=グプタ
「こ、ここは……」
俺は瑠夏さんと結ばれた世界を見た後、再び白い扉をくぐった。
くぐった先に俺がいたのはバスケットコートがあり、アリーナと思われる建物の中であった。
俺の周りには黒いユニフォームを来たバスケの選手が各自、ストレッチをしている。
「おう! どうした? 優馬」
バシッと誰かに肩を叩かれた。痛い。
後ろを振り向くと、そこには見知った顔が立っていた。
「い、石崎さん!?」
俺の肩を叩いてきたのは、俺が通うパーバード学園のバスケ部主将、石崎渉さんであった。
今と同じ角刈りの頭をしているが、いつも見ているよりか一段と身体付きが逞しくなっているように思えた。
よく見ると、石崎さんが来ているユニフォームには見覚えがある。
「なんだよ? そうだよ! 俺が『アルベルク東京』の4番の石崎だ! まさか、記憶喪失にでもなったかぁ〜? なんてな、あははは!」
石崎さんは陽気に笑い焦げた。耳が痛くなるような胴間声である。いつも聞いている声よりもなんだか一段と渋い。
「石崎さん、大事な試合前だっていうのに……相変わらず、気楽ですね」
俺と石崎さんの元にやってきたのは少し焼けた黒い肌でくりっとした大きな目が特徴の内山将吾であった。
なんと、省吾もまた俺と同じチームで、しかもプロバスケ選手となっていたらしい。
確かに前に試合で一緒にプレイした感じだと、省吾も上手かったがまさかプロにまで登りつめるとはな。
「まぁな! それにしても同じ高校出身で、『四人』も同じプロバスケのチームのスタメンになるなんて凄いことだよな!」
四人という言葉に思わず反応しそうになった。
つまりもう一人、私立パーハード学園出身でアルバルク東京に加入したやつがいるってことだ。
誰だろうか? 俺は辺りを見渡し、見知った顔を探し出そうと思った。
「おい! お前ら、そろそろ本コートに向かえ!」
俺から少し離れたところにいた、監督と思われる初老の男性が本コートに向かうよう促した。
今、俺がいるコートはアップに使うためのコートのようで、試合をするコートは別に設けられている。
「よし! お前ら、行くぞ!」
真っ先に石崎さんが先陣を切り、本コートへと向かった。他のメンバーも続けて本コートへと向かう。長い廊下を歩き、本コートへと通じる扉へと辿り着いた。続々とメンバーが本コートの中に入っていった。
俺もコートの中に入ろうとした時だった――
「優馬くん!」
俺を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと、そこの立っていたのは綾女であった。
「綾女……」
いつも見るビビり染めしている薄い茶色い髪が真っ黒い色に変わっているが、小顔で整ったこの顔立ちは間違いない。綾女であった。
「いよいよファイナルだね! この試合に勝てば優勝だね!」
どうやら今から戦う試合は決勝戦のようであった。マジかよ。
「あ、ああ……」
今知ったことであるが、俺は何食わぬ顔で頷いた。
「優馬くん……私、嬉しかったよ。ファイナルで優勝したら結婚しようって言ってくれたこと」
この世界の俺はどうやらバスケの試合で優勝したら結婚しようという明らかに負けフラグとしか思えないようなプロポーズをしたらしい。
「綾女……」
しかし、綾女がとても嬉しそうに可憐な笑顔をこぼしたため、思わずドキッとしてしまった。
「優馬くん、プレッシャーを掛けるわけじゃないけど……絶対に勝って欲しいな」
綾女の言葉を聞き、ドクンと心臓が大きく鼓動した。
今まで俺は誰かの為にバスケをしたことはない。
俺がバスケをするのは基本的に自分の為であり、それが普通であると今まで考えていた。
しかし、綾女の真剣な願望を聞いていると、どうしてもこの試合、綾女の為に勝ちたくなってきた。
「もちろん勝つさ。それじゃ、行ってくる」
俺はそう綾女に言い残し、ゆっくりとコートに入っていった。