久しぶりの更新ながら、今回はエロなし回です。
読者視点では分かっていた話しと今後の伏線や設定についての説明回なので、スルーでも構わない回です。
興味のある方はどうぞ。
「ロアの動きはどうだ?」
ティアナの調教は順調に進んでいる。しかしゼーロウを離れるつもりのメッツァー陣営としてはそれだけを気にしていられるわけではなかった。
女神近衛騎士団とゼーロウの争い。この経過はとても大切なものだ。どちらが圧勝したとしてもメッツァー陣営にとっては強大な敵になるのだから。
「では、まず私から。 ゼーロウは各地の砦に戦力を集めています。 前線基地に尖兵として置かれている兵も集められ、決戦に備えてるみたいです」
ココノがメッツァーに言われ集めていた情報は両陣営の大まかな動きだ。
闇社会の組織とはいえ、ゼーロウには国を相手取るだけの戦力がある巨大組織だ。そこが兵を動かせば、少数でない限り必ずどこかしらで情報が漏れ出す。
それを収集し、整理したのがメッツァーにも渡されているココノが作った資料だった。
「やはり本気でやり合うつもりか」
「女神近衛騎士団も流石にティアナ姫を襲撃されたなら本気になるってわけだな」
「お互いかなり熱くなっています。 決戦は近いかと」
砦などまで持つゼーロウを、何故今まで女神近衛騎士団は放置していたのか。その理由は簡単だ。
ゼーロウを滅ぼすには、圧倒的に女神近衛騎士団は数が足りないのだ。
一人一人は非常に強い魔法戦士達だが、魔界から魔族を召喚し、使役するゼーロウの軍と戦うにはあまりに少数過ぎた。倒せたとしても召喚者を捕らえるまで至らない。その可能性を考えると、中々手が出せなかったのだ。
しかし今回、王族の避難通路から、王族を襲ったとなれば流石に採算度外視をしてもゼーロウを潰しに来るのは明確だ。それに素直に潰されるゼーロウではない。
彼らにとっては魔法戦士は魔法学の研究に邪魔な存在。決戦は時間の問題だった。
「あ〜こっちの報告も関係してるから混ぜて貰うぜ。 魔界に一時帰還して貰っているサキュバスからの報告だ」
そんな報告の途中、思い出したとばかりに虚空から書類を出したアクラは、メッツァーとココノに書類を渡して、自らも開く。
そう、事態はもっと深刻な問題が発生していた。 ロアもゼーロウも知らない。上魔と深い関係にあるメッツァー陣営だからこそ知った内容だ。
「あんなんでも魔界の王が不在になってか30年近く、まぁ良く持ったほうだと思うよ。 魔界で
「っ……やはりか」
「え……?」
まだ資料を開こうとしていたメッツァーが苦い表情をし、ココノが呆然とする。
この調査に関しては、メッツァー陣営というより、アクラが単独で行っていたもののため、ココノは詳細を知らなかったのだ。
知っていたアクラもメッツァーも本当に困ったような表情をしているので、ココノが呆然とするのも無理はない。
「ど、どういうことですか!?」
「ココノには伝えてなかったけどね、魔界にも国みたいなものはあるのさ。 決して文化的、とは言い難いけどね」
そこから始まった魔界の説明は簡単にまとめるとこんな感じであった。
国と言うよりは部族のようなものの集まりがあること。
その部族同士は元より争いが絶えないが、普段は大規模な戦いにはならないこと。
それは争いによって隙が出来て、他の部族に出し抜かれる可能性があるからである。
故に魔界全土は所謂冷戦状態になっていた。
しかし、最近その状態が崩れてきているのだ。
「……今まではどうやってその戦争は止まっていたんですか?」
そこまで聞いた所で、優秀なココノはこの問題の自分達に関わる理由に気付いた。
そしてその解決方法も予想はついたが、それを確かめるためアクラに問いかける。
「ふふっ、強大な魔族が魔界全土を支配して終わりさ。 触手王、獣王、仮面王、暴王。 全て魔王って呼ばれる魔界の支配者に君臨した魔族だ」
ココノの優秀さは今に始まったことではないが、相変わらず驚かされると、小さく笑いながらもアクラは根底となる問題へと話を移していく。
並べていく魔王達の通称に、ココノの優秀さを当然だと何故か誇らしげにしていたメッツァーが少しだけ反応し、ココノが真剣に細めていた目を丸くする。
「暴王って、あの暴王テンペスト……ですか?」
「そっ。 その暴王テンペスト」
暴王テンペスト。
その名をロアで知らないものはいない。30年ほど前、まだゼーロウもそこまで台頭していなかった頃、たった一人の上魔がロアに宣戦布告してきた。
その上魔の名が暴王テンペストなのである。
たった一人ながら、その力は凄まじく、当時の女王候補グロリアの妹、第二王女サリア率いる女神近衛騎士団約100名。
その全てを犠牲にして相打ちになったとされる強大な上魔だ。
その時の被害があり女神近衛騎士団の力が削がれたのが、数々の闇組織の誕生に一役買ったとすら言われている。
「なにもアイツが暴れていたのはロアだけじゃあない。 他人の力を吸収して自らの力にするのが得意だったアイツは、魔族も餌にしていたんだ。 魔王になる可能性のあるような力を持つ魔族を皆殺しにしたからこそ、アイツが暴王って呼ばれるようになった理由だからな」
「…………?」
「…………」
暴王テンペストについて話すアクラには、どこか違和感を感じさせられた。アクラも生まれてから30年は経っていないはずなのに、まるで
しかしそれに疑問を思いながらも、今の話には関係ないためココノは何も言わず、メッツァーは何かを考えるように黙っている。
「まぁそのせいで今の魔界には魔王になるような一歩抜けてるような奴はいない。 この戦争は長引く……それが故に」
「魔界の闘争に敗れたものや、嫌気がさしたものが人界に進出してくる可能性がある」
「っ……」
アクラとメッツァーの見解に予想はしていながらもココノが息を呑む。
敗者や嫌気がさしたものとはいえ、その場合来るのは制御されていない上魔だ。並の魔道士や半人前の魔法戦士では歯が立たない。しかも魔界全土ともなればどれだけの数が来るかすら分からないのだ。
それは女神近衛騎士団とゼーロウの全面戦争すら可愛く見えるほどの人界全体の危機だった。
「幸い人界に来る技術はあまり発展していない。 来れても数ヶ月に一回、1、2体が良いとこだろうし、それも数年先だろうな。 魔界に比べればマナの薄い人界に留まろうとする魔族はかなりの変わり者しかいないし。
「それまでに我々がロアを掌握するか、地上を手に入れていれば交渉の余地もある。 時間との勝負になってきたと言うことだ」
「つまり……始めるんですね?」
上魔であるアクラの適切な見解。例えどんなことがあろうともブレることのないメッツァーの野望への意思。
それを受け取ったココノは、姿勢を正して真剣な表情で問いかける。
「あぁティアナを堕とすぞ」
そうどれほどの危機と言えどもメッツァーがやることには変わりはない。ティアナを陥落し、いずれはゼーロウ、女神近衛騎士団も全て潰し、ここ地上を含めた全ての世界を統べる王となる。
例え魔族が手を出そうと、仮に他の世界のものと争うことになろうとも、その野望を諦めるつもりはない。
その強い意思こそがメッツァー・ハインケルの最大の
「アクラ。 次回の出撃の際はもはや手加減はいらん。 最悪殺しても良い。 エレニスを止めろ」
「了解」
「ココノ。 特異下魔の調整は終わっているな?」
「はい! いつでも出撃出来ます!」
メッツァーの言葉で先程までは不安さすらあった会議がどんどん進んでいく。
もはや迷いはない。アクラもココノもメッツァーについていくと決めているのだ。
そして、次の日、作戦は決行された。
「ぐ……は……!?」
「ふぅ……悪いね。 これも俺らの野望のためなんだ」
今までに使って来なかった上魔アクラの戦闘方法。
一見普通の人型であるアクラの体からいきなり生えた触手に腹を打たれ、勢い良く地面を転がっていってしまうエレニス。
予想外の上に魔法障壁を貫通することに特化したこの攻撃は、生身のエレニスのボディに見事突き刺さり、バカにならないダメージを与えていた。
「ゴホッ! 貴様……こんな、ことが……!」
魔法戦士の高い防御力の秘密はその非常に強靭な魔法障壁と、痛みの鈍化にある。
普段、拘束し、無力化して、殺すわけではなく、凌辱するのは、別に上魔達の趣味というだけではない。
彼女らを守る魔法障壁は、上魔といえでも簡単には破れない。故に魔法障壁の上からダメージを重ねていくか、凌辱といった形で魔法戦士そのものを弱らせて、魔法戦士としての力を失わせてから殺すのだ。
だが、今アクラがやったのはそのどちらでもない。
魔法障壁自体の突破。これはアクラという上魔が使える切り札のようなものだ。
一部の上魔が出来るように、魔法障壁そのものを破壊するようなやり方ではないが、一時的に突破し、生身に一撃を加えることが出来る。
破壊するよりも遥かに燃費が良く、無力化するならばむしろこの方が良いとも言えるほどの能力だ。
実際にはデメリットもありはするが、それを感じさせないアクラのやり方の勝ちだ。
「ぐ……ぅ……」
生身への上魔の一撃。それは女神近衛団第一騎士団エンジェルナイツの副長であるエレニスさえ、いや彼女ほど強いからこそ味わったことがないダメージだった。
魔法障壁は勿論その魔法戦士が優秀ならば優秀なだけ強固なものになる。非常に弱い魔法戦士ならばともかく、生まれからエリートのエレニスが魔法障壁を突破されたことなど、あるわけがないのだ。
あのエレニスが、一撃で戦斧を杖のようにしなければ立ち上がれないほどのダメージを負っていた。
上魔であるアクラの前に居るにはあまりに酷い隙だ。
「次に会う時は……また快楽を教えてあげるよ」
「が!?……ああぁああぁあああぁぁ!?」
頭を掴まれ、地面に叩きつけられると同時に魔力により意識を失うよう脳に負荷がかかる。
乱暴だが、痺れさせたり眠らせるよう効率的な方法だ。
エレニスの意識が一気に暗転していく。
(申し訳……あり……ま……逃げ……て……ティ……アナさ……)
意識を失うエレニスが最後に思ったのは、捕まってしまっている誰よりも大切なはずだった姉ではなく、身分の離れた自分にさえ、優しく接してくれる素晴らしいお方であったティアナの顔だった。
自分が思っていたより、遥かにティアナを大切にしていたことに気付いたエレニスは、小さく一筋の涙を流し、女神にティアナの無事を祈りながら気絶した。
「任務完了。 エレニスの回収を頼む」
『はいっ! アクラさんも帰還してください!』
いつになく真剣に報告したアクラにココノが明るく返す。その様子ならメッツァーも大丈夫そうだなと考えながら最後にエレニスを一瞥したアクラは、基地へと転移した。
あとの仕事はアクラの仕事ではない。
そしてアクラの予想通り、メッツァーの方も勝負が決まっていた。
これまでの戦いから考えて、何者の援護もなくティアナがメッツァーに勝てることはなかったのだ。
「ここ……は……」
気絶させられたティアナが目を覚ましたのは見覚えのない部屋だった。
一面金属のようなもので覆われた、不思議な部屋。
ティアナはそこの床に投げ出されるように寝かされていたのだ。
「……これは」
ゆっくりと身を起こしたティアナが、金属の壁に触れる。
そして魔法学にはそこまで精通していないティアナでもソレは分かった。この壁は普通の壁ではない。
何らかの魔法が仕込まれた壁だ。ティアナが魔法学に精通していれば、もしかしたら分かったかもしれないが、何の魔法が仕込まれているかまでは分からなかった。
(私は……遂に捕まってしまったのですね。 すみません……エレニス)
むしろ何故今まで逃されていたのかという考えは頭をよぎったが、何より初めにティアナが思ったのはエレニスへの謝罪の気持ちだった。
偉大な母に比べてただの少女でしかない自分を姫と呼び、真剣に守ろうとしてくれたエレニス。
自分が捕まったと聞けば、とても悲しむだろう。そう思っての謝罪だ。
しかしエレニスにその気持ちは届くことはない。 エレニスがティアナより先に捕まっているなど、ティアナは知る由もないのだから仕方ないのだが。
『お目覚めかな? ティアナ姫』
「メッツァー! え……?」
突如響いた声に、流石に敵意を隠すことなくティアナが聞こえた方を睨むように振り向く。
しかしその目が捉えた魔導モニターの映像に映し出されたものに、ティアナは目を驚愕に見開く。
「う、そ……です、よね……」
ティアナの中にも疑念はあった。それでも信じたくはない。
ティアナの中でメッツァーは悪だ。ティアナを凌辱し、辱め、ゼーロウに加担する紛れもない悪だ。
だから、信じたくはない。彼の正体が、メッツァーであることなど。
「
『改めて初めましてだなティアナ。 俺がメッツァー・ハインケル。 お前の敵だ』
認識阻害の魔法がかかった仮面を外したメッツァーが、恋煩いをしていた人物、
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