先週も空けましたし、今日は早めの更新です。
今回より魔法戦士シンフォニックナイツ編スタート。
今回はプロローグのためエロなし。
多分次回もエロはないかもしれませんので、ご了承ください。
あとこの編から特に独自設定が多くなりますので、原作との統合性も気にしないでください。
では、どうぞ。
地上の新たな悪達
後の歴史家が名付けたカーペン砦の決戦から数カ月後、クイーンティアナはトラウペア砦にてゼーロウの幹部でありクーデターの首謀者エルウィン・ヨアキム・トランシルヴェールを討ち取った。
その戦いは女神近衛騎士団の犠牲は少ないものではなかったが、ゼーロウの犠牲はそれ以上だった。
先の戦いを生き抜いた他の幹部も次々とナイツに討たれたのだ。
ゼーロウは一部幹部を残し全滅。地下に潜ることで事なきを得るほどに弱まっていた。
これでロアに平和が訪れる──────わけではなかった。
誰が呼び始めたかは定かではないが、銀髪の魔王と呼ばれる男、元ゼーロウの幹部メッツァー・ハインケルがトランシルヴェール王家に宣戦布告したのだ。
無論、クイーンティアナはすぐさま討伐隊を派遣したが、メッツァー軍はこれを難なく撃破してしまう。
持ち帰った情報をから恐るべきことが分かった。
メッツァー軍には無数の下魔が居たのだ。
軽く確認出来ただけでも数千体。
本来ならばそんな量を用意出来るはずなどないが、ティアナはメッツァーが相手ならばあり得ると判断。
ロア各地にて女神近衛騎士団とメッツァー軍の戦いが巻き起こった。
そして、その戦火は地上にも影響を与えていた。
女神近衛騎士団は地上の世界から、メッツァー軍は地上に生きる人々からマナを回収するため、地上にも派遣したのだ。
地上でもまた女神近衛騎士団とメッツァー軍の補給を巡る戦いが勃発。
世界のマナが刺激され、地上に魔界の穴が開いてしまう事件が発生する事態へと陥ってしまった。
それは地上でもマナが認知されるということに発展するまで、それほど時間はかからなかった。
「では、一人づつ挨拶をお願いします」
「はいっ!」
魔界の穴が開いてしまった事件から約一年近い時間が経過していた。
ここは百合瀬財閥によって建設された魔力集積都市エクセリウムにある大企業インペリオ。
今日は研究機関の新人の顔合わせの日であり、やはり研究機関だからか、男性が5人並んで一人づつ挨拶をしていた。
「ありがとうございました。では、最後の方」
「はい」
一人、一人と挨拶が終わっていく中、最後の一人が挨拶する番になる。
黒い髪に黒い瞳。周りの男に比べると少しばかり低い身長と幼い顔付き。
しかしその立ち振る舞いや、瞳には自信や堂々とした態度が伺わせている。
その振る舞いに彼らの上司になる人間も周りの人間も飲まれたように息を飲む。
「私の名前は
王者の気質を纏いながら、無月亜九は笑みを浮かべていた。
「やっぱりこの子が圧倒的ね……無月亜九。とんでもないのが入ってきたわ」
百合瀬財閥のブレインにして、エクセリウムの運営、他にも特殊防衛機関ミネルヴァ・ガードの司令官、インペリオの重役と多種多様の仕事こなす女、
新人が入って3ヶ月ほどが経ったが、5人の新人の中で一人だけ飛び抜けて優秀な人材が居たからだ。
亜九のことである。
彼は独自にある程度魔法科学について勉強していたらしく、基礎魔法技術を既に完璧にこなしており、いち早く研究ラボの助手にまで昇格していた。
インペリオは実力主義な上、最近多発している魔法犯罪者や魔族への早急な対処のため優秀な人材を遊ばしておく余裕がないのだ。
治安維持に使われる予定の強化スキンという特殊防護服を開発する研究ラボに配備されるのは無理もない。
「……鷹佑のとこかぁ」
亜九が配備された研究ラボの局長、
彼と瑠々香はかつて大学時代、鷹佑と同じ研究室に在籍しており、彼とは恋人関係とだったのだ。
しかし研究員である鷹佑と瑠々香の忙しさは凄まじく、予定が全く合わず、半ば自然消滅のように別れてしまったため、未だに少しばかり未練があるのだ。
「っといけないいけない。ぼーっとしてる場合じゃないわ。この子ならもしかしてってくらいだけど、やらないよりかはマシよね」
鷹佑への未練は今は気にする所ではない。
大事なのは彼に連絡をつけ助手である亜九に都合を付けられないかどうか確認することだ。
それを思い出した彼女は自らの仕事をこなしていきながら、連絡を同時に行っていた。
「外部の人間を関わらすのはまずいけど、仕方ないわよねぇ」
これ以上完成を遅らせるわけにはいかない。
これは彼女自身というより、この街を任せられた責任者としての考えだ。
例えリスクがあったとしてもこれは大事なこと。
そう考えこの行動をとった瑠々香だったが、この選択がその後にとんでもない影響を残すとは、この時誰一人気付いてはいなかった。
「技術補佐?」
「はい。霧沢様からの依頼です」
ラボで企業に出す方ではない強化スキンの研究データを取っていた亜九は、鷹佑の助手であり亜九の同僚でもセラフィから報告を受けていた。
なんでも瑠々香が忙し過ぎて本来ならばやらなくてはいけない仕事の一つである技術補佐の方にまで手が回らなくなってきたらしい。
局長である鷹佑も家庭教師をやっている時間があり、それに似たことを亜九にお願いしたいということだった。
「局長、この話し受けたほうが良いのか?」
「重役である瑠々香からの依頼だ。断るわけにはいかないだろ?」
「まぁそりゃそうなんだけどよ」
強化スキンの研究データを纏めていた鷹佑に、何故か亜九は非常に気安い言葉使いで問いかける。
上司にする言葉使いではないが、鷹佑も全く気にした様子はなくモニターから目を離さずに問いに答えている。
「俺まで離れちまってコイツは良いのか?」
「セラフィに管理はさせる。それよりこっちのデータだけど……」
「契約外だな。開示して良い内容を逸脱してる。なぁセラフィ」
「はい」
「面倒だな……」
話しているお互いは分かるが、傍から聞いている分には何の話か分からない会話。
しかし非常に重要な内容らしく、断られた鷹佑はかなりの顰めっ面だ。
「亜九さん」
「あぁ時間か」
それから暫くしてセラフィに声をかけられた亜九がデータを保存しながら立ち上がる。
メールでのやり取りで、先程、早速今日からすぐに技術補佐を始めることが決まったのだ。
顔合わせは早い方が良いと言う考えもあるらしい。
「じゃあ行ってくるわ」
「あぁ……ヤツにもう少し成約を弱めるよう言っておいてくれよ」
「考えとくよ」
適当に手を振り、亜九がラボから出ていく。
そんな後ろ姿を見送った鷹佑は、見込みが薄そうな亜九の反応に小さく溜息を吐いた。
(……場所を確認した時に気付いたけど、まさか百合瀬邸に来させられるとはなぁ)
メールに書かれていた場所は、亜九もすぐに分かった。
この都市の出資者である百合瀬財閥の持つ屋敷だ。
どうやら、この中にあるらしいラボが、亜九の目的地らしい。
入口のガードマンも予め話を聞いていたらしく、すぐさま目的の部屋まで通されていた。
そしてある一室の前に置いてかれる。
屋敷の使用人とて、このラボには基本立入禁止らしい。
流石に少し緊張してきた亜九だが、覚悟を決めて扉をノックした。
「……どうぞ」
「失礼します」
(若いな……)
中から入室の許可をする小さな声がする。
しかしその声のあまりの幼さにまた少しばかり亜九は驚かさせられるが、それを表に出さず、社会人の仮面を被り断りながら部屋へと入る。
そして……その仮面は一瞬で壊れた。
「あなたが……一応、自己紹介しておきます。私は
ラボに居たのは声からも想像出来た幼い少女。
無表情な顔付きに少しだけ面倒そうな感情を浮かべ、しかし真面目なのか、別の理由か、自己紹介の口調だけはしっかりとしてきた少女。
彼女の名は名乗った通り、甘樹菜々芭。
冗談でもなんでもなく、このラボを管理する主任、いや正確に言うならばこのラボは彼女以外の人員は居ない。
それは何故か。
彼女は、甘樹菜々芭は優秀過ぎるのだ。
「では、お帰りになって大丈夫ですよ。瑠々香さんの顔は立てましたし」
そう言って菜々芭は、亜九から目を離し画面に戻ってしまう。
亜九は知らないことだが、実は亜九を派遣するのはほぼ瑠々香の独断なのだ。
菜々芭は先ほど今日一人助手になる人間が来ると言われただけだ。
しかし一応それにも理由がある。
それは先ほどの優秀過ぎることにも繋がっていた。
(瑠々香さんは何を考えているんでしょうか……)
このラボで研究されていることは機密としては当たり前のように外部の人間を関わらせていけないレベルのものだ。
しかも、内容はハッキリ言って現在地上に居る数多くの研究者の誰であってもまともに理解出来るとは思えないほどレベルの高い魔科学である。
そう、菜々芭は天才過ぎる。
初めに魔科学を教えた瑠々香もとっくに抜かれているほどに。
故に誰も菜々芭についていけないのだ。
技術に関わらない雑用くらいならば出来るかもしれないが、それならば人員を使わず自分でやる。
それに菜々芭は元々その天才的な頭脳と、ある理由から特定の人物以外との交友は苦手なのだ。
故にこのラボは非常に重要なポジションでありながら、人員が誰もいないラボであった。
勿論機密上、沢山の人物を入れるわけにはいかないが、やはり菜々芭一人は問題があった。
(……やはりダメですか)
亜九を無視してデータ上の実験を行うが、結果が思わしくなく、菜々芭が少しだけ眉を寄せる。
菜々芭は天才だ。
しかし天才であっても、いや天才だからこその問題があった。
今のように何かに引っ掛かった時、客観視出来る人間がいないのだ。
誰も何が問題なのかしら理解出来ないのだから当たり前だ。
菜々芭ならば、キッカケ、または時間をかければ解決出来る問題かもしれないが、瑠々香はそこを問題視した。
完成についていけなくともキッカケを作れるレベルの助手がいれば菜々芭は更に一皮剥けられる。
亜九ならば、新人であっても菜々芭の時にも感じた天才の気配を感じた彼ならば、その立場になれるのではないか。
そう瑠々香は考えたのだ。
「…………」
「……あの」
そんな亜九は入室した状態のまま固まっていた。
それには流石に塩対応をしてさっさと帰らせてしまおうと考えていた菜々芭も困惑する。
前にも何度か助手を用意されたが、大概菜々芭が幼いこと、また難しすぎること、そして幼い少女である菜々芭の塩対応に怒る、または呆れて帰ってしまうのだが、亜九の反応はどちらとも違うのだ。
菜々芭が困惑するのも仕方ない。
「……そうだよな。うん、そうだよな」
「………?」
何か亜九が小さく呟く。
そしてゆっくりと固まりが治っていくと、彼は壊れた社会人の仮面を、捨てた。
「俺の名前は無月亜九です。これから宜しくお願いします甘樹主任」
「……え?」
まるで先ほどの菜々芭の言葉を聞いていなかったように満面の笑みを浮かべる亜九に、思わず無表情を崩してしまった菜々芭。
その後、亜九が菜々芭についていける、いや一部ならば菜々芭すら上回る知能を持っており、渋々菜々芭が助手の継続を了承したりもしたが、亜九にはもっと大事なことがあった。
「雨塚」
「あぁ帰ったか。なら、こっちの……」
「契約しようか」
「なっ!?」
帰った亜九に用事を頼もうとした鷹佑の目が見開かれる。
しかし、その驚きを治めている暇はなかった。
セラフィが不在なのを確認した亜九が指を鳴らしたからだ。
「……急だな」
「セラフィに聞かれるとまずいからな」
指を鳴らすと同時に仕掛けられた異界転移の魔法が発動し、鷹佑と共に亜九は隠しラボへと転移する。
その異常事態自体には鷹佑は驚いていない。
それもそのはず。
鷹佑も地上の人間がまだ使えないはずの異界転移の魔法によりこの異界にラボを作ったものの、一人なのだから。
「雨塚鷹佑。我が
急に言葉を正した亜九から、驚くべき名前が出る。
今やロアにて銀髪の魔王と呼ばれる彼を主と呼ぶ存在。
それが示すものは一つしかない。
「あぁ。地上世界で発展した場合の魔法技術の提供、また地上世界に現れるであろう新たな魔法戦士の対応。その代わり、ロアにおける魔法技術の提供と資材の搬入。それにこの隠しラボの作成……だよな。メッツァー・ハインケルの副官、
「今の俺は無月亜九だ。その呼び方は控えとけ」
亜九、いやアクラが今までにないほど愉快そうに笑う。
そう、鷹佑は地上におけるメッツァー陣営の協力者なのだ。
「さて、新たな契約の話しをしよう。まぁ簡単だ。俺と契約すれば、新たな技術提供、それに多少のお
「…………」
お悪戯と称したアクラを鷹佑が睨む。
睨まれていてもアクラはむしろ愉快そうな笑みを深めている。
しかしこれは別に鷹佑を馬鹿にしているわけではない。
優秀ではあるが、一介の科学者にしか過ぎない鷹佑がメッツァーの協力者に選ばれた理由が見えるからだ。
「その瞳をしといてバレてないと思った?目を掻い潜って俺らを裏切ろうとしてるのはバレバレだよ」
鷹佑の瞳にはメッツァーと同じく野望に突き進むための野心を感じる。
その意思の強さをアクラは大きく評価してるのだ。
無論その野心の高さをココノからは心配され、監視役にアクラだけではなく己のクローンであるセラフィも送られてきているが、アクラとしては別に鷹佑が裏切る気でも構わない。
むしろそれぐらいの気概がなければ、アクラの策は成功しないからだ。
「……それで契約とは?」
バレていても始末する気は今の所はないことに気付いた鷹佑は、少しだけ落ち着くように息を吐きつつアクラに問いかける。
だが、その実、内心はドキドキだ。
所詮人間でしかない鷹佑は、備えもない今、アクラがその気になれば一瞬で殺される。
野望のためにもここで死ぬわけにはいかない鷹佑は、何とか契約を進めたいのだ。
「まぁまぁそんな緊張すんなよ。そう難しいことじゃないさ。────ってだけなんだから」
「なっ……」
鷹佑の緊張を見破ったアクラが苦笑しながらも契約内容を告げる。
それの内容に驚きながらも、鷹佑は素直に契約を了承した。
了承するしかなかったのもあるが、内容として鷹佑が困るものが少なく、そしてその内容を告げたアクラに興味を持ったからだ。
地上の科学者雨塚鷹佑と、ある契約をした上魔アクラ。
この二人を中心に魔力集積都市エクセリウムを舞台とした新たな戦いが始まろうとしていた。
どの編が面白かった?
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スイートナイツ編
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プリンセスティア編
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スイートナイツ2編
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シンフォニックナイツ編
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レムティアナイツ編