一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 作:チャンドラ=グプタ
いよいよ始まった一年生対二・三年生の試合。
飛び出るスーパープレイの数々に思わず俺は目を奪われていた。
「おお! また決めた! すげぇなあいつ!」
俺の横に立っていた同学年の部員が騒いだ。俺が注目していたツンツンしている髪の部員は先ほどからものすごいプレイを連発している。
「おい、チェックしろ! ゴール下でシュートを打たすな!」
エンドライン側にいる石崎キャプテンが指示を出した。
「打たすかぁ!」
パワーフォワードを担当している先輩がジャンプし、ツンツン頭のシュートを止めようと試みるがやつはあっさりと空中でボールを持ち替え、先輩のブロックを難なく交わし、シュートを決めてしまった。
「ナイス、輝! お前すごいな!」
輝か。苗字は確か……佐藤とかだった気がする。
佐藤輝。おそらく奴とは熾烈なレギュラー争いをすることとなるのだろう。
しかし、先輩たちのプレイも負けてはなかった。
「オラァ!」
キャプテンが迫力のあるダンクシュートを決めた。
それにしても、ものすごいジャンプ力。
キャプテンの身長は見たところ百九十にも満たないように思えるがそれでもダンクできるというのはかなりの身体能力である。
激しいダンクを叩き込まれたリングはまるで『行為』をしている時のベッドのように激しくギシギシと揺れていた……って何という例えをしてるんだ俺はあああぁ!
兎にも角にも、先輩たちのプレイは上手い。これぞ、高校レベルという感じで、確実にシュートを決めてくるし、ディフェンスも固かった。
「ナイスブロック! 明彦!」
明彦さんというパワーフォワードの先輩が渾身のブロックショットをかまし、ボールはコートの外に出た。
まだ一年生チームのボールだが、五点差で残り時間は一分を切っていた。
一年生のスローイン。
二・三年生チームのディフェンスは厳しく、危うく五秒が経過しそうなその時だった。
「くれ!」
ディフェンスを振り切った佐藤がボールを求めた。
「頼んだ。佐々木!」
あ。苗字、佐々木だったか。
佐々木はボールを受け取ると、すぐさまドリブルでフリースローライン近くまでペネトレイトした。
「行かすかぁ!」
しかし、相手のディフェンスはしっかりと佐々木のドライブに喰らい付いている。
すると、佐々木はスリーポイントライン手前までステップバックした。
「何!?」
ディフェンスは完全に虚を突かれたようで慌ててスリーポイントライン付近までディフェンスしにいった。
スリーを打ってくると予測したのだろう。
だが、これはおそらく……
「しまった!」
再び右側前方向にドライブを仕掛けた佐々木は今度こそ、ディフェンスを抜き去った。
フリースローラインより少し後ろの位置からミドルシュートを放った。
綺麗な縦回転がかかったボールは一度、ボードに当たり見事にリングに吸い込まれていった。
「みんな! 当たるぞ! プレスだ!」
『おう!』
二・三年生チームに対して、オールコートプレスを仕掛ける一年生。
しかし、幾ら何でも即席チームでプレスなんて厳しいのでは。
そう思ったのだが。
「何やってるんだ! 小嵐!」
キャプテンが怒気を強める。
意外にも付け焼刃であるプレスがうまく機能し、相手のポイントガード(小嵐さん)を上手くダブルチームでエンドライン側に追いやっていた。
「俺がフリーだ! 出せ!」
二・三年生チームの選手の一人がキャッチボイスをする。
「ば、バカ! 出すな!」
キャプテンがパスを出さないよう声を出したが、もう遅かった。
小嵐さんのパスを読んでいた佐々木がパスカットした。
残り時間は三秒。
佐々木は横にドライブし、スリーポイントシュートを放った。
スパッとそのシュートは決まった。
タイマーの得点には三点加点され、同点となった。
第一クォーターは同点で終わった。
「ナイスシュート、佐々木!」
「お前、すげぇな!」
「よく決めたな! あそこでさ!」
佐々木とともに第一クォーターに出場した選手達は佐々木を褒め称えた。
「いやぁ……みんなのおかげだよ」
佐々木は照れ臭そうにそう答えた。
あいつ、めちゃくちゃ性格良さそうだ。全く自分の実力を鼻にかけない。
佐々木がすごいセンスの持ち主なのは確かだが、他の四人にも目を見張るものがあった。
「馬鹿野郎! 二・三年生、何やってるんだ! 本気でやれと言っただろうが! もっと、ちゃんとプレイしろ!」
『押忍!』
山口監督は二・三年生に喝を飛ばした。
隣にいる梓先生はというと、椅子に座りなんだか眠そうにしていた。
何しに来てるんだあの人は……
その後、第二クォーター、第三クォーターと試合を行なったが、本気を出した二・三年生の前にどんどん点差が引き離されていった。
一年生も頑張っていたのだが、やはり経験の差は大きい。
第三クォーター終了時には点差は二十点差まで広がっていた。
「よーし、第四クォーターを始めるぞ! 試合に出る選手は用意してくれ!」
キャプテンの声を聞き、俺はコートへと向かった。
「頑張ってね、優馬くん」
綾女が声をかけてくれた。
「ああ、ありがとう」
「ゆ、優馬くん……どんどんキャプテンに向かっていって欲しいな」
「はぁ? 何でだ?」
キャプテンはディフェンスが上手い。
わざわざ向かっていく意味が分からない。
「こう……ぶつかって押し倒す体勢になったら、あああ! 良い妄想が止まらないよぉ!」
「あー、はいはい。丁重にお断りします」
さすが綾女。腐っているようだ。
そんなこんなで第四クォーターが始まった。
他の四人と上手くプレーできるか不安だが、やるしかない。
まずは一年生チームからの攻撃である。
「お願い、優馬くん!」
味方からボールを受け取った。
ちなみに俺のポジションはシューティングガードというポジション。
外からのシュートを得意とする選手がこなすことが多いポジションである。
中学時代は主にフォワードをしていたのだが、俺のチームは結構背の高い選手が多く、結果としてシューティングガードとなった。
「七番チェック!」
先輩がディフェンスしてきた。
今、スリーポイントより少し手前でボールを持っているが先輩は少し俺から距離を離している。
これはイケるか。
「何!?」
俺は思い切ってシュートを打ってみた。
先輩は慌ててブロックに飛んだものの、先輩の手はボールに触れることなく、空を切った。
シュートはフープに触れ、『ガゴン』と決まった。
くそ、『スパッ』と決めたかったな。
「すごい! ナイスシュート! 優馬くん!」
ポイントガードを担当している味方の部員が褒めてくれた。
確か、名前は内山将吾(うちやましょうご)だったか。
小柄な体系で少し焼けた黒い肌のくりっとした大きい目が特徴の選手である。
「あ、ああ。運良く決まって良かった」
「お前ら! すぐに取り返すぞ!」
『おお!』
キャプテンの激に感化されたかのように他の二・三年生も気合いを入れ直した。
キャプテンはポストでボールをもらうと、パワードリブルで一気にゴール下まで押し込んだ。
「堪えろ! 高橋!」
高橋という百九十以上もあるセンターに俺はそう言ったが、
「甘い!」
キャプテンは高橋のディフェンスを物ともせず力づくでダンクシュートを決めてしまった。
「うわぁ!」
無残にも高橋は吹っ飛ばされて尻餅をついた。
審判をしていた未知瑠さんが笛を吹いた。
「バスケットカウント! ワンスロー!」
ディフェンスファールを取られてしまった。
普通ならキャプテンの方がオフェンスチャージを取られてもおかしくない場面なのだが、ノーチャージエリアというオフェンスチャージが適用されないエリアであるため、結果としてこっちのファールとなった。
フリースローのボーナスショットのチャンスを得たキャプテンは落ち着いてこれを決めた。
「よし! お前ら、ディフェンスだ! 一年、遠慮するな! どんどん来い!」
くそ、すぐに返してやる。
「内山。どんどんボール渡してくれ」
「う、うん。分かった」
俺たちの攻撃の番。
内山はすぐに俺にボールを渡してくれた。
俺をマークする先輩は先ほどよりも厳しいディフェンスをしてきた。
「沓沢! いけ、どんどんプレッシャーかけろ!」
「はい!」
ぴったりマークしている。
俺はドリブルで仕掛けたが、あっさりと反応された。
「くっ!」
抜けないと判断した俺は一度、内山に戻した。
内山は次にセンターの高橋にボールを入れたが、何も出来ず、あっという間にキャプテンからボールを取られてしまった。
「カウンターだ!」
キャプテンは速攻に走っていた選手にロングパスを出した。
まさに独走。
誰も追いつけず、シュートを決められた。
「ドンマイ、ドンマイ! みんな落ち着いていこう!」
内山はポイントガードらしく、みんなに声を掛けた。
そうだ、まだ試合は始まったばかり。
まだ慌てるような時間じゃない。
しかし、どうしたものか。
悔しいが、俺に先輩をドリブルで抜く技量はない。
再び、内山からボールをもらうものの、ドリブル、シュートのいずれもせず、トリプルスレットの体勢をキープし続けた。
「どうした? 来いよ」
先輩が挑発してくる。
くそ、もう一か八かドリブルで仕掛けるか……いや、ここは。
「高橋! スクリーン頼む!」
俺はポストでボールをもらおうとしていた高橋にそう指示した。
「わ、分かった」
高橋は俺をマークしている先輩にスクリーンをしてくれた。
スクリーンを活用し、ドリブルでゴール下まで切り込む。
「沓沢、スイッチだ! 来い!」
今度はキャプテンが俺にマークしに来た。
よし、見てろ。綾女。お前が望んだものを見てやる。
少し、体勢と距離がきつかったが、俺は強引にレイアップシュートを打ちにいった。
『パン』という音が耳に届く。それと同時に腕に痛みが走った。
すると、未知瑠さんが笛を吹いた。
「ファール! ツーショットです!」
俺はキャプテンからファールを取ることができた。
すまんな綾女。押し倒す体勢には至らなかった。
「やるな。確か優馬だったか。中々良いプレイだ。どんどん来るがいい」
「それじゃ、遠慮なく行きますね」
フリースローを二本決め、再び点差は二十点差になった。
しかし、次のディフェンスでは、
「橘! ダブルチームでキャプテンを抑えろ!」
そう指示をしたのだが、キャプテンはフリーになった選手にパスをすると、あっさりその選手がシュートを決めてしまった。
キャプテンは高橋一人では抑えることができない。
かといってダブルチームでマークさせると、フリーになった選手にパスを出されて決められる。
ふっ……まるで詰将棋だな。
「高橋、またスクリーン頼む」
「オーケー!」
高橋のスクリーンを利用し、再びドリブルを仕掛ける。
「もう、同じ手は通用せんぞ!」
キャプテンの言う通り、ピッタリと俺をマークして来た。
だが、狙いはそこではない。
俺はゴール下からスリーポイント付近まで下がった。
シュートを打ちに来るのだろうと考えたキャプテンは当然、俺を追ってきた。
「高橋、合わせろ!」
「うん!」
俺はリングの真上にボールを上げた。
高橋は空中でボールを受け取ると、そのままダンクシュートを受け取った。
「おお!」
「すげぇ!」
「な、何だ今の!? アリウープ!?」
高橋が見せたスーパープレイにみんなは驚いていた。
先ほどからキャプテンにやられっぱなしだった高橋だが、その恵まれた身長とポテンシャルは底知れぬ強さを持っていると俺は感じた。
おそらくマークがキャプテンでなければガンガン点を取っていることだろう。
その後はひたすら打ち合いが続いた。
キャプテンを中心に点を取り続ける二・三年と、スクリーンプレイを使って点を稼ぐ俺たち一年。
残り時間もいよいよ一分ちょいほど。
点差は二十三点差だった。
せめて、試合開始時の二十点差よりは差を詰めたいと思った。
内山がボールをキープし、誰にパスするか検討していた。
ボールを持っていない俺は上手くフェイクを使い、ディフェンスを振り切り、フリーの状態でゴール下へと向かった。
「う……」
――内山、パスくれ!
そう言おうと思っていた。
しかし、言う前に内山から絶妙なタイミングでパスが来た。
なんて、良いパスなんだろうか。
四十五度付近からゴール下でシュート体勢に入る。
だが、当然カバーのディフェンスがやってきた。
フリーとなったパワーフォワードの橘にパスすると、見事橘がシュートを決めてくれた。
「お前ら! 最後は一本決めて終えるぞ!」
『おお!』
意気揚々と先輩たちが攻めてくる。
「みんな! ここは絶対に止めよう!」
内山が俺たちに声を掛けてくれた。
『ああ!』
ここは絶対に止めて、シュートを決める。
必死に俺たちはディフェンスし、なんとか、二十四秒守りきれそうであった。
バスケには二十四秒ルールというものがあり、ボールをコントロールしているチームは二十四秒以内にシュートしなければならない。
シュートがバスケットに入るか、ボールがリングに触れるとシュートが成功しなくても二十四秒計はリセットされ再度二十四秒がカウントされる。二十四秒以内にシュートできなかった場合は相手チームのスローインとなる。
二十四秒ルールの適用時間まで残り四秒というところでキャプテンにボールが渡った。
「これで終わりだ!」
「ぐ……!」
高橋も頑張るが、ジリジリとゴール下まで押し込み、ダンクシュートを打つべくキャプテンがジャンプした。
「決めさせるか!」
「止める!」
高橋、そして橘もキャプテンのダンクを止めるべく、ブロックに飛んだ。
いくらキャプテンでも二枚のブロックは無理と判断したのか、橘がマークしていた選手にパスを出した。
そう来ると思っていた。
「フリーだ、明彦! 打て!」
明彦先輩はミドルシュートを放とうとした。
パスコースを読んでいた俺はそのシュートを後ろからはたき落とした。
「う、嘘だろ!」
明彦先輩はとても驚いていた。
まぁ、無理もないか。
俺の身長は百八十で明彦先輩は俺よりもおそらくは五センチほども高いのだから。
自慢じゃないがジャンプ力はそこそこある。
「高橋! ルーズ拾ってくれ!」
「おう!」
高橋はルーズボールを拾うと内山にパスを出した。
「みんな走って!」
内山がみんなに指示を出す。
タイマーの時間を確認すると、残り時間は七秒ほど。
俺はフロントコートめがけて全力失走した。
「みんな戻れ!」
キャプテンの言葉を聞き、先輩たちは急いでディフェンスに戻った。
先輩たちの戻りは早く、内山は必死にシュートチャンスを探していた。
残り時間はあと三秒。
「内山! くれ!」
「頼んだ、優馬くん!」
ぴったりとマークしてくる先輩だったが、俺はステップバックし、スリーポイントラインの一メートル後方からクイックモーションでシュートを放った。
幸いにもそのシュートは先輩のブロックを掻い潜ることができた。
「入れぇ!」
しかし、俺の願いは届かず、ボールはリングに触れることなくボトンとコートに落ちていった。
そして、ブザーの音が鳴り響いた。
結果は五十二対七十三と二十一点差で紅白戦は幕を閉じた。
「集合!」
試合が終わり、整列をすると、キャプテンが山口先生のところに集合するよう声を掛けた。
「みんなお疲れ様。一年生は荒削りの部分もあったけど、いいプレイが見られて良かったよ。二・三年生は反省点がいくつかあったからちゃんと練習で克服するようにな。それじゃ、今日はストレッチして終わりだ。ゆっくりと休むように」
「ありがとうございました!」
キャプテンに続けて他の部員も、
『ありがとうございました!』
山口監督に礼を言った。
ストレッチを終えると、今日の練習が終わった。
いやぁ、中々刺激的な試合だった。
同じ一年でも佐々木や内山、高橋など能力の高い選手がゴロゴロいる。
これから練習、頑張らないとな。
俺は第四クォーターで一緒になった選手と一緒に帰宅していた。
ちなみに先輩たちはまだシューティングをしている。
まだ、仮入部期間であるため、俺たち一年は遅くまで自主練することはできない。
「優馬くんのプレイすごかったなぁ。そういえば、優馬くんってどこの中学校出身なの?」
内山が出身中学校について聞いてきた。
「俺は宮城県の石巻東中学校出身なんだ。推薦で入学した」
「へー! そうなんだ。宮城県から。あの伊達政宗で有名な」
仙台ですね。それは。
宮城県といえばやはり伊達政宗の印象が強いのだろうか。
もっとこけしの発祥地とか鳴子漆器とか蔵王とか猫がたくさん生息している田代島とか色々あるのだが。
「まぁ、そうだな。みんなはやっぱり東京の中学校出身か?」
話を聞くととやはり他の四人は東京や神奈川など、関東圏の中学校から進学していた。
「それじゃ、俺こっちだから。みんなまた明日な!」
交差点にて、帰る方向がみんなと違うため、俺は別れを告げた。
四人と別れ、しばらく歩いていると途中で俺は体育館で忘れ物をしたことに気が付いた。
更衣室に勉強道具を入れた鞄を置き忘れてしまった。我ながらなんというアホなのだろうか。
鞄の中には学校の宿題のプリントも入っている。
仕方がない。まだそう学校から遠くないし、取りに戻るか。
俺は再び学校へと舞い戻り、更衣室に戻った。
体育館にはまだ灯が点いており、まだ先輩たちがシューティングをしているようだった。
俺は更衣室に置いてあった鞄を手に持ち、更衣室から出た。
「さてと、帰るかな……ん?」
更衣室から少し離れた倉庫から何やら音が聞こえた来た。
気になった俺は倉庫に近づいてみた。
「あ……先輩……!」
聞こえてきたのは何やら聞き覚えのある声。
俺は倉庫の扉を少し開け、中を覗いてみることにした。
「未知瑠……相変わらず、お前のおっぱい気持ち良いな……」
倉庫には未知瑠さんとキャプテンの石崎さんがいた。
二人はお互い、全裸の状態であり、石崎さんは気持ち良さそうに未知瑠さんの大きめな双丘を法悦に満ちた表情で揉んでいた。