※この作品はR-18です。

銀髪の魔王と黒髪の魔人   作:ムマ・N

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書けちゃったし、エロなし回だし良いかな?って気持ちで今日も更新です。
プリンセスティア編ラスト。
次回よりスイートナイツ2編が始まります。
一周くらい開けるかも?
では、どうぞ。


歴史の真実

 

 しかし勝ちは予想外の所から覆されることとなる。

 いきなりモニターのメッツァーの方にアラートが鳴り始めたのだ。そこまで勝ち誇っていたメッツァーの顔が驚きに染まる。

 

「何事だ!」

 

『メッツァー様!侵入者です!地上の入口からは女神近衛騎士団が、それとほぼ同時に転送装置からゼーロウが現れました!』

 

「なんだと!?ちっ!」

 

 最悪のタイミングでの襲撃。だが内容としては最悪に近いためティアナに構っている暇はなくなった。

 モニターを切り、指揮の方に集中する。

 

(同時襲撃が偶然起こるわけがない。そしてそれにしても襲撃が早すぎる)

 

 ティアナを攫ったのは昨日だ。そこからゼーロウに報告もしていないためあと数日の猶予はあるはずだった。

 監視の上魔も今は居ないことをチェックしてるからこそ実行したのだ。バレるはずはなかった。

 

(そうなると……学園に誰か他に侵入者が?それなら説明もつく)

 

 可能性としてはそれだった。

 女神近衛騎士団はエレニスだけなのは確定していたが、ゼーロウ側が同じく潜入している可能性は考えていなかった。

 誇り高いと自称するゼーロウの魔道士が潜入してくる可能性は限りなく0だったが、こうなってはその可能性が高い。

 学園でのティアナの不在からメッツァーがティアナを手に入れたのを察知し、女神近衛騎士団に情報を流してこちらの混乱を誘ったのだ。

 事実片方だけならともかく、女神近衛騎士団とゼーロウ。そのどちらも同時に相手する戦力は今のメッツァー陣営にはない。計られたのだ。

 だが、メッツァーは冷静だった。

 

「ココノ、聖涙石のデータは取れているな?」

 

『はいっ!もうまとめてあります!』

 

「分かった。ではこの基地を放棄する!」

 

 元よりティアナを手に入れ、ゼーロウに反旗を翻す時には捨てるつもりだった基地だ。ある程度撤収の準備はしてある。

 必要なのは今取っていたティアナの聖涙石のデータ。

 メッツァーはティアナを堕としながらきちんとデータを取っていたのだ。

 例えティアナが拒否したり、今回のようなことがあっても無駄にしないためだ。

 

『ティアナとエレニスはどうする?』

 

「残念だが置いていくしかないな。連れて行く余裕は上にギリギリで裏切られては困る」

 

「だよな」

 

 勿論アクラも聞いていたのか、メッツァーとココノの念話に入ってくる。

 話題はティアナ達のことだ。その質問にも迷うことなくメッツァーは答える。

 ティアナは堕ちる直前だったが、それは希望がないからだ。今の状況ではまだ裏切る可能性が高い。

 アクラも予想していたのか、返答に迷いはない。

 

『なら、メッツァー達は先に行っててくれ。俺はせめてティアナだけでも女神近衛騎士団に渡してくる』

 

「……なに?」

 

 しかし続くアクラの言葉にはメッツァーは驚きを隠せなかった。

 理由は分からなくはないが、ティアナとの接触を避けていたアクラから言われるとは思っていなかったのだ。

 

『位置的にエレニスは仕方ないにせよ。ティアナまでゼーロウにみすみす渡すわけにはいかねぇからな』

 

「……分かった。後は頼むぞアクラ」

 

『了解。ココノ、メッツァーを頼む!』

 

『はいっ!アクラさんも気を付けて!』

 

 アクラの言う理由だけではないのは、メッツァーは何となく察している。しかしアクラが言わないならばメッツァーは無理に聞き出そうとはしない。

 今は言う必要がないとアクラが判断しているなら、それを無下にはしないのだ。

 そして念話が切れたのを感じると、メッツァーはココノと共に撤収と時間稼ぎの指揮を取り始めた。

 

「きゃあ!?ちょ!は、離してください!」

 

「だから説明してる暇はないんだって!」

 

 一方、メッツァーとの会話が終わったアクラはティアナの監禁場所に走り、壁をぶち破ってティアナを肉の塊から引き剥がしていた。

 呆気に取られていたティアナも、ほぼ全裸でアクラにお姫様抱っこで抱き上げられては悲鳴を上げていた。

 

「いやぁああ!!見ちゃダメです!!」

 

「大丈夫だって!俺しか見てないし!」

 

 ティアナが顔を真っ赤にして叫ぶが、アクラは全く聞いていない。

 ティアナが叫んでいる間に、アクラはティアナを抱えて廊下を走り抜けていく。

 

「とりあえずここまでくればゼーロウの奴等には見つからないかな……」

 

「……なんで助けてくれたんですか?」

 

 やっと走りを緩やかにしてくれたアクラにティアナが問いかける。

 ティアナがビクともしなかった肉の塊を容赦なく引き剥がした所からアクラが見た目通りの人間ではないことは分かる。

 そして男が故に女神近衛騎士団でないのも確かだ。

 そうなると魔道士か、上魔。

 どちらもティアナの味方ではないはずだった。

 しかもアクラの言葉を信じるならばゼーロウですらない。ティアナが混乱するのも無理はない。

 

「んー?折角メッツァーが頑張って捕まえたティアナをゼーロウに渡すのが嫌だった……かな?」

 

「それだけですか?」

 

「他にも理由はあるけど……時間ないんだよな」

 

 実はアクラにはメッツァー達にも隠している用事がティアナにある。

 しかし上手く説明しなければならないため本当にやるか悩んでいた。

 だが、悩んでる時間もない。やるしかないのだ。

 

「……ティアナ。そいつを持ってくれ」

 

「これは……髪?」

 

 空間魔法でアクラが出し、ティアナの手にあるのは真紅の髪の束だった。量は多くないが、リボンで止められ、大切にされているのは分かる。

 

「そいつを王家で葬ってくれ。そうしてくれるって約束してくれれば、必ずティアナを無事に逃してみせる」

 

「……分かりました。でも、聞かせてください。これはどなたのものですか?」

 

 アクラの提案に少しだけ考えるも、ティアナはしっかりと頷いた。だがティアナもただ受けてくれたわけではない。

 やはりアクラの予想通り聞かれてしまった。

 

「……俺の母。サリアのものだ」

 

「えっ?サリア……それに真紅の……まさか!?」

 

「そう。きみの母親、クイーングロリアの妹。きみの伯母さんの髪だよ」

 

「そんな……それじゃあ貴方は……」

 

「俺はきみの従兄妹ってことになるな」

 

 いきなり言われた信じ難い言葉。しかしティアナには分かる。

 少しだけ髪に残っているのだ。トランシルヴェール王家特有の魔力が。

 

「サリア様は……暴王テンペストと相討ちになったはずじゃ……」

 

「きみの母親、クイーングロリアはそう発表したらしいね。しかし真実は違う。手傷は負わせたけど女神近衛騎士団は、テンペストに負けたんだよ。全滅だ」

 

「…………」

 

「そしてその時に母さんは死んだ……表向きにはそういうことになった。でも本当は母さんはテンペストに攫われていたんだ。テンペストの目的のためにね」

 

「そんな……」

 

 アクラから語られることに真実。

 それは到底信じ難いこと。しかしティアナは頭が良い。

 だからこの話が嘘じゃない可能性が分かってしまった。

 しかしまだ信じ切れてはいない。それが分かっているアクラも走りながら話を続ける。

 

「テンペストには特殊な能力があった。他者を孕ませ子供を作ることにより、その子供に乗り移り新たなテンペストになる。手傷を負ったテンペストは母さんに自分の子を孕ませようと考えたんだ」

 

「そんなことが……可能なのですか?」

 

「可能だ。実際にやった。その結果生まれたのが俺だ。俺はテンペストの生まれ変わり……だが、俺はテンペストじゃない。奴の能力には一個だけ欠点があったんだ」

 

「……それは?」

 

「名前だ。名前無き無垢な存在にしかテンペストは宿れない。だからテンペストは普段はすぐに乗り移る。だが、母さんの魔法戦士としての力が強すぎたのか、俺はかなり未熟に生まれた。仕方なくテンペストは、母さんに俺を育てさせ、そしてテンペストの能力の秘密を知った母さんは俺にこっそり名前を付けた」

 

「……その名は?」

 

「……ア(・)ク(・)ラ(・)だ。自由の女神、アウラを捩った俺の名前だ。俺はアクラとしてこの世に生まれてきた。確かに俺はテンペストの生まれ変わりだ。だが、それ以上に母さんの息子、アクラだ」

 

「…………」

 

 アクラの独白にティアナは黙り込む。

 アクラの表情に嘘はない。そしてこの髪がある以上、結(・)末(・)も分かってしまったからだ。

 

「結局名前を付けたのがバレて母さんはテンペストに殺された。俺はその隙を付いて逆にアイツを食らってやったけどね」

 

「……それで、この髪を?」

 

「そうだ。この髪は母さんが俺にくれた形見だ。母さんは最後に自由に生きろと言ってくれた。そんな優しい母さんをきちんと葬ってやりたい。だから頼む。母さんを安らかにしてやってくれ」

 

「……分かりました。お任せください。このティアナ・リリアン・トランシルヴェール。必ずサリア様の墓前に……」

 

 ティアナはアクラから渡された赤い髪の束を胸に抱き締める。

 そして優しく力強く宣言した。

 

「ありがとう。ティアナ」

 

「あの……アクラさん」

 

「ん?」

 

 お礼を言うアクラに、ティアナは少しばかり真剣な表情を向ける。

 アクラの方は緊張感のないものだったが、きちんと聞いてはいるようだ。

 

「私と……行きませんか?」

 

「そりゃ無理だ。俺の存在は王家にとっちゃ爆弾みたいなもんだ。グロリアに消されるよ」

 

「……失言でした。すみません、忘れてください」

 

 アクラの苦笑混じりの拒否に、ティアナは悲しげに目を伏せる。

 事実女神近衛騎士団が完膚なきまでに破れた事実の証明であるアクラを現女王であり、自らの母であるグロリアが存在を許すわけはない。

 それを指摘されて、考えなしに言ってしまったことを恥じているのだ。

 

「気にすんな。それに……」

 

「っ!」

 

「俺はメッツァーの仲間だ。キミ達とは敵。俺(・)は(・)メ(・)ッ(・)ツ(・)ァ(・)ー(・)の(・)野(・)望(・)の(・)た(・)め(・)、メ(・)ッ(・)ツ(・)ァ(・)ー(・)は(・)俺(・)の(・)自(・)由(・)の(・)た(・)め(・)。キミ達と戦う」

 

「そう……ですよね……」

 

 アクラの言葉にティアナが俯く。

 アクラはメッツァーの配下。

 アクラがティアナを助けた理由もメッツァーの野望のためだ。

 勿論、母の髪を託したかったのもあるだろうが、メインはメッツァーのためだろう。

 そう言いたげな言葉と雰囲気だった。

 

「さぁお別れの時間だ。そこを真っ直ぐ行けば女神近衛騎士団に合流出来るだろうよ」

 

「……ありがとう……ございます」

 

 これから助かるというのにティアナは浮かない表情だった。

 メッツァーは想い人。しかもこの騒ぎがなければ服従を誓ってしまったかもしれない相手。

 アクラはティアナの母、グロリアの事実上の犠牲者だ。

 そんな二人とこれから先、戦うことになるのだから浮かない表情になるのも仕方ない。

 

「まっ俺としてはまた負けたら素直にメッツァーの性奴隷になってくれ。案外、ティアナを気に入ってたぜ?あいつ」

 

「なっ!?そ、そんなことは……」

 

 アクラの本気も混ざってるであろう軽口にティアナが頬を染める。

 すぐに反論出来ない辺り、本当に堕ちる寸前だったのだろう。

 

「ハハッ!またなティアナ!それは餞別だ!」

 

「え?わぷっ!?」

 

 そう言ってアクラはティアナを降ろすと、全裸のティアナが最低限隠せるように着ていた黒いローブを投げ付けてくる。

 急に投げ付けられ、広がったローブが頭にかかってしまい小さくティアナの悲鳴が上がる。

 しかしアクラはそのまま走り去ってしまった。

 後に残されたティアナがローブを取った時にはもうアクラはいない。まるで夢でも見ていたかのようにアクラは消えた。

 手にしたローブと真紅の髪だけが、その存在を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、メッツァー地上前線基地は女神近衛騎士団とゼーロウの戦いで壊滅することになる。

 しかしメッツァー陣営は速やかに基地を放棄。ロアにあった自らの基地へと撤退した。

 こうして、ティアナを巡る戦いは終結したのだ。

 これが新(・)た(・)な(・)戦(・)い(・)の始まりであることは……まだ誰も知らない。

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