今回はエロシーンありで書くので、いつもの方もお楽しみください。
まぁまだエロシーンはなく、次回からですが。
あと良く使う名前の主人公名ですが、今回は別人です。
暗躍する者達
薄暗い室内、椅子に座っているのは銀髪の髪を持つ端正な顔立ちをした青年。
名をメッツァー・ハインケル。このゼーロウ地上前線基地の司令官である。
そんな彼は今、急遽派遣され、荒れ放題であった基地の整備状況をまとめた報告書に目を通していた。
「メッツァー様」
「入れ」
そんな中、扉のノックと共に少女特有の高めの声で名を呼ばれたメッツァーは扉に目を向けることもなく入室を促した。
今この基地に少女と呼べる存在は一人しかおらず、またその少女ならば深く気にする必要はないからである。
「失礼致しますメッツァー様」
メッツァーの声に答えるように扉が開くと栗色の髪を腰の辺りまで伸ばした少女が入室してきた。
綺麗というよりも未だに可愛いといった言葉の方が似合う少女だ。
彼女の名はココノ・アクア。
元、アップルナイツの副団長にして現在この基地の司令官であるメッツァーの副官である少女である。
メッツァーの予想通り彼女は、新たな紙の束を抱えていた。基地の整備状況の報告書であろう。
「マナ貯蔵庫の整備が一足先に終わりました。 こちらの報告書に詳細はまとめてあります」
「……そうか」
ココノの持ってきた報告書の内容にメッツァーは少しだけ渋い顔をすると、読んでいた報告書を投げ捨てるように机へと投げた。
今読んでいたのが丁度前回のマナ貯蔵庫の整備報告書なのである。どうやら貯めておいた中に混ざっていたらしい。
それになんとなく気付きながらも素知らぬ顔でココノは新しい資料をメッツァーに渡した。主の簡単なミスは気にしないが、出来る副官なのである。
「それと先程アクラさんより報告が……」
「そ、報告。 下魔召喚システムの改造が終わったぜ」
資料を渡しに来るだけではなく、他の報告もしようとしたココノだったが、それを遮るように声が響き、いつの間にか開いた扉の所に一人の少年が現れていた。
メッツァーより少し若く、背も小さい黒髪の少年。
黒いローブのようなものを羽織り、下も黒いシャツに黒いズボンという全身黒尽くめ。顔付きも背のように若干幼い印象を受ける。日本では珍しくないが、黒い瞳は異世界ロアでは珍しい色だ。
彼の名はアクラ。
今ココノが報告をしようとした存在であり、人ではなく魔物である上魔の少年である。
「アクラさん! 報告は私がまとめてやっておきますと言ったじゃないですか」
「一段落ついたから休憩がてらだよ。 それに一段落したら伝えようと思ってたことがあってな」
「伝えること?」
アクラはこの地上前線基地にメッツァー達よりも先に着き、地上や基地の様子を調べる任に着いており、既に数週間休みなく働いているため丈夫な上魔であっても少なからず疲労しているはずであったが、その表情はどこか楽しそうであった。
そんなアクラを休ませようとしたココノも怒ろうとしたのを引っ込め不思議そうに見ている。
「本部の連中は功績を上げた俺らに嫉妬してココに飛ばしたみたいだが……そりゃ随分と悪手だったみたいだぜ?」
「どういうことだ?」
メッツァーは司令官としてナイツの捕獲を指揮したことを評価され、その功績を称えてこの基地に配属された扱いになっている。
だが実際はゼーロウの古参の幹部達を差し置いて、若き魔導師であるメッツァーがナイツの捕獲という初の偉業を成し遂げたこと。
しかも褒美にそのナイツの所有権を取ったこと。
それを古参の幹部達が良く思うわけもなく、前線であるロアから外されたことと、この荒れ放題だった基地を見れば功績を称えたことに見せかけた左遷以外何者でもなかった。
メッツァーもアクラから基地の様子を報告され、この左遷任務を早めに終わらせることを考えていたため、アクラの予想外の言葉に疑問を浮かべた。
「まず第一にこの地上界で発達してる科学」
人差し指を立てながらアクラがまず地上にきて驚いたことを示す。
それはアクラからの報告書にもあった魔法とは違う地上独自の技術であった。
馬より早く走る鉄の箱。テレパシーより遠くに確実に音声を伝えるもの。魔法に比べて火力は落ちるが、高速な攻撃を可能とするこの世界の治安維持に勤めるもの達が持つ火薬を撃ち出す鉄の筒。
他にも多数の科学技術が確認されており、その多様性に関してはメッツァーも評価していた。
「条件は多少あるみたいだが、この技術は戦い以外なら、魔法を大きく上回る可能性がある。 つかこれだってロアじゃ高級品だからな」
そう言ってアクラは手元の紙を叩いて感心したように笑った。
今、この基地で使われている報告書は全て地上でアクラが手に入れた紙が使われている。
ロア産の紙は安いのにするとゴワゴワしており、扱い辛いためアクラの提案から全て地上の紙を使うことにしたのだ。そしてそんな紙をアクラはメッツァーに渡すように差し出した。
「あとこいつが実益だ」
「……なんだと」
アクラに渡された下魔召還システムの情報。
メッツァーは元々魔法学の知識が深く、既存の召還システムに改造を施し召還コストを落としていた。
その作業をアクラに頼んでいたのだが、アクラが持ってきた資料には更なる召還コストの減少が記されていた。
今までのアプローチ量から考えてみれば、ここ数週間の成果とは信じられなかった。
「まだまだ科学とやらには理解が足りないけどね。 とりあえず応用出来る所は応用しといた。メッツァーも読むならあとで渡すぜ?」
「……後でな」
魔法学に関しては趣味の部分も入っているため、出来るだけやりたかったが、メッツァーは多忙だ。というより上魔であることを良いことに、徹夜に徹夜を重ねているアクラがおかしいのだ。
「最後に、前任者のアホが急遽撤退した理由が分かったぜ」
「……聞こう」
「そもそもこの基地は、ロアより濃度の高いマナが手に入るから作られた。 ここまでは良いな?」
「あぁ」
魔力の源であるマナ。燃料のような役割を持つマナは、空気中にも含まれる。
だが、地上界の空気中のマナはそれほど多くない。だから魔法学が産まれなかったのだろう。
しかし、何故かこの世界で生まれた人間はマナを大量に持って産まれていた。理解しなければ使えもしないマナをだ。
女神近衛団と戦うためには下魔召喚にせよ、上魔を使役するにせよ魔力がかかる。
だからゼーロウはロアでは原則禁止とされている異世界への移動を行い、地上界と呼ばれるここからマナを補給しようとした。それがこのゼーロウ地上前線基地の存在する理由だ。
そこまではメッツァーも理解している。
「下魔召喚システムの記録からすりゃ結構な量の下魔を召喚してたみたいだが、今はいない。 それは何故か?」
「……まさか」
アクラの言葉でメッツァーが渡された資料を見ると、そこには確かにかなりの量の下魔が召喚された記録がある。
十体ほどならこの世界の治安維持組織に倒されたのも分かるが、百体近ければ話しは別だ。
そんなことを出来るもの、心当たりは一つしかなかった。
「女神近衛団。 奴らがこの地上に居るんだよ」
「奴らが……」
女神近衛団。
ゼーロウの宿敵。
確かにいつか気が付かれる可能性はあっただろうが、女神近衛団は実力は遥かにゼーロウの構成員を上回るが、数が少ない。
だから地上まで手を広げるのは難しいと考えていたが、事実は違うようだった。
しかしそれをアクラが楽しそうに語る理由は分からない。厄介事であるのは確かなのだから。
「不服そうだな。 地上前線基地司令官殿?」
「茶化すな。 結論を言え」
アクラとメッツァーの付き合いは非常に長い。
先ほどから黙って二人のやり取りを聞いているココノよりも遥かに。だからこんな軽口もいつものことだ。
アクラには結論をボカして人をからかう癖があるのだ。
「その女神近衛団な、地上の人間だ。 一応お目付け役はいるみたいだがな」
「なにっ!」
「しかも数が少ない。 お目付け役含めても確認されているのは3人だ」
「…………」
地上の人間だと言うことにも驚いたが、続くアクラの言葉に何を言いたいのか分かったメッツァーは黙り、アクラの言葉を待った。
「勿論、臨時とはいえ、女神近衛団に選ばれたんだ。 その子らも清純な乙女達だぜ?」
「……ふっ」
メッツァーが何故、実力では勝る女神近衛団であるナイツを捕らえられたのか。
それは恥辱により精神的動揺を誘いながら、各個撃破を狙ったからである。
集団には当たらないようにし、分離させた個人の胸や秘所を狙い攻撃する。
効果的ではあったが、女神近衛団からも、味方であるはずのゼーロウからも褒められない戦術だった。
実際に結果として新人とはいえアップルナイツのココノを初陣で捕獲、その後、本体の援護と切り札を使ったとはいえ、女神近衛団第一騎士団エンジェルナイツの団長、フェリセス・レクシアを捕獲したことは素晴らしい実績のはずだが認められてはいなかった。
だが、メッツァーは気にしていない。凡人共に理解されるとは始めから思っていないと、ココノが怒っている時に話していたくらいだ。
「ならやることは一つ、だな」
「あぁそれに、そろそろ良いだろうよ」
アクラの笑みに呼応するように、自らも笑みを浮かべるメッツァー。
だがアクラの思考は、そこで止まらなかった。メッツァーとアクラには目的があるのだ。
「ここ地上界で十分なマナを貯め、3人の魔法戦士を手に入れる……これだけありゃ目指せるさ」
「あぁ……俺の世界を、目指すため」
彼らは素直にゼーロウに従って生涯を終わらせるつもりはない。
何かに支配されることを嫌うメッツァー。
産まれから自由に生きることが出来ないアクラ。
彼らが目指すものはただ一つだ。
「俺が世界の王になり」
「俺はその世界で自由に生きる」
「「俺の世界を創り出す」」
いつもの意志の確認のようにメッツァーとアクラは言葉を合わせる。
幼少期からの夢、願い……野望。
後に銀髪の魔王と呼ばれるメッツァー・ハインケルと、後に黒髪の魔人と呼ばれるアクラの野望が、ここ地上界を飲み込もうとしていた。
「私立国際教導学院の七瀬凛々子に、柚木香那葉か」
「そう。 彼女らはスイートナイツを名乗っている。 七瀬凛々子がスイートリップ。 柚木香那葉がスイートキッスだ」
後日、いい加減休めと言われたアクラは一旦は自室に消えたが、たった一日で戻って来てしまっていた。
ある理由から実戦ではあまり役に立たないアクラは、前準備こそが彼の役割なのだから仕方ないが、酷いワーカーホリックだった。
そして予めまとめてあったのか、新たな女神近衛団の資料を持って来ていた。
今回も実務の一部を担当するココノも一緒だ。
「良く調べがついたな。 前任者の資料はなかったのだろう?」
資料にはスイートナイツの二人のプロフィールから住んでいる場所、性格や行動傾向まで詳しく載っていた。
だが直也の始めの報告では記録や資料らしい資料は全くないと聞いていた。なら数週間でこれを調べたことになる。
だがその言葉に、直也は苦笑して肩を竦めた。
「前任者が無能なだけさ。 下魔を使ってマナ回収ついでに誘き寄せりゃ簡単に正体は分かったよ。 ある程度隠してたけど、まぁ平和なんだろうな」
アクラがやったことは簡単だ。囮を出して自分が観察する。たったそれだけで二人のスイートナイツの正体は分かった。
彼女らは一般人にバレないように隠れて変身をしていたが、監視の目があるとは思っていなかったようだ。
回数は数回で十分だった。あとは尾行と監視で簡単にデータは集まった。
「ただ流石にお目付け役の方は分からなかった。 名前がスイートルージュ。 年齢は多分、前の二人より上ってくらいだな」
「それでも十分だ。 良くやったアクラ」
「おう」
謙遜するアクラにメッツァーはお世辞なく称賛した。
メッツァーは必要でない限り、他人に気遣いやお世辞は言わない。だからアクラも素直に称賛を受け取った。
「……ふむ」
メッツァーがスイートナイツの資料を流し見する。
そして暫く黙っていたメッツァーだが、不意に口を開いた。
「俺はこの二人に接触してみようと思う。 正体を隠してな」
「えっ!?」
「……はぁ」
唐突なメッツァーの言葉にココノは驚き、アクラは頭を抱えながら溜め息を吐いた。
独特の思考回路を持つメッツァーがこういった突拍子もないことを言うのは、極たまにだがあることだった。
「き、危険過ぎます! メッツァー様の身に、もしものことがあったら!」
「この世界はロアに比べれば平和だ。 何より俺がそんなミスをすると思うか?」
「う……それは……思いませんけど」
「んじゃ身分が必要だな。 調べてくる」
「えっ? あ、アクラさん!?」
一度言い出した以上、メッツァーが素直に引き下がることはない。それが分かってるアクラはなりすませる存在を探しに部屋を出ていった。
そんな彼の即断即決について来れなかったココノのアクラを呼ぶ声だけが響いていた。
「メッツァー、いや火村竜人か。 接触に成功したかねぇ……」
スイートナイツと同じ学校に転校予定だった少年と成り代わったメッツァーのことを考えながら、アクラは地上にある元火村竜人の家のソファーに仰向けで転がりながら科学の本で勉強をしていた。
誰かに見られてもアクラは完全に普通の人間の子供の見た目をしているのと服も白いシャツに黒の短パンを履いている普通の少年のため、問題ないと考えて完全にリラックス状態だ。
「アクラさん。 行儀が悪いですよ?」
そんなアクラを叱る声。メッツァーの副官ココノである。
彼女もまた休憩しているためか、普段の服装から地上にいてもおかしくない、帽子も外した青のワンピース姿だ。
「まぁ良いじゃん……ってかまたソレ着てるんだ」
「えっ? そ、それはまぁ……」
アクラに突っ込まれ顔を赤くするココノ。
彼女がこの服を着るのはメッツァーに似合っていると言われたからだが、それをわざわざ指摘されるのは恥ずかしいようだ。
それが分かってるアクラはわざわざ指摘した後にまた目線を外す。自分の状態に突っ込まれたくないため話を逸しただけだ。
「ってだから! 行儀が悪いですって!」
「堅いなぁ……」
アクラとココノの立場は対等だ。一般的には人間であるココノの方が上だが、そんな本人達にとっては些細な問題は関係ない。
お互いがメッツァーを支える存在。それで良いのだ。
だからこそ、ココノは一応敬語だが、非常に気安いやり取りになっている。
「メッツァーが帰ってくるまで待機なんだし、休める時は休むべきだよ?」
「そ、それは……」
ただ根が真面目なココノはいつもアクラに言いくるめられていた。
今回も非常に分が悪い状態だ。
「ふぅ……帰った」
「おっ……おかえり、竜人?」
「お、おかえりなさいませ! メッツァー様!」
そこにメッツァーが帰ってくる。
出迎えにすら間に合わなかったココノは軽くパニックだが、アクラはニヤニヤしたまま横になり、からかうように偽名を呼ぶ。
「茶化すなアクラ。 ココノ、別に出迎えは良い。 一般的な学生、というのはそういうものらしいからな」
「機嫌が良いな。 何か良い発見があったか?」
「あぁ七瀬凛々子、柚木香那葉、両名に接触した」
「早速か。 運が良いな」
学校はロアで生活していたアクラやメッツァーにとってはかなり驚く場所だ。
人が集まり学ぶ場所はあるが、小規模なもので、良いとこ数十人居れば多いくらいだ。
それに対して私立国際教導学院の生徒数は千人近く。その中で偶然ターゲットである凛々子に出会える可能性は高くないと思っていたのだ。
それが二人ともならば、ソファーに座りながらも機嫌良くメッツァーは語っているのも無理はない。
「凛々子はクラスメイト、という奴らしい。 基本的には良い娘だな。 美人の上に面倒見が良い。 それが嫌味にならない人徳もある」
「ほー」
「どうぞ」
メッツァーが語る凛々子の印象を頭に入れながら感心するアクラと、パニックから素早く戻り冷たいお茶を用意して戻ってくるココノ。
「うむ。 柚木の方は美人だが挙動不審、男に対する苦手意識が強いようだ。 凛々子とは親友、あの様子だとナイツになる前からだろうな」
ココノの用意したお茶で喉を潤しながら、メッツァーは続きを語る。あくまで一般人としての視点から見た感想のようで有益そうな情報は少ない。
「それと、前任者の支配を離れていた下魔がいた」
「えっ!? だ、大丈夫なんですか!?」
「あぁ。 むしろおかげでナイツの実力を見させて貰った」
心配するココノに対して、メッツァーは腕を組みニヤリと笑う。
トラブルでも利用する。それがメッツァーだ。
「アレは本物のナイツだ。 実力だけなら正規の近衛団並の実力だな。 下魔では物の数にならん。 一撃だ」
「うちの制御してる奴らなら多少は相手になるだろうが……まぁ普通に倒すのは難しそうだな」
下魔を一撃で倒せる実力があると聞き、アクラが面倒そうに表情を歪める。
下魔とて決して弱くはない。一流の魔道士なら普通に倒せるが、二流の魔道士や普通の兵なら十分に脅威なる。
一対一とはいえ、それを一撃な時点で、本当に近衛団並の実力があるのだろう。
メッツァーの陣営だけで近衛団級の相手を最低でも二人。お目付け役も居るなら最悪、三人倒す必要があるのだ。
アクラが面倒そうにするのも仕方ない。
しかしメッツァーは違った。
「だがナイツ、スイートナイツの連中はまだまだ未熟だ。 今ならば、勝てる」
実際に会ったメッツァーの印象はこれなら勝てるというものだった。実力は確かに高い。しかし戦士としての心が伴ってはいない。
この平和な世界ならば仕方ないのだろうが、所詮普通の少女に過ぎないのだ。
「ココノ、アクラ」
「はいっ」
「……了解。 作戦はいつものか?」
メッツァーが名前を呼ぶと一気に二人が雰囲気を変える。休暇は終わりだ。
そう、ここから始まるのだスイートナイツ陥落作戦が。
どの編が面白かった?
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スイートナイツ編
-
プリンセスティア編
-
スイートナイツ2編
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シンフォニックナイツ編
-
レムティアナイツ編