今回もエロなし。日常回。
ここまでで実質プロローグ終了です。
お伝え忘れていましたが、シンフォニックナイツ編はメッツァーとのダブル主人公だったスイートナイツ編と違い主人公はアクラ単体です。
ファルケサイドの話は少なくなると思いますのでご了承ください。
では、どうぞ。
「絶対!絶対に役に立つから!騙されたと思って付けて行って見てよ!」
それが彼が自信満々に一応ラボでは上司に当たるはずの菜々芭にタメ口で念入りに言ってきた言葉。
しかしそれが本当だったことは、すぐに分かった。
「莉々奈さん!パターンレッド!契約魔族です!」
「契約……分かったわ菜々芭ちゃん。なら!」
今の菜々芭にとって何より重要な仕事中、彼の言ったものはすぐに役に立った。
彼、無月亜九が提供してきたものは、今反応にあったように魔族が契約されているか否かが分かるものだ。
今回魔力振動を探知する監視網に引っ掛かったのは、下魔と呼ばれるトカゲ人間のような魔族。
これは地上でも度々見られている魔族であり、データも取ってある。
そのデータから亜九は、魔力の周波数が異なる個体を見つけ、契約された下魔か、本当に魔界の穴が開いたことで迷い込んだものかが分かるようにしたのだ。
契約された下魔ならば、パターンレッドとなる。
つまり、対処方法は一つ。
「ごめんなさい……あなたを召喚した人を必ず懲らしめるから」
迷い込んだのでなければ送還するわけにはいかない。
故に彼女、百合瀬莉々奈は悲痛な表情を浮かべながらも、怯えることなく構え、その身を変えた。
「魔法戦士シンフォニックリリー。魔力と科学の交わりが奏でる調べとともに、ここに誓います」
新たな地上の魔法戦士へと。
「……変な方ですね。本当に」
「……菜々芭ちゃん?」
見事下魔を討ちとった帰り道の車の中、不意に呟いた菜々芭の言葉に、莉々奈は不思議そうな表情をした。
菜々芭の一番の友人であると自称する彼女であっても菜々芭から聞こえた声色は中々に珍しいものだったからである。
「あ、いえ……」
「もしかして最近菜々芭ちゃんの助手になったって人のこと?」
「……そうです」
誤魔化すことも出来ないわけではないが、彼女にとって今ではたった一人になった大切な人である莉々奈に対して誤魔化しを言いたくなかったため、素直に認める菜々芭。
ほぼ無意識に出た言葉であるため気恥ずかしさはあるが、隠すようなことでもない。
「先ほど契約魔族だと分かったシステム。これを作ったのが彼なんです」
「へぇ……」
菜々芭の言葉に感心したように息を吐く莉々奈。
莉々奈も頭は良いが、流石に菜々芭レベルではない。
しかしそれでも菜々芭のことは理解している莉々奈から見て、感心するのは当然だ。
菜々芭は生半可な内容のシステムを信用したりなんてしない。
それだけ、その人物が作ったものが優秀か、信頼されてるかしない限りは。
出会ってからの短時間で菜々芭に優秀さを認められたか信頼を得た。
どちらにせよ凄いことだ。
だから、莉々奈はそれを作った人物に感心したのだ。
「凄いなぁその人……菜々芭ちゃんにもう信頼されてるんだ」
「え……?ち、違います!ちょっと押し切られちゃって……!」
「でも信用したからプログラムに組み込んだんでしょ?」
「そ、それは……」
珍しくハッキリとしない反応を返す菜々芭に莉々奈が笑顔を浮かべる。
自分以外まともに寄せ付けない親友にどうやら友人と呼べる存在が出来たことが莉々奈は嬉しくてどうしても笑ってしまう。
魔法戦士としての役目は大変だが、こんな日常が守れるなら……そう思っていた莉々奈だが、そんな平穏は崩されていく。
「っ!莉々奈さん!また魔力振動を感知!近い……約300メートル先にパターンレッド!」
「また契約魔族……!」
監視網にまた魔族が引っ掛かったのだ。
しかも先ほどと同じく誰かに使役され、恐らくわざとこの都市に送り込まれてきた魔族だ。
先ほどまでの年頃の少女らしい笑顔を浮かべていた莉々奈の表情に悲しみが浮かぶ。
(また……殺さなければならないの?)
莉々奈は優しい少女だ。
例え魔族といえども命を奪うことを良しとはしない。
だが、それでも誰かがやらなければいけないならば、自分がやる。
優しさと強さを兼ね備えた少女。
それが莉々奈という少女だった。
「菜々芭ちゃんはここで待機して避難勧告を!」
「分かりました!莉々奈さん、気を付けてください!」
故に素早く指示を出し、莉々奈は停車した車から飛び出した。
しかしそんな頼りになる莉々奈を見送った菜々芭の表情には不安が浮かんでいた。
(こんな短時間に魔族が出現するなんて……何か……この都市に起こってる?)
使役されているかは分からないが、これまでも何度も下魔の出現はあった。
莉々奈が指示を慣れてしまう程度には。
だが一日、いや出現してから一時間以内の再出現など、今までにないことだ。
しかも亜九のシステムにより分かったが、今回は誰かが送りつけている。
何かしら企みがあるのではないか?と菜々芭が考えるのは自然なことだ。
「莉々奈さん……」
まだ後方支援しか出来ない自らの不甲斐なさに歯を食いしばりながらも、菜々芭は莉々奈の無事を祈りながら後方支援に入る。
そして、菜々芭の心配は当たっていた。
「いやいや、まさか誘き寄せるためとはいえ、こんな簡単に下魔を倒してしまうとは。凄まじい性能だ」
「……貴方は何者ですか?」
シンフォニックリリーになり、素早く下魔を倒した莉々奈の前に一人の男が現れていたのだ。
全身を覆うボディスーツを着ており、目元も頭に被ったヘルメットにより全く見えないが、見える口元により男が笑っているのは分かる格好だ。
それはまだ理論上でしか存在しないはずの強化スキンのように見えた。
研究者である菜々芭ならばすぐに分かるとは思うが、莉々奈にはそう見えるくらいしか判断がつかないが、少なくとも分かることはある。
この人物が下魔を送り込んで来ている犯人だ。
「俺の名はファルケ。魔科学に魅せられた、ただそれだけの男だ」
「……!」
ファルケ。
そう名乗った男がボクサーのような構えをする。
その動きにリリーが息を呑んだ瞬間、空気が弾けた。
「このスーツの性能テストに付き合って貰おうか!」
「はっ!」
ファルケが突風のようなスピードで突っ込んできたのだ。
そこから繰り出された右のストレートは普通の人間ならば気付いた時には頭が弾けていてもおかしくないほどの威力とスピードがある。
しかしそれは普通の人間ならの話だ。
魔法戦士の鋭い五感はそのスピードに驚異を感じながらも、見えないわけではない。
リリーは素早く己の剣でファルケのストレートを受け止める。
刃を寝かしている辺り、ファルケ相手でもリリーの優しさが見える。
「この動きに反応するか。テストでは下魔では反応出来なかったのだがね」
「貴方は……!」
ファルケの言葉にリリーの瞳に怒りが灯る。
テストと言っているが、それはつまり下魔に今の一撃を与えたということ。
下魔と繰り返し戦ってきたリリーには分かる。
この一撃を受けたのならば、まず間違いなく下魔は一撃で絶命しただろうと。
動物実験と言えば聞こえが良いかもしれないが、無意味に命を散らしたであろうファルケにリリーは怒りを覚えたのだ。
「魔族に同情してるのかい?お優しいこと……だ!」
「くっ……!はぁ!」
再度振るわれたファルケの拳を今度は受け流し、反撃を振るう。
戦いの経験か、変身の性能が良いのか、そのリリーの動きは素人のものではない。
しかしファルケもまた只者ではなかった。
「かた……い!」
「驚いたな。まさかこれ程とは」
リリーの剣を肩で受けたにも関わらず、ファルケにダメージはなかった。
下魔を軽々と切り裂くリリーの剣であってもファルケの何の金属で出来ているか分からない強化スキンの装甲を突破出来なかったのだ。
だが、悔しそうなリリーに対して、ファルケも余裕はない。
「魔法戦士の強さを甘く見たな……ここはやはりヤツの言う通りにするべきか」
「ヤツ……?」
バックステップで距離を取ったファルケの独り言をリリーは油断なく剣を構えながら聞き逃さない。
敵はファルケだけではない。
それを暗示させる言葉だ。
「ここは一時撤退させて貰おう。また会おう魔法戦士」
「あっ!待って!」
そう言い残してファルケの姿が頭から消えていく。
リリーは追い縋ろうとするも、距離を詰めた時にはすでにファルケの姿は何処にもなかった。
「……ふぅ」
「り……さ……ん!り……り……さん!」
そこでリリーは自分を呼ぶ声があることに気付いた。
「……菜々芭ちゃん?」
「莉々奈さ……ん!やっと通じました!」
リリー自身も気付いていなかったが、どうやら通信妨害を受けていたようだ。
それに気付かないほどにリリーも未知の敵であるファルケに対して緊張していたようだ。
(ファルケ……貴方は一体……)
菜々芭に無事を伝えながらも、リリーはファルケのことを考えていた。
口ぶりから考えても下魔を操っているのはファルケだ。
しかしその目的が見えない。
未知なるものというのは人によっては魅力的に見えるかもしれないが、今の彼女にとっては不安でしかなかった。
「完敗……だな」
一方、異界の隠しラボへと戻ったファルケこと雨塚鷹佑は、強化スキンを脱いで椅子に乱暴に座った。
あまり作りの良くない椅子がギシギシと軋むが、今の鷹佑には関係ない。
「局長、お疲れ様です」
「セラフィか……飲み物を頼む」
「コーヒーで宜しいですか?」
「あぁ濃いめで頼む」
「かしこまりました」
待っていたセラフィにも言葉は返すが、鷹佑は天井を見上げたまま顔を向けもしない。
しかしセラフィは表情も変えず、気にもせずコーヒーを淹れている。
セラフィが鷹佑の所に初めに来てから半年が経過しているため、鷹佑が失敗をした時の対応も慣れたものなのだ。
元々感情も薄いため、全く気にしていなかった。
「ボコボコにやられたな。鷹佑」
「……データを取るためだ」
そんな鷹佑にニヤニヤと笑みを浮かべてアクラが近付いてくる。
その言葉を聞きチラリとアクラの表情を見た鷹佑はむっすりとしながら言い訳をする。
自覚はあっても、負けたと言われるのは癪に障るのだ。
そう、一見同等に戦えていたように見えたリリーとファルケだったが、実はファルケ側には全く余裕がなかったのだ。
データ上は遥かに上回っているはずの加速も躱され、一撃を食らってしまった。
強化スキン自体は無傷だが、それは魔法戦士と同じく魔力によるシールドが張られているからであって実際にノーダメージというわけではなかった。
むしろ見る見る間に強化スキンの内蔵魔力が減ってしまっており、もう少しダメージを受けていたら、逃走用のステルス機能も使えなくなる所だった。
鷹佑がそう感じているように、初戦はファルケの完敗であった。
「まだまだファルケは完成していない。それは分かっていることだろ?」
「まぁな……正直、魔法戦士を舐めていたよ」
鷹佑の敗因は簡単だ。
彼はデータ上の仮想リリーしか見ていなかった。
実際のリリーの力を軽視していたのだ。
アクラの見立てではリリーは最低でも準女神近衛騎士団並の力がある。
初期のスイートナイツの面々とは大違いの強さだ。
勿論、今ならば彼女達の方が強いが、メッツァーに比べれば戦闘において素人でしかない鷹佑にはかなり辛い相手だ。
だが、望みはある。
鷹佑の開発した強化スキンはまだまだ未完成な物だ。
アクラの協力が得られたために更なる物資の支給や、アクラの魔科学者としての頭脳があればまだまだ強化スキンは強くなる。
それに今回は強化スキンの性能テストの意味もあったため、正面から戦ったが、魔法戦士の倒し方はそれだけではない。
「次回からは下魔を連れてけよ。下魔なら、戦闘中でもシンフォニックリリーの身体を狙えるだろうから」
「……にわかには信じ難い話だけどな」
「いいや真実さ。魔法戦士達は淫らな快楽から逃れることは出来ない」
莉々奈達ミネルヴァガードが下魔のデータを取っていたように、アクラ達もまたリリーのデータを取っていた。
流石にジャミングが強かったが、アクラの用意した機器によりある程度のデータは取れた。
それにより聖涙石により生まれた魔法戦士達と同じ弱点を新たな地上の魔法戦士も持っていることをアクラは確信していた。
つまり、リリーもまた淫らな刺激に弱いのだ。
「まぁ信じ難いのは理解出来る。だから次回だけ俺が調整した下魔を貸してやるよ。倒されるなよ?」
「次回だけと言わず、貸して欲しいけどな」
「冗談。そこまでは契約に入ってねぇよ」
「局長。コーヒーです。アクラ様はオレンジジュースです」
「あぁありがとうセラフィ……お前は相変わらずコーヒーダメなのか」
「メッツァーもだが、あの苦い液体を飲む奴の気がしれねぇ」
アクラとの会話で失敗に対する落ち込みが整理出来たのか、軽口を叩く余裕が戻った鷹佑。
今回は莉々奈にこそ気付かれていないが敗北だった。
だが、次こそは。
正義が勇気を持って成長するならば、悪は執念を持って成長する。
一度の敗北で鷹佑の野望の火は消えることなく、むしろ更に燃え上がっていた。
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スイートナイツ編
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プリンセスティア編
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スイートナイツ2編
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シンフォニックナイツ編
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レムティアナイツ編