一応番外編第一弾です。
時系列的にはスイートナイツ2編最終回から、シンフォニックナイツ編が始まるまでのお話です。
今回はエロなしですが、番外編シリーズでもエロありは予定しています。
番外編は多くても一月に一回予定ですね。
では、どうぞ。
奴との出会い?
凛々子はそんなことが気になるのか……なに?ココノもか。
まぁ構わん。敵ならともかく、お前達に隠すことでもないからな。
奴、アクラと出会ったのは俺がまだロアのスラムに暮らしていた頃だ。
同じくスラムに捨てられた餓鬼共の中にあいつはいた。
どいつもこいつも、いや俺自身でさえ死んだような目をしていた中で、アクラだけは違った。
表情こそ今とは似つかわん無表情だったが、奴の瞳には知性と何か燃えるようなものがあった。
それが何だったのか、聞いたのは大分後だったがな。
別に仲間意識があったわけじゃないが、俺を含めた餓鬼共にはある種の連帯感は存在した。
だが、それから一番外れていたのがアクラだ。
まぁ色々仕方なかったんだろうがな。
俺はその頃、仲間にメッツと呼ばれ使い走りにされていたが、アクラはその使い走りだけは手伝ってくれていた。
お前は弱いから手伝ってやるなんて言われて喧嘩になったこともあるが、まぁあの中でアクラと仲が良いと言えたのは唯一俺だけだろう。
あとは……まぁ俺に懐いていた女もアクラに懐いていたが……それは今回関係ないから省くぞ。
色々あって餓鬼共が解散した後、俺はある魔道士の老婆に拾われて一緒に暮らしていた。
それからは暫くアクラとは会っていなかったが……老婆が流行り病で死に、ココノと出会った頃、俺はあるスラムをまとめていたチンピラ共と揉めてな。
その頃から老婆に魔法を教わっていた俺はチンピラ共なぞに負けはしなかったが、奴らはただのチンピラではなく、組織のように構成された連中だった。
あの頃はまだ組織、という規模が違う存在を甘く見ていたんだ。
夜襲に備え、毎日寝床を変え、食い物を食ってる時も、道を歩いている時も襲われた。
毎回迎撃はしていたが、今ならともかく餓鬼の体力なんてもんは限られているからな。限界はすぐに来た。
そんな時、俺以外にそいつらとモメてる奴が居ると小耳に挟んでな。
一か八かになるが、そいつと協力することにした。
そして、それがアクラとの再会だった。
アクラもそいつらとモメていて、俺のように魔力は使えるが、理由があって全力は出せないというアクラに俺は協力を要請した。
アクラならば知っているし、裏切る可能性も低い……いや、あの頃はまだそこまでは考えていなかったか。
そこをアクラに指摘され、俺らは協力者ではなく共同体となることになった。
俺の望みはあいつの望み。あいつの望みは俺の望み。
穴がないわけではないが、俺らにとっては切っても切れない関係となった。
アクラと協力した俺は短期決戦でチンピラ共のボスを始末し、スラム街の新しいボスに君臨した。
チンピラ共にきちんとしたルールを教え込み、居場所を手に入れた……はずだった。
ココノは知ってるだろうが、あの頃、女神近衛騎士団によるスラムの撤廃が計画されていた。
結局未だに全てが完了したわけじゃないみたいだが、その第一目標となったのが俺らが制圧したスラムだった。
俺らとモメていた前任者どもが派手にやり過ぎて目を付けられていたんだ。
正義を掲げるあいつらが好きでやっていたわけじゃないのは分かっていたが、あのババァ……いや、なんでもない。
女神近衛騎士団が相手じゃあ俺らには分が悪い。
俺はトランシルヴェール王家に恨みを重ねながらアクラと共にスラムから撤退した。
捕まらずに済んだのはかなり運が絡んでいただろうがな。
そしてその果てに俺らはゼーロウの幹部、リヒャルトの奴に拾われ、奴の養子となり名を今のものへと改めた。
そこで初めてアクラが魔族だということを聞かされたな。
その後は……まぁ面白みのない話ばかりだ。
バカなゼーロウの兵士どもの鼻っ面をへし折ったり、奴の下でアクラと共に様々なことを学んだりとな。
関係ない話を含めれば少し長く話し過ぎたな。
さぁ話は終わりだ。
二人とも仕事に戻れ。
メッツァーとの?
あー多少は聞いてるんだ。
じゃあ作業合間に補足くらいはしとこうかな。
メッツァーがまだメッツって呼ばれてた頃、俺らはスラムの子供の集団の一員だったのは聞いてるよな?
あの頃のメッツァーは……子供って考えても小さくてガリガリでな。
ぶっちゃけ、すぐに死にそうで目が離せなかったんだよ。
だけどメッツァーはあの頃から頭が良くてな。
マルチタスク、思考をしながら他のことが出来る能力に長けてて、使い走りになりながらも役立ってた。
けど、あの頃のメッツァーは……まだ気弱だったな。
スラムの餓鬼ってのは、どうしても目が死にがちでな。メッツァーも例外じゃなかった。
いつかこいつも死ぬのかなって思ってたんだが……ある日から変わった。
名前は……最後まで分からなかった子なんだけどな。
メッツァーをメッって呼ぶ、知恵遅れの女の子がいてな。
俺もアクなんて呼ばれてたけど、メッツァーへの懐き方が凄くてな。いつでも目を向けるとメッツァーにくっついてたもんだ。
だが、あの子は流行り病にかかっちまってね。
俺はあの頃から賢かったし、メッツァーも頭は良かったが、薬剤知識や薬を手に入れる方法はなかった。
足掻きに足掻いて……結局、あの子は死んじまったんだよ。
あの日からメッツァーの目が変わった。
無気力だった死んだような目から何者にも屈しない。世界を自分の思う通りに変えてやる。そんな意志の炎が宿って目に変わったんだ。
その炎に、ただ生きるのが目的だった俺も影響されてな。
実はメッツァーに気付かれないよう付けてたんだ。
あの魔道士のバァさんとの生活も。別れも。独り立ちも。
女神近衛騎士団の詰め所にメッツァーが知らずに忍び込んだ時は肝を冷やしたよ。
まぁ……そのへんはココノの方が詳しいだろうから、ふふっ省くよ。
スラムの時はまぁあんまり補足することも……ん?メッツァーとの約束の話?
あーそもそもなんでメッツァーに入れ込んだのかって辺りか。
んー……まぁ難しい話じゃないよ。
一目惚れ……かな?恋愛的な意味じゃねぇよ?勿論。
なんつーか……あっこいつとなら一緒に生きられる気がするってのをあの瞳から感じたんだよ。
そういう勘は俺、すげぇ大事にするからさ。
まぁそれは良いんだよ。
リヒャルトに拾われた時……あぁあいつ、そこ省いたんだ。
シンプルに言うなら、リヒャルトはスラムに住む悪魔に会いに来てたんだよ。
んで、その正体がスラムのボスをぶっ殺した餓鬼二人。つまり俺らのことだったわけ。
まぁリヒャルトは元から知ってたっぽいけどな。
俺の件と違ってメッツァーがあいつらとモメるキッカケになった女の子を助けた事件も知ってたみたいだ……ん?初耳?……じゃあメッツァーのイメージを悪くしないために秘密で。
言わないよ。もう。
色々口が滑りそうだし、終わり終わり!じゃね!
昼間の話を聞いて私にも……ですか?
良いですよ。とは言ってもお二人ほど話せることはありませんが。
私がメッツァー様と初めて会ったのはメッツァー様が女神近衛騎士団の詰め所に忍び込んだ時です。
セラ様……あぁ当時の女神近衛騎士団第二師団アップルナイツの参謀長、セラフィー・ローレンス様のことです。
セラ様に捕まったメッツァー様はまだ子供だったこともあり、怪我はしてましたが見逃されたんです。
女神近衛騎士団の詰め所に盗みに入るなんて本当は死罪なんですけどね。
私は怪我をしたメッツァー様を見つけてしまい、どうしても放っておけず、治療をしました。
でも実はまだ未熟でナイツ見習いだった私の回復魔法は全然効いてなくて……メッツァー様はそれでも笑いかけてくれて、ありがとうって言ってくれて。役に立てて嬉しくなった私と笑い合いました。
それから十年近くメッツァー様とは会えず、再会したのは戦場でした。
ゼーロウの黒衣の魔道士。ロアでは危険なゼーロウの新たな幹部なんて言われてたメッツァー様は、先ほど言ったセラ様を倒しました。
メッツァー様の慈愛でセラ様は消滅して、メッツァー様は私に戦うようセラ様のサーベルを渡そうとしてきました。
でもナイツになったばかりで初陣だった私は、昔好きになっちゃった男の子と戦うことなんて出来ませんでした。
メッツァー様はそんな私を見て、なら俺のものになれって言って私は押し倒されました。
メッツァー様の性奴隷になってからアクラさんに会ったり、手を出そうとしてくるゼーロウの兵士からメッツァー様に守って貰いながら私は必死にメッツァー様のために何か出来ないか探してました。
どうやら私には事務作業が合ってたみたいで、メッツァー様の副官に任命されて、今になります。
正直、私も凛々子さんと一緒で今日初めて聞いた話ばかりでした。
メッツァー様とアクラさんの関係……まだ何かありそうですよね。
それはそうとして……折角なら凛々子さんの話も聞かせてください!
メッツァー様のどこが好きになったんです?
あ〜逃げないでくださいよ!凛々子さ〜ん!
「あ〜焦った。ココノちゃんの恋バナ好きにも困ったものね……」
メッツァー達のことをもっと良く知りたい。
そう思って今日一日みんなに話を聞いて回った凛々子は、ココノから逃げ、屋敷の廊下で一息付いていた。
同年代の女の子であるココノが居ることは嬉しいし、事実仲も良いのだが、メッツァーが初恋であるため恋バナなどが非常に苦手な凛々子とメッツァーが初恋ではあるが、既に気持ちが熟練夫婦まで熟成されているため、全くそのへんの照れがなく、恋バナなどが出来る相手がいなかった反動からそういう話をしたがるココノとでは、たまにこういった問題が起きるのだ。
「でも……もしかしてメッツァーって本当は凄く優しい?」
今日話を聞いていた、色々興味深い話がある中で、凛々子の感想は実はこれが一番大きかった。
メッツァー自身からは語られなかったが、少年時代の妹みたいだった子のエピソードといい、アクラが口を紡いだチンピラとモメた原因といい、ココノとの出会いの話といい、今のメッツァーからは信じ難い優しいエピソードばかりだった。
確かに竜人として過ごした日常生活でもそれを伺わせることは多数あった。
微妙に悪意混じりに竜人との間柄を茶化され、ちょっと気分が悪くなったあの時も、まるで凛々子を背中に守るように立ち塞がり、やっかみを一蹴したこともあった。
事実、そんな竜人を凛々子は好きに……。
「今のなし!あ〜もう、ココノちゃんのせいで色々意識しちゃう……」
無意識に考えていたことで頬を真っ赤にした凛々子が自らの頬を冷まそうと手で扇ぐ。
全然冷めてくれないが、熱くて仕方ないのだからやるだけだ。
「私は……メッツァーを見極めたいんだから」
凛々子がメッツァー陣営にきた理由はメッツァーを見極めるため。
決して、決してメッツァーが好きだから来た……のもないとは言わないが、それだけではないのだ。
異世界ロアに来て、王家の、上流階級のやり方を見て凛々子は正直衝撃を受けた。
今日聞いたスラムの話が嘘だと思えないほど、貧困の強い格差がこのロアにはあったのだ。
メッツァーの占領下にあるこの街はまだマシだが、前に攻めた街は本当に酷かった。
そこがメッツァーが幼少時代を過ごした街だと聞いて、今回こうやってアクラとの出会いを口実に聞いたのだ。
メッツァーを見極めるために。
(メッツァーもアクラもスラムで育った……あんな、場所で)
テレビでしか見たことなかったような光景。
ガリガリに痩せ細った子供達や、既に事切れているのに誰も見向きもしない老人。
虚ろな瞳、憎しみの目線、諦めの表情。
路地を出れば華やかな場所もあるのがまた逆撫でる。
まるで生きるものの差を見せつけてるような作りだった。
(あれ……?そう、いえば……)
スラムの惨状や、メッツァーの幼少時代など衝撃的な話が多かったことで疑問に思わなかったが、一つおかしな話があった。
それはあえてそうしたのか、偶然そうなったのか分からないが、凛々子には気になる点だった。
(アクラって……何者?なんで魔界じゃなくロアに……?)
凛々子の知識では上魔であるはずのアクラがスラムに居たこと、そして一緒に育った、それ自体がおかしい。
魔族は魔界で生まれる存在。何より人間とは違い、子供として生まれること自体がおかしいのだ。
魔族は
「この辺もきちんと……ふぁぁ……」
メッツァーを見極めるためにはアクラの存在は無視できない。
次はその疑問を解消しようと考えていた凛々子だったが、無意識に出た欠伸に思考が邪魔される。
一日色々な話を聞いた凛々子だったが、それは全て仕事の途中。
一日働いていたのは凛々子も変わらないのだ。
「続きは……明日にしよ」
眠気が強くなってきた凛々子は廊下を進み自らに与えられた部屋に向かう。
だが、このことを次の日から考える暇はなかった。
翌日から女神近衛騎士団の反撃により、さらなる仕事が舞い込み続けたのだ。
だから、いつしかこの疑問を凛々子は忘れていた。
そしてそのことを思い出す日、凛々子は驚愕することになるのだが……それはまだ随分先
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