―あなたと私の、新たな関係―
――ただ、愛する形が変わっただけ。
長い、とても長い式が終わった。お爺様の手で渡されたのは、当主たる証の金印。私はそれを恭しく拝領した。一族に祝福される中、私は頭を下げた後――両手を挙げて、手を振った。式が終われば無礼講だ。手を振り返されて、私はちょっと気取ったポーズを取って見せたりもした。
私は今日から、姫海棠家を背負って立つ。重責がある。忙殺もされるだろう。けれど私は――内心、喜ばしくてたまらなかった。遂にこの日が来たんだ。私の一存ですべてを決められる日が。姫海棠の名において命令する日が。あなたたちを刈り取り、私の元に届けさせる権利が――!
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「お会いできて光栄です。姫海棠様」椛が、私に頭を垂れた。「堅苦しいのはいいよ」私は促した。あなたの姿は、それでいい。それがいい。「――はたてさん。久しぶりですね」「そうだね」ここ数か月は、溜まった仕事を片付けてた。内心は――期待で胸が張り裂けそうだった!
「ねえ。椛はさ――どんな人が好き?」「藪から棒ですね」椛は頭を掻いた。「強いていうなら――はたてさんみたいな人が好きです。優しくて、分け隔てない」「そっか」この返事は、予想してた。椛が以前から、友達以上の関係を望んでた事も。けれどそれは、私には似合わない。
「ねえ」「何でしょう」私は、椛の肩に手を置いた。「椛は何か勘違いしてる」「――?」椛は困惑してた。そうだろうね。私はそのまま――椛を押し倒すと、目と目を合わせた。驚愕の目。獲物を見定める目。「私はそんな人じゃないよ。もっとずっと――怖くて、自分勝手なんだ」
「何を……」「何でもないよ。ただ、違うってわかって欲しいだけ」私が首を振ると、椛は安堵したかのような顔をした。「はたてさんが言うなら――そうなのかもしれませんね」椛は取り繕った。「だから、そうじゃないの」あなたにはわからないかもしれないけど。そうじゃない。
「私に抱かれてよ、椛」服に手をかけ、私は囁いた。びくびくと震えた耳を、指で撫でた。「あなたは何も考えなくていい。ただ悦べばいい」尻尾をさらさら、と撫でた。獣めいてしなやかなあなたの身体は、どんな味がするだろう。考えるだけで――私は、どうにかなっちゃいそうだよ。
再び困惑を浮かべた椛を、私は揺さぶった。「聞こえなかった?」「い、いえ……」「なら、そうしなさい。これは命令だから」命令。その言葉を聞いて、椛は真顔になった。私の言いたい事、ようやくわかってくれたんだ。私は起き上がり、椛の手を引いた。椛は、命令通りにした。
「全部、脱いでよ」これも要望じゃない。命令だ。それがわからないほど、椛は愚かじゃない。装備がどさり、と落ちた。上着、スカート、そして下着がすべて剥がれ、折りたたまれる様を見た。私の加虐欲はますます燃え上がった。いいよ。堂々たるその様を、快楽の海に沈めてみせる。
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私は装束を身につけたままだ。今、この場で裸体を晒す気は、端からない。熱い滾りを吐き出すだけなら、何の問題もない。……さあ。あなたが獣なら、私も獣らしくシてあげる。私は背後を取った。腰を上げるように命じる。獣は素直に従った。艶めかしく、誘うような態勢。
私はそれを尻に擦り付けた。幾度の命令の快感を浴び、それは既に熱くなっていた。もはやあなたには逃れる術などない。獣を御する。獣を我が物にする。見るがいい。そうだ――あなたも既に、熱くなっているじゃないか。命令される度に己を震わせていた事を、私は決して見逃さない。
指を差し込む。いい具合だ。それを持ち上げ、そこに当てる。どうか。欲しいか。問いかけに、獣は答えなかった。ただ悲し気に、鳴いた。あなたの困惑、そして悲しみはわかってる。これまでの付き合いをすべて無にするかのような所業だ。だからこそ、好いの。だからこそ、心が躍る。
ゆっくりと、それを差し込む。身を縮めた獣の所業は、しかしてそれを扇動的に締め上げる結果しかもたらさない。私は再び、問うた。獣は悲し気に鳴くだけだった。いいよ。その強情を、耐え難くも粉々に打ち砕いてやるから。燃え上がるように熱いそれを、奥まで捻じ込む。
吐息が漏れた。すぐにそれは悲しい鳴き声に変わった。意地を張る。それを引き抜き、先よりも強く、早く突いた。衝撃が腰を揺らした。繰り返す内に、獣の口からは鳴き声ではなく、荒い吐息が漏れ続けていた。けど、まだ足りない。あなたを壊すには、もっと、もっと強い力が必要だ。
私はそれを引き抜くと、欲しいの?――と、三度問うた。やはり獣は答えなかった。それなら――腰をゆっくりと振る、それは何か。吐息の中に混ざり出した、先とは違う鳴き声は何か。私は四度、問うた。獣は一言、欲しい――とだけ、応えた。私はそれを悦ばしい思いで、聞いていた。
先端を尻に当て、焦らす。それを挿れようとする動きを制した。獣が鳴いた。それは求めだ。愛欲を求め訴える、その鳴き声は――私をいたく、刺激するのだ。先端をそこに当てる。ただ挿れるだけでは面白くない。尻尾を掴み、思い切り寄せた。それが獣を貫き、苦痛は悦びに変わった。
獣は鳴き声を隠そうともしなくなった。きゅうん、きゅうんと鳴く様は、如何にも滑稽だ。そしてそれは、私を惹き付ける。突いた。突いた。何度も力強く突いた。悦びを味わう間もなく、畳みかけるような快楽が、獣を襲っていただろう。欲しいんだね。欲しいだけ、味わえばいい。
尻尾を引っ張り、一番奥を突いた。引き戻す。突く。あふれだした液体が布団を濡らした。そう。あなたが欲しがるものを与えてあげる。私の言葉に、何を想うか。獣はそれを、行動で示した。尻を高く上げた。鳴き声に艶めかしさが増した。私を求める。そう、あなたは私を求めたんだ。
激しく突き続ける。獣のそこがぎゅうぎゅうと締め上げる。尻尾を引っ張り、最奥を無理矢理に突いた。そう。欲しいんだね。私も欲しい。快楽が欲しい。肉体が欲しい。いや――すべてだ。すべてが欲しい。あなたの身体から、すべてを奪い取ってあげる。激しく突いた。突き上げた。
最後の抽挿。最後の呻き。抗うも、遅し。私は――獣の胎に、思い切り精を吐き出した。それが震える度に、獣も身体を震わせた。それが悦びである事が、私にはすぐにわかった。尻尾を引っ張り、それを一番奥まで押し込んだ。闇雲に掻き回す。獣は耳をぴんと立て、悦びを貪っていた。
そう。嬉しいはずだ。私が抱いているんだから。快楽の波が去り、我に返った獣の鳴き声は――いつしか、唸りと化した。その頭を押さえつけ、傍にあった布の束を咬ませた。これはくつわだ。獣を仰する為の。尻尾を掴み、獣の腰を私へと引き付ける。近付いた腰を、緩慢に突いた。
唸り声は強く、その音に怒りを帯び――そして、すべてを拒むかのような、激しい唸りに変わった。もはや私、姫海棠はたてであろうとも容赦せぬ――とでも、言いたいように。愚かな獣。頭を押さえつけ、くつわを深く咬ませる。あなたを完全に屈服させる。私にはそれができる。
獣の前足を、後ろ手に拘束する。頭を押さえつけ、命令した。逆らってみせなさい。逆らうだけ逆らえばいい。あなたは己の弱さに絶望する事になる。瞬間、唸りが更に強まった。更に強く、頭を押さえつけた。あなたは逆らう事ができない。背くからではない。私を、畏れているからだ。
獣を蹴り転がした。仰向けになった獣の顔は、よだれと液体――そして、涙でぐしょぐしょに濡れていた。私は、満足げな表情を浮かべていたと思う。やにわに立ち上がり、傍の箪笥から取り出したもの。それは――首輪だ。獣にとって最も唾棄すべきもの。すべての自由を失わせるもの。
それを開き、獣の首に近付けた。獣は、今にも噛みついてきそうだ。だけど、そうはならない。畏れがすべての判断を狂わせる。私は、獣の唸りがもはや虚勢である事を看破していた。獣自身もそれは、よくよく理解していたはず。その目は、怯えていた。そう。己の運命を、悟って。
首輪を、ゆっくりと、見せしめるように巻く。獣はもはや無意味な唸りを上げた。若干の隙間を開けて、それを閉じた。それはあらゆる場面で、恐怖を思い出すきっかけになる。リードを巻いた。それは、短く巻かれた。あなたの世界は、もはやこれだけ。逃げ出す事など、出来はしない。
私はくつわを剥ぎ取った。唸り続ける顔に平手をみまった。唸りが止まるまで、何度も繰り返した。怯えた目がこちらを見ている。私は萎えたそれに手を添え、獣に向けた。獣はもはや食い千切るだけの気概も持たなかった。緩慢に舐める獣のリードを引っ張る。きゅうん、と獣は鳴いた。
獣はそれを咥え込んだ。懸命だった。咥え、飲み込み、そして前後した。私はリードを引っ張った。獣の動きが速まる。獣への加虐行為が、私を興奮の最中に迷い込ませる。私は腰を振った。獣は空気を求めて喘いだ。そんな事は知った事ではなかった。破裂の瞬間は近付いていたのだ。
瞬間。それは激しく震えた。獣の口に、私の精が流れ込んでいく。リードを引く。すべて飲み込んで。私の言葉を、獣は畏れていた。精はすべて獣の腹に収まった。残り一滴に至るまで、それをしゃぶらせた。頭を押さえつける手を見て、獣は首を引っ込めた。獣は、痛みを知ったのだ。
痛みを与えたなら、次は――そうだ。褒めてやらなきゃならない。前足の拘束を解いてやった。獣は自らの顔に手を当て、こちらを見た。私はその顔を、頭を、畳まれた耳を、そっと撫でてあげた。獣は困惑していただろうか。直にわかる。これこそ――あなたと私の、新たな関係だ。
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「服、着ていいよ」椛の涙を指で拭い、頬にキスをした。これで、わかってくれたと思う。もう二度と、私から離れられない事を。「首輪、外さないでね」リードを外してあげながら、私は――そう、命令した。だって、椛は私のものになったんだから。逆らえるはずなんて、ないよね?
「……姫海棠様」震える声で、椛はそれだけしか応えなかった。「≪はたて≫」「……はい。はたてさん」私はそのまま、以前のままに呼ばせた。あなたのリードを引いたのは私。ありのままの私。それは、何も変わらないから。ただ少しだけ――そう、形が変わっただけだ。
「帰っていいよ」私は、愛の匂いを漂わせたままの椛を、そのまま帰らせる事にした。白狼達は気付くだろう。酷く羞恥心を煽るだろう。己の境遇を理解せずにはいられないはずだ。椛は頭を下げ、廊下へと出ていった。私はその背を眺めながら――次の相手を、思い浮かべていた。
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「椛の事、聞きましたよ」障子を開け放つなり、文は私に扇を突き付けた。「そういうの、失礼だと思う」「何が失礼なものですか」私は首を振った。「落ち着いて」「落ち着け?――落ち着けと!?」文は今にも、私を風の刃で真っ二つにしようとしていた。私は平然でそれに応えた。
「座って。……ううん。座りなさい、文」「あなたの言う事なんて、聞きませんよ。わたくし不良天狗ですからね」「文は前からそうだよね」くすくす、と笑った。笑いが止まらなかった。この毅然とした文を、清く正しい射命丸文を、私は屈服させようとしているのだから。
「椛をね、呼んであるんだ」「――ッ!?」私は立ち上がり、隣の障子を静かに開いた。そこには――荒い息をした、愛を漂わせた――可愛い獣が、こちらに困惑と期待の視線を向けていた。視線が、文の方を見る。獣は身をよじった。きゅうん、と鳴き、新たな客人を歓迎した。
私はリードを取り、椛の首につけた。私がそれを強く引っ張る度、椛は耳を閉じ、怯えた。「可愛いでしょう?」文の視線が、私を貫いている。「女の子だもの。可愛くなくちゃ、ダメだよね」膝立ちになり、椛を抱え込む。優しく撫でてあげると、椛は嬉しそうに尻尾を振った。
「文も、私のものになるよ」私は、文の顔を見た。文はこちらを睨み殺そうとしてた。「ふざけるな」「ふざけてなんてない」椛の頭に、腕を預ける。椛は首筋を舐め始めた。「私はずっと、文と椛が欲しかったんだもの」私の微笑みは、きっと文を激昂させるに十分だったと思う。
「あなた――いえ、お前がそれほどまでに卑劣な内心を隠していたとは思いませんでした。わたくしめの目は、節穴でしたね――!」そう。そうやって私に反抗すればいい。怒りをぶつければいい。私も、あなたが簡単に首を垂れるなんて思ってない。それでもあなたは、私に逆らえない。
私は腰から扇を取り、椛の首に当てた。椛は怯えて、耳を閉じた。目の前の死――そう、確実な死を見て、怖がっているんだ。私は風を繰った。白刃が首元に当たる。つつ、と一筋、血が流れた。文の顔を見た。その視線に、薄笑いで応えた。「あなたが首を縦に振らないなら――」
「椛を、殺しちゃうよ?」
「――恥を知りなさいッ!!」「恥を知るべきは――あなただと思うよ、不良天狗さん」私の領域に、土足で乗り込んだのはあなただ。あなたは罰を受けなければならない。今から私が、それを執行してあげる。刃を消し、文の手から扇を奪った。その背を押し、椛の隣に突き飛ばした。
「抱き合って見せてよ」文が乗り込んでくるのは、本当に待ち遠しかった。だって、これをさせたかったから。文は躊躇していた。椛は――飛びつくように、文と抱き合った。首元に頭を乗せる椛を感じて、文はこの子が――以前の椛とは、まるで違うのだと、理解したみたいだった。
「全部、脱いで。椛も」これは命令だ。文は私を睨みつけながら、それに従った。椛は既に裸になっていた。嬉しそうに。次の命令を待つかのように。きっとあなたも、椛と同じように、喜んで従うようになる。させてみせる。わたしにはそれができる。あなたはそれを、拒めない。
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私はやはり、装束を身につけたままだ。裸体を晒す必要を感じない。人に見せつける趣味もなかった。ただ――それを見せつけられるのは、心が躍る。そういう人は、きっと一杯いると思うよ。そうだよね。私の問いに、しかし烏は、何も答えなかった。強情。さて、いつまで持つかな?
あなたたち、キスしなさい。私の命令に、獣は喜んで従った。烏は――限界まで、嫌がった。私は獣のリードを軽く引いた。促された獣は、無理矢理に烏の唇を奪った。ろくでなしめ。その言葉を聞いて、私の心は、身体は、激しく燃え上がった。私がろくでなしなら、あなたは聖人様ね。
私は、二人に絡み合うように命令した。烏は拒んだ。獣はその後ろにつき、胸を押し付けながら首筋を舐め始めた。いいこだね。いいこいいこ。私の言葉を聞いて、獣は嬉しそうに耳を立てた。烏は拒み続けたけど――獣が胸を揉み始めると、拒絶が少しだけ緩んだのを、私は見逃さない。
獣に命令する。烏を悦ばせてあげなさい、と。私が見つめる先で、獣が烏を押し倒し、首筋を舐めながら、そこを指で撫で始めた。烏は抵抗しない。できないんだ。私が命令したからじゃない。獣のやる事を、拒否したくないんだ。烏が椛、と呟くと、獣の行為は激しさを増した。
股から液体を垂らしながら、獣は烏にキスをした。烏の身体が震えた。快楽だろうか。背徳感かもしれない。指でなぶられ続けた烏のそこは――もう、十二分に用意が整っているように見えた。……身体が熱い。勿論、それもだ。半ば勃ち上がったそれを、見せつけるように取り出す。
さあ、シてよ。烏は拒んだ。獣はそれをしゃぶり始めた。私は文の頭を叩いた。強く叩いた。文は頭を振って、私に従った。一匹と一羽が代わる代わる、両方から舐める。舐め続ける。私は敢えて烏の側を選び、頭を掴んで、それを押し込んだ。涙がこぼれた。文を、泣かせてやった。
腰を前後させる。獣が物欲しそうに鳴く。烏はばさばさ、と不満げに翼を揺らした。歯を立てたら、椛を殺すよ。私の呟きを、しかし烏はよくよく理解していたみたいだった。私が乱暴に頭を押さえる度に、あなたの口遊びは良さを増していくみたいだった。自然に、微笑みが浮かぶ。
耳元を撫で、あなたに囁いた。すべて飲み込みなさい、と。烏は熱くなる私のそれへ、懸命に前後を繰り返した。私のそれも、そろそろ限界だった。髪を掴んだ。喉の一番奥まで、突き込んだ。えずく烏の意志とは無関係に、私は――その口内へ熱い熱い精を吐き出した。何度も。何度も。
烏は、それを受け止めきれはしなかった。そんな気はしてた。激しくむせたその口から、どろどろと精がこぼれ落ち、畳を濡らした。それから流れる残りを、獣が丹念に舐めとった。あなたは約束を破ったね。私は声色を強くした。烏は――息を整えつつも、動揺しているようだった。
あなたは約束を守れなかった。あなたは悪い子だ。私は繰り返し、烏に言い聞かせた。一方的で勝手な約束だ――なんてのは、この場ではどうでもよかった。烏が目を背けた。髪を掴んで、こちらに向けさせる。見下ろした顔に、涙の筋が見えた。息を荒げた獣が、私のそれを咥え込んだ。
あなたはどうするべきだった?――あなたは、私に、何か言う事があるんじゃないの?――私は立て続けに烏を責め続けた。烏が私を見る瞳が、潤んでいたように思える。あなたは新聞記者なのに、そんな事もわからないんだ。あなたは賢いのに、そんな事すらわからない。悪い子だ。
――あなたは私の友達なのに、どうしてわからないの?――最後の言葉が、烏を突き刺した。ごめんなさい。約束を破ってごめんなさい。遂に、烏の口からその言葉を引き出した。不良天狗を名乗っていても、その実体は、情に動かされる小心者だと――私は知ってた。だから、こうした。
言えたね。偉いね。私は髪から手を放し、膝立ちになると、烏の頭を胸に抱え込んだ。勃ち上がったそれから引き離された獣がきゅうん、と鳴いた。あなたはおあずけ。私は今から、この子を屈服させる。肩を掴み、烏を仰向けに転がした。烏は肩を押し、私との行為を拒んだ。
あなたはどうするべきか。わからないの?――私の問いかけは、あなたの自尊心を、己が傲慢を、内側から削り取っていく。答えは簡単なんだ。でもそれを口にすれば、自分が自分ではなくなってしまう。屈辱――いや、それよりも酷い、存在を否定する言葉。自己否定の強要。
烏の手から力が抜けた。私は腰を落とし、烏のそこにそれを捻じ込んだ。深い息が漏れた。私は突いた。突きながら、烏の乳房を揉んだ。獣が割り込んでくる。私はその頭を撫で、上半身の行為を任せた。獣は歓喜して、乳房を、首筋を、そして耳を貪り始めた。悦びが、漏れ出てた。
獣とは違う。烏は細身だ。けれどその身は、好色な胎を隠そうともしなかった。私が突く度に身体は悦び、そして緊張した。自尊心が闇に融けていくのが、私にもわかる。私は幾度となくその身を突き――やがて、胎に目一杯の精を吐き出した。烏は声を上げて泣いた。泣いていた。
弛緩した身体からそれを抜く。獣が目ざとく反応したけれど、今はもう、そういう気分じゃない。リードを強く引いた。獣は頭を垂れ、大人しくなった。私は立ち上がり、布でそれを拭った。烏を立ち上がらせる。糸を引く液体。その身は震え、涙は止まらない。私は、箪笥に手をかけた。
箪笥から取り出したのは、よく切れる、鋭利な鋏。私はそれを烏の翼に向けた。風切り羽根を切り落とす。あなたはもう疾くは飛べなくなる。獣とお揃いの足輪。二度と私に逆らえなくなる。私は笑った。笑いが止まらなかった。烏が後ずさりした。無駄だよ。あなたはもう逃げられない。
獣が烏に組みついた。私は――一息に、烏の羽根を切り落とした。そう。その顔。絶望に沈むあなたの顔が見たかった。私は烏に足輪を巻いた。外さないでね。……私の言葉を、聞いているのか、いないのか。烏は呆然と、私の顔を見ていた。私はその顔をはたいた。何度も。何度でも。
手を挙げた瞬間、身を震わせるようになるまで、はたき続けた。幾度目かの暴力の後。烏の頭を、そっと撫でてやった。顔を上げたその頬に、キスをした。あなたは生まれ変わったんだよ。耳元でそう呟く。獣が私の傍に寄り、抱き着いた。烏は――私に、縋りついた。いい子だね。
部屋にいるのは一人と一匹、そして一羽。外から雨音が伝わってくる。私は一匹と一羽に絡み合うよう命令し、ガラス障子を開いた。私の欲しいものは、みんな手に入った。今の所は、ね。いつかまた、≪欲しい≫ものが出来るかもしれない。その時は――この子達に、手伝ってもらおう。
私は、笑った。笑い続けた。雨音が、高笑いを消し去った。私だけの秘密。私達だけの秘密。私は腕を広げた、この世のすべてを抱き込むように。私には、それが出来る。出来るはずだ。だって私は――姫海棠はたてなんだから。欲しいものは何だって、手に入れてみせるよ。
今の私は、或いは天狗の誰よりも傲慢だったかもしれない。傲慢ならずして何が天狗か。あなたがよく言っていた。その通りだ。私は、烏よりも傲慢になってみせる。獣よりも貪欲になってみせる。私は障子を閉じ、居室へ向かった。背中から、一匹と一羽が喘ぐ声が聞こえた。
雨がすべてをかき消していく。
姫海棠家の暗主の所業を、今はまだ、誰も知らない。