遅くなり申し訳ありません。
今年最後の銀髪の魔王と黒髪の魔人です。
エロなしですみません。
あと珍しく後書きありますので、宜しけれはお読みください。
では、どうぞ。
「はははは!良いねパッション!それだよ!」
時はまた少しだけ遡る。
キッスと戦い始めたアクラだったが、今は2対1になっていた。
キッスの攻撃でアインから開放されたパッションが、なんとその場で戦い始めたのだ。
何度も絶頂させられ、体力も失っているはずだが、パッションの気迫はむしろ最初より遥かに高い。
それを見たアクラはアインがやられる可能性を考え、一足先に下がらせ、二人を相手に戦っているのだ。
「っぁぁぁぁぁ!」
「謝罪するよパッション。きみは魔法戦士としてまだ終わってない。使い潰すのには勿体ない、立派な魔法戦士だ!」
気迫と共に放たれたパッションの火炎魔法を避けながら、アクラは本当に嬉しそうに笑う。
勇気を持って立ち向かうキッスの影響をパッションが受けているのは間違いない。
しかし目の前で勇気を見せられても立ち上がれる人間は極少数だろう。
パッションはその極少数の人間になれたのだ。
それは魔法戦士として必要な勇気を、彼女も手に入れたに他ならなかった。
「はぁああああ!!」
「あはは!やる!やる!即席でもコンビネーションが取れてるじゃあないか!」
火炎魔法を避けたアクラにすぐさまキッスのフラフープによる攻撃が迫る。
下魔の身体や上魔の触手を安々と切り裂く一撃だが、アクラは手刀でそれを受け止める。
「でも気持ちだけじゃ……俺には勝てない、よ!」
「きゃあ!」
「キッス!」
「あ、ありがとう……パッション」
防御の隙間を縫ったアクラの蹴りで吹き飛ばされたキッスをパッションが飛び込み受け止める。
それは見て何処までもアクラはテンションを上げていく─────が、そこまでだった。
「なんだ?今楽しい所……な、なんだって!?」
「な、なに?いきなりどうしたの?」
「…………」
いきなり叫び出したアクラにパッションは戸惑いキッスは警戒を緩めずアクラを見ている。
「……そっちもなるべく多く……あぁあっちにもだな、分かった。悪いね。遊んでる暇はなくなっちゃったみたいだ」
「……っ」
急に戦いを止めたアクラに前までなら逃げるなどと聞いていただろうパッションが押し黙る。
彼女も分かっているのだ。
今は何とか戦えているが、パッションは体力が殆どない。
今のまま戦えば、粘れても二人ともアクラに敗北してしまっていただろう。
「おめでとう香那葉。また会う日まで。パッション、今日の気持ちを忘れるなよ。あと香那葉に謝っておくように。じゃあね!」
「アクラさん……」
素早く捲し立てながらも、挨拶をしたアクラの姿が消える。
そんなアクラの残光を追うように、じっと虚空をキッスは見ていた。
アクラに言われたからではないが、パッションがキッスに先日のことを謝罪したのは、言うまでもない。
「さて。情報はまとまったなアクラ」
「あぁ……だが、現状はかなりヤバい」
「…………」
「…………」
リップを連れたメッツァーが作戦室に着き、アクラに説明を求めると、アクラが緊張感のある表情を浮かべた。
メッツァーも今回は詳しく知らないため、今回は完全にアクラが説明役だ。
ロアに派遣している諜報員のまとめ役であるアクラは、必然的にこの役目が多くなるのだ。
「まずは結果から言おう。ゼーロウが事実上、滅んだ」
「……な、に?」
「そんな……」
いきなり飛び出したアクラの爆弾発言に、メッツァーもココノも絶句する。
唯一ゼーロウのことを良く知らないリップは二人が絶句している意味は分かっていないようだが。
「正確に言うなら、ゼーロウが主力を集めていた砦が陥ちた。ゼーロウの被害は甚大。組織としての体を保てるか微妙だ。幹部も相当数死んでる。リヒャルトも、死んだみたいだ」
「そう、か」
「メッツァー様……」
「メッツァー……」
リヒャルト・ヨハン・ハインケル。
ゼーロウの幹部にしてメッツァーの義理の父親に当たる人物だ。
彼には彼の思惑が合ったのとゼーロウと共に彼とは袂を分かった身が故に、悲しむことはしないが、いざ死んだとなるとメッツァーは一抹の寂しさくらいは感じていた。
そんなメッツァーを心配するようにココノとリップが目線を向けるが、メッツァーは軽く手を振った。
心配の必要はない。そう示しているのだ。
「続けてくれ」
「……あぁ。ゼーロウ敗北の原因。それは魔法戦士の爆発的な増員だ」
「っ……」
「え?ふ、不可能です!聖涙石には数に限りが……」
「う、うん。私もそう聞いてるけど」
アクラの言葉に元々はロア側だったココノとリップが反応する。
元アップルナイツのココノは言わずもがな、リップとてきちんと説明されていたことだ。
そんな聖涙石に選ばれたのだから、大切にと。
「……それを何とかしたということだな?」
「あぁ。まぁこれだけで分かるだろうが、クイーングロリアが退位した」
「まさか!」
「そうだ。クイーングロリアは聖涙石と一体化した」
アクラの言葉に三人共言葉を失う。
メッツァーは本当にやったのかという意味で。ココノは噂にしか聞いたことのない話が本当だという意味で。リップはただならぬ他3人の様子に黙っていた。
「なりふり構わん方法を……」
「歴代の女王が聖涙石と一体化して、ナイツを産み出してるという噂……本当だったんですね」
「そうだ。一応元には戻れるらしいけど少なくとも数年は戻れないはずだよ」
あからさまに気分を悪くした様子のメッツァー。
ココノは自らも聞いたことがあった話を小さく話し出す。
聖涙石はトランシルヴェール王家において最も大事な栄華の証だ。
しかしその出処ははっきりしていない。
神から齎されたと言われていたくらいだが、一部では歴代女王の魔力が元になっているのではないかと言われていた。
そしてその噂が真実であることを詳しく調べていたメッツァーやアクラは掴んでいたのだ。
「え?ちょっと待って。クイーングロリア様が退位したってことは……」
「そうだよリップ、いや俺も凛々子って呼ぼうかな。今は変身もしてないしね」
「あ、うん。別に大丈夫だけど……」
当然の疑問を口にしたリップ、いや凛々子にアクラが視線を向ける。
実は未だに自己紹介もまともにしていない上、香那葉から話は聞いていたが、凛々子はアクラに会うのも初めてだ。
そんなアクラが微妙に近い距離感に詰めてくるのだから、凛々子が混乱気味になるのも仕方ない。
まぁアクラは一方的に凛々子を知っているし、竜人の弟、竜次として会っているのだから、初対面ではないのだが、凛々子がそれを知るよしもなかった。
「っと話がズレたな。クイーン、いやグロリアが退位したんだ、代わりに即位したのは勿論第一王女であるティアナだよ。クイーンティアナの誕生さ」
「ティアナが女王か……」
苦笑いをするように話を戻したアクラはその表情のまま報告を続ける。
この前の一件から少なからず関わりのあるティアナが急遽即位することになったことにメッツァーも渋い表情だ。
ティアナの意思を無視したレベルではないだろうが、あまりに話が急すぎる。
ティアナはまだ女王に即位するにはあまりに若すぎるのだ。まだ学生をしていてもおかしくない年齢なのだから。
それを強行したことに、元よりあまり印象の良くないグロリアへの二人の印象が更に下がったのは言うまでもない。
「クイーンティアナは、増やしたナイツ達と共にゼーロウの戦力を集結していた前線基地を強襲。ナイツにもある程度の犠牲はあったみたいだが、ゼーロウ前線基地は壊滅したってわけだ」
「……あの甘いティアナが成長したものだな」
そう呟くメッツァーの口元が少しだけ緩く微笑む。
事実ティアナの打った手は有効だ。
未熟なナイツを戦線に関わらせることは非難されるかもしれないが、ナイツはなっただけで十二分に戦力として使える。
平和な世界で暮らしていたはずのスイートナイツの面々にメッツァーの前のゼーロウの司令官や、メッツァーがいなくなった後のゼーロウの下魔では勝てない。
それがナイツという戦力なのだ。
そして増やしたナイツの戦力が一番活きるのはゼーロウにそれを認識される前。
訓練が足りないため多少の犠牲は出る可能性は高かったが、有用性を選んだティアナの判断は正しく、事実上、ゼーロウを壊滅させていた。
甘さを持って犠牲の可能性を考えていては出来ない判断。
しかしゼーロウを壊滅出来なければもっと犠牲は増えていただろう。
それを考えて、甘さを捨てたティアナの判断をメッツァーは褒めているのだ。
「さて、本題はここからだ。俺らの戦略としてはゼーロウと女神近衛騎士団が争っている間に勢力を拡大する予定だった。俺らの勢力はまだ大きいとは言えないからな」
「その通りだ。勢力に取り込んだものを入れても戦力が足りなすぎる」
ゼーロウから離反するためにメッツァー陣営として手に入れていた領地や軍勢、協力者などは一応居る。
しかしそれはゼーロウや女神近衛騎士団の規模から考えるならば、あまりに勢力として小さい。
単純に勢力の規模だけならば、この程度を揃えた勢力などいくらでもいる有象無象レベルだろう。
これではゼーロウはおろか、女神近衛騎士団の妥当、世界を支配するなど出来るわけはない。
故にメッツァーは、スイートナイツの面々、少なくともスイートリップだけでも戦力として引き込み、ゼーロウや女神近衛騎士団が争っている間に勢力の拡大を図ったのだ。
しかしそれが無意識か、考えてか、ティアナの選択により崩されてしまった。
これは非常に不味い状況だった。
だが、光明はある。
「しかし、いくら事実上壊滅したとはいえゼーロウはしぶとい。無理矢理編成したナイツの編成のし直しにも時間はかかるだろう。アクラ、予測される時間は?」
「最短で3ヶ月。ゼーロウが粘って……半年から9ヶ月くらいかな。ただ俺にある程度準備の手間を減らせる案と、一つ妙案がある。上手くいけば、ずっと時間が稼げる。リスクもあるけどね」
「なに?」
アクラの見積もりに納得していたメッツァーが、続く言葉に不思議そうな表情をする。
少なくとも今までアクラから伝わった情報や、状況から、準備の手間を減らせる方法は思いついても更に時間を稼げるやり方など思いつきはしないからだ。
「─────するんだよ」
「なっ!?そ、そんなこと……!」
「……可能なのか?」
「可能だとしても、私はあんまり実行して欲しくないんだけど……」
「任せろ。今回地上で暮らしていて分かった。可能さ。俺が先導する」
ココノが絶句し、メッツァーが疑い、凛々子が苦笑したアクラの妙案。
三人共それぞれ反応は違うが、アクラの自信満々な態度とは違い、驚きや疑いは隠せない。
しかしメッツァーは素早く判断する。
アクラの言う通りリスクはある。いや高い。
しかし成功すれば、時間稼ぎだけではなく、状況がひっくり返る可能性すらある策だ。
「なら───────はどうだ?」
「諜報員の報告からすれば可能だけど……俺は両方は無理だぜ?」
「構わん。あちらはキッカケを与えてやるだけで十分だろう」
「ならやるべきだな。リスクは上がるばっかりだが、それだけリターンはある」
「ぁぁ……もう完全にやる気ね、この二人……」
「は、はは……まぁいつものことですから」
どんどん話を進めていくアクラとメッツァーに、凛々子は頭を抱える。
そんな二人に慣れているココノですら苦笑気味なのだから、慣れていない凛々子からすれば頭の痛いものだろう。
凛々子が聞いても分かるリスクの高さのあるこのアクラの妙案を、悩みもせずに採用する気なのだから。
「ココノちゃんも大変ね……」
「……まぁ」
自己紹介は済ませたために、女同士苦笑し合う二人。
しかしココノは苦笑し、凛々子の言葉に同意しながらも二人を見る目は優しげだった。
「でも私はあんなお二人が好きですよ。メッツァー様もアクラさんも凄く楽しそうですから」
「ココノちゃん優しい……私も気を引き締めなきゃ……」
ココノの反応に凛々子はメッツァー陣営に入ったならば慣れなければならないことと考え、一人気を引き締める。
アクラの行う妙案。
この妙案が
今回でスイートナイツ2編は一応の終了。
もしかしたら番外編くらいはやるかもしれません。
ココノ実はメッツァーのメインヒロインの一人なのにエロないしね!
まぁ予定は未定といった感じ。
次回はちょっと期間がまた空きます。
次作の予習をきちんとしないといけないので。
ある意味序章でしかないスイートナイツ編にかなり時間がかかりました。
次章はアクラが主役のシンフォニックナイツ編です。
ファルケもちゃんと出ますがね!
少し時間はおいてしまいますが、また宜しければ見てやってください。
ではでは。
どの編が面白かった?
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スイートナイツ編
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プリンセスティア編
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スイートナイツ2編
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シンフォニックナイツ編
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レムティアナイツ編