―君はそれでいいんだよ―
少なくとも、私は愛しているさ。
あなたと出会ってから、何年が経つでしょうか。
数百年? 数千年? それとも――数万年?
客観的に考えれば、あり得ないのはわかっています。
わかっていますが――或いは、私にはわかっていないのかもしれない。
そのくらい、あなたとの生活は永遠で、安穏な喜びに満ちていたのです。
「ご主人」
私は、漠然と考えを巡らせていました。ナズーリンの声も聞こえています。
ただ、今は返答したくはない。私の心中は、あなたの事で一杯なのです。
それが、ぼんやりした頭と理解されるのもわかっています。
実際、その通りですから。
――私が、色々な事を考えているのだとは、ナズーリンだけが知っています。
「おいご主人。起きろ」
ロッドが頭を小突きました。私は顔をそちらに向け――その顔を見ました。
やはり、ナズーリン。
元々気が長い方ではありませんでしたが、最近は特に気を昂らせがちです。
私は大きな大きな欠伸を贈ると、そちらに向き直ります。
「居眠りするご本尊があるか」
ご本尊を小突くネズミもいないと思いますよ。
考えはしますが、口にはしません。怒らせます。
私は周囲を見渡しました。特に、誰もいませんし、何もありません。
鳥の鳴き声。そして桜の花びら。
春の陽気です。これでは眠ってしまっても仕方がありません。
決して、私の落ち度ではありませんよ。
「何か用でしょうか」
「用がないのに小突いちゃ悪いか」
今日のナズーリンは大層怒っているようです。心当たりはありません。
私は寝ぼけた後まで思い出そうとします。
ここにはナズーリンが――あれ、ナズーリンが?
「――すいません」
「やっと思い出したか、このボケ虎」
――ここは、素直に謝るしかありませんでした。
そういえば、ナズーリンと買い出しに出る予定があったのです。
「何回忘れれば気が済むんだ、君は」
「――何回?」
「もう四回目だぞ、四回目」
どうやら――思い出しました。
既に三回ほど会う予定をすっぽかしています。あわわ。
「全く、君の頭は穴ぼこチーズでも詰まっているのかい」
ナズーリンはロッドを素振りしています。
これ以上間抜けな事を言えば、あれで殴られるでしょう。
私の恐怖を感じているのか、ナズーリンはこちらを向きました。
目が座っています。
「――昔は、こうじゃなかったな。キリっとしてた」
ナズーリンは頭を振りました。
それは――呆れているというより、何やら思い出している顔です。
それも、あまり思い出したくはないような。
私にも――いくらか、想像がつきました。
「ずっと、昔の話ですか」
「まあ、そうさ」
私が、今の私になるよりも、ずっと昔の話。
聖の横で威光を放っていた私。焼け落ちた寺を見下ろしていた私。
今の私に導いてくれたのは――あなたでしたね。ナズーリン。
「まあ、いい。必要なものは私が買っておいたから、取りに来るんだ」
ナズーリンは振り向き、さっさと歩いて行ってしまいます。
私は慌てて追いかけようとしたのですが――
「あいててて!」
脚がつりました。
―――
―――
ナズーリンの家は、誰もいないような所に立っています。
あまり深入りしてはいけない所でもあります。
扉が開いて、道具の箱が持ち出されてきます。
どさり、と置かれました、如何にも重そうです。
――というか、重い。持ち上げるのもやっとなそれを、
しかしナズーリンはひょいひょいと持ち出してきます。
聖曰く、弛み過ぎて却って何もさせない方がいい、
と言われていますが、筋トレでもしましょうか。
「君はそれでいいんだよ。ご本尊なんだから」
そういうものでしょうか。本音を言えば、
ご本尊が骨を折ったなんて事になったら困るからな気もします。
昼行燈と呼び声高い私だって、そのくらいの気は回ります。
……何で、骨を折る話になったんでしたっけ?
「そら、軽いのから持って」
「はい――ッン゛ンン!!」
腕の骨が折れました。……もとい、腕が折れかけました。
両腕から、しちゃいけない音がしました。
すぐに手を離しましたが、ジンジンと痛んでいます。
……どうしましょう、ナズーリン?
「はぁ……。今度からは脳筋共を呼んだ方がいいな」
あいつらとは接点ないんだよな、とナズーリンが呟きました。
確かに、一輪や村紗の方が適任かもしれません。
……ところで、脳筋って何の事でしょう?
「家で休むといい。
ご本尊を壊したなんて聖に報告したら、何をされるやら」
私を連れて行くように指示したのは聖でした。
たまには運動――いえ、広告塔になりなさい、と。
確かに運動不足ではありますが、
太っている訳では――少しはそうかもしれませんが。
―――
―――
「湿布だ。すぐに効く」
ナズーリンは湿布を貼り、包帯を巻いてくれました。
確かにこれは、すぐ効く気がします。
もう痛みが消えてしまいました。
「無茶をするなとは言わない。
何をやらせても無茶なんだからな。君は」
ナズーリンはほとほと呆れ果てた、とばかりに私を一瞥しました。
私とて、それを問題だと思ってはいるのです。
しかし私は、とかく忘れやすい。
あなたの事ばかりではありません。
大切な事から、私の中に抜け落ちていくのです。
或いは――塞がったと思った心の隙間が、
私にはまだまだあるのかもしれません。
どうすれば、それは塞げるのでしょう。
今の私には、想像できません。
「無理に直せとは言わない。
誰もそれを求めてはいないだろう。
君は象徴としてそこにいればいい。
聖もそれ以上の事は望んではいないよ。
――君はそれでいいんだ。
ありのままの君を愛してくれる人は、沢山いるさ」
――そう、ですね。私もそれはわかっています。けれど。
幾千の日々が私から牙を抜き、鋭きを鈍らせ、明晰さを雲散させたのは、事実です。
私はそれに甘んじてきた。今更、それらを取り戻す事はできないかもしれない。
しかし、それでも私は――求められ、
しかして誰にも頼られない。それが嫌なのです。
「私は、愚かでしょうか」
ナズーリンは少し考え、私に応えました。
「愚かであってはならない、
なんて懐の浅い人ではないよ。尼君は」
「そうではなく」
「うん?」
私は、次の言葉が紡げませんでした。
「考えるのは苦手だろう?
考えるのは、誰かがやってくれるさ」
ナズーリンは背を向けて、箱を整理しています。
私が聞きたかったのは――そう。あなたはどう思っているのか。
私にはわかっていました。愚かで良いのだと、あなたは言うでしょう。
それなら私は、何と応えればいいのか。
それは、それが、わからなかったのです。
「ナズーリン」
「何だい」
「これからもずっと、愛してくれますか」
ナズーリンが、ゆっくりと振り向きました。
「それを聞くという事は、君はぐらついているんだな」
ナズーリンは近付き、私の頭を撫でました。
黒い髪、黄色い髪。それらを手櫛で梳きました。
あなたの鋭い目が、私を切り裂いています。
しかしそれは、とても優しい刃なのです。
「――少なくとも、私は愛しているさ。
いつまでも、いつまでも」
あなたが、私の頭を抱え込みました。
私は――涙を浮かべていたかもしれません。
私を、絶対に見捨てないのはわかっていました。
試そうとした訳でもありません。
あなたが、仲間たちがどんな返事をするか、確信を持っていても。
それを言葉にするかは、別なのです。
応えさせるのは、あなた達を疑う事に他ならない。
「少し、横になります」
「ああ」
私は、考えない道を選びました。
それは安易で、しかし確実な道でした。
何も変えない。何も変わらない。
あの時と同じように、私は安穏の中に沈んでいきました。
―――
―――
――しかし、何でしょう。身体が熱いです。
そんなに陽気が良すぎるでしょうか。
私の疑問は――しかし、身体自身が答えを吐き出しました。
これは――そうです。
身体を求める、それ。愛し愛される為の、気ぶり。昂り。
私は、困惑しました。神経質な気分は抜けてはいませんでした。
このまま我慢すればよかったのです。
しかしそれは、どうしようもなく私を苛みました。
せめぎ合う私の中で――肉欲が、勝ちました。やはり私は、愚かなのです。
封じている耳と尻尾が、私の身体に現れました。
それを、曝け出してもよかったからです。
起き上がり、ナズーリンの後ろ姿を見ました。
きっと私は、変な顔をしていたに違いありません。
――荷物が足元に落ちました。私がそうさせたのです。
私は、ナズーリンを抱きしめました。
「ご、ご主人、ッ!?」
いいえ、抱きしめるだけでは足りません。
私はナズーリンを持ち上げ、ベッドへと運びました。
あなたは軽い。私でも、容易に持ち上げられる程に。お姫様だっこできる程に。
あなたを下ろし、私もベッドに乗りました。
あなたは困惑の色を隠しませんでした。
「あっ。あの湿布には、またたびが――」
何かを思い出したようですが、もう遅いのです。
私はあなたに四肢を絡めつかせます。
顔が火照ります。しかし、困惑するあなたとは裏腹に、
私は何故だか、冷静でした。
何も変わらない。
そう、あなたとの行為も――
今までも、そしてこれからも、きっと何も変わらないのです。
――ベッドがきしみました。
二人分の体重を支えるようには、できていないのかもしれません。
あなたの顔を見て――ぼやけていた頭が、すっきりしてきました。
明晰な思考は、あなたを欲しがっています。
あなたの姿を、心を、愛しているのです。
感情も、そうです。
私の全身全霊が、あなたを求めて、たまらないのです。
「や、止めろ――ご主人」
止めろと言われて、止める者は少ないのです。
私はあなたの尻尾をしごきながら、耳を舐めました。
やにわに力が抜けていくのがわかります。
まるで、肉食獣の前で観念した子ネズミのように。
「止めてくれ」
いいえ。止めません。
私は、あなたが欲しい。その為なら、あなたの懇願すらも無視します。
私の腕の中で賢明に抵抗する――いいえ。
受け入れるように身をよじるあなたすらも、愛らしい。
私は弱いのです。単純な力でも。
その気になれば、私を引き剥がすくらい、余裕でしょう。
「止めて……」
あなたは顔を伏せました。
その声は小さくなり、もはや聞き取る事もできません。
尻尾を優しくしごきながら、私は耳元で囁きました。愛しています、と。
これまで何度も囁いた言葉です。
これからもきっと、そうでしょう。
しかして、交わる度に交わされる、
交わりの言葉は――たった一つの、特別なのです。
「この場において、私は――ただの虎です」
他に、何者でもない。
あなたに小突かれる、昼行燈でもない。命蓮寺の本尊でもない。
私は今、屏風の虎としてあなたを――食らいます。
そして、あなたはそれを受け入れる。
「覚えていますか。万年の日々の事を。
あなたは私の世話を焼いてくれましたね。
私は――あなたの事を、ずっと想っていました」
あなたと比べれば、私は何の役にも立ちませんでした。
あなたがいなければ、命を繋ぐ事すら出来なかったでしょう。
私に出来る事と言えば、
あなたをいたわる事と――あなたを、愉しませる事だけ。
あなたは私を求めてくれました。
私も、あなたが欲しかったのです。狂おしい程に。
「一生、そうしていたかったかもしれません。
いや、今もそうしたいと思っているかもしれない。
――けれど、私達は袂を分かちました。
己の道を歩み始めました。それを、後悔はしていません」
私は首を振り、あなたの顔を覗き込みました。
「ただ――心だけは、そこに残されていたのかもしれません。
私はそれを振り返り、あなたもそうした。
二人なら、それを拾い上げられる」
優しく、首筋を撫でました。
かつての私、怒りに囚われた私なら、
或いはそれを食い破らんとしたかもしれない。
今も、怒りは私の中に燃え上がっています。
瞳の中に写る、死と絶望の炎。
切っ掛けがあれば、己が身は、
荒ぶり血を求める妖虎に変じるかもしれない。
しかし、私にはそれを御し、整理するだけの時間があった。
それは、あなたのおかげです。
「これまでの万年も、これからの万年も」
あなたの顔を近付け、視線を合わせます。
その目付きは鋭く――しかし、柔らかな光を湛えていました。
私があの日、目覚めてから続くその目は――
きっと、慈悲に満ちているのです。
「あなたがいなければ、私は生きてはいけません」
首を振る私の顔を、あなたの手が撫でました。
頬から首まで、小さな手が、私を確かめました。
「私も――君を知らなければ、
無為の中に消えてしまったかもしれない。
君がいなければ、生きてはいられなかった」
始めて会ったあなたは、毘沙門天の使途だったはずです。
あなたがいつから放逐され――いいえ。
私を監視し続けるようになったのか。
それはあなたにしかわからないのでしょう。
そしてそれは、今も続いている。
「あなたが好きでした。
あなたが好きです。そして――これからも、好き」
前に座った私は、あなたをまさぐり始めました。
あなたはもはや、抵抗しませんでした。
私が握った手を握り返して、息を吐く。
舌なめずりするかのような私の顔を見て、
僅かに身を硬くしたかもしれません。
「あなたと尾を交わし合った日々を、私は忘れません」
交わる。その言葉を聞いたあなたは、顔を伏せましたね。
それは恥ずかしい事なのです。
しかしそれは、私にはとてもとても、素敵な事に思える。
「――私だって、そうさ」
伏せられた顔が、上目遣いでこちらを見ました。
頬は赤く染まり、期待――そうですね。
期待を孕んだ瞳が、私を舐めています。
私はあなたに覆い被さりました。
衣服を脱ぐ時間すらもじれったかったのです。
あなたの背に手を回し、私達は抱き合いました。
「好きです。大好きです」
囁く言葉も、如何にも前のめりでした。
服の間に手を突っ込んで、平坦な胸、
そしてあなたの突起に触れました。指で撫でまわします。
あなたがは一瞬、びくりと身を震わせました。
そしてしばらく、身を震わせます。
指でそれを転がしていると、あなたは息を荒げ始めましたね。
私はそれを引っ張るようにつまみました。
大きなため息が漏れました。
片手でそれを転がしながら、あなたを優しく押し倒します。
ゆっくり。ゆっくりと。
手で促し、自分のそれを片手ずつ転がさせると、
私は――あなたにキスをしました。
「ふあぁ……」
あなたはよくよく感じているようでした。
転がす指が速まりました。
小さく漏れる声は、私にとても、とても喜ばしく、
耳に届いていました。
手を取り、背を向けさせました。
太く立派な尻尾を、私は掴みました。
先よりも大きく、身体が跳ねました。
それを優しくしごきます。
手がそれを撫でるのに合わせ、あなたは身体を震わせています。
「や、やっ、止めて……」
止めろと言われて、止める者は少ないのです。
根元から先端までを、優しく、優しくしごきます。
あなたはここに酷く弱いのだと、私はよく知っています。
あなたが触って欲しがるのも。
あなたは少しばかり、嘘吐きなのです。
そうして欲しいのに、止めろと言う。どうしてでしょう。
「いやっ、嫌だ、嫌だぁ……」
いいえ、本当に嫌がってなどいません。
それなら、あなたはどうして私を拒まないのですか。
幾千、幾万の日々、あなたは滅多に交わりを拒む事はありませんでした。
互いに好きあっていたから?
いいえ。きっと私達は、互いを欲しがってたまらなかったのです。
あなたと私を繋ぐものが、
肉欲だけであったとは思いません。
ただ、それは確かに私達を繋ぐ線の一つだったでしょう。
愛らしくも、恋らしくも、求めあう――
あなたは私の上目遣いで見ました。
あなたは指を静かにしゃぶりました。
それは、合図です。もっと気持ち良くなりたい。
気持ち良くしてほしい。刺激を求める願い。
――欲しいのですね。わかっています。
私は、あなたのスカートをめくりました。
下着に納まらず、膨らんでいるそれを見て――
私は、腹の底が熱くなるのを感じました。
私はスカート越しにそれを握り、しごきます。
ゆっくりと、ゆっくりと。
熱くなったそれが膨らんでいくように感じます。
ゆっくりと、ゆっくりとです。
焦らせば焦らすほど、あなたは興奮するのだと、私は知っているのです。
尻尾がぴん、と立っています。
私はそれを舐めました。二つの刺激。あなたはどう受け取ったでしょう。
あなたは腰をくゆらせ始めました。もっと刺激が欲しいのでしょう。
私はしごくのを止めました。
そう簡単には、してあげません。手を引き、あなたの背中を撫でます。
己の手でしごこうとするのを、手で咎めました。
四つん這いにし、尻を高く上げさせます。
欲しい、欲しいと呟くあなたの声が聞こえます。
「何が欲しいんです?」
私の問いは、きっと意地悪なのです。
けれどもそれは、あなたの中の何かを燃やしたに違いありません。
スカートに手を差し込み、それの先端を撫でました。
ぬるり、とした感触が、指を濡らしました。
「さあ、言ってごらんなさい」
「――もっと、もっとしごいて」
とても情けない声を上げて、あなたは懇願しました。
そこまでされれば、応えない訳にはいきません。
「ええ。良いですよ」
私はスカートを握り直し、あなたのそれを徐々に強くしごき始めました。
先端からどろどろと液体を吐き出すのがわかります。
私の手が濡れてきたからです。あなたは息を吐き――
いいえ。息を吐く余裕など、与えません。
私は手を速めました。びくり、とあなたは身体を震わせました。
「待って、待ってくれ――」
待ちません。私は更に手を速めました。
どろどろがあふれ出てきます。
スカート越しにそれがわかるのですから、
中は大変な事になっているでしょう。
「――出したいですか?」
これは意地悪です。
ここまでされて、止めるなんて選択肢はないでしょう。
流石に、私はそこまで残酷ではありません。
「――出したい、出したい!」
私は、微笑みながらあなたのそれをしごき続けました。
熱い。熱いのです。あなたが――とても熱い。
「ああっ、あああっ……!」
あなたの腕が頭を抱き込んだ瞬間、それはドクドクと震え――
おそらく、あなたの下着やスカート、ベッドを無思慮に穢したでしょう。
しかし、あなたのそれは――
未だ収まりそうにありません。
私の手の中のそれを精を吐き出すのを止めたのは、
幾度目か――いえ、数もわからないほどでした。
あなたは横に倒れ込み、私の方を向きました。
荒い息、垂れたよだれ、涙ぐんだ目が、こちらを見ています。
「どうでした?」
どうもこうもないとは思いますが、いつもこう聞くのです。
それは終わりの合図めいています。
「――凄く、良かったよ」
ぐしゃぐしゃの顔で、あなたは笑いました。
それなら――もっと、良くしてあげなければいけません。
「もう一回、出来ますか?」
「もう限界――と言っても、やるんだろう?」
あなたは、背を向けて座りました。
私はその背に向けて座り、
あなたの――それを、優しく掴みます。
「――する分は、残してくれよ」
わかっています。私は、あなたを握りました。
遠慮はありません。最初から強めにしごきました。
尻尾を掴み、それと同時にしごきます。
あなたは嫌がりませんでした。快楽をただ、受け入れました。
背中がぞくぞく、と動きました。
もっと欲しいのですね。ええ。そうしてあげます。
「も、もう駄目――!!」
スカート越しに限界がわかりました。
私はあなたを強く、強く握り、肩越しに愛を囁きました。
それが最後の防波堤だったのでしょうか。
あなたは再び、大量の精を吐き出したのです。
愛しいそれが、手の中で震えています。
もっと欲しいでしょうか。それとも――?
「もう一回――」
「あと一回だ」
普段、キリッとした風貌からは
想像もつかないような顔をして、あなたは応えました。
ぜえぜえ、と息を整えるあなたに、私は微笑みかけました。
「昔は、七回くらいしましたね」
「あれはちょっとおかしかったんだ」
変なものでも食べたんだろう、と呟くあなたの顔が、愛しい。
私はあなたの前で、そっとズボンを脱ぎました。
そう。あなたがじっ、と見ている前で。
下着を脱いで、下半身を露出させた私は、
四つん這いになり、あなたを誘いました。
あなたは――それを見て、それをしごいていましたね。
熱くなるのが、こちらにも伝わった気がします。
私の底は、もう十分に濡れていました。
あなたの手が、私の腰につきました。
「欲しいかい」
これは意趣返しでしょうか。あなたの声は楽しそうでした。
まるで、主導権を握ったかのような。
「どうでしょう」
私はとぼけました。本当は――あなたが欲しかったのですが。
「じゃあ、してあげないよ」
「いいですよ。させてあげませんから」
あなたはどうやら、頭を抱えていたようですね。
……頭だけではなく、股間のそれも困っていたかもしれませんが
「わかったよ……。私は欲しい。それでいいかい」
「いいですよ。私も欲しいですから」
なんだそれ、と呟きましたが――
やるべき事をすぐに思い出したのでしょう。
あなたの身長では、私には届きません。
あなたは枕を二つ――
あれ、どうして二つあるのでしょうね?――持ち出し、膝に当てました。
「いいかい」
「いいですか」
この確認には、意味がありません。
ただ、互いの共犯関係を試す為とも言えるでしょうか。
自分達は自分勝手によがっているのではない。
あなたの為だ、わたしの為だ。そういう言葉です。
「――君はいつも、私をいじめるな?」
あなたのそれが、私の中を押し退けていきます。
体格に比べてあまりにも大きな、大きなそれは、
私のそれを穿つに十二分でした。
前後運動が始まります。あなたは苦し気に息を吐きました。
二度も果てたのです。疲れ果てているでしょう。
それでもあなたは、してくれるのです。
私の中も、熱くなる一方です。あなたのそれが放つ熱で、灼けてしまうかのように。
――しかし私は、それが心地良いのです。
あなた自身が、欲しかったのです。
きっと艶めかしいだろう、声が漏れます。
あなたも呼吸の間に声が漏れています。
あなたは、私の良い所を見つけるのが、とても、とても上手なのです。
「あなたがっ、好き、です」
今、確かめる事ではありません。
しかし、今しか確かめられないのです。
あなたが最も近くにいる、今しか。
あなたの言葉を、あなたの叫びを、近くから聞く事はできない。
「――好きっ、好きっ――!」
前後運動に、遠慮がなくなってきました。
激しく突き上げられ、呼吸ができません。頭がくらくらします。
私は尻を高く上げ、あなたを誘います。
あなたは立ち上がり、私の腰に身体を激しく打ち付けます。
あなたが欲しい。あなたはここにいる。
ならば、あなたをもっと欲しい。
胎の中に欲しい。胸の中に欲しい。
頭の中に欲しい。心の中に――欲しい。たくさん、欲しい!
あなたが腰砕けになる直前、
あなたが弾ける寸前、私は激しい快楽に溺れました。
瞬間にあふれだした精が、私の中を穢していくのを感じながら、
私は転がり、仰向けに倒れました。
あなたは私の身体に倒れ込み、空気を求めて激しく呼吸を整えていました。
その頭を、胸の間に乗せてあげました。
少しは枕になるでしょう。
あなたは少しだけ、少しだけ落ち着くと――
私の胸に抱き着き、尻尾を尻尾に巻きつけました。
いいですよ。今はあなたのものです。
私は優しく、頭を撫でてあげました。
―――
―――
「スカートがめちゃくちゃだ」
「洗えば取れますよ」
本当に取れるんだろうな、とナズーリンはぼやいていました。
さて、どうでしょうか。
私の頭はふたたび、ぼんやりとしてきました。
何しろ気候が良いのです。
いつも聡明であれればいいのに。
自分でもそうは思いますが、如何にもままならない。
もうそろそろ、己がぼんやりしている事も忘れそうです。
「ところで、腕はもういいのかい」
「腕?――あ、痛っ」
私は片腕を押さえました。そういえば、痛めたんでした。
「――言わなきゃ痛まなかったかもな」
ナズーリンが呆れているのがわかります。
たぶん、そうだと思います。私は単純ですから。
「このままじゃ何処にも行けやしない。
風呂を沸かすから、待っててくれ」
「私がやりますよ」
「窯茹でにされる趣味はない」
ナズーリンはこちらを振り向かず、
外に行ってしまいました。ごもっともです。
私は汚れたシーツを剥がし、
枕も同じように持ち上げ――洗濯する事にしました。
このくらいは私でもできます。
昔はできたのです。やれないはずがありません。
――あっ、いけません。石鹸がそのまま桶に飛び込んで――
「――何をやっているんだ、君は」
ぶくぶくと膨らんだ泡の中から、私は顔を出しました。
「ついでに、私を洗おうとしたんです」
「中々面白い言い訳だな」
苦笑しながらも、水をかけてくれました。
服はびしょ濡れですが、仕方がありません。
「先に入るといい」
ナズーリンは風呂を指しました、が。
私はそうしたくなかったのです。
「一緒に入りましょう」
「――は?」
私は、ナズーリンの腕を掴みました。
そのまま引きずっていきます。
露天風呂――いえ、単に外にあるのですが、
その桶には二人分の隙間がありました。
「いや、私はいい」
「どろどろですよ、ナズーリン」
わかってるよ、とナズーリンはぼやきました。観念したのでしょうか。
おもむろに服を脱ぎ、全裸になりました。私もそれに倣います。
「誰かが覗いていたら、コトだな」
「きっと誰もいませんよ」
そうかな、とあなたは呟きました。そうです、と私は応えました。
私達は風呂に身を沈め、ふふ、と笑い合いました。
◇◆◇◆◇◆
「荷物、取りに来たけどね」
「割って入りづらいな、あれ……」
通常書式に挑戦してみたものの、
140文字縛りの方がやりやすいかもしれない。